アルゴ!「ラグナダの聖戦」の章
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(4)
何の知らせもなく門が開いたので、軍事教練をしていた連中は身構えて、門へ視線を送る。ざわめきが波のように広がる。兵士達は皆赤揃いの皮鎧で統一されている。
「おい。シルフィアじゃないのか?」
「相方はドロスだぞ」
指揮官が一喝した。
「無駄口は止めろ! 全員、西門へ向かい整列! 跪け!」
指揮官は三十代後半のがっしりとした男だった。動きに隙がない。検索するとシチズンで、念度7800。レベルは62だ。シチズンとしては最高レベルと言って良い。
(セラフィー。ガウシア君には合図するまで『鴉丸』をぬかせないで頂戴)
シルフィアがセラフィーに囁く。
指揮官と思われる男には、他人を威圧する風格があった。
シルフィアは動かない。男が近づくに任せている。慈愛に満ちた眼差しで、男が近づくのを待っている。男はシルフィアの足下で跪き、頭を垂れた。
「シルフィア・レス・ダンディビィー様とドロス・ケルベロス様とお見受けいたしました。お会いできて光栄です。何用があってこのような所においでになったのですか?」
「―――殺しよ。殺す前に訊いておくわ。貴方の名前と身分は?」
指揮官はシルフィアの『殺し』と言う言葉に表情を硬くしたが、堂々と名乗った。
「申し遅れました。タナトス王国の第4遊撃団を預かるダン・ダンバインと申します」
「―――タナトス王国? タナトスは共和制のはずだけど?」
「隣国にも悟られぬように隠していましたからな。三ヶ月前に王政復古いたしました」
シルフィアとドロスの表情が厳しいものに変わった。
「王女・メディアの仕業ね? 現国王に政治力はないはずよ」
メディア・スカーレット! 名前だけなら僕も知っている。七大英雄の一角だ。宝石魔術では右に出るものがいないと言われている。ちなみにアルゴの三大美女の一人だ。シルフィア、メディア、そして南の国・アルビニの召還術師シルク・エターニャは、その美貌において群を抜いており、アルゴの三大美女と並び表される。いずれも七大英雄の一角を担う者達だ。
ダン・ダンバインはチャームを放つシルフィアを前に、なんら臆することなく堂々と答えた。
「メディア様は摂政として良く国を治めておいでです」
「―――貴方、メディアにグノーシスの洗礼を受けたのね?」
「我々、軍属は全て洗礼を受けています。メディア様のためなら死も厭わぬ精鋭ばかりです」
ダンバインは凄みのある笑みを浮かべる。
「グノーシスの教えでは営利誘拐を教義にしているのかい?」
ドロスは凄みのある目でダンバインを見つめながら胸元からチューブを取り出し、くるくると回した。
ダンバインの目の色が変わった。
「それをお返し願いませんか? メディア様から預かった大事な品です」
「俺たちを殺せたら、自然に手に入るさね」
「誇り高きタナトスの兵が営利誘拐をしているのは何故? タナトスなら金鉱脈で国家は潤っているでしょうに?」
「答えられません。その品をお返し頂けないのなら、力づくになります。我らの兵力は200名を超えます。いかな神に近き英雄と言えども、数には逆らえません」
その瞬間、隊列に加わらなかった、いかにも野党と言う集団100名余を狙って、巨大な雷が落ちた。地形は変わり、念度を全開にしたシルフィアは薔薇の香りを放ち、金色のオーラに包まれた。そして残った台地は乳白色の結界に包まれた。空も見えないが、結界自体が白く輝いているので、視力に衰えは出ない。
映像収集のカラスが数百匹、電磁波にやられて地に落ちる。
これで覗き見している連中はいなくなった。
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