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ほの甘い香りで金田正太郎は目を覚ました。丁度深い眠りに入りかけたところであ
る。目が覚めても、身体の動きはおぼつかない。
(なぜ目覚めたのか?)
その理由が思いつかない。
夜の闇の中、甘い香りが庭から密かな気配を伴って入ってくる。
ぽとり。
聞こえるか聞こえないかの程度で音がした。
布団から抜け出ると夜の冷気が襲って来た。今一度布団の中に戻ろうかと思ったが、
音が妙に気にかかった。
金田の部屋は屋敷の中庭に面している。
純日本風の屋敷だ。障子を開ければ濡れ縁に出て、自慢の日本庭園を望める。
庭には白木蓮の木があった。花が満開になっている。その香りが夜の冷気と共に部屋
に入り込んでいるのだ。
ぽとり。
一定のリズムで音がする。自然に落ちているものではないらしい。
濡れ縁に立って庭を望む。金をかけた日本庭園で金田の自慢である場所だ。
月夜の中、木蓮の花々が月明かりでぼんやりと浮かんで見える。庭に出ると香りは濃
厚なものになった。
ぽとり、小さいが十分夜のしじまに響く音で木蓮が落ちた。
が、咲いている場所から落ちているのではない。落ちる音だけが響くのだ。
根本を見た。度肝を抜かれた。
木蓮の根本は髑髏が積もっていた。
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