言いたい放題<津雲むつみ作品


花衣夢衣

「花衣夢衣」は、 YOU(当時は月刊だったらしい)誌上にて 1993年9月号より現在(1998年16号)迄連載中である、津雲むつみ先生の超大作女性漫画(レディス・コミック)です。

この作品の主人公は、双子の美人姉妹、真帆と澪です。とても可愛らしく仲睦まじい美少女姉妹の描写から始まるこの作品も、第一話のラストで、運命のいたずらから姉の真帆が米軍兵に強姦されてしまう衝撃的なシーンが登場し、思わず手に汗を握ってしまいます。津雲先生はこの手のシーンの使い方が実にうまいと思いますね。果たしてこの事件をきっかけに物語は大きく展開。結局真帆は子が産めない身体になってしまうという二重のショックを受けます。そしてこの一事が彼女の人生を大きく左右する事になっていく。このあたりの感情の変化や妹澪との関係など実にドラマチックに展開していくわけです。

それにしても津雲先生は絵がうまい。当たり前の事なのだけれど、大人の女性と少女など年齢や立場に応じて実にうまく描き分けていらっしゃる。素晴らしい。

作品の長さとしては、以前の作品である風の輪舞などを遙かに越えていますが、主人公の少女時代から成年時代まで描き続けている作品としては、筆者の記憶では初めての作品ではないかと思います。まさに大河ロマンの一品ですね。この先どこまで続くのでしょうね。 (1998年8月)


短編

先生の短編には、なかなか視点の鋭い、心に迫るものが多いですが、最近出版された文庫本に収載されている、「東京夜想曲」は、現実にもあり得そうなストーリーで、しかも例によって冒頭から一気にのめり込んでしまいました(先生の作品はいつもこうなるのです)。三年ぶりに同級生の女の子と再会した大学生の男の子の述回の形で展開するこの作品は、冒頭でその女の子の死亡を伝える新聞記事でスタートし、後は構想シーンという形で進行していきます。様々な状況から新宿のホテトル嬢になってしまった彼女に対する主人公の心情が実によく伝わってきて感動を受けましたね。あまりにはかない命だった彼女の死を悲しむ気持ちをうまく表現していると思います。

「東京夜想曲」の収載された文庫のタイトル作品である「Dark Memory」は、主人公が大学生で、ヒロイン(被害者?)の女の子も同級生でAV女優として再会するという点が似ていますが、読後の印象は全く違う作品になっています。この作品の主人公は、中学時代にほのかな思いを寄せていた彼女が傷つけられるのを自分の気が弱いために目の前で見逃してしまった。きっと心の奥で後悔していたのでしょう。再会した時にはやっと勇気ガ出て彼女を助ける事ができたのですが、「もう遅すぎるわ」と彼女に言われてしまいます。彼女はその後消息が無くなってしまい、ドラマは終わりますが、この作品は読み終えて主人公の心のやるせなさ、悔しさだけが残ります。読者のみなさんはせめてこういう失敗をしないでねという先生からのメッセージにも聞こえてくるのです。 (1998/9/19)


風の輪舞

平成11年7月、本作品にとっては二度目の文庫版が発売されました。コミックスや愛蔵版も含めると四セット目になります。既発売の文庫「新編 風の輪舞」は掲載順を年代順に並べたものでしたが、今度のはオリジナルの雑誌掲載順になっています。比べてみますとやっぱりどこか雰囲気が違いますね。この作品は、昭和の初め頃から昭和の終わり頃迄を舞台に描いていますが、年代順で読んでいますと非常に重厚な大河ドラマの様な味わいがあるんですが、こうして雑誌掲載順に見直してみますと、いきなり年代がタイムスリップしますのである種のドキュメンタリー的な雰囲気に変わりますね。波瀾万丈の人生だった主人公夏生の生き様がよりドラマチックに描かれている様に感じられます。さすが津雲先生というところでしょうか。一つの作品で二つの楽しみが味わえる、希有な作品の一つになっていると思います。また、番外編も数多く発表されていて、それぞれが独立した興味深い作品となっているのも、本編がしっかりと作られているからこそと思うのです。まさに名作中の名作なのではないでしょうか。何回読んでも感動を覚えます。ところで、一番のお気に入りは夏生と英明がウィーンで再会するシーンですね。このまま二人で一緒にどこか遠い国へ行ってしまえたら良いのにと、思わず感情移入して読んでしまうシーンです。とてもエキゾチックで手に汗握るシーンでもあります。他にも感動的なシーンの連続で(必ずしもハッピーエンドという意味ではありません)、お勧めの一作です。