断のユージニア

 みすべす版の恩田陸『ユージニア』を読み解くページです。未読の方はご注意ください。


 一読して、疑問を持たれた方の手助けになるよう、まとめてみました。
 どれが伏線なのか、また、すべてを解決する必要があるのか、みな読者に委ねられているような気がします。

 しかし、こうしたことを考えるのも読書の楽しみの一つでしょう。こうして書いてしまうといかにも無粋なこととは思うのですが、一冊の本から想像の翼を広げる楽しさを味わっていただければ幸いです。

 念のため、改行を入れておきます。




















2005/02/13

事件当時 雑賀満喜子の旅 現在
第一章
海より来たるもの
雑賀満喜子が語る
容疑者の青年と、青澤家との接点がない
山形の友人の名を知っていた理由も謎
手紙を書いた人物、そこに書かれたユージニアという言葉も不明
第二章
二つの川と一つの丘
学生時代に雑賀満喜子の助手となった青年が語る。
『忘れられた祝祭』の細部が取材時の証言と異なっている。
特定の人にメッセージを伝えたのではないか。
第三章
遠くて深い国からの使者
少女(雑賀満喜子)は紅く咲き乱れる百日紅(さるすべり)を見る
朝、窓の外に白い影を見る。
久代(緋紗子)は少女に今日は家に来ない方がよいと告げる。蝙蝠が来るような気がすると。
相澤(青澤)医院の前の白い百日紅を見る。
青澤家に白い百合の束が届く。
和菓子を取りに行ったはずの久代は手ぶらで戻っている。
少女は帰りに若い男に会う。黒い野球帽に黄色い雨合羽。そして医院への道を教える。
第四章
電話と玩具
青澤家に務めていた女性の娘が語る
乾杯をしたときに、若い女から電話
「みなさんお元気ですか」と事件が起きるのを知っていたかのよう。
廊下に赤いミニカーがあった。
合同慰霊祭の帰りに、笑顔でブランコを漕いでいる緋紗子を目撃する。
第五章
夢の通い路(一)
事件を担当した刑事の物語
台所のテーブルの上に白い便せんと小さな一輪挿し。
萎れたツユクサが一本だけ挿してある。
特にこれといった特徴のない字で詩が書いてある。
ベッドの緋紗子を見て、犯人だと直感する。
第六章
見えない人間
雑賀家の長男・誠一が語る
緋紗子は「見えない人間」=目立たない人々の奉仕と忠誠を当たり前に感じていたのではないか。
満喜子は相手によって自分を変え、相手そのものになろうとすることがあったとわかる。他人になりたい願望がある。
事件当日は、離婚についての父母の話し合いがもたれる日であった。
犯人が自殺した日に「もう無理ね」と母がつぶやく。
満喜子がビーフシチューに薬草を入れ、人に毒を飲ませる気持ちを想像したという事件が起きた。
第七章
幽霊の絵
文房具屋の若旦那と青年との出会い
青年は妹を亡くし、仏にすがり、三つ目を探し続けている。
三つ目のある場所を見つけたということを聞く。
事件当日、黄色い雨合羽を着た青年を見かける。
事件直後、青年の呟きを聞く。
「やっと返事ができました。これが私の返事なのです」
第八章
花の声
少年の頃、青年を「兄さん」と呼んで慕っていた男性が語る

青年が「僕には花の声が聞こえる」といっていた。
声にもらったというメモに「山形県」と書いてあるのを目撃する。
毒入りビールの発注の依頼人である山形の医院の住所と、送付先の青澤医院の住所が書かれていたのではないか。
殺人を教唆した人物がいるのではないか。
メモの字は、綺麗なさらっとした字体で、青年の文字(筆圧の強い小さな字)とは違う。
声の主は女ではないか。、
男性は高校時代に、白い百日紅の咲く家の前で、「じゃあ、死んじゃいなさいよ」という声を聞く。この声だ、と思う。洋風の家で、丸い窓が三つついている。
第九章
幾つかの断片
教会の近く
「一人になりたいの」と声が語る。
語り手は、子供たちから「ピーちゃん」と呼ばれている。
「ユートピア」の話をし、聞き手の人物を「ゆうじん」と子供に紹介する。
淋しいおじいさんの物語が(子供たちに)語られる。おじいさんは花火が好きだから、こっそり遊びに行って花火で驚かせようと提案する。
第十章
午後の古書店街にて

『忘れられた祝祭』の出版社の社員が語る。
かっちりとして無愛想な、感情を見せない均一のタッチ。それが満喜子の文字である。
取材記録の中では、古本屋がイニシャルで書かれている。「G」というミニコミ誌を探していたことが分かる。
本が出て一年後、不思議な電話がかかってくる。
作者の満喜子を捜しているらしい。声は中年の女性で、バックに潮騒。だがもう一人、若い女性の鋭い声が受話器から聞こえた。
M書店が焼けたことが分かる。奇妙な電話の頃。
詩について満喜子と話す。作者は目が見えないのではないか。
第十一章
夢の通い路(二)
元刑事が語る。
伝票の存在が共犯者の影を裏付けている。
緋紗子は言う。「夢の通い路」の裏表になった鶴が、刑事と自分に似ていると。
『忘れられた祝祭』に古本屋の記述だけがないことが分かる。
メモは古本に紛れて店に引き取られたのではないか。
だが、古本屋は火事で焼失していた。
手伝いをしていたもう一人の生存者と会い、犯行当日に若い娘から電話があったことを聞く。
第十二章
ファイルからの抜粋
満喜子の死亡記事
青澤邸取り壊しに関する記事
中大垣事件は昭和48年
K公園の職員の手紙 満喜子の死についての問い合わせの回答
新聞記事「そして『祝祭』すらも忘れられた」 順二が二十代で自殺していた
順二が友人にあてた手紙 毒入りであることを直前に知りつつも、何もしなかった自分を責めている。
第十三章
潮騒の町
筆者と緋紗子の対決。
筆者は、順二から手紙を受け取った人物である。
二年前に、緋紗子は視力が回復している。
伝説のヒロインは、どこにでもいる中年女性となっている。
緋紗子は道ばたの枯れたツユクサを何気なくむしりとり、昔話を始める。
母親と養護施設に行き、子供たちにお菓子を配ったこと。
近くの公園のS字型ラブ・チェアであの人と言葉を交わしたこと。
世界が消え、二人きりになる瞬間について語ったこと。
お菓子の包み紙は電話のメモだったかも。父の友人の住所があったかも。医院の住所のある薬袋だったかも。しかし、緋紗子は何も見ることができなかったと無実を訴える。
第十四章
紅い花、白い花
公園のベンチに佇む満喜子
事件を担当した女性警察官と出会い、緋紗子が事件直後に語った言葉を聞く。
「誰かと青い部屋の前にいる。白い百日紅の花が怖い」
青い部屋は三つの丸窓の一つ。母親が祈る部屋。百日紅(さるすべり)は、丸窓のステンドグラスのフラ・ダ・リの紋章とわかる。
緋紗子は、家の前の百日紅をひゃくにちこうという花と思っていた。
部屋の中に一輪の白い百合。
母親=青澤家の奥様は奇跡を望んでいたのではないか。

お好みミステリの部屋

Mystery Best ???(ブログ版)