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『カエル』-「ネパールの民話」竹林館より-

昔、一人の農夫とその奥さんがいました。
二人には子供がいなくて、とても不運に思っていました。
ところが二人の祈りに答えるかのように、奥さんは子供を産みました。
しかしながら二人の喜びは一時的なものでした。
というのは、その子供はカエルである事がわかったからです。
農夫はカエルを野原に連れて行って、そこへ置いてきたいと思いましたが、奥さんが承知しませんでした。
「何といっても、このカエルは私達の子供なのですもの」奥さんは言いました。
「このカエルを飼って世話してやるわ」
農夫の奥さんはまるで本当の男の子のようにカエルを大切に育てました。
そのうちカエルは飛び回って遊んだり、少し話しさえできるようになりました。
ある日、奥さんが農夫にお弁当を届けに畑へ出掛けようとした時、
その小さなカエルがかわりに自分を行かせてくれと頼みました。
「だめよ、おまえには行かせられないよ」お母さんは言いました。
「何とかうまくやれるよ、お母さん」カエルは言いました。「心配しないで」
お母さんが小さな布にお弁当を包むと、カエルは棒切れの端にかけました。
そして棒切れを肩にかけて、お父さんの働いている畑までずっと運んでいきました。
その日からずっとカエルはお父さんのお弁当を届けました。
そして他にもお母さんの手伝いをいろいろしました。
ある日、カエルは「お父さん、乳牛や水牛を飼いましょう」と言いました。
「どこで手に入れるのだね」農夫は聞きました。
「王様の所へいって頼めばいいじゃないですか」とカエルは提案しました。
「とてもそんな事は言えないよ」農夫は言いました。
「じゃ、僕が行かなければ」カエルはそう言うと、宮廷までぴょんぴょん跳ねて行きました。
カエルは王様にお辞儀をして言いました。
「おお偉大なる王様、私の父はとても貧しい農夫です。私達に乳牛や水牛を頂けませんか?」
カエルは宮廷中に笑いを起こさせただけでした。
そして王様は手を振ってカエルを向こうへ行かせました。
その次の朝、王様の牛達はどれもミルクを出しませんでした。
王様は占星術師を呼びにやり、この訳を説明して欲しいと頼みました。
話を聞き、占った占星術師は、これは王様の所へ来たものの望みかなわず惨めに去っていった誰かのせいであると断言しました。
王様は前の日にやって来た小さなカエルの事を思い出しました。
王様は農夫のところへ一ダースの牛を送るよう命令しました。
その命令を出すやいなや、牛達はミルクを出しました。
次の日、カエルはお父さんに王様のところへ行って、自分のお嫁さんに王女様が欲しいと頼んでと言いました。
が、農夫はそんな考えにびっくりして「何とばかげた事を!」と言いました。
「じゃ、ぼくが行かなければ」とカエルは言いました。
それでカエルは宮廷までぴょんぴょん跳ねて行きました。カエルは王様におじぎをして言いました。
「おお、偉大なる王様、あなたの上の娘さんを私の妻に貰ってもよいでしょうか」
王様は今度は笑いませんでした。王様は顔をしかめ、宮廷官は貧相なカエルを見てまゆにしわを寄せました。
ついにカエルは兵士達に追い出されました。
その次の朝、驚いた事に宮殿の前にあった大きな美しい池がほとんど干上がっていました。
王様は占星術師を呼びにやりました。占星術師はその訳を考えた末、それは王様のところへ来たものの、
目的のものが得られず、惨めに去って行った者のせいだと断言しました。
「ああ、またあのカエルに違いない。あいつを呼んでこい」と王様は言いました。
カエルが連れて来られると、王様は「池に水を入れてくれないか」と頼みました。
「おお、偉大なる王様、王女様の為にそうしましょう」自分の娘達のうち、一番年上の娘を妻にしてもよいと
王様がカエルに言うやいなや池は水で一杯になりました。
結婚の為の準備が早速行なわれました。王女様はとても悲しんで涙を流しました。
でも王様は名誉にかけてカエルと約束してしまったのでした。それでカエルは王女様と結婚し、家に連れて帰りました。
家では農夫と妻がうやうやしく王女様を迎えましたが、可哀相な王女様は泣き悲しみ、目が赤くなりました。
やっと儀式が終わり、カエルと王女様はみんなと離れ二人きりになりました。
王女様が驚きと喜びの目で見たのはカエルが皮を脱いだナラヤン神に他ならない姿でした。
でもカエルは本当の正体について秘密を守るように誓わせました。
数日後、王女様は宮廷に帰りましたが、妹達は冷たくあたりました。
「カエルの奥さん」妹達はそう呼びました。冷たい仕打ちに耐え切れず、王女様は戻って行きました。
惨めになり考え込んでしまいました。
夫がカエルの皮を脱いだ次の機会に王女様はそれをひったくって火の中へ投げ込んでしまいました。
しかし皮を破り捨てた事はとても不幸な事でした。というのは皮がなければ地球にとどまれないとナラヤン神は言ったのです。
次の瞬間、ナラヤン神は跡形もなく姿を消して、見えなくなりました。王女様はその運命を嘆きました。-おわり-
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