東アジア地域のFTAと地域経済統合

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2003.10.6更新

 何故、中小企業診断士が中国に向いて仕事をするのかという疑問を時々投げかけられます。その時に、FTAの話や地域経済統合などの話をするのですが、ほとんどの方が理解できないようです。
 5月の異業種交流会の話題提供で、20名程度の経営者に「FTAという言葉を知っている人」という質問をしてみました。また、7月に中小企業大学校で行なった経営指導員研修で、30名程度の経営指導員に同じ質問を投げかけてみました。その結果、両方足して50名程度の方が、FTAという言葉を知りませんでした。
 7月31日・8月1日と日本経済新聞の1面で「世界を覆うFTA」という特集が出されましたので、おそらくこの問題の認知度が上がると考えられます。
 
FTAとは
 自由貿易協定の略で、国同士が2国間で関税や貿易障壁を取り除く協議を行なうことです。

地域経済統合とは
 FTAに関連し、ものの貿易にかかわる関税や貿易障壁、サービスの貿易に関する規制や投資、人の移動の制限の撤廃などがなされることにより、双方の市場経済を統合することです。

 詳しくは「中国台頭」津上俊哉著 日本経済新聞社をご覧下さい。

 大きな話になりすぎて、理解でき難いと思いますので、私なりの解釈を補足しますと、今FTAを結ばなくても、日本と中国の間で経済統合が進んでいます。その理由として、巨大な中国市場を狙っての日本企業の進出、規模の経済性と労働コストを求めて低廉な原価を達成するための日本製造業の進出があげられます。
 最近、新潟県内の製造業の間で、中国価格という言葉が良く使われます。これは、価格競争が激しくなり、中国で作るものの価格と同じぐらいの価格で商品の納入をしなければならないということです。この現象は、ひとつの経済統合の動きです。但し、現在貿易障壁が残っている関係上、中国で得た利益を日本にもってくるのに税金を払うよりも、新たに必要になった中国投資にその資金を使った方が得策だと企業が判断し、中国から日本に利益が戻らない問題点があげられます。
 さて、経済統合が何故問題かというと、日本と中国の経済統合がこのまま進めば、中国から低廉な商品がますます日本に輸入される、多くの中国人労働者が日本にくるということが考えられます。
 
 私は、ここで何も中国脅威論を展開しようとしているのではなく、冷静に情報を分析する必要を説きたいと思っています。そのためには、アジアの力を正しく評価する必要性と、将来に向けて人脈(ネットワーク)づくりをする必要性があると思っています。
 それが、私の中国視察の最大の理由です。
前回FTAについて、お話しましたが、今回シンガポールとFTAについて述べさせていただきます。

JSEPA
 日本とシンガポール結んでいるFTAの略称がJSEPAになります。正式名は「日本・シンガポール新時代連携協定」です。この協定で、日本からシンガポールへの輸出が100%無税となり、シンガポールから日本への輸入が94%無税となります。
 2002年1月13日にに署名。同年11月30日に発効後、2ヶ月間で日本からシンガポールのビール輸出が前年同期比167%に増加しています。また、シンガポールから日本へのプラスチック製品の輸入が35%増加しています。
 何故、FTAに消極的な日本政府がシンガポールとFTAを結んでいるかといえば、シンガポールの基幹産業に農業がないからです。日本の工業製品がシンガポールに輸出でき、保護している農産物の輸入の心配が少ないからです。
 後で述べますが、日本政府の対応は「目が近い」としかいえません。
 
日本が検討しているFTA
 日本−シンガポール    JSEPA (締結)
 日本−韓国        日韓投資協定
 日本−フィリピン
 日本−タイ

シンガポールが検討しているFTA
 シンガポール−日本     JSEPA (締結)
 シンガポール−フィリピン  ASEAN自由貿易協定 (締結) 
 シンガポール−タイ     ASEAN自由貿易協定 (締結)
 シンガポール−マレーシア  ASEAN自由貿易協定 (締結)
 シンガポール−インドネシア ASEAN自由貿易協定 (締結)
 シンガポール−ベトナム   ASEAN自由貿易協定 (締結)
 シンガポール−ラオス    ASEAN自由貿易協定 (締結)
 シンガポール−カンボジア  ASEAN自由貿易協定 (締結)
 シンガポール−ニュージーランド 
 シンガポール−米国     
 シンガポール−欧州
 シンガポール−豪州
 シンガポール−中国     4分野合同協議会     

 日本とシンガポールは資源の少ない国であるということは同じです。その資源資源が少ない国の一方が保護的になっているのに対して、一方が積極的に経済統合を図っています。このまま、FTAが進めば、3年後には日本の競争力が落ちる一方で、シンガポールのアジアの地位が上がっていると考えます。
 私は、中国を脅威と感じていませんが、シンガポール(華僑)を脅威と感じています。
 民間レベルで、どの国とパートナーになるか選択することにより日本企業の生き残る道があると考えます。
  前回シンガポールとFTAについてお話しましたが、今回はFTAの鍵となる農産物の関税について述べさせていただきます。

 日本とシンガポール結ぶFTA(JSEPA)はシンガポールの基幹産業に農業がないことをあげ、それにより締結しやすいと述べましたが、その他の地域はどうなのか推測します。
 日本が一番農産物を輸入している国を正しく認識している方は以外と少ないのですが、その相手国はアメリカです。少し古いですが、2001年のデータでは、中国の3倍程度の輸入があります。では、何故アメリカの輸入について騒がずに、中国からの輸入にだけ騒いでいるように見えるのでしょうか。おそらく、アメリカ向けの輸出が大きいく、貿易の均衡がとれているためであると考えます。
 アメリカからの農産物の輸入を100とした場合の各国の輸入は、
中国        33
オーストラリア   22
カナダ       17
タイ        13
デンマーク      9
フランス       9
ブラジル       6
ニュージーランド   6
韓国         5
となります。日本−タイのFTA交渉が行なわれているが、農産物の交渉が鍵となります。また、中国とのFTA交渉は基本的にないと考えた方が良いと思います。そのため、中国一辺倒でなくASEANへの投資とバランスを図る状態が続くと考えます。
 これらの農産物の実行関税率は、一般的に3.0%であるが、イモ類は4〜9%、きのこ類4.3%となっています。

2003.8.14中小企業診断士中村公哉事務所