中小企業役員・財務スタッフのための経営講座

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 中小企業の役員や、財務スタッフの役割などに関するテキストとしては、経営手法的なものがあっても、本来の仕事に関するものがほとんどありません。そのため、中小企業診断士として、年間数十件中小企業を指導する中で感じたこと、現場の実態から、中小企業役員・財務スタッフの経営講座を記載します。

2010.5.5更新

2008.4.11 中小企業は誰のためのものか

 多くの方が勘違いしているのが、中小企業が誰のためのものかということです。時々、コンサルタントで、経営者一族が役員報酬を多くとり、従業員に還元していないから、駄目な会社という方がいます。また、ベンチャーを起こすときに、仲間と一体になり、均等な報酬を分けるという起業家もいます。これらの方は、私の意見と正反対の方です。
 中小企業診断士として企業再生に携わると、従業員があまり役に立たないことが分かります。それどころか、優秀な人材ほど、逃げ足が速いものです。再生対象企業の中には、仕事をしない古株の従業員に多額の賃金を支払い、若手の給料が少ないために、優秀な若手が定着しないという問題を抱えているところが多くあります。必ず、給与の見直しが出てきますが、優秀な方に増額し、仕事をしない古株の給与を引き下げるわけですが、相当な抵抗にあいます。
 「中小企業は誰のためのものか?」私の意見としては、お客様と、金融機関など支援者のためのものです。私の経験上では、これらの方と経営者は互恵関係がありますが、従業員は利益が相反する部分があります。その従業員に多くの賃金を支払う。何時逃げるか分からない創業仲間に均等な報酬を支払うなど愚の骨頂だと感じます。お客様、支援者のためのものと考えれば、経営者が多く報酬を取る必要があります。企業のいざという場面において、金融機関などの支援者は、経営者一族の個人資産をあてにします。そのためにも、多額の役員報酬をとることは良いことです。多額の役員報酬をとることと、無駄遣いをすることは意味が違います。
 私が、中小企業診断士として長期指導で中小企業に入るとき、財務担当スタッフに言う言葉があります。「財務担当の仕事は、会社を儲けさせること以外に、経営者一族の資産を増やすことだ。それができない財務担当は、三流である。」
2008.4.30 銀行との付き合い(1)

 役員・財務スタッフの最大の仕事は、やはり金融機関との付き合いになります。付き合いのポイントとしては
1.適正な数の金融機関と付き合う
2.政府系と民間の金融機関との付き合いを使い分ける
3.自社の規模にあった金融機関を選ぶ
4.適正な借入額にとどめる
5.金融機関からの役員の受け入れは最小限にとどめる
6.行員の能力でなく、組織対応力で選定する
7.必要でない資金の融資をおこなう金融機関との付き合いは辞める
8.貸し渋る金融機関が決して悪い金融機関ではない。安易に貸す金融機関の方が悪い場合が多い
9.経営状態が悪いときの金融機関の発言を全て鵜呑みにしない
10.最後は人対人のつきあい。どれだけ腹を割った話せるか

 これらは、教科書で学んだことではなく、経験で得たものです。
 まず適正な数の金融機関ですが、ときどき6つも7つも金融機関とお付き合いしている企業を見る場合があります。大きな企業の場合、都銀1〜2、地銀1〜2、政府系1が適切であると思います。このときに、特定の民間金融機関からの借入比率を上げておくことが必要です。このメインバンクが存在しない場合、業績が好調なときは良いですが、業績が悪くなると借入がスムーズに行かなくなります。特に企業再生に近い状態となった場合、金融機関同士が資金調達の擦り付け合い、貸し剥がしという場合が発生します。
 従業員が50人以下になると、適正な金融機関の付き合いは、地銀1〜2、信金あるいは信組1、政府系1となります。
2008.5.24 銀行との付き合い(2)

 新事業進出や、企業にとって将来を左右する投資を行うとき、金融機関からのバックアップが不可欠となります。このときに、メインバンクの対応に不満があるといって、時々借入先を変更する経営者を見かけます。この場合の不満とは、借入の際の金融機関が厳しい態度ででて、なかなか「うん」と言わないためが大半のようです。大変稚拙な行動であり、経営者として失格であると感じます。考えてみてください。自社にとって勝負をかけるような場合は、お付き合いしている金融機関にとっても勝負をかける場合なのです。その状態で、安易に貸し付ける金融機関のほうがどうかしていると思いませんか。金融機関の担当者、支店長が、自分たちが納得できるまで、計画を聞き、本当に事業が軌道に乗るのか良く吟味しなければならないと思います。この時に、いくつもの指摘があったり、質問があったりするということは、新事業や投資を深く考える機会が与えられたことと思った方が良いと思います。
 この新事業や投資を行うときに、良い支店長(一緒に計画を考える)がいれば心強いですが、そうでない時は、経営者、役員、財務スタッフがより深く考える必要があります。事業計画を一緒になって考える支店長は、金融機関の中で出世する方が多いようです。逆に考えると、良い支店長がいる時期に、新しい行動の道筋をつけたほうが好ましいのかもしれません。
2008年8月21日 キャッシュフローとは何?

 ときどき、金融機関の方と話をしていて、キャッシュフローという言葉がでてきます。実は、この言葉使う人が代わると意味が異なると考えてください。最近、決算書にキャッシュフロー計算書というものがついている場合があります。上場企業であれば必要なのですが、中小企業において作成する意味がありません。ほとんどの場合は、会計事務所が差別化を目的として、意味がないものを作らせていると考えてください。また、コンサルタントや中小企業政策に関連する行政の人がキャッシュフロー計算書をもとに云々言うことがありますが、「本当に分かっているの?その結果どうなるの?それで中小企業にとってその先どのうような行動をとれば良いの?」質問したくなります。教科書通り勉強をして、実戦経験がない方が主に中小企業に対してキャッシュフォロー計算書の話をしているようです。
 さて、戻りまして金融機関の方が主にキャッシュフローと言っている場合、「償却前経常利益」のことです。償却前経常利益とは経常利益に減価償却費を足した値であり、金融機関の方はこの金額で返済能力を見ます。例えば、10百万円の経常損失を計上している会社が、100百万円の減価償却を行っている場合は、償却前経常利益は90百万円であり、この額の4〜6割の返済能力があると見ます。この掛け率は、金融機関にとって異なります。
 キャッシュフロー計算書が理解できなくても、中小企業の場合は、この償却前経常利益を理解していれば、大丈夫です。
2008年9月4日 役員借入は破綻の前兆(1)

 時々、金融機関からの借入利息がもったいないということで、役員から企業にお金を貸して設備投資などを行っている企業を見かけます。何故このようなことをしているか、私には理解ができません。また、どうして会計事務所がこのようなことを許しているのかも理解ができません。
 この事実だけで、企業と経営者の資産が分けられていなく、公私混同が見られると指摘せざるを得ません。
 企業が利益を上げ、役員に返済できているうちは、良いですが、利益がでなくなれば、役員への返済をとめる結果になります。メタボのダイエットも、続けることが大事で、一度ダイエットを中断すると継続意識がなくなります。企業も同じで、赤字で、一旦返済を止めてしまうと、黒字になるか赤字になるかギリギリの状態や赤字の状態が当たり前になり、役員への返済を継続して止めてしまいます。
 この状態で、経営者が年をとれば、どうなるでしょうか。事業継承が相当難しくなります。
2008年9月15日 役員借入は破綻の前兆(2)

 前回、業績が悪くなった時、役員借入の返済分の利益確保を行わなくなることを書きました。
 基本的に、事業承継のことを考えると、役員借入を行ってはなりません。しかしながら、企業の業績が悪化し、どうしても資金が必要になった場合にどうするのかということですが、もっとも正しい判断は役員借入で資金を入れるのではなく、増資で対応することになります。また、役員の資産(土地)などを担保にして、金融機関から融資を受けることも適切と考えられます。
 役員借入の最大の問題は、「返ってこないかもしれないが、従業員のことを考えると仕方ないか。」「でも、利益がでるようになれば返してもらえるかも。」という役員自体のどっちともつかない考え方です。返ってこないと思うなら、増資で対応すべきであり、返す能力があると考えるのであれば経営者の資産ではなく金融機関から借りるべきであると考えます。
 優柔不断な経営者が役員貸付を行い、その優柔不断さにより、企業を破綻に追い込みます。
 経営者たるもの、自分に厳しく、企業に厳しく、企業資産と個人資産の分離ができなければなりません。
2008年12月29日 地域活動の必要性

 小規模企業は、営業活動として地域活動に一生懸命です。商工会議所、商工会、ロータリー、ライオンズ、倫理法人会、JCなど数えただけで、様々な団体と係っています。中堅クラスの企業になると、「入ってもメリットがない」と言って、会費だけ払うか、あるいは入会もしなくなります。創業者よりも、2世にこの傾向が強く、従業員から役員になった方もこの傾向が強いようです。中堅企業にとって、本当に地域活動は必要ないのでしょうか。
 食品製造業などで、ブランドが必要な業種の場合、いきなりナショナルブランドになることは不可能です。まず地域ブランドで地位を確立し、その後全国区にでていくのが一般的です。地域活動を行っていない方が、地域ブランドを得ることができるでしょうか。新潟県にも何社か、地域活動を行わないために、折角良い商品を持ちながら、地域ブランドも得られない企業があります。それなのに、全国区へ一生懸命になっています。相当な資本力があれば別ですが、難しいことをおこなっていると考えます。
 別の見方で、有名税という経営者がいます。地位活動にはお金も時間も必要であるが、有名になったために、税金のようなものであるという意味で使っています。人間はヒガミやヤッカミというものをもっており、ある程度の規模の企業になれば、競合でなくても面白く思っていない方が必ずいます。そのマイナス面から逃れる方法の一つが、地域活動になります。地域活動により経営者のファンを多くつくっておくと、そのファンがマイナス面の発言を押さえ込んでくれます。
 プラスマイナスを考えると、可能な範囲で地域活動を行ったほうが正解かもしれません。また、後継者を地域活動に参加させると、他の経営者の背中を見ながら自らのスタイルを確立していきますので、企業の長期的な視点に立つと地域活動は必要かもしれません。
2009年3月12日 接待交際費について

 時々、接待交際費をケチる企業を見かけます。このような会社の経営者は、経営に向かない人だと思います。以前他で述べましたが、本屋に行くと経営関係の書物で、でたらめなものが多く並んでいます。この大半は、学者やコンサルタントなどの経営を行っていない方が書いたものであり、そのような本を読んで勉強した気になっているから、交際費を使わないのだと思います。自分の周りの企業を見れば、参考に出来る点もあるし、反面教師としての企業もあります。実際の経営を学ぶ機会が、交流会であったり、懇親会であったりします。ようするに、接待交際費を使いながら、他の経営者の姿勢を見て、学とろうということです。私自身も様々な方とお酒をのみながら、経営に関する考え方を吸収し、自分なりに噛み砕いて、実践しています。
 接待交際費とは、研修費であり、有効に使う必要があります。
2009年5月6日 不況からの脱却時に必要なこと

 現在、多くの製造業で雇用安定助成金をいただき、事業を継続しています。この不況が何時まで続くかという話題以上に、景気回復時期に如何にして企業を立て直すかが重要になってきます。
 昨年の不況になる前より、各社とも売上が減少しています。急激な売上回復は見込めず、徐々に回復します。また、セーフティネットの借入により、借入が膨らんでいると考えます。売上が減少し、借入が増加している。みんながその状態であるため、安心していても、どのうように考えても経営の危機的状態です。
 私のお客様で無借金経営の企業がありますが、無借金であれば売上が減少しても、借入が発生してもそれほど危険な状態ではありませんが、月商の3ヶ月ほど借入がある企業は、景気回復期には、月商の6ヶ月程度の借入になっています。3ヶ月の借入は優良企業ですが、6ヶ月の借入は破綻懸念企業になります。
 不況から脱却時に必要なことを挙げますと
1.売上計画の見直し
2.経営規模の見直し(リストラの検討)
3.キャッシュフローの明確化
4.返済計画の立案
となります。
 これらの検討をできるだけ早い時期に実施することが重要になります。
2009年9月8日 賞罰の徹底(賞とは)

 最近、複数の企業から「多能工が進まない。」という相談がありました。多能工とは、製造業などで一人の従業員が色々な仕事ができることであり、それに取り組むことも含めて使います。その企業の実情を確認すると、
1.多能工で仕事を覚えさせているのは入社数年の若い従業員
2.これらの従業員は、多くの仕事を覚えているが、一人前といえない。
3.ベテランの従業員は職人的な扱いを受け、多能工の教えるがわについても、教わるがわにつかない。
4.作業手順の標準化を進めており、標準作業時間も決めている。
5.多能工の最終目標が、標準時間内に作業(段取りも含めて)を終わらせることにはなっていない。作業方法習得まで。
ということが共通しています。おそらく類似した企業の方がいらっしゃると思います。
 問題は、社内で「多能工=半人前」という図式が出来上がっており、一人前を自称するベテランが、半人前の多能工を進めていないことにあります。また、多能工を進めることに対して、ベテランは何のメリットも感じません。
 結論としては、社内の風潮を変える必要があり、変えるためには多能工を進めることにより、従業員が何らかのメリットを受ける必要があります。この場合、多能工の進み具合により報奨金を出すことも考えられますが、やはり人事考課制度とリンクさせることが重要であると考えます。人事考課制度の目標に多能工を入れ、その達成具合を考課要素に入れることです。
 人事考課制度は、企業の重要な賞となっています。
2010年2月7日 賞罰の徹底(罰とは)
 同業者に、私の専門は赤字製造業の黒字化というお話しをすると、一部の方が「嘘つくな、診断士にそんなことができる分けがない。」という批判を展開します。診断士であるのに、自らが赤字の黒字化ができないと言っている方をみると、とても悲しくなります。そんな診断士が、コンサルタントといって企業に出向くのですから、困ったものですね。赤字の黒字化のノウハウは、色々とありますが、どの案件でも共通するのが、賞罰の利用です。賞は前回述べましたので、今回罰について述べます。
 次のことを行う従業員で誰が一番悪いと思いますか?
  1.交通事故を起こし、相手に怪我を負わせた従業員
  2.会議にいつも遅刻する従業員
  3.日報・月報などの提出を行わない従業員
  4.与えた業務の報告を求めると「やっていません」という従業員
  5.与えた業務の報告に来ない従業員に対して、報告を求めると、業務が遅延していた従業員
 悩むところかもしれませんが、経営を行ううえで、ある程度の価値基準を持ているかどうかになります。価値基準を持っていれば簡単な設問です。私の基準では、「悪い>3>4>5>2>1まし」となります。5,2,1のところが微妙ですが、
 交通事故を起こした従業員はその時の状況にもよりますが、会社として行うべきことは「状況を確認すること」「従業員が怪我をしていればお見舞いに行くこと」「業務中か、通勤中の事故かどうか確認すること、もしどちらかであれば適切な処置をすることになります」通常意図的に事故を起こす従業員はいませんので、通常は罰を与えません。従業員に顛末書を書かせますが、これは罰になりません。
 報告に来ない従業員は、報告に来ないことを注意します。業務が遅延しているということは、何らかの問題があるということであり、問題を一緒に考え、計画を修正してあげる必要があります。会議にいつも遅刻する従業員も、遅刻を注意する必要があります。これらのケースは、業務を遂行する意志があります。
 「やっていません」というケースは、職務放棄になり、前述のケースと違い、業務を遂行する意志がないということです。この従業員には、当然顛末書ではなく、始末書を書かせます。これが罰になります。また、日報・月報の提出を行わない従業員も職務放棄にあたり、始末書を書かせます。この従業員をこのまま放っておくと、会社の中に職務放棄を行うものがドンドン出てきます。始末書を何度書かせても、職務放棄する従業員に対しては、更に重い処罰が必要になってきます。この場合は、本人の了解のもと、減給や場合により普通解雇もあり得ます。
 これらから分かるように、規律を維持し、組織としての業務遂行能力を高めることが必要です。そのための一つの手段が、賞罰になります。

2008.4.30 中小企業診断士中村公事務所