中小企業診断士中村公哉の視察記

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2003.9.16更新

 このページは、工場見学、海外視察などの視察記を事務所ニュースで紹介いたしました一部を公開致しております。視察先に対する配慮から企業名を伏せ、レポート一部しか公開しておりません。企業においては取引先の与信管理、行政や診断士の受験生にとっては実際の企業現場の状態把握に役立つと思い、掲載しました。何か質問があれば、いつでもご連絡ください。
診断士からみた工場見学(1)
1.下調べ
 下調べなしに工場見学に行ってもあまり深いところまで入れません。そのため、見学前に次のことを確認します。
 企業情報の調査(帝国データバンクなど)
 経営状態を判断するための比較データ(中小企業経営指標、中小企業原価指標)
 見学企業のおかれている環境調査 (業種別貸出審査辞典)
 このたび埼玉で見学した3社は、類似の業種を診断した経験があるため、環境調査は行なっていません。

2.A株式会社
1)下調べ結果
 省略

2)企業訪問
 上記のように下調べを行なうと企業訪問は楽です。工場見学では、良い所を見せ、常に大きく見せようとします。下調べを行なっていれば、何を隠したく、何を誇張しているか、手にとるように分かります。もし下調べをしなければ、企業を過大評価する恐れがある。
 このたびの企業訪問では、次のような点をチェックしました。
  生産ラインの構成
  作業者の労働状況
  コアテクノロジー
  掲示物・5S
  販売管理
  後継者
 以下省略

3.余談
 工場見学の報告を、あと2回記載しますが、企業においては取引先の与信管理、行政や診断士の受験生にとっては実際の企業現場の状態把握に役立つと思い、掲載しました。何か質問があれば、いつでもご連絡ください。
診断士からみた工場見学(2)
4.B製作所

1)下調べ(詳細削除)
 帝国データバンク評点 の把握
 従業員一人当たり売上高の把握
 業種平均の一人当たり生産高の確認
 売上高対利益率の確認
 経営者の年齢と創業年の確認

2)企業訪問(詳細削除)
 下調べ結果より、
 事業内容・事業戦略のチェック
 事業継承の方向性のチェック
が重要なポイントとなります。
診断士からみた工場見学(3)
5.C社

1)下調べ(詳細省略)
 帝国データバンク評点 56点
 51点〜65点が2ランクであり、中小企業の平均的な点数です。但し、近年全体的に評点が下がっていますので、中小企業に しては優良企業に入ると考えます。

 従業員の把握
 従業員一人当たり売上高の把握と業種平均との比較
 業種平均の従業員一人当たり生産高から考えると、良い状態であります。但し、この業種平均は自社ブランドを持つ企業が含まれているため、高い数値で平均がでており、C社の事業が下請け型か、自社製品を持っているのかチェックが必要です。

 売上高対利益率の把握
 売上高経常利益率の業種平均が5.0%であることを考えると利益率の低い企業であることが伺えます。

 売上高の伸びの把握
 現在の経済経済情勢で、これだけの売上の伸びを示すことは、非常に珍しいと考えます。事業の拡大の要因をチェックする必要があります。

 経営者の生年月日出身地の把握
 1977年設立であることにより、創業者であることが分かります。また、60代前半であり、事業継承を近いうちに行なうことが推測できます。

2)企業訪問
 上記をうけて次の点を確認しました。

 事業内容のチェック 
 一人当たりの売上高が高い理由
 パート従業員が多くいることが分かりました。パートの労働時間が正社員の3/4であることを考慮し、一人当たりの売上高を再計算し、分析しなおしました。

 事業承継

3)所見
 このような企業を見学できることは稀であり、我々プロのコンサルタントにとっても非常に勉強になります。不安定な仕事を組み合わせ安定な仕事にしている強みがある反面、仕事で受ける診断でもなかなか踏み込む事ができない問題を垣間見ることができました。また、個別のノウハウなど学ぶ点が多くありました。
診断士からみた工場見学(4)
株式会社D その1

1.生産方式のチェック
1)コンピューターによる統合管理
 コンピューターシステムの導入によって、管理費用がどれだけ削減できるか、まず考える必要がある。中小企業においてはせいぜい1人か2人の人件費が浮くぐらいであろう。一方で、コンピューターシステムによって生産方式が硬直化する懸念が強く、もしそのシステムがなかったらできる生産改善の効果を考える必要があります。そうすると、コンピュータシステムは中小企業にとって危険な道具であります。
  (株)Dは、コンピュータによる統合管理を打ち出しているため、チェック項目としてコンピュータによる生産の硬直化が挙げられます。今回のチェックの結果、従業員一人一人の知恵を活かせない硬直化したシステムになっている懸念が強いといえます。
2)自動化による生産
 量産品の製品で、ところどころ自動化を進めていることが確認できます。現在、多品種少量生産の時代で、製品寿命が短く、コスト競争による売価低減が激しい時代であるため、自動化が本当に良いとはいえません。そのため、チェック項目として、製造工程内の作業者の人数が挙げられます。
 (株)Dでは、自動化している工程に、作業者が多いと感じました。そこから推測できることとして、自動化技術がそれほど高くないか、若しくは生産する製品と生産方式が一致していない可能性が考えられます。製品寿命、設備投資、従業員の習熟など総合的に勘案し、自動化を見直したほうが好ましいといえます。
診断士からみた工場見学(5)
株式会社D その2

2.人材面のチェック
1)勤務態度
 製造現場の従業員のチェックをします。服装の乱れや、作業服の汚れ具合などをチェックします。それによって、企業の管理レベルを判断します。
2)正味作業時間
 たち歩きや、作業の動作スピード、作業のリズムをチェックします。それにより、生産管理レベルがわかり、同時に従業員が経営参加し業績向上に向けて努力しているか判断できます。
 
 実は、簡単なように見えますが、製造業はこの人材面のチェックが重要になります。中小企業において、経営者と数人のスタッフだけが知恵を働かしている場面を良く見かけますが、頭だけ働いても、手足の筋肉が弱ければ、強い企業にはなれません。30人、40人の従業員一人一人が企業業績の向上に向けて努力することにより、強い筋肉ができ、経営者やスタッフが描く事業が遂行できます。また30人、40人が考える小さな積み重ねでも、全員の力が業績向上に向かえば、大きな効果が得られます。
 D社においては、勤務態度は比較的良好ですが、正味作業時間が少なく、製造現場の従業員と経営層の乖離が見られました。
株式会社D その3

財務内容のチェック

 帝国データバンクでD社の財務内容が公開されていましたので、それを取り寄せて、訪問しました。製造原価の構成まで分からなかったので、全てを網羅できませんが、次の内容がチェックできました。
3.総合的な財務指標
   売上高対営業利益率
   自己資本対経常利益率
   総資本対経常利益率
 上記3点を確認したところ、売上高対営業利益率が低下し続けていることが分かり、本業の利益率が低下していることがわかります。それがわかれば、見学で見る内容が絞られてきます。
4.財務面の指標
 固定長期適合率
 流動比率
 当座比率
 総資本対自己資本比率
 上記4点を確認し、財務的には問題がないことがわかります。それがわかれば、よりチェックする内容が絞り込めます。
5.生産面の指標
 一人当たりの年間売上高
 原材料回転率
 仕掛品回転率
 製品回転率
 上記4点を確認し、一人当たりの年間売上高が低い事がわかります。本業の収益状態とあわせて、従業員が余剰であるかどうかの判断が必要になります。また、業績が回復する見込みがあるかどうかのインタビューがとても重要になってきます。
6.販売面の指標
 売上高対総利益率
 販売管理費比率
 上記2点のチェックで、双方のデータとも非常に低いことが分かります。その結果から、自社で営業を持たずに、外部に委託していることがわかります。

2002.11.18中小企業診断士中村公哉事務所
fwiy6062@mb.infoweb.ne.jp