中小企業診断士からみたウラジオストック視察記
| 中小企業診断士中村公哉事務所TOP | Chinese Page | 上海・蘇州視察記 | 中国語HPチャレンジ記 | 自己紹介 | 中国診断業務 | 中国語版経営管理マニュアル | 東アジア地域のFTAと地域経済統合 | mail |
| 2005年9月15日〜18日にかけてロシア・ウラジオストックに行って来ました。目的は長岡商工会議所青年部の視察であり、聞いてみるのと行ってみるのは大違い!BRICsと言う言葉が2005年の新聞紙上を賑わしておりますが、ロシアに比べられたら中国が怒ると思います。ドタバタのロシア視察記を何度かに分けてご紹介します。 |
2008.1.7更新

| 1.憂鬱なウラジオストック空港 ウラジオストック空港は、ウラジオストック市内から50kmほど離れたアルチョム市に位置する。人口60万人(日本ロシアセンター資料)の都市の空港にすれば、非常にお粗末である。入国手続きに時間がかかり到着したときは、閉まっていたが売店が1店、2階にレストランが1店あるだけである。空港職員が少なく、全てにおいて時間がかかる。 我々の入国は、観光ビザである。通常、視察において、ロシアでも観光ビザが用いられるのが一般的であるが、今回このビザにクレームがついた。我々の視察日程と、メンバー表が事前にロシア当局にわたり、チェックが入った。何も問題がないと考えるが、入管にて言われたことは、「視察はビジネスである。ビジネスであるのに観光ビザで入国するのは駄目。虚偽の申請を行った旨、サインをしなさい。」このようなやりとりに、3時間近くかけられた。結果としては、入国拒否であるが、ロシア時間で10時も過ぎ、空港職員も帰宅し、出国する航空機もないことから、1日だけの入国が許可された。翌日の便は、大阪行きの便があるが、満席であるらしい。 前述の入国のやりとりは、旅行会社のメンバーとロシア側の担当が密室でやりとりしていたが、他のメンバーは、3時間も無駄に時間を過ごしていた。 空港でのやりとりの問題点として、ロシア側の制度の曖昧さが挙げられる。どのような条件で、どのようなビザを発給するのか、その件に関してロシア新潟領事館・ウラジオストック入国管理で認識を統一する必要がある。この件からして、まだ国づくりができていないと感じる。二つ目に、何故他の団体の旅行リストがでることなく、我々の旅行リストだけがロシア当局に流れたかである。悪意があって流したとは考えられないが、結果としてマイナスに作用した。言い換えると、日本とウラジオストック側の交流の少なさが原因しているのではないか。お互い強い信頼関係があり、交流が頻繁になされていれば、このようなリストの流出と、リストによるマイナス作用がなかったと思われる。(2005年10月8日) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 2.1日だけの入国から滞在期間の延期へ 旅行会社のメンバーの努力で、なし得たと感じる。他に、領事館など働きもあったのかもしれないが、現地警察を通して滞在期間の延長を行ったことが、一番効果があったようである。入国の翌日、日本ロシアセンター、ウラジオストック港、木工センターと視察する予定であったが、ウラジオストック港の視察が、入国の問題でキャンセルになった。ここにも、ウラジオと日本の交流の薄さを感じる。我々と同時に入国した別の経済視察団も、木工センターを除き、日本ロシアセンター、ウラジオストック港の視察を行う予定であったが、全てキャンセルになったようである。日本ロシアセンターの訪問がなし得たのも、やはり旅行会社のメンバーの粘り強さによるものと感じる。 ロシア−日本の貿易が伸びる中で、極東の貿易玄関であるウラジオストック港を見て、貿易に関する現状を把握できることは非常に有意義であったと思う。それは、我々だけでなく、ロシア側にとってもそうであるはずである。しかしながら、ロシア側でそれを拒否したという事実は、貿易が個人(私企業)レベルで、国策として、沿海州として、ウラジオストックとしてどう考えるかという思想が欠如していることが挙げられる。 ちなみに、現地ガイドをしていただいたビトリー氏は、私が所持していたジェトロのビジネス調査データ「ロシア市場の変貌と対ロシアビジネス」「2003年のロシア極東の経済概況」「2003年のロシア極東の外国貿易」「2003年のロシア極東の外国投資」の4つの資料が喉から手が出るほど、欲しかったようである。これらの資料を貸してあげると、一生懸命に読み、メモをとっていた。 日本からロシアへの輸出入(単位:百万円)
ロシア極東の対日貿易(単位:百万ドル)
ちなみに、2003年の極東の対日貿易では、日本向け輸出が20.4%、日本向け輸入が24.3%である。それだけ、対日貿易を意識しなければならないが、沿海州、ウラジオストックの行政はその意識が希薄なようである。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
3.ウラジオストックと日本の交流について補足 今回、日本との交流の一部を見たが、通訳のビトリー氏からの行動からも、ロシア−日本間で今後どのようなビジネスが模索できるか、それらの情報提供をお互い行う交流が最も必要でないだろうか。 今回の視察先がどこになるか、前日まで決まらなかった。「ロシア側はいつもこうである。」というのが、間にたった関係者からの伝言であるが、この関係者もロシア側もお互い経済視察の目的を理解しているか疑問を感じた。「視察に行きました。こんなことを感じました。」というよりも、事前に視察先がおかれている環境を調べ、両国間にとって更に大きなビジネスにするためのやり方を考え、それらの意見を交換する。その結果、次につながる視察になるが、今回のように、前日まで決まらないということは、次につながらない視察にならざるを得ない。 前日に決まった視察先は、中古車修理工場であり、連絡を受けてから1日で調査を行った。ロシアの中古車の輸入実績から、日本の自動車修理業のような形でなく、大規模な工場であることを予測していた。しかしながら、日本から出発する当日に、視察先の変更の連絡が電話であった。但し、このことからも、ウラジオストックと日本の交流が希薄であることが伺える。 中古車について補則すると、ロシアの日本からの中古車の輸入額は年間740億円(日本センター資料)といわれ、1台30万円仮定すれば24万台であり、日本の中古車の輸出が年間100万台(全世界に対して)であることから考えても、相当な量の輸入である。街中でも日本車がとても多い。この、工場視察がキャンセルになったのも残念である。
(2005年11月14日) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 4.ウラジオストックへの旅行者と観光 中国人、日本人、韓国人の順に旅行者が多いようである。ちなみに、日本人と韓国人は同程度あり、中国人はその10倍程度あるらしい。(ガイドから) 日本人観光客は2004年に7699人である。(日本センターから) 街のつくりは、中国の大連のようであるが、大連ほど社会基盤の整備が進んでいなく、お世辞も美しいとはいえない。また、友人に進められる観光都市であるとはいえない。 ウラジオストックの街は、アップダウンが大きく、急な坂道を迂回するのではなく、直線的な道路を作っているため、坂の街というイメージが大きい。その道路に路面電車が走り、少し風情がある。但し、建物がコンクリート製で安っぽく、おまけに古い。路面は舗装状態がメンテナンスされずに、凸凹で汚い。路面電車は、古く汚く、ロシア人もあまり乗っていないようである。これらの景観を整備していくと良い観光都市になる可能性がある。そのためには、ウラジオストック・沿海州の制度改革と税収の向上、社会への還元が不可欠である。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 5.ロシアの食(1) 期待していたほどでもなかった。おいしいお店をピックアップしていただいたものと感じるが、日本のファミリーレストランなみの味である。食べやすいが、お子様向けの味である。 相対的に、スパイスの種類・使う量が少なく、味の奥行きが感じられない。極東という地理的条件が影響しているのかもしれない。スープ類(ボルシチ)は、色んな野菜と肉を煮込んだものであり、美味しかった。 チーズがよく出されるが、ナチュラルチーズにしては癖があるが、味の奥行きがない。ワインのつまみとしては、まずますである。 サラミの種類が多く、スーパーマーケットでショーケース2個を占めていた。他にハムでショーケース2個。極東のサラミよりも、モスクワ周辺のサラミが美味しいと、ガイドが言っており、モスクワのサラミと、鰹節のようなサラミを購入し、ホテルで試食した。モスクワのサラミは、ヨーロッパのものと異なり、癖がなく食べやすく日本人向けである。但し、一種類しか食べてないため、全てがそうであるとはいえない。鰹節のようなサラミは、非常に硬く、かじって食べたが、独特の風味で悪くなかった。但し、少し塩分が高い。
現地スーパーマーケットのサラミの売価は、380ルーブル/kgであり、ドル、円換算を行うと、(1ルーブル=0.037ドル=4.1円)14ドル/kg、1558円/kgである。 輸入したときの費用は、諸経費込みで2000円/kg程度になると考える。 (2006年12月08日) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
5.ロシアの食(2)
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ウラジオストック日本センター訪問 日本がロシア人に対して研修活動を行っているのが、日本センターである。研修としては、ホワイトカラー向けのビジネス講座、訪日研修、日本講座などであり、ビジネスのマッチングも行っている。ビジネスマッチングの成果として、青森産リンゴの販売があげられる。1個500円の価格ながら、売れている。 ウラジオストックの失業率の質問に対して、おそらく十数%程度であろうとの回答があった。それであるのに、ロシア人は働かなく、労働者は北朝鮮か中国人となっている。平均所得からは、ロシア人の所得は推測ができなく、通常の労働所得以外に何か所得が得られる方法があるようである。 ロシアにおける日系企業の進出は難しく、代金回収に悩むことになる。現金販売を行うか、だまされたつもりで、取引を行うかになる。リンゴの日本からの輸入は、日本国内にあるロシア商社を活用して実施されている。お酒の販売は、ライセンスが難しく、現在のところ実現性がない。和牛に関しては、BSEに関連する国際情勢を考慮しなければならないが、裕福なロシア人は日本に観光に行っており、和牛の美味しさは知っている。そのため、将来的な市場として考えられる。 (2007.3.7) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
ウラジオストックの経済状態 ロシア企業の半分が赤字企業と言われているが、大半の企業は税金対策で赤字にしている。そのため、日本で発表されているデータをそのまま鵜呑みにはできない。 ウラジオストック人口60万人のうち、裕福な層が5%程度いると推測されている。主として貿易でもうけている人たちである。この5%に向けた商売を考えなければならない。 ロシア極東の住民所得 (単位:ルーブル、2003年)
ロシア極東の失業率
ウラジオストックへの投資は、商社として三井と住友が駐在員事務所を構えている。また、ウラジオではないが、沿海州内に住友商事が製材会社を経営している。 沿海地方への外国投資 (単位:百万ドル、2003年)
日本の投資シェアは高いが、それほど大型投資は存在しない。 上記のデータから、中国の主要都市と比較し、見劣りがすると言わざるをない。例えば、ロシアに近い中国遼寧省への対内直接投資にしても、2006年上半期で20億ドルに達し、数十倍の開きが生じている。人口にしても、60万人の5%であれば3万人である。日本の地方都市の下位レベルの経済圏では、商圏として成り立たない。(2007.3.14) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 日本からの食品の輸入 日本センターの担当者から、リンゴの輸入の話を伺い、また和牛などの可能性についても伺った。 沿海地方の日本からの食品輸入 (単位:百万ドル)
日本からの総輸入額が2003年で964.5百万ドルであり、21%が食品の輸入である。 ウラジオストック市内をでは、日本食品として、カップ麺、ビールをみかける。 ビールは、アサヒ、サッポロが多く、アサヒを好んで飲んでいるようである。生産から3ヶ月経過したものが、ウラジオストックのホテルで出されている。
(2007年4月1日) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
木工センター視察 ![]() 木工センターは、1993年日露の条約に基づき、日本から設備を提供されて、設立された。現在も、年1回、日本から設備メンテナンスに訪問がある。 当センターは、中小企業の木材専門家の育成を目的として設立され、営利目的の団体ではない。1800人の専門家を育成してきた。教育機関以外に、技術研究機関でもあり、木製住宅の技術研究が現在なされている。所長の後のポスターが、その木製住宅の見取り図である。 見学時に、何人かのロシア人が作業をしていたが、思ったより高齢な方が研修をしているようである。 セッティングしていただいた方には、誠に申し訳ないが、視察先としては適切であるとはいいにくい。日本がロシアに貢献している姿は分かるが、それを理解したとしても、新しいビジネスの発展につながらない。 推測であるが、日本とウラジオストックとの交流が希薄なため、この程度の視察先しかできなかったのかもしれない。 (2007年5月6日) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
マーケット視察![]() 1.イグナートマーケット 5%の上流階級を対象にしたのが、当マーケットのようである。商品は、雑貨、衣料品である。 半袖カットソー 1500−4000ルーブル(6150−16400円) ジーンズ 5000ルーブル (20500円) 上記値段からすると、上流階級の可処分所得は高いといえる。衣料品はイタリア製、革製品についてはドイツ製であり、ブランド志向が伺えるが、日本で購入するイタリア製よりも、あまり見栄えがしない。中国製衣料にラベルを付け替えている可能性も考えられる。 2.ベトナム系フリーマーケット ![]() 食品から衣料品まで売られているフリーマーケットであり、ベトナム系の店主が販売している。 パンツ 300ルーブル (1230円) 婦人スーツ 1500ルーブル(6150円) イグナートマーケットに比べ安いが、それほど安いとはいえない。あくまでも表示価格であり、そこから交渉で下がっていく。 (2007年6月1日) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
食品の価格 (単位;ルーブル/kg、カッコ内は円/kg)
中国からウラジオストックへの物流は陸路であり、日本−中国に比べ、コスト的に有利である。 同じ新興国の物価と比較するため、少し古いが上海地区のフリーマーケットでの価格帯と比較してみた。商品、季節によって差があるものの、それほど大きくかけ離れた金額でない。 単位:円/kg
今回の視察では、沿海州で採れる大豆、ジャガイモの状態の把握は困難であった。これらの野菜類よりも、生産量から大豆・ジャガイモの方が期待できる。 (2007年8月21日) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
まとめ 1.ロシアの経済成長に関して ヨーロッパ主導でロシアのWTO加盟が進められる中で行った視察であるが、ロシアの経済成長を実感することはなかった。また、ウラジオストックの経済成長のためには、20%以上のシェアを占める貿易相手国である日本との益々の交流が必要である。現在のところ、その交流の範囲が狭く、沿海州ならびにウラジオストックの行政の認識が低い。 ロシアへの中古車輸出、ロシアからの海産物、天然資源の輸入の偏った貿易でなく、幅広い貿易が不可欠である。環日本海という言葉があるが、地の利が活かしきれていない状態である。 2.経済改革の進み具合に関して ビザの発給問題にみられるように、ロシアの制度的な問題点がみられる。やはり、貿易に関しては、相当な注意をはらう必要がある。また、ロシアの法制度の調査も必要であるが、その制度が各地方でどのように扱われているか、十分に把握する必要もある。 (2007.11.03) |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2005.11.06中小企業診断士中村公哉事務所
fwiy6062@mb.infoweb.ne.jp