仙台戦記 帰宅編
雲がかかってはいるものの空が広がっている。
夜から朝に移行していく色。 色の境目のない動的グラデーション。
だんだん明るくなっていく。それを見つめていた。 時計は午前4時30分を指していた。
もうおわかりですね、 電車寝過ごしました。
サポートバンドの仕事で仙台に行ってきた。日帰り仕事だったので仙台で
打ち上げをしてから皆で新幹線で帰ってきたのだ。
東京駅で解散して一人で半蔵門線に乗り込む。
二子玉川を越えて 「あぁ、もう近いな、、 やっと自宅に帰れる。」
次の瞬間、私の肩を叩く者が。
「お客さん、終着駅です。 降りてください。」
なぬ?
自分の状況が理解できないまま車外に出される。 ホームには 「中央林間」 と書いてある。
「終着駅じゃん。」
たった今言われたにも関わらずやっと理解。
どうやら寝過ごして終着駅まで来た上に終電もないらしい。
「メーテル、ここは何処なんだい?」 しかし答えるものはいません。
酔ってるとはいえ一人でそんな芝居をするほど落ちぶれていません。
とりあえず タダで機械の体をくれそうな雰囲気ではないので
外に出ることにした。
改札そばで 「俺は別に酔っ払って寝過ごしたわけじゃないんだぞ。」 と必死にクールを装うサラリーマン達が
乗り越し清算機に行列している。 オメーらバレバレなんだよ。 平静を装ってんじゃないよっ!
しかし堂々と「いや〜、うっかり寝ちゃってこんなとこまで来ちゃったよ〜、 まいったなぁ。」
などと
独り言を言えるほど肝が据わってないのでおとなしく並ぶ。
表に出ると案の定タクシー乗り場に行列。 しかし中央林間から横川家最寄り駅まで
各駅電車で約20分。 こんな距離をタクシーなんぞに乗ったら1万円ではきかないだろう。
それ以前にそれほど持ち合わせに余裕がない。 タクシーは乗らない方向で夜を乗り切ることにした。
とりあえず、と近くのベンチに座る。 タバコを吸ってると女子高生だか女子高生風だかの2人組みが話しかけてきた。
これがウワサの逆ナンパか(動揺を色文字で表現してみました)!? と多少ドキドキするも
金もなければ夜通しで遊ぶ体力もないのでヒマつぶし程度に話す。
「それ、楽器ですか?」
「うん、そう。」
「楽器やるんですか?」
「、、、、、、。」
楽器持ち歩いてる人間に向かって的を獲ない質問である。
それじゃー何かい、俺は電車も走ってない時間に弾けもしないのにクソ重い楽器を持って
ねり歩くのが趣味のおっさんとでもいうのか?
そして次はこれだ。
「何やってるんですか?」
ケースの大きさでギターかベースかわからんのかい。
しかしまぁこれは楽器やってなければわかりづらいだろうからよしとしよう。
あたくし、ベースを指差して
「ドラム。」
「へぇー。」
ツッコまんかい!!! このクソアマっ!!
どうも暇つぶしにカラオケでもおごらせたいだけな感じが読めたので
「アイス買うから行くわぁ。」という我ながら意味不明な理由で早々に別れ、コンビニへ。
暑いのと酒酔いで頭がはっきりしないのもあり、ミントアイスを美味しく食べる。
落ち着いたところで朝までどうしようか考える。
めったにこういう事はないんだが冷静に考えれば始発が出るまでおとなしく待機してるのが得策だろう。
しかしこういう時の精神状態では
つい歩きたくなってしまうのである。
そういう時はそんな自分のストイックさにホレボレしているのである。
逆境に立ち向かう男、 俺は今最高にかっこいい。
ささかまぼこがリュックに入ってるのは内緒にしておこう。
歩き出す。 しかし乗換え以外では降りた事がない土地なのでどちらが我が家か見当もつかない。
駅そばに交番があったので立ち寄る。
「すいませーん。」
誰もいない。
「すいませーん。」
やはり誰も出てこない。
見回りでも行ってるのか? まぁ我々の血税のおかげで交番内は強力に涼しいので
誰もいないならと涼みながら待つ事に。 うかつに動いて反対方向だったら目も当てられないからだ。
うっかりウトウトする。 ちょっと寝てしまったようだ。
すると、
「うわっ、びっくりしたぁ。」
その声でハッと目を覚ます。 警官が奥の部屋から出てきたのだ。
事情を話して一言あやまると
「このベルを鳴らしてくれれば2階にいても出てくるよ。」
ベルの存在に気がつきませんでした。
「あぁ、ウチの近所のエロビデオレンタル屋のカウンターと同じシステムですね。」
とは言えなかった。
相手はピストルを持っているのである。
そして歩く。 歩く。
しかしベースとエフェクター、ケーブルなどを持っているため重い。 平地を歩くだけでツラい。
それ以前に一瞬で1時間記憶が飛ぶほど酔っているのである。
新幹線でも呑んだのが敗因か。
結局となりの駅に歩きついたトコロでダウン。 なんだかんだで3時近い。あと2時間ちょっとで始発が出るのだ。
このまま歩いてもしょうがないので今日はここでビバークすることにした。
あと2時間、何をしよう。 楽器を盗まれたらシャレにならないので寝てしまうのは危険と判断。
とりあえずコンビニが見えたので立ち読みでもするか。
雑誌コーナー、入荷ラッシュで足の踏み場もありません。
せめて一矢報いようとトイレを借りる。
再び駅改札近くの床がツ ルツル目の所に据わる。 タバコでも吸うか。
ありません。
この時間は自販機もやってないのでしょうがない、メンドくさいけどさっきのコンビニに買いに行こう。
タバコ売ってません。
再び駅前。 勿論一挙一動ベースは持ち歩いています。
ジュースを買って落ち着く。 タバコが無いんじゃケータイでもいじるか。
自分のページのBBSにこの状況をカキコむ。
なかなか長く熱い文を書き上げる。 文の最後に 「うがー」
とこのトホホ感を表現する語句を入れる。
さて送信するか。 ぽちっ。
「充電してください。 ピーー(電源落ちる音)」
うがーーーーーーーーーーっ!!
タバコも携帯も封じられた僕はあと1時間半以上も何をしてればいいんですか神様っ!
結局映画「ダイ・ハード」を克明に思い出すという脳内ロードショーで
時間をつぶし始発を向かえ、無事地元駅に到着。
この時5時35分。
バスターミナルでバス時刻表を見る。
「始発 6:24」
かくして我が家まで2Kmの道のりを脳内ガンダム第一話を上映しながら
楽器その他を持って歩いて帰ってきたのでした。
最後に一言いいたい、
素敵な夜をありがとう。
神か悪魔か知らんがな。
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