カーシュが部屋に戻ると、イシトはまだベッドの上だった。昨夜の名残のけだるさを漂わせ、朝の日射しの中、白い裸身を隠そうともせず身を起こすと、入ってきたカーシュをじっと見据えた。
「…どこへ行ってたんだ」
詰問するようなイシトの眼差しに、カーシュはちょっとたじろいだ。目を覚ました時、カーシュの姿がなかったのを、不服に思っているらしい。
「小僧のとこだよ。おまえ、起きないし、今日は休もうって言ってきたんだ。…小僧には、おまえ、ちょっと熱があるって言ってあるからな…」
カーシュの返事に、イシトはようやく小さな笑みを浮かべた。
「ああ…で、セルジュは?」
「そういうことなら、ガルドーブまで行って、エレメントを買ってくるってさ。帰りは明日になるから、ゆっくり休めって」
イシトはベッドの上で、軽く伸びをした。
「そうか、じゃあ、今日はこうしてのんびりしてて良いってわけだ」
「まあな」
そう言ってベッドの端に腰掛けたカーシュの首に、イシトは腕を回した。
「…ん!?」
いきなり唇を押しつけられて、カーシュは慌てた。イシトはかまわず、カーシュを引き倒す。そのまま、イシトはカーシュの胸元に手を這わせた。
「…お、おいっ、朝っぱらから…」
「夕べ、君が言ったんじゃないか。朝から晩までこうしていようって」
言いながら、イシトはいたずらな笑いを浮かべ、カーシュの服を剥いだ。
「言ったけどよ…あ、おい、よせって…!」
カーシュの胸元に口づけたイシトは、顔を上げてくすくすと笑った。
「…その気に…させてやろうか?」
イシトの唇は、所々に点々と口づけを落としながら、カーシュの下腹部へと滑っていく。
「イシト…!」
慌てて身を起こそうとするカーシュを制するように、イシトはカーシュを口に含んだ。
「あ…っ!」
カーシュが思わず声を上げる。
「イシト…!」
その声には少なからぬ驚きが込められている。カーシュに抱き寄せられると、けっして拒むわけではないのだが、仕方がなさそうにカーシュの愛撫に応えるのがイシトの常だった。そのイシトが、今はうっとりと目を閉じ、唇で、舌先で、カーシュを弄んでいた。カーシュは否応もなく高ぶっていく自身を抑えられない。
「あ…あ、イシト…っ」
カーシュは、まだ自身を口内においたままのイシトの頭を愛撫した。イシトもまた、常ならぬ自分自身に酔い、自ずと高まっていく。カーシュが十分に張りつめたのを知ると、イシトは顔を離し、代わりにそこに腰を落としていった。
「カー…シュ!」
イシトが叫ぶように声を上げる。カーシュはその身を強く抱き寄せ、自分の上に倒れるように重なったイシトの唇を貪った。
「…ん…っ……ん」
声の出せないまま、イシトはカーシュの肩にしがみつき、腰を揺らす。カーシュはいっそう強く、イシトを抱いた。
この上なく身を寄せ合い、隙間無く身体を接しながら、二人は互いを愛おしんだ。
一日中こうしていよう
抱き合ったり、キスしたり
朝から晩まで
昨日のことは知らない
明日のことも知らない
何もかも忘れて
君と私と
互いのことだけ見つめて
その時々の感情だけで
笑ったり拗ねたり
想う気持ちの強さだけ抱きしめて
思いの深さだけキスをする
君の寝顔飽きるまで見つめて
心のままに口づける
明日になれば
いつもの君と私
今日だけは安息日
世界も動きを止める
神に許された休息の日
カーシュが目を覚ますと、イシトはすでに身支度を整えていた。窓に近いイスに腰掛け、銃の手入れをしている。カーテンの隙間から漏れ入る朝日に、その金髪が眩しい。
カーシュの視線を感じて目を上げたイシトは、かすかに口の端を上げ、銃をホルダーに納めた。キスをしようと伸ばしたカーシュの手に、イシトはタオルを押しつける。
「遅いぞ。サッサと顔を洗って来い。私は先に食堂へ行ってるからな」
そう言って振り向きもせずに部屋を出ていくイシトの背中を、カーシュは呆然と見送った。
「…タフなヤツだぜ…」
ドアが閉じられると、カーシュは頭を掻きながら苦笑した。
朝になれば
いつも通りの二人
世界は色を帯び
いつも通り動き始める
Ende.
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