今夜の秘密

 


 背後に敵が迫る。しまったと思った瞬間、銃声が響く。
「油断するな!」
イシトが俺に向かって叫ぶ。姿勢を低くして敵をかわし、イシトはオーラレインを放つ。敵は瞬時に一掃される。
 呼吸も乱さず、顔色も変えず、見事な職業軍人の戦いぶりだ。


俺だけが知っている。
秘められたおまえの姿。
その固く結ばれたくちびるの柔らかな感触。
その冷静な蒼い眼が、熱にうかされたように潤む。
羞恥に染まる頬。
切れ切れに俺の名を呼ぶ低く、くぐもった声―――。


 「カーシュ!さっきから何をぼんやりしてるんだ!たるんでるぞ!」
つい、昨夜のことを思い出していた俺に、おまえの罵声が飛ぶ。端でセルジュが首をすくめ、チラリと俺へ視線を走らす。俺は苦笑し、頭を掻いた。
「…おまえ、よく平気だな…」
「何がだ」
イシトは冷たく言い放つ。俺はニヤリとしてイシトを見つめる。
「…俺なんか寝不足だぜ…おまけにだるいし…」
イシトがカッと頬を染め、睨みつける。だが、忘れたとは言わせない。昨夜のことを。俺だけが知っている、昨夜の秘密。
 イシトはプイと向きを変える。
「自業自得だ!君も蛇骨四天王と言われた男なら、自分の管理くらいしっかりしろ!」
さっさと歩き出すイシトを、セルジュが慌てて追いかける。俺も肩をすくめて歩き出す。


堅く冷たい後ろ姿。
だが、俺だけが知っているのだ。昨夜の秘密。
そして、今夜の秘密を。
多分きっと―――。




FINE.

 

言い訳
これだけですか?ええ、これだけです(笑)
このシチュエーションで、本館向けコメディ版「
昨夜の秘密」があります。そっちはセルジュ視点で書いてます。

お判りですか〜(笑)?「今夜の秘密」の意味。
そう、昨夜も、そしてきっと今夜も…ってニュアンスですね。
いや、イシトにぶっ飛ばされるかも知れませんが。
そうなっても知りませんよ、カーシュ。

2000.12.1