ご注意! これは、某サイト様のクロノクロス企画「非日常茶飯事」の設定を使わせていただいてます。そのサイト様がクロクロ活動を休止されてしまったので、こちらに入れることに致しました。 カーシュ=喫茶店「アカシア」のマスター。 |
それから |
目覚ましのベルが鳴る。でも、ボクはまだまどろみの中にいる。たとえ目が覚めても、すぐには起きない。ちょっとベルを鳴らしておいて、ゆっくりと止める。そうしてベッドに潜り込んだまま、しばらくじっとして待つ。パタパタと廊下を近付いてくるお母さんの足音。 「セルジュ!セルジュ?」 部屋のドアがガチャリと開く。 「もう起きないと…ほら!いいお天気よ!」 お母さんがベッドに近付く。一歩、二歩、あと少し。ほら来た!ムギュッ。 「セ・ル・ジュ!起きて!」 お母さんが、布団の上からボクを抱き締める。 「っもう!やめてよ、いつまでも子どもみたいに…。」 ボクはわざといやそうな声で布団から顔を出す。お母さんは、だって、と笑う。いつもの朝の儀式。 「それに今日はダリオさんとお約束なんでしょ?遅れたらいけないじゃないの。」 「ウーン…。」 ボクは大きく伸びをした。 今日はグレンの野球部の試合。今期最終戦ということで、セルジュはダリオと共に応援に行く約束をしていた。 「さ!早く顔を洗って、御飯済ませて!ダリオさんが迎えに来てくださるんでしょ?ご迷惑掛けないでね。」 「はーい…。」 それでも、セルジュはわざとゆっくりと支度をする。母親のマージが、もうっ、と軽く睨んで微笑む。 学校でのセルジュは相変わらず優等生ぶりっこだったし、喫茶店「アカシア」には、今も毎日のように立ち寄ってはマスターのカーシュやグレンをからかう。だが、家でのセルジュは甘えん坊だ。それは母親の気持ちを汲んで、わざとそうしているという事もあった。 家の外で自動車の止まる音がした。セルジュは窓から外を覗いた。ダリオの車だ。約束の時間まで、まだ30分も有るはずだ。セルジュは、慌てて外へ駆け出した。 「やあ、おはよう。気が付いちゃったかぁ。」 ダリオが車の窓を開けて手を振る。 「ボク、約束の時間、間違えてた?」 セルジュが少々焦って訊ねる。だが、ダリオはニッコリと笑った。 「いや、まだ30分は有るよ。グレンを球場まで送ったものだから、早く家を出てしまったんだ。ここで本でも読んで待ってるから、気にしないでゆっくり支度しておいで。」 「うん。」 セルジュは家に駆け戻った。ダリオの気遣いはいつもさりげなくて、セルジュの気持ちを楽にしてくれる。とはいえ、セルジュはやはり気が急いて、急いで支度を済ませた。 「いっへひまーふ!」 パンをくわえたまま家を飛び出すセルジュのあとに、マージも見送りに出て、ダリオに挨拶をする。 「じゃ、よろしくお願いします。」 「はい。多分、夕食は済ませてくると思いますので、ご心配なく。」 ダリオはわざわざ車外に出て挨拶を返す。セルジュは、律儀だな、と思う。でも、そういうダリオはなかなか良いな、とも思う。思えば、ダリオがセルジュに対し「本気だ」と言ってから、初めて二人で一緒に出掛けるのだ。セルジュはそれを思うと、ちょっとドキドキした。 「夕食って、帰りにマスターのとこにでも寄るの?」 車が走り出してから、助手席のセルジュはシートベルトをはめながら訊ねた。 「いや、試合のあとのグレンの予定にもよるけど、良いチーズが手に入ったからうちに寄ってかないか?」 セルジュはドキリとした。前にダリオのところに寄ったときのことを思い出したのだ。セルジュはちょっと顔を赤らめた。ダリオはセルジュの沈黙を不満だと思ったのだろう。ちょっと首を傾げてセルジュの顔を覗いた。 「ん?いやか?チーズフォンデュ。」 セルジュは慌てて首を振った。イヤなわけではない。チーズフォンデュも、ダリオも。 「俺のチーズフォンデュはうまいんだぞ。」 ダリオは朗らかに笑った。確かにダリオは料理上手だ。グレンも一緒なら、3人で賑やかに料理をしたり食事をするのも楽しそうだ。セルジュも笑い返した。 「じゃ、楽しみにしてる!」 試合は延長の末、グレンたちエルニド大学の勝利で終わった。3年生が主力のチームにあって、2年生のグレンはまだレギュラーにはなれていなかったが、代打でヒットを打ち、満足できる試合となった。 「おーい!グレン!!」 試合後の興奮の残るロッカールーム近くで、ダリオはようやくグレンをつかまえた。 「一緒に帰れるのか?」 「あ、兄貴。ダメダメ。打ち上げだよ。当然だろ?最終戦だし、ヒットも打ったし、今夜は朝まで飲むぞー!」 グレンは、勝利でハイになっている。ダリオは肩をすくめた。 「飲み過ぎんなよ。二日酔いは辛いぞ。」 「OK、OK。」 グレンはニコニコと手を振って行ってしまった。あとにはダリオとセルジュが残された。二人は顔を見合わせ、それから食材を買って帰宅することとなった。 「んー!美味しかった!やっぱりダリオさんは料理上手だよね。」 ダリオ特製チーズフォンデュを食べて、セルジュはご機嫌だった。ダリオもニコニコと食べ終えた皿を重ねる。 「おまえも、なかなか手際の良い助手だったよ。」 「んっふっふ、そうでしょ?あ、ボク、結構後片付けって好きなんだよね。ごちそうになった御礼にあとはやるから、ダリオさん、座ってて良いよ。」 セルジュの申し出に、ダリオは微笑んだ。 「そうか?じゃ、コーヒーでも煎れておくから。」 セルジュも、忙しい母親を助けるべく小さい頃から家事を手伝っていただけあって、片付け方がうまい。手早く洗い物を済ませると、ダリオの入れたコーヒーに口を付けた。 「ふーん、ダリオさんて、コーヒー煎れるのも上手なんだ。美味しい。」 ダリオが満足そうに眼を細める。 「そうか?」 セルジュはクスッと笑った。 「…マスターのより、美味しかったりして…。」 ダリオは苦笑した。 「おまえ、それ、カーシュに言うなよ。あいつ、落ち込むから。」 「判ってるって。」 セルジュはケラケラと笑った。だが、ふと俯くと、チラリとダリオを見上げた。 「…ダリオさん、マスターのことはもう良いの?」 「ん?ああ、もう、それはな。」 ダリオは眼を伏せ、小さく笑った。セルジュはちょっと頬を赤くして、そっとダリオのそばに寄った。やはりこういう場合、そうすべきだろうと思ったのだ。だが、ダリオはそれをかわすように立ち上がり微笑んだ。 「無理することないぞ。」 セルジュが拍子抜けしたようにダリオを見上げる。 「…なんで?ボクのこと、惚れたって言ったでしょ?」 「ああ、そうだ。」 ダリオはあっさりと言う。 「じゃ、どうして?」 ダリオはじっとセルジュを見つめ、優しく微笑んだ。 「…もっと自分を大事にしろよ。」 セルジュが不服そうに口を尖らす。あの木枯らしの夜のことを忘れたのか、と。 「今更何を、って顔をしてるな…あれは…あの時のは良いんだ。お互いお遊びだったんだから。でもな、今は違う。少なくとも、俺は本気だ。だから、大事にしたい。おまえの気持ちを。」 セルジュは俯いたまま言った。 「ボク…ダリオさん、好きだよ。」 「…俺が一番か?」 セルジュはハッとしたように顔を上げた。 「…まだ…イシトのこと好きだろ?わかってる。わかってるから無理するな。イシトが帰ってきて、それからじゃないと勝負にならないからな。だから俺は焦らない。な?それまで自分を、自分の気持ちを大事にしろ。俺に気を遣うことないんだ…俺は待ってるから。」 「それで…イシトさんが帰ってきて…ボクがやっぱりイシトさんのこと好きだって言ったら、ダリオさん、どうするの?」 ダリオはクスッと笑った。 「そうはならないさ。おまえ、やっぱりダリオさんが良いって、きっとそう言う。」 セルジュは眼を見張った。 「…ダリオさん、自信家なんだ…。」 ダリオは笑いながら首を振った。 「はっはっは。希望的観測ってヤツ!」 セルジュは、自分が何か暖かいもので満たされていくのを感じた。セルジュは思わずダリオに抱きついた。 「おいおい!」 ダリオが戸惑った声を上げ、だが、それでもそっとセルジュの背を撫でてくれる。ここでなら、自分は自分でいられる。虚勢を張ることなく、無理に甘えてみせることもなく、自分自身でいられる。やっと見つけた。自分の本当の居場所。 セルジュはダリオの腕の中でダリオを見上げた。 「キスして良い?」 ダリオが困った顔をする。 「ダメだ。」 セルジュがちょっと口を尖らす。 「なんで?」 「…そうなったら理性を保つ自信がない…。」 セルジュはクスッと笑った。 「大丈夫だよ、ダリオさんなら。」 ダリオは苦笑してセルジュの頬を軽くつまんだ。 「なんで、そう思うんだ?」 セルジュはクスクスと笑って元気よく言った。 「…希望的観測!」
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| 言い訳 ダリオさん、いい男やー!! 近頃、ダリオさん贔屓なんですよね、私。 礼儀正しく理性の勝った知的な感じが、ちょっとイシトとも似てますよね。 で、ダリオさんと言えば「バー蛇骨エンディング」の「リデルには内緒だぞ。はっはっは。」という、何とも言えない笑いです。あの突き抜けたようなイメージと、包容力のある大人の男の魅力で、小悪魔セーちゃんも、ついに陥落(笑)。めでたしめでたし。 2000.11.22 |
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