ご注意!

 これは、某サイト様のクロノクロス企画「非日常茶飯事」に投稿予定で書きかけていたものですが、そのサイト様がクロクロ活動を休止されてしまったので、こちらに入れることに致しました。
 クロノクロスのキャラを現代に置いてみたら、という設定で小説、イラストを!という企画でした。基本設定は下記の通り。なかなか楽しげな設定なんですが(笑)。

カーシュ=喫茶店「アカシア」のマスター。
イシト=カーシュの親友で、作家。当然ながら「アカシア」の常連。
セルジュ=近所の高校生。一見優等生なのだが・・・?
グレン=カーシュの幼なじみ。大学生。時には「アカシア」を手伝ったり?
ダリオ=カーシュの幼なじみ。言わずと知れたグレンの兄。優秀な営業マン。

 

 君が欲しい! 

五代儀 奈津(ペンネームさ(笑))

 

 「じゃ、オレそろそろ帰るよ。」
喫茶店「アカシア」のカウンターの一番奥でコーヒーをすすっていたグレンが、小さな明かり取りから、薄暗くなり始めた空を見上げて重い腰を上げた。マスターのカーシュが皿を洗う手を止めて顔を上げる。
「あれ?今日はダリオ、出張なんだろ?夕飯食ってけよ。」
「うん、そうしたいんだけどさ、兄貴、マメだろ?シチュー作っといたから、カーシュ兄ぃに迷惑かけんなって、クギ刺されちゃったんだ。」
イスの背に掛けておいたGジャンを羽織りながら、グレンが苦笑する。カーシュがフンと鼻を鳴らす。
「相変わらず水くせぇヤツだなぁ。幼なじみじゃねぇか。こっちは迷惑だなんて思ってねぇのによぉ。」
グレンが残念そうに頷く。
「うん…でも、明日提出のレポートもあるし、今日は残念だけど帰るよ。」
まだ少年の面影を残すグレンだが、一応近くの大学に通っている学生なのだ。その時、奥の、いつものテーブル席で本を読んでいたイシトが、顔も上げずにボソリと言った。
「カーシュの料理よりも、案外そっちのが美味しいんじゃないのか?」
カーシュの友人で、常連客でもあるイシトならではの鋭いツッコミだった。図星を指されたカーシュはジロリとイシトを睨んだ。幼い頃から優等生で、今も優秀な営業マンとして飛び歩いているダリオには、昔から何をやってもかなわない。両親を早くに亡くしたダリオとグレンの兄弟。そのため、ダリオは料理さえも玄人はだしの腕前なのだ。グレンはその場に不穏な気配を感じて、慌てて店の戸口へ向かった。
「あ、とにかく、オレ、帰るね。」
「あ、じゃ、ボクも出よっと!」
グレンの隣のカウンター席に居たセルジュが勢いよく立ち上がって言った。セルジュはカーシュやグレンの高校の後輩に当たる。彼もまた、この店の雰囲気が気に入って入り浸っている常連の一人でもあった。
「日が暮れるのが早くなったねぇ…。」
セルジュは独り言のように呟いて、グレンに並んで戸口へ向かった。
「ああ、じゃあ、気ぃ付けて帰れよ!」
カーシュが、ちょっとふてくされながらも、また皿洗い作業に戻って大きな声を掛けた。セルジュが店の中へ向かって手を振り、グレンが小さく頷いて見せた。二人が外へ出ると、ドアはゆっくりと閉じる。その閉じていくドアの隙間から、グレンがカウンターの中のカーシュを名残惜しげに振り返ったのを、セルジュは目に留めクスッと笑った。セルジュは先になって歩き出したグレンの肩に手を掛けた。
「ねぇねぇ、グレン!『マジカル・ドリーマーズ』の新譜、ゲットしたって言ってたでしょ?貸して貸して!」
グレンは鬱陶しそうにセルジュの手を払った。どうやら不機嫌らしい。
「ダメダメ!オレだって買ったばかりなんだから、これからゆっくり聴きながらレポート書くの!」
だが、セルジュは引き下がらなかった。
「チェーッ!じゃあさ、ちょっとグレンとこ、寄ってっていい?ボクにも聴かせてよ!」
「…いいけど…遅くなったら、お母さんが心配するんじゃないの?」
さりげなく、グレンが年上らしい気遣いを見せる。いつもダリオやカーシュに子ども扱いされている彼は、セルジュに対してはあくまで年上であろうとしていた。セルジュはそんなグレンの気持ちを読んでいたのだろう、彼は、更に無邪気にねだった。
「幸か不幸か、今日は夜勤なの!だから帰ってもどうせ一人だしさ、ちょっと寂しいんだよね。レポートの邪魔はしないから!ね?お願い!」
寂しい、と言われて、グレンはついに溜息混じりに頷いた。元々セルジュが来るのがいやだったわけではない。カーシュたちと夕食を一緒に食べ、「アカシア」でレポートを書いてしまおうと思っていた自分の思惑が外れ、少々拗ねていただけのことである。
「判ったよ…兄貴のことだ、たっぷり3人前くらい、シチュー作っていったみたいだから、ついでにおまえも食って行けよ。」
「わーい!!ありがと!」
セルジュは、無邪気に後ろからグレンの背中に飛びついた。
「うわっ!…おまえ、犬っころみたいだな…。」
「だって、うれしいんだもん!」
セルジュはあくまで無邪気な笑顔を見せた。

☆ ☆

 「はぁ〜、お腹いっぱい!ダリオのシチュー、美味しいね!いいなぁ、グレン。いっつもこんな美味しい料理食べてるんだぁ。」
御礼の代わりに、食事の後かたづけをしながらセルジュが笑った。グレンはコーヒーを煎れる手を止めて笑い返した。
「まあな。兄貴も年季が入ってるから、そこらのお母さんには負けないぜ。」
「グレンは?グレンは料理しないの?」
グレンは頭を掻いた。
「オレぇ?オレは…うん、オレはコーヒー専門!ほら、コーヒー入ったぜ。」
グレンはコーヒーを注いだカップをテーブルの上に置き、取っ手をつまんでクルリとカップを回した。片付け終えたセルジュがそれを見ながら、ゆっくりと近付く。グレンは件(くだん)の「マジカル・ドリーマーズ」のCDをセットした。曲が流れ出す。
「ありがと…。」
セルジュはコーヒーを一口飲んでまたカップを置き、呟くように言った。
「グレン、本当にマスターのこと、好きなんだね…。」
「な、何…!」
意表をつかれ、グレンはうろたえた。すぐ感情が現れる彼の顔は真っ赤だ。
「その癖…カップを回す癖、マスターの癖とおんなじだ…。ずっと見てると、癖ってうつっちゃうんだよね。」
グレンは返す言葉を失い、真っ赤になって俯いた。
「知ってたよ…さっきも、ホントは帰りたくなかったんでしょ?…ちょっとでも、好きな人の近くに居たいよね…。」
グレンは俯いたまま、照れくさそうに自分の前髪を引っ張った。
「…でも、兄ぃにとって、オレはいつだって弟でしかないんだ…。」
「うん…いつも子ども扱いされて…グレン、可哀想…。」
セルジュの青い眼がじっとグレンを見つめる。その眼がゆっくりとグレンに近付く。
「グレン…。」
セルジュはいきなりグレンを押し倒した。
「うわっ。セルジュっ!何を…。」
挙を突かれたグレンは、なんの抵抗もなく倒された。セルジュはその上に身体を重ねた。
「…慰めてあげるよ…ね?」
セルジュが、グレンの頬を両手で挟んで微笑む。グレンは驚きのあまり、身動きできずにいた。
「セ…セルジュ…。」
セルジュがくちびるを押しつける。
「んぐっ…。」
グレンは必死で引き離す。
「こらっ、おいっ、オレはレポートが…!」
「大丈夫。優しくするから…。」
セルジュはそんなグレンにはお構いなしに、首筋にくちびるを這わせながら、その身体をまさぐった。
「うぁっ…!」



"♪君が欲しい♪君が欲しい…"
「マジカル・ドリーマーズ」のラブバラード「君が欲しい」が流れている・・・。




 「じゃね、グレン!スッキリさっぱりしたところで、レポート頑張ってね!」
セルジュが元気に帰ったあとには、脱力状態のグレンが残された…。
「…レポート…。」
グレンは力無く起き上がった。
「レポート…やんなくちゃ…。」

☆☆


 その頃、喫茶店「アカシア」では、カーシュが閉店の片づけをしていた。店内には有線放送で「マジカル・ドリーマーズ」の「君が欲しい」が流れている。カーシュがふと手を止めて呟いた。
「これ、いい曲だよなぁ…。」
ずっと居座って、なにやらノートパソコンに入力していたイシトが顔を上げた。
「ああ、『君が欲しい』。…ボーカルのスラッシュの新境地だね。彼のシャウトもパンチが効いてていいけど、こういうバラードもなかなか…。」
カーシュがちょっと驚いたようにイシトを見た。
「なんだ、聴いてねぇと思ったら…。」
イシトが自分の手元を指差して笑った。
「丁度、この曲の評論を書いて送るところだったんだ。新しい連載コラムの仕事さ。」
カーシュがフンと鼻を鳴らした。
「いいけどな、出版社にメール送信するときは自分ちの電話回線使えよ。オレんとこの回線に繋ぐなよな!」
「判ったよ。細かいな…。」
イシトが肩をすくめて苦笑する。カーシュは箒を持ち直して、笑いながら床を掃き始めた。
「あったり前だ!うちは弱小個人企業なんだからな。」
「はいはい。」
イシトが手早く、自分の荷物を片付ける。もう閉店だ。そろそろ自宅へ帰らねばならない。そんなイシトに目を留めて、カーシュがポツリと呟いた。
「…『君が欲しい』か…。」
「え?何か言ったか?」
イシトが眼を上げる。カーシュはちょっと頬を赤くして笑い飛ばした。
「なんでもねぇよ!忘れ物しないで帰れよ!」


FINE.

 

 

言い訳
ああ、本当にこのセルジュ、なんてヤツなんでしょう!(スッキリさっぱりってなんだよぉ!)
でも、何となく、この突き抜けた感じが気に入ってます。あっけらかんとしてて、なんか許せちゃう♪
次のターゲットはいったい誰!?

…さりげなくダリオとタイ張るも知れない…。彼に太刀打ちできるのは、この「無邪気」なセルジュだけではないかと(笑)。
この「非日常茶飯事」の設定の中では、私の本来のセルジュのイメージが壊れても、平気なんです。全くの別物と割り切れますから。
そういうわけで、最後の部分は、今後の伏線。(今後!?)
やっぱり基本はカーイシですよね(^^)v
…なんか、このシリーズ、続きそうでコワイんですけど…(^^ゞ

2000.10.21