ご注意!

 これは、某サイト様のクロノクロス企画「非日常茶飯事」の設定を使わせていただいてます。そのサイト様がクロクロ活動を休止されてしまったので、こちらに入れることに致しました。
 クロノクロスのキャラを現代に置いてみたら、という設定で小説、イラストを募集!という企画でした。基本設定は下記の通り。なかなか楽しげな設定なんですが(笑)。

カーシュ=喫茶店「アカシア」のマスター。
イシト=カーシュの親友で、作家。当然ながら「アカシア」の常連。
セルジュ=近所の高校生。一見優等生なのだが・・・?
グレン=カーシュの幼なじみ。大学生。時には「アカシア」を手伝ったり?
ダリオ=カーシュの幼なじみ。言わずと知れたグレンの兄。優秀な営業マン。

 

 木枯らし 

 


 「こんにちはー!」
喫茶店「アカシア」に元気な声が響いた。ドアの鈴を大きく鳴らして、制服姿のセルジュが、風に巻かれて舞い込んだ枯れ葉と共に飛び込んできたのだ。
「あれ?お客さん、誰も居ないの?」
羽織っていたジャケットを脱ぎながら、セルジュがカウンターの中に立つマスターのカーシュに声を掛けた。
「まだ11時じゃねぇか。この時間はいつもこんなもんなの!それより小僧、おまえどうしたんだ?こんな時間に。サボりは店に入れねぇぞ!」
カーシュはチラリと眼を上げて言った。セルジュは悪びれずに、ニコニコしてカーシュに近付いた。
「違うよぉ。試験明けなんだ。はぁー、今日でテストともおさらば!」
「あ、そうか。そりゃ、ご苦労だったな。それで、ここんとこ、顔を出さなかったんだな?」
ここ1週間ほど、セルジュは店に現れなかった。いつもの客が顔を出さないのは、やはり気になるものだ。
「あ、心配してくれてたの?ありがと!」
セルジュは一層うれしそうに笑って、カウンターの中を覗き込んだ。カーシュは野菜を刻んでいたらしい。
「ねぇ、あとで手伝うから、コーヒー飲まして。外、すっごい風。寒かったんだよ。」
カーシュも手を止めて耳を澄ました。
「ああ、確かに風の音が凄いな。木枯らしか…。よし、ちょっと待ってろよ。」
カーシュはコーヒーを煎れ始めた。
「ブレンドで良いだろ?」
「うん!あ、いい匂い。」
新しいコーヒー豆の香りが店内に広がる。やがてサイフォンがコポコポと心地よい音を響かせ、コーヒーが煎れられた。カーシュはセルジュの前にカップを置き、取っ手を持ってクルリと回した。それがカーシュの癖だった。セルジュはその癖を真似るグレンを思い出し、クスッと笑ってコーヒーを口に運んだ。
「うー、あったまる〜。」
美味しそうにコーヒーをすするセルジュに、カーシュが声を掛けた。
「小僧、ちょっと、店の表の札、準備中にしてきてくれよ。」
「いいけど?」
セルジュは腰を浮かせつつ、怪訝そうにカーシュを見た。
「ランチの下準備、今日はちょっと遅れてるんだ。そろそろランチタイムだからな。まだ客に来られちゃ困るんだ。」
カーシュは忙しく野菜を切りながら言った。
「オーケー!」
セルジュは店のドアをちょっと開けて札をひっくり返した。そして、ドアを閉め、カーシュに気付かれないようにドアに鍵を掛けた。
「マスター!野菜ならボクが切るよ!」
カーシュが疑わしそうに眼を上げる。
「できんのか?」
「子どもの頃からうちのこと手伝ってるんだもの。うまいもんだよ。」
セルジュは学生服を脱いでカウンターに潜り込んだ。サッサと手を洗い、野菜を切り始める。確かに慣れた手つきで、あるいは大雑把なカーシュよりうまいかも知れない。
「へぇ、なかなかいい手つきじゃねぇか。」
カーシュが感心したように覗き込む。セルジュが得意そうに微笑む。
「でしょっ。ランチごちそうしてくれたら、皿洗いも手伝うよ。」
カーシュがいつもするように豪快に笑った。
「参ったな。じゃ、今日はそうして貰うか。」
二人はカウンターの中に並んで作業を始めた。セルジュが切った野菜をカーシュが鍋に入れる。どうやら、それはランチセットのスープになるらしい。野菜を切り終えたセルジュが手を洗いながらカーシュを見つめた。
「ねぇ、こないだグレンのところで写真見たんだけど、マスター、昔はポニーテールにしてたんだね。すっごく似合ってたのに、なんで今はやらないの?」
鍋をかき混ぜながらカーシュが照れくさそうに笑う。
「えー!ガキっぽいだろうよー。」
セルジュがカーシュに近付く。
「でもさ、こういう食べ物を扱うときは、髪は縛った方がいいじゃない?衛生的でしょ?ね、ちょっと結んでみてよ。」
そう言いながら、セルジュはもう手近にあった紐を手にしていた。
「あ、おい、小僧!」
セルジュはカーシュの髪を手で束ねて、それを上に持ち上げた。
「わぁ、サムライみたいでカッコイイ!」
セルジュの歓声に、カーシュはちょっと顔を赤らめた。
「そ、そうか?」
誉められて、カーシュもまんざらでもないらしい。セルジュは髪を結びに掛かった。
「今日だけでもさ、ポニーテールしようよ。カッコイイよ。絶対!」
セルジュは、改めて髪を束ね直しながら、わざとカーシュの首筋を指でなぞった。
「うわっ…。」
カーシュが思わず声を上げる。
「あ、ごめんね。くすぐったかった?」
セルジュが無邪気に笑う。
「マスター、首、敏感なんだね…。」
髪を紐で縛りながら、セルジュがカーシュの耳元で囁く。カーシュはうろたえ、耳まで真っ赤だ。セルジュがクスクス笑った。
「…マスターって…可愛い…。」
「な…!ガキのくせして…。」
カーシュが真っ赤になって振り向く。セルジュはお構いなしに、笑いながらカーシュの後れ毛をつまみ上げる。それは、またかすかに首筋に触れ、カーシュは言葉を失ってピクリと身体を震わせた。
「ふふっ、やっぱり、とっても似合うよ。」
セルジュがゆっくりとカーシュの首に手を回す。カーシュは動けなかった。
 その時、入り口のドアをドンドンと叩く音がした。
「…なんだ?」
カーシュは我に返って、慌ててカウンターを出てドアへ向かった。
「…あ〜あ、もう少しだったのにな…。」
セルジュが苦笑して小声で呟いた。
「あれ?鍵が掛かってる?」
カーシュはガチャリと鍵を外してドアを開けた。
「カーシュ!」
飛び込んできたのは、カーシュの幼なじみでもある常連客のダリオだった。
「なんだよ、ランチの時間だろ?鍵なんか掛けて、どうしたんだよ!」
「小僧!」
カーシュが睨むようにセルジュを振り返った。セルジュは悪びれずにニコニコと頭を掻いた。
「あれ?いけなかった?だって、まだお客に来られちゃ困るって言ってたから、鍵も掛けておいた方がいいと思ってさぁ…。」
「…って、言ったけどなぁ…何も鍵まで…。」
そう言われてはカーシュも怒るわけにいかない。ブツブツ言いながらも、準備中の札を営業中に直して、カーシュはカウンターに戻ろうとした。
「カーシュ…髪…。」
カーシュの髪型が変わったのに気付いて、ダリオが眼を丸くしてカーシュを見つめている。カーシュは照れくさそうに頬を赤らめてダリオを振り返った。
「なんだよ、ガキみてぇだってんだろ?もう、取るよ。紐。」
紐をほどこうと髪に伸ばしたカーシュの手を、ダリオが掴んで止めた。
「…いいよ。そうしとけよ。…懐かしいなぁ…。」
ダリオは感無量という面持ちで、うっとりとカーシュの首の辺りを見つめている。カーシュは照れくささで顔を赤らめ、ふくれっ面をしてカウンターに戻った。
「ね?マスター、似合うよね、ダリオさん。」
セルジュがカウンターの中から、ニコニコと声を掛ける。ダリオがうんうんと頷く。セルジュは、またクスクスと笑った。
「それにさぁ、マスターって、首、敏感なの。可愛いよね。」
「こらっ、小僧!」
カーシュが真っ赤になって睨みつけるが、セルジュはふざけてその首筋にフーッと息を吹きかけた。
「わっ、よせって、こらっ!」
ダリオも、顔を赤らめてセルジュを睨んでいる。セルジュは笑いながらカウンターを出て、ダリオに並んでカウンター前のスツールに腰掛けた。セルジュはチラリとダリオの顔を窺った。ダリオは憮然とした表情をしている。カーシュが気を取り直してランチの準備に戻ったのを見て、セルジュが囁いた。
「ダリオさんも、フーッて、したかったんでしょ。」
図星を指されて、ダリオは顔を赤らめてじろりとセルジュを睨んだ。セルジュはフフッと肩をすくめて笑った。
「マスター、モテるんだねぇ。」
「な…!」
ダリオが一層顔を赤くして、思わずスツールから立ち上がった。そこへ、カーシュがコーヒーを持って戻ってきた。
「ん?どうした?」
怪訝そうなカーシュに、ダリオはコホンと咳払いをして、セルジュを軽く睨みながら座り直した。セルジュはおもしろそうに、またクスクス笑った。
「なんでもないよ。あ、そうだ。ダリオさん。こないだのシチュー、美味しかった〜!グレンにごちそうになったの。あれ、何かコツがあるの?今度作り方、教えて?」
あくまで無邪気に笑うセルジュに、ダリオも睨み続けるわけにいかなかった。彼はカーシュが出してくれたコーヒーを一口飲んで、軽く溜息をついた。
「いいよ。今日は残業は無い予定だから、良かったらうちに寄るといい。」
もちろんダリオとしては、先程のカーシュの件を、たとえそれが詭弁に過ぎないとしても、キチンと弁解するつもりだった。その思惑を知ってか知らずか、セルジュは、また無邪気に喜んで見せた。
「わーい!ラッキー!じゃね、マスター、今日は夕方までただでアルバイトしてあげる!ダリオさん、帰りにまた寄ってくれるでしょ?」
「ああ。」
ダリオが頷くと、カーシュが首を傾げた。
「小僧、うちの方は良いのか?」
「うん。丁度今日は、えっと…うちの母は慰安旅行で留守です!」
わざとらしく改まった言い方をして、セルジュはダリオに目配せをした。今夜はゆっくり出来るという合図だ。ダリオは少したじろいだが、小さく頷いた。カーシュだけが、何も知らずにセッセとランチの準備に励んでいる。
「そんならかえって、ダリオんとこに行けるのはラッキーだな。あ、小僧。手伝ってくれるんなら、混まない今の内にランチ食っとけ。ダリオもな。」
「はーい!」
ダリオも憮然とした表情のまま頷いた。
「ああ。」
外は木枯らし。ダリオの胸の内も木枯らし。


FINE.

 

言い訳
悪のり(^^ゞ。
セルジュvsダリオ、1回戦はセルジュの勝ち!
いやー、でも、ポニーテールのカーシュって凛々しくてカッコイイですよね。あのままの方が良かったのになぁ、という思いも込めて(笑)。
さて、2回戦…(爆)。


2000.11.1