これは、某サイト様のクロノクロス企画「非日常茶飯事」に投稿したものですが、そのサイト様がクロクロ活動を休止されてしまったので、出戻り(笑)でこちらに入れることに致しました。
 クロノクロスのキャラを現代に置いてみたら、という設定で小説、イラストを!という企画です。基本設定は下記の通り。なかなか楽しげな設定なんですが(笑)。

カーシュ=喫茶店「アカシア」のマスター。
イシト=カーシュの親友で、作家。当然ながら「アカシア」の常連。
セルジュ=近所の高校生。一見優等生なのだが・・・?
グレン=カーシュの幼なじみ。大学生。時には「アカシア」を手伝ったり?
ダリオ=カーシュの幼なじみ。言わずと知れたグレンの兄。優秀な営業マン。

 

 こ・い♪ 

五代儀 奈津(ペンネームさ(笑))

 

 ここは喫茶店「アカシア」。外はしっとりとした雨。店内には男性が一人、カウンターに腰掛け本を読んでいる。彼は、外の雨音に混じってかすかに聞こえた足音を察し、本から目を上げた。次の瞬間、ドアが勢いよく開いて、ドアに付けられた鐘が静まりかえった店内に響き渡った。
カラカラーン。
「こんにちはー!・・・あれ?イシトさん、一人?マスターは?」
飛び込んできたのは、常連客の一人、セルジュだった。服も髪も雨に濡れている。
「やあ。急に材料を切らしちゃって買い出し。留守番を押しつけられたんだ。すぐ戻るからって出たのに、まだなんだよ。それより、傘、持ってなかったのか?びしょ濡れじゃないか。」
マスターのカーシュの友人で、やはり常連客のイシトが心配そうに声を掛け、勝手知ったる仕草で、奥の方の棚からタオルを出してきた。だが、セルジュは濡れた髪を掻き上げ、ニコニコと笑った。
「んー、たまには濡れて歩くのもいい気分だよ。」
イシトは苦笑し、軽く溜息を吐きながらタオルを手渡した。
「ほら、拭きなさい。風邪引くぞ。」
イシトはそう言いながら、もう一枚のタオルでセルジュの頭をゴシゴシと拭いた。セルジュは顔を拭きながらうれしそうに笑っていたが、突然声を上げてしゃがみ込んだ。
「あ・・・!」
「どうした!?」
イシトが驚いて、しゃがみ込んだセルジュを見下ろす。
「コンタクトレンズ、落としちゃった・・・。」
困ったようなセルジュの声に、イシトもそばのテーブルに手をついて覗き込む。その時、突然、しゃがんでいたセルジュがイシトを見上げ、テーブルについたイシトの肘の内側を軽く叩いた。
カクン。イシトの腕は支えを失い、その身体はセルジュの上に倒れ込んだ。
「うわっ!」
セルジュが、自分の上に落ちたイシトの身体を抱き留める。イシトは慌てた。
「セルジュ!こら!何をするんだ!」
だが、セルジュはイシトの背中に手を回して離さない。やがて、セルジュがぽつんと言った。
「・・・ごめん・・・。イシトさんも濡れちゃうね・・・。」
イシトは困惑しながらも、寂しげなセルジュの声が気に掛かった。
「・・・セルジュ・・・?」
「ちょっとだけ・・・こうしてていい?・・・ボク、お父さんいないでしょ?お父さんの胸ってこんな感じかなって・・・。」
イシトの胸に、ちょっとだけ顔をこすり付けるようにしてセルジュは呟くように言った。
 そうだった。いつも元気なセルジュだが、父親を早くにに亡くしたと聞いた。時には寂しく思うこともあるのに違いない。殊に、こんな雨の日には・・・。
 イシトはセルジュが不憫に思えた。少し体勢を立て直し、改めてセルジュの濡れた髪を撫でる。セルジュが顔を起こし、その蒼い眼でイシトを見つめた。
「イシトさん・・・ボク・・・。」
カラカラーン!
 その時、ドアが勢いよく開いた。
「ただいまー!わりぃわりぃ、いつもの店も、材料切らしててさ〜・・・。ん?」
マスターのカーシュが帰ってきたのだ。カーシュは奥で抱き合う二人を見つけて絶句した。イシトが真っ赤になって、慌てて身体を離して立ち上がる。セルジュは床に膝をついたまま、ちょっと残念そうな顔でカーシュを見上げた。
「あ、お帰り。マスター。」
カーシュは、ハッと我に返った。
「”お帰り、マスター”じゃねぇ!な・なにやってんだ、おまえら!」
セルジュは悪びれた様子もなく、ニコニコと答える。
「別に?何でもないよ。ね?イシトさん?」
イシトは赤面したまま、俯いている。
「あ・ああ・・・。」
だが、カーシュが納得するわけがない。
「むががががが・・・・!何でもねぇわけねぇだろうがっ!」
イシトがしどろもどろで言い訳を始めた。
「あ、いや、あの、セルジュがコンタクトレンズを落としたというから・・・。」
「コンタクト・・・?で、見つかったのか?」
カーシュが憮然とした顔をしながらも、セルジュに声を掛けた。
「まだ・・・。あ!ごめん!ずれてただけだった。落としてない落としてない!」
セルジュが明るく笑う。イシトが呆然と、そんなセルジュを見つめる。故意にやったのか?それとも、本当に気付いていなかったのか?そんな疑念が湧き起こる。だが、何故・・・?
「ごめんね、イシトさん。濡れちゃった?」
セルジュが、イシトの視線に気付いておそるおそる訊ねる。
「・・・いや、大丈夫。そんなに濡れてないよ・・・。」
セルジュがホッとしたように笑顔を浮かべ、それからカーシュに向き直った。
「マスター!熱いコーヒー煎れてよ!マスターも外の雨で冷えちゃったでしょ?」
カーシュも小さくフッと溜息を吐きつつ、微笑した。
「ああ、そうだな。すぐとびっきりのうまいヤツ、煎れるからな。」
「ワーイ!」
無邪気に喜ぶセルジュを見つめつつ、イシトは自分を恥ずかしく思った。
 そうだよ。わざとなわけないじゃないか。セルジュは本当にあの時は、ちょっと寂しくなっただけなんだ。コンタクトレンズのことも、勘違いすることくらいあるさ。
 そう、自分に言い聞かせて、イシトは微笑して、改めてセルジュにタオルを渡した。
「帰りは、ちゃんと傘を差して帰るんだよ。」
「ハーイ!」
おどけて敬礼するセルジュ。
 だが、セルジュがひっそりとほくそ笑んだのを、イシトもカーシュも気付かなかった・・・。

終わり

 

言い訳

まず、お詫びです。
ピュアなセルジュファンの皆様、ごめんなさい!
私の中で思い描いているセルジュも、表の作品の通りピュアでけなげな少年なんですが、この設定に関しては、ちょっと出来心と遊び心で書いてしまいました。
ここのセルジュは別物だと思ってください。

さりげなく最強かも知れないセルジュ(笑)
無邪気を装いつつ、実は・・・というのを描いてみたかったんです。
うまく描けたかどうかは、定かではないですけど。
タイトルは、掛詞。「恋、故の故意」ってところでしょうか。
カーシュには、やっぱり「むががが」してもらわないと(笑)。
この手で、次はセルジュがカーシュを狙う!とか(笑)。
いいんだ、このセルジュ、相手が誰でも。
ただ単に落としたいらしい。(笑←ひでぇ)。
実はグレン編も書きかけてたのですが、そのうち休止されましたのでねぇ・・・。書こうかどうか、迷ってます。