ご注意!

 これは、某サイト様のクロノクロス企画「非日常茶飯事」の設定を使わせていただいてます。そのサイト様がクロクロ活動を休止されてしまったので、こちらに入れることに致しました。
 クロノクロスのキャラを現代に置いてみたら、という設定で小説、イラストを募集!という企画でした。基本設定は下記の通り。なかなか楽しげな設定なんですが(笑)。

カーシュ=喫茶店「アカシア」のマスター。
イシト=カーシュの親友で、作家。当然ながら「アカシア」の常連。
セルジュ=近所の高校生。一見優等生なのだが・・・?
グレン=カーシュの幼なじみ。大学生。時には「アカシア」を手伝ったり?
ダリオ=カーシュの幼なじみ。言わずと知れたグレンの兄。優秀な営業マン。

 

 親友だから 

 


SCENE1 イシト



 「カーシュ!これ、おまえ好きだったろ。」
カーシュの経営する喫茶店「アカシア」にランチを食べに来たダリオが、帰りがけにガルドーブ島特産の酒を差し出した。なかなか手に入らない名品「龍の誉れ」である。
「えー!どうしたんだよ、これ。」
カーシュが顔をほころばせて歓声を上げ、ダリオがニコニコと答える。
「お得意さんから、ちょっと伝手(つて)があって手に入ったんだ。」
カーシュは本当にうれしそうだ。
「サンキュ。いやぁ、この寒くなる時期、これをキューッとやるのは、たまんねぇよな。」
「だろ?俺もそうだろうと思ってさ。」
素直に喜びを顕わにするカーシュに、ダリオも満足そうに頷く。
「悪いな。じゃ、今日のランチは、おごりにするよ。」
カーシュが言うが、ダリオは首を振ってカウンターに代金を置いた。
「それとこれとは別さ。喜んでもらえりゃ、俺も持ってきた甲斐があるよ。じゃ、またな。」
「おう!またな。」
ダリオが出ていくのを、カーシュは酒瓶に頬ずりしながら見送った。そんなカーシュに、居合わせたイシトが呆れたように声を掛けた。
「仲のいいことだね。…今も、ダリオとは、お互いの考えていることが判るのか?」
「あ?」
カーシュが怪訝そうに聞き返す。イシトはちょっと気まずそうに訊ねた。
「昔、言ってただろ?ダリオとは子どもの頃からの親友だから、何考えてるか判るって。」
「ああ。」
カーシュは頷いた。
「そうだな…学生の頃までは、講義もラグビーの練習も一緒で、その後朝まで飲んだりして、一日中一緒ってことも多かったからな…でも、今は別々だし…。」
カーシュは笑って頭を掻いた。
「んー、でも、だいたいは判るかな。やっぱ、親友だからな。ダリオにも判ってるみたいだし。」
イシトがチラリとカーシュの顔を見た。
「…君は、単純だからな…。」
カーシュがちょっと口を尖らす。
「あー、なんだよ、それ?」
イシトが不機嫌そうに、また、読んでいた本に目を落とす。
「君の考えてることくらい、私にだって判る…!」
カーシュがちょっと顔を赤くした。
「え?そうか?ホントに?」
カーシュは、自分のイシトへの気持ちが知られているのかと、ちょっと焦っていた。だが、イシトは焦って赤くなったカーシュを見てフフンと笑った。
「判るよ。だいたいはね。でも、私の考えてることは判らないだろ?」
カーシュはちょっと腕組みをして考えて見せたが、すぐにパンと手を打った。
「判った。おまえ、腹減ってんだろ!それで気が立って、なんか突っかかってんだな?だから、さっきランチはどうだって訊いただろうよぉ。すぐ作るから待ってろ。」
カーシュは勝手に決めつけて奥へ入って行ってしまった。イシトは大きな溜息をついた。
「まったく、鈍いにも程があるよな…。」
独り言を言って、イシトは苦笑した。ちょっとだけ、ダリオに嫉妬してしまったのかも知れない。自分の知らない、カーシュとダリオの時間。自分と知り合う前の、二人の過ごした長い時間。築いてきた信頼。自分はカーシュに信頼されているだろうか?カーシュはダリオを親友と呼ぶ。自分はカーシュを親友だと思っているが、カーシュは自分を親友だと思ってくれているだろうか?
「お待たせ!」
人の気も知らないでのんきにランチの皿を持って戻ってきたカーシュに、イシトは思わずアカンベーをした。カーシュが呆気にとられて見ている。
「…な、なんだよ、おまえ、今日は態度悪いなぁ。」
それでも、イシトはフンと横を向いた。カーシュは苦笑している。
「もう…さっさと食って機嫌直せよ。」
そう言いつつダリオから貰った酒を大事そうにしまい込むカーシュを、イシトはやはり苦々しく見つめてしまうのだった。

 


SCENE2 ダリオ



 数日後の夜遅く、帰宅したダリオは家の前に立つ人影に驚いた。
「あ、お帰り…。」
暗がりの中、ゆらりと動いたその人影が、ダリオに向かって手を振った。
「カーシュ!?どうしたんだ?何かあったのか?」
暗い中、待っていたのはカーシュだった。
「今日な、グレンは合宿でいないんだろ?明日は店も定休日だし、久しぶりにおまえと二人で飲もうかと思って…。」
カーシュは、先日貰った酒瓶を見せて笑った。ダリオは苦笑した。
「なんだ。昼間ランチに寄ったとき言ってくれれば、大急ぎで帰って来たのに…。」
カーシュは照れくさそうに頭を掻いた。
「言うと、おまえ、絶対無理して仕事すると思ってよ…。」
「水くさいこと言うなよ。久しぶりにおまえと飲めるんなら、それくらい…。」
ダリオはそれでも、うれしそうに笑った。
「水くさいのはおまえの方だろ。いっつも、気ぃ回して…。」
二人の間を、初冬の冷たい風が吹き抜ける。
「う、サブッ。ま、とにかく中に入ろう。冷えただろ。」
ダリオが促し、二人は家に入った。ダリオは早速冷蔵庫を覗いている。
「飯は…この時間じゃ済ましたよな?えっと…何かつまみになるもん、あったかな…。」
「クシュン!」
勝手知ったるダリオの家だ。勝手にコップを並べていたカーシュが、くしゃみをして身震いした。南国エルニドとはいえ、やはり夜は冷える。
「あ!カーシュ!やっぱり冷えたんだろ。シャワー浴びて、あったまって来いよ。その間に用意しとくから。」
ダリオの言葉に、カーシュはちょっと頬を赤くして頷いた。
「ああ、悪ぃ。そうさせて貰う。」
やがてシャワーから戻ったカーシュは、ダリオと並んで座った。
「ホントに久しぶりだな。学生の頃は、毎日みたいに飲んでたのに。」
ダリオもしみじみと頷く。
「楽しかったよな…。」
「ああ、練習はきつかったけどな。…今思うと、よくあんな練習する根性があったと思うよ。」
カーシュが笑い、ダリオも笑う。
「はっはっは。ホントにな…。」
カーシュはちょっと黙り込んで、小さな声でポツンと言った。
「…おまえがいたから頑張れたんだ…。」
「ええ?なんだよ…。」
突然のカーシュの殊勝な言葉に、ダリオは戸惑っていた。
「ガキん時から、なんでもそうだった。おまえがいたから、一緒だったから、弱音吐かずに、おまえに追いつきたくて頑張った…。」
「どうしたんだよ…カーシュ…。」
カーシュは小さく頭を下げた。
「ありがとな。」
「なんだよ。どうしたんだ?…俺の方こそ、おまえに随分助けられたんだ。このエルニドの名士だったおやじは早くに死んで、その名声が、いつも俺にのしかかった。グレンのためにも、俺はいつも、しっかりしなきゃって思ってた。」
「ダリオ…。」
カーシュはダリオを見つめた。
「いつもはそんなに気にならなかったんだけどな、時には息苦しくて、逃げ出したくて…でも、おまえが、そんな時いつも黙ってそばにいてくれたから、おまえの前では無理しなくていいって、すごく…ありがたかったんだ…。」
カーシュは頭を振った。
「そんなこと…おまえの一番の親友だってこと、俺は誇りに思ってたし…。」
ダリオはカーシュに笑い掛けた。
「それは俺の方だ…。みんな、俺に一目置いてたとしても、おまえの方がみんなに好かれてた。今も、昔も。でも、そんなおまえが一番信頼してくれてるのが自分だってことが、俺はたまらなくうれしかったんだ…。」
カーシュは辛そうに眉を寄せてダリオを見つめた。
「ダリオ…俺、今だって、おまえを信頼してる。大事に思ってる…でも…俺…。」
言い淀んで俯いたカーシュは、絞り出すようにようやく口にした。
「俺…イシトが好きなんだ…。」
ダリオは言葉を失った。
「最近になって、自分のそんな気持ちに気付いて…だから…言わなきゃと思ってた…ごめんな…俺、おまえの気持ちには応えられないから…。」
ダリオは呆然として呟いた。
「知ってたのか…俺の気持ち…。」
カーシュは黙って頷いた。
「いつから…。」
「俺とおまえの仲だからな…。学生の頃から、何となく気付いてはいたんだ…でも、自分がイシトを好きになって、ああ、ダリオもこんな風に俺のこと、思ってくれてるんだって思ったら、知らないフリ出来なくなった…。」
カーシュはそう言うと、いきなりダリオを抱き締めた。
「…おい!なんのつもりだ!?」
ダリオは虚を突かれ、カーシュに押し倒されるように倒れた。
「だから…俺、今夜だけは…。」
カーシュが顔を上げ、ダリオを見つめる。ダリオは唖然としてカーシュを見つめ返した。
「受け入れられない代わりに、バージンを捧げると、つまりそういうことか?」
カーシュが、さすがに顔を赤らめて抗議する。
「まじめな顔ではっきり言うなよ。身も蓋もねぇじゃねぇか…。」
カーシュは今夜、そのために覚悟を決めてやって来たのだろう。ダリオは静かに笑った。
「感動してるんだ。」
ダリオは、逆にカーシュの上に重なるようにして身体を起こした。
「…ここで、そういうわけにはいかないって断れば、俺の男も上がるんだろうが、生憎、俺は据え膳はしっかり頂く人間なんだ…それに…。」
ダリオは言葉を切ってカーシュを見つめた。それに、そうしなければ、カーシュは自分を受け入れられなかったことに負い目を感じることだろう。
「それに?」
カーシュが怪訝そうに見上げる。ダリオは苦笑した。
「いや…。」
カーシュは、バタリと手を広げ、ギュッと目を閉じた。
「ま、とにかく、そうと決まったら、ひと思いにやって貰おうか!」
そのあまりの言いように、ダリオも顔を赤らめてたじろいだ。
「…おまえな…いくらなんでも、ムードってものがあるだろう…。」
「俺とおまえの間で、今更ムードも何もあるか!」
照れくさくて仕方がないのだろう、頬を赤くして、カーシュは言い放った。
「本当にいいのか?」
ダリオがカーシュの顔を覗き込む。カーシュは頬を染めながらダリオを見上げた。
「…おまえがいやなんじゃない。おまえは好きだ。ただ…。」
そこで、ダリオは突然口づけた。『ただ、それ以上にイシトを好きなのだ』とは、言わせたくなかった。聞きたくはなかった。自分を好きだと言ってくれた、それだけを覚えていたかった。
 だが、据え膳は頂くとか言っていながら、ダリオはそのままそっと触れるだけのキスを繰り返す。ついばむように優しいキス。まだ引き返せる、そのギリギリのところで、ダリオはまだカーシュを気遣っていた。ダリオはいつも、そんな風に優しい。そんなダリオが哀しくて、カーシュは切れ切れになりながら、ダリオの名を呼んだ。
「ダ・・リ・オ・・。」
「ん?」
ダリオが唇を離し、カーシュを見つめる。カーシュは、そのダリオの頬を両手で挟んで小さく笑った。
「大好きだ…。」
カーシュの両手はそのままダリオの首に回され、彼を引き寄せた。改めて唇が触れ合う。もう、ダリオは引き返せない―――。
 カーシュはじっと目を閉じていた。ダリオとの数限りない思い出。物心ついたときから、いつも一緒だった。いつも強くて優しかったダリオ。優しい気遣い。自分に向けられた熱い眼差し。今夜限りで、全てが過去のものになる。それでも、とカーシュは思う。自分たちは先へ進まねばならないのだ。お互いに、こんな閉塞した状態は、もう終わりにしなくてはならない。
 ダリオは、それでも、あくまでも優しかった。
 夜半、ダリオは、眠ってしまったカーシュをじっと見つめていた。こうしていると、若い頃評判の美人だったという母親に似て整った顔立ちをしているのに、がさつな態度の故か、普段はそんな風に思うことはない。そういうアンバランスなところが、またカーシュの魅力なのかも知れない。それにしても、と、ダリオは今更のように思い出して可笑しくなった。今夜カーシュが訪ねてきたとき、何かあるとは思ったが、こんな事になるとは想像だにしなかった。
「知ってたのか…。」
ダリオは小さな声で呟いた。知ってて、ずっと変わらず親友でいてくれた。自分を気遣って、カーシュとしては精一杯の思いやりを示してくれた。充分だ。ダリオはそっと、カーシュの頬を撫でた。その手を、突然カーシュが掴んで自分の肩に持っていった。
「夜明けまでには、まだ時間があるぞ…。」
まだ、自身を差し出すというのか。ダリオは苦笑した。
「…無理するなよ、もういいんだ。」
「俺は、中途半端はキライなんだ。」
カーシュが身を起こし、ダリオの上に重なった。激しく口づける。
「ダリオ…大好きだ。」
カーシュがダリオをきつく抱き締める。
「ごめん…ダリオ、ごめん…。」
カーシュはダリオの耳元に口づける。首に、肩に、胸に…。



 カーシュは、パンの焼けるいい匂いで眼を覚ました。窓から差し込む陽光が眩しい。朝だ。
「あ、起きたのか?悪いが、俺は出勤だ。勝手にそこらのものを食べて、戸締まりしてってくれよ。鍵は、帰りにおまえんとこ寄るから預かっててくれ。」
身支度を済ませたダリオが、パンをかじりながら笑っている。いつものダリオだ。
「…そうか、俺は店、休みだけど、おまえは仕事だったんだ…悪ぃ…。」
カーシュは頭を掻いた。さすがにちょっと照れくさい。起きあがろうとすると、だるくて身体が重い。ダリオが察して苦笑する。
「いいからゆっくり寝てろ。まったく、無茶苦茶なヤツだ…店、休みで良かったな…。」
カーシュが赤くなったのを見て、ダリオはクスクスと笑う。
「イシトを落とすときも、休みの前にしろ、な?」
カーシュが更に真っ赤になる。
「おまえ!俺で、遊んでるだろっ!」
ダリオは悪びれずにクックックと笑った。
「当然だ。親友の特権!だろ?」
『親友』。カーシュは思わずダリオを見返した。ダリオが小さく目配せをする。
「チェッ!」
カーシュが肩をすくめて笑いながら溜息をついた。
「おっと、時間だ。」
ダリオが慌ただしく出て行く。
「またな。」
カーシュは大事な親友の後ろ姿に声を掛けた。ダリオが微笑んで振り返る。
「じゃ、またな!」




FINE.

 

言い訳
ヤバイっすか?ヤバイっすね?
言い訳しないとダメでしょう、これは!
だって、ダリオさんも好きなんですもの〜。で、カーシュもただのニブチンにしたくなかったんですもの〜。
ダリオさん、切ないですね。カーシュも、切ないですね。幼なじみの親友って、かけがいのない存在なんだけど、だからこそ恋愛の対象から外したくなったりしませんか。
カーシュも、あるいはそうだったのかもしれません。親友であり続けたいからこそ、ダリオを大事に思っているからこそ、そういう関係になりたくなかったのかも、って、それはダリオさんには気休めでしかないでしょうけど(^^ゞ。
ああ、そうだ、念のため「またな!」っていうのは、またこういうことをっていうんじゃ、もちろん無くて(^_^;)、また親友として今までのように会おうなって、そういうニュアンスです。わかりにくかったかも知れませんね。

SCENE1は蛇足です。でも、ちょっと嫉妬するイシトが可愛かったので、削らないで出しちゃいます!このシリーズのイシトは、あまり突っ張ってないので可愛いです。んー、甘えんぼさん♪

さて、カーシュ、ダリオとのことに決着が付いたところで、次はイシト、落としますか(笑)?
いやいや、まだ、最強の小悪魔がいますからね…。

2000.11.8