これは報復なのだろうか。
傍らに眠る、端正な横顔を見つめてカーシュは思う。
大切な故郷テルミナを占領したパレポリ。その軍人であるイシトを、彼は今夜抱いた。
この、冷徹な横顔を持つ男を蹂躙することで、俺はパレポリに復讐したかったのか。このいつも冷静な顔が、俺の腕の中で歪むのを見たかったのか。
はねつけるだろうという予想を裏切り、引き寄せた腕に身を預けて、イシトは黙って彼に抱かれた。何を語るでもなく、二人はただ、互いを貪った。
今、カーシュは自分の気持ちを測りかねていた。
「…どうした?」
眠っていたイシトが、こちらを見上げている。
「悪いな、起こしたか?」
「いや、さっきから目は覚めていたんだ。ただ…君が考え事をしているようだったから黙ってたんだが…」
「…考えてたんだ…なんでこうなったんだろうって」
そう言われて、イシトも考えるように目を伏せる。
「…悪かったな」
唐突なカーシュの言葉に、イシトが、ふ、と小さく笑う。
「おかしな男だ。何を急に詫びる?」
今、自分を抱いたことを言っているのかと、イシトは苦笑した。だが、カーシュは小さく頭を振る。
「…おまえに酷いこと、言った…」
「…ああ」
そのことか、というように、イシトはため息を吐くように小さく言って目を伏せた。カーシュがちらりと、その表情を窺う。
「それなのに、何で俺と…」
「"パレポリの犬"…」
独り言のように口にしたイシトを、カーシュが眉を寄せて見つめる。
「…吠えて噛みついてやっても良かったんだが…」
イシトはクスリと笑った。
「知ってたよ…君がひどく後悔しているのは…」
イシトは伸びをするようにして顔を上向け、カーシュから目を反らした。そのまま横を向いて、イシトは静かに続けた。
「気が付くと、いつも君が見ている。私を案じている眼がある。…なんだかこっちの方が悪いことでもしているような、妙な気持ちになってな…」
イシトはそこで言葉を切って、カーシュを振り向いて微笑んだ。
「そのうち、君の姿を探すようになっていた…」
「イシト…!」
見たかったのはこんな顔。カーシュはいきなり力一杯抱きしめた。
「…どうしたんだ…?」
戸惑いながら、照れたように頬を染めてカーシュを見上げるイシトを、カーシュは黙って抱きしめていた。
見たかったのはこんな顔。
俺の腕の中で変わっていく。
戸惑い、
微笑み、
けだるそうに目を閉じる。
俺にだけ見せる、そんな顔。
Ende.
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