if・・・
〜イシトとカーシュ〜

〜Come Again〜

これは、まともなクロクロ小説「if・・・」シリーズの「2.〜イシトとカーシュ」の後日談であり、別館バージョンの「代償」の続編です。

 

イシト…
元気か?
元気でいるか?

俺は相変わらずの毎日を送っている



「第二分隊! 丘から東へ回れ!」
「了解!」



あれから、こっちでも無線を取り入れて訓練をしている
変な意地を張ったって、エルニドを守るのが俺の仕事だからな

手紙なんて柄じゃねぇし
こうして、おまえの眼の色をした空に向かって
時折、語りかけてみる

イシト…
どうしてる?

自分のことを棚に上げて言うのもなんだが
手紙くらい寄越せよ…



「カーシュ様。訓練中、申し訳ありません。ダリオ様がお呼びです。パレポリの常駐部隊が到着したとかで…」
「ああ…」
カーシュは鬱陶しそうに頷いて、手にしていた無線機に語りかけた。
「全隊、休憩! 一時間小休止の後、帰還しろ」
パレポリから少数のエルニド常駐部隊が派遣されるという話は耳にしていた。もしやイシトが来るのかと多少の期待をした時期もあったが、イシトからそうした連絡はない。いや、イシトがパレポリに戻って半年、一度も連絡は来ない。
 あれは一時の夢だったのか。きっと戻ってくると、このエルニドが好きだと言ったのは、やはりあの場限りの気休めだったのか。
 カーシュは不機嫌そうに、蛇骨館に向かって歩き出した。
「カーシュ様…パレポリの司令官相手に、またケンカしないでくださいよ! お願いですから!」
あまりの不機嫌そうな様子に、部下が心配そうに言う。何しろ、以前にイシトと会いしなにケンカした前科がある。カーシュは口をとがらせた。
「…わかってるっ!」
カーシュは憤りのままに、どかどかと足音を荒げて蛇骨館に入った。そのままダリオの執務室へ向かう。このエルニドの領主である蛇骨大佐は、娘婿のダリオに実権を任せ、事実上引退していた。その蛇骨大佐の使っていた執務室が、今ダリオの執務室となっていた。
 最上階のダリオの部屋まで、カーシュはむすっとしたまま一気に上がり、ノックもせずに部屋のドアを開けた。
「やあ、来たな…いくら俺とおまえの間柄とはいえ、ノックぐらいしろよ」
いきなり入ってきたカーシュに、ダリオが苦笑する。呼ばれて来たとはいえ、幼なじみだからこそ許される仕儀ではあった。
「まあ良い…こちらがパレポリ常駐部隊司令官だ…今度はケンカするなよ?」
ダリオが笑いながら指し示したのは、窓際に立つ人影だった。差し込む陽光に濃い陰になって、姿がよく見えない。だが、軍人というにはあまりにほっそりとした後姿。窓から吹き込む風に、その金髪がわずかに靡いている。カーシュは絶句した。
「…イシト…!」
イシトはゆっくりと振り向いて微笑んだ。


 「まだ怒っているのか?」
カーシュの居室に挨拶と称して立ち寄ったイシトに、カーシュは無言で背を向けたまま答えなかった。
「…わかった…」
イシトはため息をついてクルリと背を向け、ドアに向かって歩き始めた。
「…バカヤロー!」
 ドアノブに手を伸ばしたイシトの肩を、カーシュが後ろから抱きしめた。
「バカヤロー! …来るなら来るって、何で連絡寄越さねぇえんだ…俺が…俺がどんな思いで…」
言葉に詰まって、抱きしめる腕にギュッと力を込めたカーシュの手に、イシトはそっと触れた。
「帰って来るって…言ったろう?」
イシトは首をひねって、自分の肩に押しつけられたカーシュの顔を見つめて微笑んだ。
「きっと帰って来るって、そう言ったじゃないか…だから帰って来た…ここへ…君の所へ…」
イシトは手を伸ばし、カーシュの髪をつかんだ。引かれるままに前のめりになったカーシュに、イシトは口づけた。そっと触れた唇は、どちらからともなく強く押しつけられ、深く深く口づけられていく。
「…なぁ…」
ようやく唇を離したカーシュがボソリと言う。
「髪ひっぱんのやめろよ…痛ぇだろ」
本当はさほど痛かったわけでもないのに、カーシュは照れ隠しに、そんなことを弁解のように口にした。イシトはくすくすと笑った。
「君がキスしてくれないからだ…」
「なっ…バッ…!」
カーシュは真っ赤になった。
「言ってるだろーがっ! 俺はおまえをそんな風に…」
イシトはまた可笑しそうにクックッと肩を揺らした。
「相変わらず、すぐにムキになるんだな…」
イシトはそれから、真顔に戻って言った。
「そういう君が…私は気に入ってる…」
カーシュは一旦ムッとした顔を、また赤く染めて黙った。イシトはカーシュの方に向き直って、遠くを見るような眼でカーシュを見つめた。
「君の髪は陽射しの匂いがする…君を見ていると、とうに無くしたと思っていた、いろんな事を思い出す。感じたままに笑い、泣き、怒ったりわめいたり…そんな…私が許されなかった事の数々…」
イシトは微笑んだ。
「だからって、勘違いするな。君のために帰ってきた訳じゃない…私はエルニドを守りたいと思う。パレポリはこれまでエルニドの自治を認めてきたが、近いうちに完全な支配下に置くつもりらしい。本国の思惑はどうあれ、エルニドはエルニドに暮らす人々のものだ。私は…これまで私は国のためと自分に言い聞かせて、他国の侵略に手を貸してきた。だが、これからは違う。国に逆らうことになるかもしれない。それでも、私は私のやり方でやってみようと思う…」
「イシト…」
カーシュは、決意を秘めたイシトの、少しばかり誇らしげな顔をまぶしそうに見つめた。
「私は自分自身を、このエルニドで取り戻したいんだ…また…ケンカしよう。これからも、ずっと…」
「おうよ!」
差し出されたイシトの右手を、カーシュは微笑んで握り返した。




FINE.

なのですが、これでは物足りないという乙女なあなたへ「お・ま・け(当社比、1.8倍・笑)

 

言い訳

ちょっとマジになってみました〜。
「私は私のやり方で〜」は、やはり隊長に言わせたい台詞ですよね! カーシュの「犬」発言と一緒で(笑)
「おまけ」は本当におまけ、と言うか「女性向け」リングに加盟させていただいて、そういう場面を期待していらっしゃる方もおられると思いますので、ちょっとだけがんばってみました(^^ゞ
興味のある方だけ、クリックしておまけのページへどうぞ。あまり期待はしないで下さいね(笑)

2001.2.25