バー蛇骨 スペシャル番外編
〜こぉひぃぶれいく〜

 

バー蛇骨エンディングをご覧になっていない方へ

申し訳ございません。以下に、簡単に説明します。

どうやらリデルと結婚したらしいダリオは、蛇骨館財政難のため、「バー蛇骨」の経営に乗り出します。カーシュはそこでホストとなって働いています。意外なことに売れっ子。だが、その実体は!高くふっかけ、払えない客にはゾアが脅しを掛けるという「暴力バー」・・・。見てない方、随所に笑える場面がいっぱいです。是非、ご覧になって下さい。

本館の方に、この「バー蛇骨」を舞台にしたコメディもございますので、お気に召したらご覧下さい。

 

SCENE 1 シリアス編〜想い出の崖〜




 ここは「バー蛇骨」。蛇骨四天王、転じて、この「バー蛇骨」の売れっ子ホストナンバーワンになったカーシュが、店の奥の倉庫の窓辺に立ち、コーヒーを飲んでいた。ランチタイムが終わると、夕方のパブタイムまでの数時間、店はクローズドになる。その間にオーチャは夕方の分の下ごしらえに精を出し、シュガール・ソルトンは仕入れに出掛け、接待担当のカーシュたちは思い思いに休息を取る。カーシュはコーヒーを啜りながら、じっと外を眺めていた。
「あれ?カーシュ、一人か?」
倉庫の入り口から声を掛けたのはダリオだった。
「なんだ、珍しいな。シュガールたちは酒の仕入れに行ってるし、他のヤツらは休憩にどっか行ったよ。」
振り返ったカーシュに、ダリオがにこやかに近付く。
「そうか…たまには慰労を兼ねて視察をと思ってな…あ、コーヒーか?一口くれよ。」
カーシュは黙って、自分の飲んでいたコーヒーカップを差し出した。ダリオが美味しそうにそれを啜る。顔を上げたダリオはカップを近くの箱の上に置くと、微笑んでカーシュを見つめた。
「何、見てたんだ?」
瞬間、ほんの少しカーシュの顔が赤らむ。
「…別に。ぼんやりしてただけだ…。」
ダリオがカーシュのすぐ後ろに立ち、窓の外に目を向けた。
「ああ。あそこ、あの崖がよく見えるんだな…。」
あの崖。かつて二人で青リンドウを採りに行った、想い出の崖。カーシュの頬が、赤く染まる。カーシュはキュッとくちびるを引き締め、それから何でも無さそうに言った。
「別に、あそこを見てたわけじゃねぇよ…。」
だが、そう言い終わらないうちに、ダリオが後ろからカーシュを抱き締めた。カーシュがうろたえる。
「よせよ…。」
「どうして…。」
ダリオは構わずカーシュの耳元に囁く。カーシュが力無く言い返す。
「どうしてって、おまえにはリデル様がいるじゃねぇか…。」
ダリオは辛そうに、カーシュの耳の辺りに自分の頬を寄せた。
「…どうして、俺たち、あの頃のまま、いられなかったんだろうな…。」
「ダリオ…。」
カーシュが少し首を回し、ダリオの顔を見た。ダリオはカーシュに頬を寄せたまま、目を閉じていた。
「おまえと、俺と、グレン、リデル…毎日が楽しくて、あっと言う間で…この毎日が、ずっと続くんだと思ってた…。」
「…ああ…。」
カーシュも俯く。ダリオは顔を上げて、再び、想い出の崖に目を向けた。
「あの日の事を、忘れたことはない。」
「俺もだ…。」
カーシュが呟くように答えると、ダリオはカーシュの服のそでをまくり上げ、その左肩にある傷跡に口づけた。
「…この傷のことは、思い出しても苦しい…。俺のために青リンドウを採ろうとして…。」
「馬鹿だな…俺には、勲章に思えるぜ。」
眉を寄せたダリオにカーシュは小さく笑って見せた。
「ガキだったよな。おまえのために、俺の出来る事、そんなことしか無かったなんて。」
「カーシュ!俺は、おまえがいつもそばにいてくれる、それだけで、どんなにか救われてたのに。」
カーシュは微笑んで、自分を抱き締めているダリオの腕を、包むように胸に抱いた。ダリオは、カーシュの背に自分の顔を押しつけた。
「そばにいてくれ。これからもずっと…。リデルを愛している。でも、おまえも大切に想っている。」
「ダリオ…。」
振り返って見上げたカーシュのくちびるを、ダリオのくちびるが覆う。そのままカーシュは身体の向きを変え、二人はしばし無言で抱き合った。
「判ってる…俺の身勝手だ…でも、おまえがいてくれるから、俺は蛇骨家の当主としてやっていく決心をしたんだ。そばにいてくれ。俺のそばに…。」
カーシュがダリオの首に腕を回し、抱き締めた。
「判ってるよ…ずっと一緒だ。昔と同じ。一緒に守っていこう。このエルニドを、テルミナを、そしてリデル様を…。」
再び触れ合うくちびる。
 遠く、想い出の崖が、二人を見守るように午後の日射しを浴びて輝いていた。


FINE.

 

SCENE 2 コメディ編〜問答無用!〜




 ここは「バー蛇骨」。蛇骨四天王、転じて、この「バー蛇骨」の売れっ子ホストナンバーワンになったカーシュが、店の奥の倉庫の窓辺に立ち、コーヒーを飲んでいた。ランチタイムが終わると、夕方のパブタイムまでの数時間、店はクローズドになる。その間にオーチャは夕方の分の下ごしらえに精を出し、シュガール・ソルトンは仕入れに出掛け、接待担当のカーシュたちは思い思いに休息を取る。
「あれ?カーシュ、一人か?」
倉庫の入り口から声を掛けたのはダリオだった。
「なんだ、珍しいな。シュガールたちは酒の仕入れに行ってるし、他のヤツらは休憩にどっか行ったよ。」
振り返ったカーシュに、ダリオがにこやかに近付く。
「次期当主としては、たまには視察しないとな。」
ダリオはもっともらしく、その辺の食材などの入った箱を覗き込んで見せた。
「へっ!」
カーシュがそっぽを向いて鼻を鳴らした。ダリオは軽く肩をすくめた。
「…なんだ、不機嫌だな。」
「あったりめぇだ!この俺様にホストなんかやらせやがって!」
カーシュが悪態を吐くが、ダリオはお構いなしだ。
「はっはっは。売れっ子だそうじゃないか。さすがカーシュ!ま、見てくれは問題ないとは思ってたが、女扱いが出来るとは、長い付き合いだが、知らなかったぞ。」
「…まったく、人の苦労も知らねぇで…。」
口を尖らすカーシュの肩を、ダリオがポンポンと叩いた。
「だからこうして視察に来たんじゃないか。」
「そんなもん!」
カーシュが、肩に掛けられたダリオの手を振り払うように、またそっぽを向く。ダリオはクスッと笑った。
「じゃ、慰労してやろうか?」
「あ?」
キョトンとして振り返ったカーシュの顔を、ダリオはぐいっと両手で掴んで引き寄せた。
「あ、何すんだよ!…んぐっ…。」
いきなりくちびるが押しつけられる。カーシュは真っ赤になってもがく。
「お、おい、離せって…!」
ダリオは構わずカーシュを抱き締める。
「遠慮するな…ストレスたまってるだろ?」
「遠慮じゃねーっ!」
カーシュが必死で逃れようとするが、ダリオは離さない。
「照れるなよ。俺とおまえの仲じゃないか。ん?」
ダリオのくちびるがカーシュの首筋を這う。
「う…あ…やだ…や・・めろ・・っ。」
ダリオはカーシュの身体に手を這わせながら、フフンと鼻で笑った。
「いやよいやよも好きのうちって、な。」
「…よせ…っ。」
カーシュが身体を強張らせる。
「おまえって、ホントに意地っ張りだな…ふふふ、身体の方が素直だぞ。」
「っるせーっ!」
カーシュが真っ赤になって反論するが、心なしか力がない。
「そういえば、初めての時も…。」
ダリオの手が伸びる。
「う…。」
「こうして…抵抗したっけな…。」
カーシュがダリオに組み敷かれながら、思い出して更に真っ赤になる。
「ったりまえだろうがっ!!」
ダリオはクスクス笑って、カーシュの耳元で囁いた。
「…照れてるおまえって、可愛いぞ…。」
「…やめろよ、そういうこと言うの…。」
「あ、この傷、懐かしいな…。」
ダリオは、カーシュの左肩にある傷跡にそっとキスした。
「俺に、青リンドウ採ってくれようとして、怪我したんだよな…。」
「よせって言ってんだろーがっ!」
カーシュが恥ずかしさに身をよじる。ダリオは畳みかけるように囁く。
「おまえ、こんなに俺のこと、好きだったんだな…。」
「むががががが…よせって!おまえ、俺の話聞いてねーだろっ!」
カーシュが照れくささに耐えかねて怒鳴る。ダリオは苦笑した。
「相変わらずキレやすいな、おまえ…カルシウム、ちゃんと摂ってるのか?」
ダリオの手がカーシュの身体をまさぐる。
「う…あ・・おまえのマイペースも、相変わらず…。」
ダリオが愛しげにカーシュの身体に触れる。
「…カーシュ…。」
「あ…ダメだって…!」
「ん?こっちのがイイか…?」
ダリオは突然身体を反転させ、カーシュをうつぶせにしてその上に重なった。カーシュがうめいた。
「あうっ…ちくしょー…。」
「ふふっ、おまえ、最近鍛錬が足りないんじゃないのか?あっさり背後を取られるなんて、四天王の名折れだぞ。」
「ホストをやってて、四天王も鍛錬もあるかーっ!」
わめくカーシュにも、ダリオはお構いなしだ。
「…それもそうだが、いざって時に困るぞ。こんな風にな…。」
ダリオは身動きのとれないカーシュの背中に、スリスリと頬ずりをした。
「くそっ…。」
ダリオはカーシュの髪を掻き上げ、その首を顕わにすると、そっとそこに口づけた。カーシュが堪らず声を上げる。
「あ…!」
「おまえ、相変わらず、ここ、感じやすいんだな。」
ダリオは更に首を愛撫した。
「う…あ…。」
「…カーシュ…俺は、今だってずっとおまえのことも大事に思ってるぞ…忘れるなよ…。」
「あ…あっ!!」


 開いた窓から潮風が吹き込み、カーテンをそっと揺らす。床に並んで転がったダリオとカーシュは、見るともなくそのカーテンに目を向けていた。ダリオがフーッと息をつく。
「ああ、いい風だな。こうしておまえと二人でいると、昔に帰ったみたいだ…。」
カーシュは、ちょっと頬を赤らめ、ガバッと跳ね起きた。
「…ちっきしょー!俺は、やられっ放しってのは性に合わねぇんだ!!」
「あ、もう1戦いくのか?」
ダリオが笑う。カーシュがダリオの上に重なり掛ける。
「もう、バックは取らせねぇぞ!」
「…おまえ、レスリングじゃないんだから…。」
苦笑しながらも、ダリオはカーシュの背に手を回した。
「問答無用!行くぜ!!」




FINE.

 

言い訳
 333のキリ番を踏んで下さった、ハーナ様のリクエスト、ダリカーです!
私、ダリカーは初心者ですので、お気に召していただけるか心配です(^^ゞ
「口撃(笑)」をテーマにしたダリカー、ということでしたので、「コメディ編」を書いたのですが、ハーナ様のダリカーのイメージをぶち壊してしまったのではないかと気懸かりです。私はコメディ編のネタが浮かんだとき、仕事中にもかかわらず笑ってしまいましたが、さすがに、あまりにも…あまり?と思いまして、急遽、お詫び(?)に「シリアス編」も加えました。お許し下さいね。
 こういう、シチュエーションの使い回しってのが、私のお得意のパターンです。ええ、単にネタが貧困とも言います(爆)。
 読み比べていただくと判るのですが、導入部はまったく同じ。同じ傷、同じ想い出。
でも、ぜんぜん味わいが違うでしょ(笑)。

 ダリカーは難しいですね。どうしてもリデルの影がありますから。とりあえず、今回はこんな風に描いてみました。



2000.11.16