その指先に

 

 夜半、カーシュがふと目覚めると、その眼前にほっそりとした指先があった。金髪がその指にわずかに掛かっている。ついさっきまで彼の腕の中にあったイシトのその身体も、とても過酷な任務を果たしてきたとは思われない。だが、このおよそ軍人らしくない指先が銃のトリガーを引く。アックスを握るカーシュの手と同じに、他者の血に染まったその手。
 カーシュはそっと、その指先に口づけた。
「…ん…?」
イシトがうっすらと目を開ける。
「悪ぃ、起こしちまったか」
イシトは緩く笑い、また目を閉じた。カーシュはその指に再び口づけ、口に含んだ。イシトが驚いて反射的に指を引く。
「よせよ…!」
カーシュは手を離して苦笑した。手を伸ばし、イシトの頬を指でなぞる。
「いつか、おまえが銃の手入れをしてて、俺に銃を向けたことがあったろ? その時のことを思い出してたんだ…」
「ああ…そんなこともあったな」
イシトが目を細めて呟く。
「あの時、俺はおまえに撃たれたんだ」
「え?」
イシトが思わず聞き返す。
「撃たれたんだよ、ここをな」
ニヤリと笑ったカーシュは、自分の胸を指差した。イシトはクスッと小さく笑って、その指差された胸に口づけた。カーシュが、その頭を抱きかかえるように撫でる。

 違いすぎる二人だった。それ故、反発し、引き合う…。



戦いに身を置く者の、共有する痛み。
だが、痛みは、苦しみは、共有することで軽くなり、喜びは倍加する。
そのために、今、二人は寄り添う。
明日の戦いのために―――。




FINE.

2001.1.8

 

 

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