Running with Shin Murkoshi
村越真の実践ナヴィゲーション

05年12月18日 全日本リレー ME

 本年最後、そして久しぶりのレース。
 とにかく体調がしばらく悪かった。先週の筑波をパスしたのもそのせいだ。おかげである程度は上向きになったが、その勢いに乗って週の前半トレーニングをきっちりしたら、週の後半は再び不調になった。朝起きたときも、眠気とは別の頭の回転の鈍さを感じていた。
 ゆっくりアップをして、なんとか走れる状態にしてスタート。1走はずいぶんとタイム差がつき、しかもトップの高橋が54分というスローなレース。静岡の李はそれから離れること4分。まずまずのレースといえばいえる。テレインは藪が多く、視界も不良、それを裏付けるようにスローペースのレースとなれば、今日の体調でも、臆することはない。
 何チームかが直前にスタートしたが、篠原だけが視認できた。スタートフラッグへの登りで若干差が開くも、のぼりで、ほぼ追いつく。道走りで、ほぼ全体のルートに目を通す。前半はルートが問題になる場所はない。1(55),2(58)はいきなり、藪で可能度のよくなさそうな沢を下らされる。やや慎重に、1にアタックし、2へも、歩測もなんとなくしながら下る。途中で、特徴的な尾根の張り出し+沢分岐が見えたので、位置を確定しつつも、ほんとうにこんなやぶの中で地図がちゃんとできているのかと、自分自身のナヴィゲーションへの不信から、ゆっくりペースでアタック。コントロールは思い通りにところにあった。
 3(48)も特にルートは問題なく、コントロール自身も簡単。4(49)はコンタリングで尾根((鞍部?)を捉えて回り込めばよいので、特に気を使うこともない。ただどこが通りやすいかは、できるだけ早く判断できるに心がけたつもりだが、具体的には何をしていたのだろう?特に視界を遠くまで持ったという感じでもなかったが。
5(38)へは小山(山梨)とパックになりスピードがあがる。道は途中で沢に降りるので尾根を回って再び小径に合流しなければならない。その点だけ気をつけ、小径から尾根へ。やぶのせいもあるが、自分でもミクロなルートチョイスには精彩を欠き、今一つもっそりしている気がする。
6(32)はやっぱり下(西)から登るよな。Cやぶ表記になっているが、沢があがっているし、こういうところはえてしてとおりやすいものだ。×を確認して、上がりはじめるが、地形は完全には見えないし、コンパス振っても直進できると思えない。通りやすいところにひきづられ、左の尾根にあがりそうなのをこらえ、意識して右に寄せていく。今思えば、このとき上に見た岩崖は「地図にない」岩崖ではなく、コントロールのある岩崖だったのだろうが、その時は地図にない、ちきしょー!緑の中だからってこんな手を抜きやがって」と悪態をつきながら、右にいった。見えた岩崖のトップに上るが、コントロールがない。周囲の視界もきかず、一瞬絶望的な気分になるが、その向こうにも岩らしいものが見え、これコントロールの南にある3つ岩かも、と北に向かうと、すぐにコントロールが見えた。この距離はやはりちょっとおかしい。
 この登りではHRもかなりあがっていたのか、脳が働きを止めてしまうのではないかと感じられるような、形容しがたい不快感に襲われていた。
 ビジブルのタイムは21分と利いていたが、自分のタッチ時刻が分からないので、ペースが分からない。不快感から、ビジブルで「がんばれ」と声をかけられても、ほんのちょっとでもスピードを上げようという気になれなかった。
 誘導の最後で、ほぼ同時にスタートした篠原の姿を見つけて、追撃。スタート時より10秒くらい差が開いている。
8(70)は、特に難しくもないが、まだ藪と視界不良への不安感は抜けていなかった。沢の中をやぶを抜けながらくだり、オープンを感じて、沢から北側へ一段上がってそのまま進んで8へ。ここで、篠原をゲット。
 その後尾根の東を南下し、南西へ向かう沢をつめ、鞍部あたりから尾根に上るルートを考えながら、篠原と抜きつぬかれつ進む。振り切ったと思って尾根に上ると、すでに篠原は目の前を通過していた。さすがにこういうところは篠原はうまい。
 9(90)への尾根走りでは稲葉を抜き、脱出で篠原を出し抜くも、海岸そいの道から果樹園の中の小径を上がっているところでは全然離せず。こちらもそれ以上ペースアップできない状態。鞍部から、果樹園脇を抜け、尾根をこえ、10(87)に向かう。ここで稲葉は振り切れたが、篠原は尾根から道に出るところで先行されてしまう。彼が少し手前で入ったので、僕は十分ひきつけ、家のあるところからまっすぐあがる。最後の一段を登る決断が遅く、篠原にコントロールでの先行を許す。篠原はやや下がり気味にコンタリングを開始したが、等高線を読んで、ここは高さ維持と考え真横に動く、進行方向に対してはやや先行されていたが、高さの関係でこちらが実際には少し前にいたはず。これも最後に自分の位置に自信が持てなくて、篠原にひきづられて、結局先行を許す。レース勘というのはこういうのを言うのだろう。10も11(88)もいずれも、視野が狭いことが最後の数秒のロスにつながっている。
 12へいく途中の1番道に出るところで、突然体と頭の切れが生じてきたここでスピードをあげ、いっきに篠原を放しにかかる。12(80)も割りとうまく果樹園からアタックでき、その後の尾根への登りと小径の登りもかなりスピード維持できた。篠原の姿も見えない。ところが、13(63)の登りを登りはじめると篠原がすぐ後ろ(20秒くらい)のところにいる。あれ?いったいいつ追いつかれたのだろう。
実はこの区間、僕と彼はパタンが違ったのだが、二人とも全くそれに気づいていなかった。ゴールした時には20秒くらい差があっただろうか。
 なぜトップタイムが取れたのかは分からない。2走でバラけていたとは言え、篠原と一緒に走れたことで、藪をスピーディーに切ることができたことは確かだ。藪は宣伝されていたほどではなかった。このことにもっと意識的になれていたら、後半も少し果敢なレースができたかもしれない。体調の悪さは仕方ないし、結果的にランニングスピード以外には直接の影響はなかったとは言え、頭の働きの悪さは明らかにレースの切れに影響していた。精進が足りないのか、これ以上精進しちゃいけないのか?見極めの難しいところだ。

05年11月13日:安曇野2days アドベンチャーレース レポート

 村越がリーダーを務めるチームあじゃりは先日の安曇野アドベンチャーレースで昨年のリベンジを果たし、優勝を飾った。注目してほしいのは成績そのものよりも、むしろ昨年のレースの反省をどう生かし、どんな準備をしたかだ。昨年の反省については、このページの下のほう、および山と渓谷社「アドベンチャースポーツマガジン3号」に詳しい。
 昨年の一番の反省はナイトナヴィゲーションにあった。オリエンテーリングでのナイトナヴィゲーションは経験していたが、はっきりいって、本格的な山岳のナイトナヴィゲーションをなめていた。特徴物の乏しい地図と地形、周囲の大きな地形を捉えることのできないやぶ、その中では道具をうまく使いこなすことが重要なポイントだ。ハンディーライト、そして高度計、今回はこの二つの道具を最大限に生かして、ナイトのナヴィゲーションに臨んだ。

本題のナイトに入る前に、昼間のナヴィゲーションを見ておこう(図1・2)。昼間のステージはMTBで約2時間30分ほど離れた場所に移動し、尾根線に沿って約10kmの距離に展開する4つのチェックポイントをとってくるというものだ。ただしその10kmのうち約4kmはMTBが使える林道である。チェックポイント自体は大きな山頂のすぐそばにある単純なものだが、安曇野らしい一ひねりがある。いずれも山頂から3−50m程度はなれた場所においてあるのだ。1:50000図では、「ちょっと丸を描く位置がずれちゃったかな」と思えるほどだが、コースクリエーターが小林さんと来れば、そこに意図があることは察っしなければならない。特徴的な場所から、きっちりその分はなれた場所にチェックポイントがあるはずだ。この課題の捉え方は、昼間のステージの最大のポイントだ。実際チェックポイントDでは、すぐ近くにいながら4時間も探し回ったチームがあったり、ほぼトップを走っていた間瀬チームは僕たちがチェックポイントを発見した5mの距離にいながら、まだそのポイントに気づいていなかった。

(図1、昼間のステージ、CPのBとC。Aはさらに北にある)
 二つ石峰の南東にある峠で自転車を乗り捨て、歩きでCPのC、B、Aと向かった。この時点ではBそしてAへ向かう尾根にどの程度のトレイルがついているか分からず、困難も予想された。道がないかもしれないこの部分をできるだけ明るいうちにこなしてしまおうという作戦である。
 二つ石峰へ登り始めたのは間瀬チームとほぼ同時であったが、ランのスピード差で、山頂に到着したときにはおそらく3分程度の差が生じていた。aで鞍部を確認し、bのピークから尾根なりにCP−Cへ降りる予定。ところがbへののぼりで西側は若い植林のため視界と通行可能度が悪く、東側を進まざるを得ない。結果として北西へ延びる尾根が目視できなかった。bの山頂を確認後、間瀬チームが市町村界にそった北東方向に下って立ち止まっているのを見ながら、西を見るために藪っぽい西側の植林に入って尾根のスカイラインと方向を確認しながら、くだり始める。山頂で確認した高度計を見ながら、この高さだろうと利佳ちゃん、動物さんに声をかけながら左を見ると、ばっちりチェックポイントを発見。こうしたあいまいな地形における高度計の威力を再確認した。
 CP−Bへは尾根(青い点線)の可能度にいまひとつ自信が持てなかったし、入り口をのぞいたものの、道標はあるが、距離も時間も書いていない、これから整備するものだと分かったこと、あまり通行しやすいそうに見えなかったので、赤線の林道経由を選んだ。結果として地図以上に下らされてしまい(林道はおそらくあとから書き込んだもの。しかもちゃんと測量していないと思われる>山間部の林道によくある)、尾根にあがるのにかなり時間を費やした。その結果、bでやや時間をロスした間瀬チームに折り返しで追いつかれる結果となり、さらにCP−Dを一緒に探すはめになり、だいぶたすけてしまった。
 Bもややあいまいな場所なので、三角点の石柱を確認後、歩測もしながら下ると容易に発見。地図よりややピークに近いというのが僕と動物さんの印象。
 CP−Aへは結局なだらかな尾根道を気持ちよくジョグ+歩きで向かう。小林さんの「今回のコースは癒される」という言葉をかみしめる。Aもやはりピークからはやや下がった場所にある。山頂に小さな祠があることを確認、そこから距離を気にしながら東に下る。こんなところで追いつかれたくない、とやや焦りながら発見。
 帰りは、行きに確認したCP−Bの山頂の可能度のよい場所をトラバース(青)。さらにこれも行きに確認した青線の尾根で戻る。行きと同じルートを選択した間瀬チームとは、Aの折り返しではたぶん10分ほど差があったが、自転車を乗り捨てた峠では追いつかれていた。


(図2 昼間のステージCPのD)
CPーDの西にある鞍部付近で探していたチームもたくさんいたとか。
 自転車と歩きののぼりでおそらく10分以上の差がついていた間瀬チームにCPのそばで再び追いつく。ここでも山頂で高度を確認。こういう斜面に斜めにアタックするのは危ないので、尾根から最大傾斜線の方向に下る点を設定し、尾根が方向を変える地点を慎重に見極めたのち、歩測と高度計を使って下降点を確定した。そこから約30−40m。時々尾根のほうを振り返りながら、慎重に距離を見極め、ここらへんだろうと思う位置で、動物さんと僕とで展開すると、木にはりついた形でチェックポイントを動物さんが発見。間瀬チームはすぐ隣にいたのに「見つかりましたか?」と聞くと、「見つかりません」という。もう少し僕らが悪賢ければ、動物さんが陽動して、僕がその間にチェックして何食わぬ顔で立ち去るという手もあっただろう。先にチェックはしたものの、あっという間においていかれて、ステージフィニッシュのときには1時間以上も差ができてしまったとか。

ナイトステージは指定された角度による位置ラインを複数引くことで、自分自身でチェックポイントの位置を同定することから始まる。小林さん独特のややいじわるな説明があったものの、課題自体は単純なものだ。シルバーコンパスの使い方の説明にもたいてい出ているし、海上のナヴィゲーションでは、パイロッティングとしてポピュラーなものだ。だが、当然線の引き方にちょっとでも誤差があれば、求まる交点の位置もずれる。たとえば0.5度のずれで0.9%近い誤差が生じる。5kmの線を引けば、40mもの誤差が生まれるということだ。つまりCPの位置は自分が求めた交点の周囲40mにある可能性があるということだ。これはナイトのナヴィゲーションではかなりの付加的困難をもたらす。
 この誤差の話を大会のブログに書いて探りを入れたところ、チーム内の田島からクレームが来た。「どうしてそんな他のチームに情報を教えるようなことをするのか」という趣旨のものだった。このクレームには正直びっくりした。もしコンパスや分度器を使った位置ラインの引き方に習熟していなければ、誤差は簡単にそれ以上のものになってしまう。そしてその習熟は僕が書き込んだ情報を知ったとしても得られるものではなく、課題を自分の手でやってみて、何がどの程度の誤差を生むかを経験的に知っていないと、理論上0.5度=距離に対して0.9%の誤差という情報など何の役にもたちはしない。実際、このステージに出発する関門で、「これではいかせられません」とスタッフに言われて、何度も書き直しをさせられたチームもあったとか。
 この課題のアイデアを拙著から得たと大会要項にも書かれた以上、ここでへまをするわけにはいかない。どうやったら誤差を小さくできるか、分度器ではなくタンジェントを使ってひいたほうがよいのかから始まって、正確にひくための作図台もあったほうがいいだろう、基準となる磁北線も、誤差を最小限にするためにタンジェントを使うなど、最大限の注意を払った。さらにヨットを一時していた父親からもらった腕付き分度器を結局使うことにした。最後に、引いた線が正しい角度かどうかをもう一度分度器を当ててチェックした。
 その結果、位置ラインに若干のずれはあったものの、CPの位置は、まず間違いなくここだろう、というレベルで線をひくことができた(CP2とCP−X1はやや沢線からずれているが、周囲の傾斜を考えると沢線にあるだろう。CP1は標高点、CP−X2は三角点だろう)。


赤線(反時計回り)が実際のルート。正解ルートではないというのが小林さんの見解だが、「今年の安曇野は昨年までの総決算」という言葉から考えると、この周りが素直だろう(昨年のコースのミニ版だ)。
 aからeまでは沢の遡行。沢をたどっていけばいいだけだが、スピードを考えると、ルートファインディングが課題だ。また今回はややあいまいさのあるCPの位置だけに特徴の乏しい沢の中での自分の位置を正確に同定することが必要だ。fからiにかけては、尾根くだりである。わりとはっきりしただが、くだりでは尾根は分岐する傾向にあるので別の尾根に入らないような方向確認は必要だ。
 沢の遡行は、昨年のような廃道がなく、何度も水没を余儀なくされた。昨年の経験から、高巻くことも最初は視野に入れていたが、一度失敗してから、「この沢は多少水没しても、左右に通りやすいところを選んだほうがよいのだ」と学習し、それからはぬれながらも、比較的スムースに進めた。bで方向を変えたあとは、高度計を頼りに1445mを目指して進んだ。このあたりだろうという地点が枝沢の出合いになっていて、すぐにCPが発見できなかったもののますます確信が高まった。この時点では少し高い場所を歩いていたので、出合いまで下ろうと思った矢先、動物さんがCPを見つけてくれた。
 fにあるCPは開けた尾根を期待していたのだが、甘かった。eのほうからあがっていくと、いつのまにか傾斜が緩やかになって尾根らしくなるが、一面の笹尾根で、どこが尾根線なのかもわからない。こんなときの鉄則は反対斜面が見える位置までそのまま進んで、尾根線を確定すること。正面はモミ?の藪になっており、とても入りたくなかったが、仕方なくセオリーどおりに進んで反対側が降りていることを確認した後、左手がまだ傾斜がないのを確認し、少し左に動くと、ほどなく正面にCPを発見。
 あいまいな尾根の分岐から正しく尾根に下りるのに、コンパスは欠かせない。昨年の反省からプレートコンパスで、方向を確認する。体感と40度くらいずれた方向を指すが、動物さんと確認のうえ、当然コンパスを信じながら進む。コンパスの方向と体感がアジャストするまで、しばらくかかって、動物さんとその間ずっと「気持ち悪いね」といい続けた。gの方向変換を捉えたあとも何度かある方向変換をそのつど確認することで正しい方向に下りていることを確認。のぼりのef区間もやぶがひどかったが、この尾根は硬い笹で、くだりならその上から体重に任せて降りていけるが、のぼりでは大変だっただろう。hのところでno limit チームがへたり込んで休憩していた。彼らは時計周りルートを選択し、4時間このやぶと格闘したのだそうだ。
 最後のCP−X2は三角点。1:25000の地形表記の感じからすると、地図にないピークなんだろうなと思っていると、そのものずばりピークがあった。だが、見落としたまま30mほど行き過ぎる。さらに動物さんが先にいって30mほど確認してくれるが、傾斜は急になるばかり。やはりあのピークの頂上付近が怪しいと少し戻ると、ピークからやや南に少しはなれた場所にCP発見。そこだけやぶが薄くなっているものの、CPの取り付け位置は低く、痛恨とは言え、いたし方ないか。
 その後は、尾根>伐採地と経由して、関門へ。約7時間の格闘であった。

最後に降りてきた尾根(写真ではわかりずらいが、相当な傾斜である)

10月2日:静岡県リレー選手選考会

 世界選手権の試走をやっていると、地図はいいし、テレインもなじみになってくるし、自分はひょっとしてオリエンテーリングがうまいっじゃないかという錯覚にとらわれる。それが錯覚なのは、本当のレースをしてみるとすぐわかる。1月の全日本リレー以来、ほぼ9ヶ月ぶりのレースだった静岡のリレー選手選考会では、高校1年生以来の大ミステーク。そのレースで僕は開眼してしまったので、こんなミスは81年のスイスでの世界選手権、87年のフランスでの世界選手権以来だった。なにしろ、どこにいるか皆目見当がつかない、情けなくて途中棄権しようかと思うようなレースだったのだ。

1から2へ。
 1はスピーディーじゃないが、まずまずの入り。2への出方は1への道走りでしっかり考えてあり、ほぼ直線的に出る予定だったのに、いつのまにか小径に乗ることばかりが頭にあり、地図も見ずにaのほうへ走っていた。そこから北の沢に入らなくちゃと思って、かろうじて、正しい方向に進める。約30秒のロス。


3から4へ。白石島を想定して組んだと思われるメインレッグ。たかが一県の選考会にはもったいないレッグだ。中間の鞍部からのぼりを避けてコンタリング。コンターが少し開いていることを見れば、このあたりに走りやすいラインがあるはず。その予測はずばりだったのだが、レースから遠ざかっていること、体力的には以前のレベルにはないので、距離感が狂っていることなどで、斜面では現在地の把握が難しい。このときは最近の傾向とは異なり、オーバーばかりだった。aの崖は特徴的だが、これを一つにしの崖と勘違い。コントロール手前のピークは、その一つ手前のピークと思って、さらに下ろうとしてしまうなど。偶然振り返った岩についていたコントロールを番号確認したら、正しいコントロールだったという初心者のようなオリエンテーリング。


5:7分ミスった問題のレッグ。小径から、やぶが切れるところを見計らって、沢をつめる。そのまま凹型のピークにあがり、尾根を降りて沢に入りこむとプランする。丸いやぶを右手に未ながら予定とおりあがっているつもりで、西に一本分ずれていた。たしかに北から切れ上がってくる沢は確認できなかったが、あまり気にせず。ピーク上で、北東に下る沢を確認して、正しいピークと思って北に尾根を下る。今考えれば、ピークに切れ込む沢はもっと傾斜がきついはずなのに気づかず。bの沢まで降りてコントロールがないことがわかったとき、パラレルするなら、一本西だとわかった。そこでコンタリングして、aまでいく。ところが自分ではずっと上にいるつもりになっていたので、あまりに距離がありすぎること。やぶがひどいことから、やっぱりさっきいたところは正しく、自分は正しい尾根の東のやぶのなかにいると思って戻ってしまう。もういちどbの沢を下までみて、「絶対コントロール置き間違い!」と思って、一応下まで確認すべく、cまで降りて、やっと自分の位置がわかる。体感的には10分以上のミスで、これってひょっとして「選考落ち?」って気分だった。そこで止めようとも思ったが、全日本リレーなんていう、短い距離で勝負できるレース経験を捨てるのはもったいなく、スコットランドのときのトーレ・サンドビックの走りを思い出してがんばる(スコットランドのWOCで、トーレは7分くらいのミスをしたが、その後トップスピードで走りぬき、予選通過)。

 まあ、負け惜しみではなく、自分がこんな「青臭い」ミスができたことは収穫だった。少数の特徴に集中するように意識し、それで最大限のスピードを出そうと努力したのだから。教訓としては、「体感が鈍っているのだから、きっちり歩測したり、方向を決めること」。

8月23日:世界のトップに学ぶ小技:スタートでみるトップ選手

 日本のオリエンテーリング界にとって夢であった世界選手権も、成功裏に終わりました。技術的にはいささかの不安もなかったものの、7日間という長丁場を乗り切れるのか、それだけは不安でしたが、スタッフの献身的な努力と柔軟な対応によって、フィンランド、スイス、スウェーデンと大国の続く中での開催にもかかわらず、チームからは「それらと比較してもスムースな運営」という配慮の行き届いたコメントがありました。
 さて、わたしはほぼ連日スタートで最終確認をしながら、選手の様子をみていました。世界選手権のスタートでじっくり選手の動きを見るなど、自分が現役時代には考えられないことだけに、真剣勝負の場で、世界のトップ選手が何をしているかを興味深く観察、また感心していました。今回は「光る小技」。日本の世界選手権に臨む選手たちの何気ない工夫を紹介。

(追加分)
 写真の主は、スウェーデンのエース、エミル・ウィングシュテット。ポラールの時計の表示板の上半分を覆っている。なぜ?

▲時計の表示板を覆う、エミル・ウィングシュテット
 最初のチームオフィシャル会議で、こんななやりとりがあった。
「高度計を使ってもいいか?」
「もちろんだめだ」(そんなこと、競技規則に書いてある。急斜面の多い日本だから、高度計を使うことが競技に影響すると思ったのかな?)
「だが、選手はポラールの高度計付きの時計を持っているものもいる」
(中略)
「じゃあ、持っていてもいいが、使ってはだめなことにしよう」
 その結果が、このシーンである。彼らは以下にもあるように、ルールぎりぎりのところでプレーしようとする。だからこそ、ルールからの逸脱(=失格になりかねない行為)については、非常に厳しく自己規制をしているのだろう。


▲まずはスタートでの小技から。いわずと知れた、女王シモーネ・ニグリ。予選では場所の関係でスタートユニットが右にしかない。左手にEカードをはめているシモーネは、ちょっと困ったそぶりをして、手を交差させて地図に手を伸ばしている。左手にEカードを持った選手にはもうひとつの解決法があって、それがなかなか笑える。想像できますか?
 決勝で面白かったのは、決勝には左右両方にユニットがあり、Eカードを持った手にあわせてどちらかが使えるようになっていたのだが、右手にEカードを持った選手がわざわざ左のユニットを使うケースが少なからずあった点だ(ほとんどは女子選手)。地図はこの写真同様、左側においてある。さてその理由は?



▲天才、揃い踏み。左はヨルゲン・ロストラップ(NOR)と右はティエリ・ジョルジョ(FRA)。ヨルゲンはコンパスで北を確認している。その視線の先には裏返された地図がある。地図をひっくり返したときにすぐに整置できるように、イメージ確認しているのかもしれない。


▲その状況証拠がこれ。これは上の写真とは別のレースの日だが、スタート直後にはもう地図は整置されている(コンパスの赤い方向と地図の配置がその証拠)。


▲裏返された地図を一生懸命見る選手。うっすらとすけるコースではナヴィゲーションの情報は得られないが、スタートの△が透けてみえる。また周囲の配置から表のどちらが北かは判断できる。選手はその情報を反則にならない範囲で収集していると思われる。
 ちなみに写真はないが、決勝ではスタートゲートが使われた。ゲートは正規のスタート時刻の前後5秒づつアクティブになり、その間ならいつスタートしてもよく、ゲートが開いた時刻が計測開始時点となる。あるスウェーデン選手がゲートをあける前に地図をとり、1秒ほど見てからゲートをあけた。ルールすれすれの巧妙さ。出るとは思っていたが・・・。さすがスウェーデン、そういう指令が出ていると思ったが、他のスウェーデン選手でそれをした選手はいなかった。

日本の暑さにどう対処する?

▲日本の夏が暑いことは、すでに強豪国は調査済み。真冬の温水プールにトレッドミルを持ち込んで発汗と運動能力の関係や給水の有効性を調べたり、専門家を呼んでレクチャーを受けている。この写真に出ているように、短パンで走ったり、ひざを出し、ノースリーブで走るのは、ささやかな工夫。



▲日本に限らず、夏のレースでは最近はキャメルバッグを携帯する選手も増えた。写真は、前回のロングチャンピオン、カタリナ・ヘイスゴー。


▲ちょっとわかりにくいが、最後の給水が近づき、いらなくなったキャメルバッグを放置しようとしているティエリ・ジョルジョ。



▲笑い、そして感心した。膝丈タイツで、すねにはキネシオテープだけが巻いてある。暑さを少しでも和らげようとするその柔軟な発想には脱帽。



▲スプリントでフィニッシュしたホーカン・エリクソンの体を冷やすスウェーデンのコーチ。まずは首筋を冷やすという理にかなった行動に勉強のあとが伺える。バケツに手をつっこんでみたら、ちゃんと氷で冷やしてあった。

6月30日:レース中の位置と心拍数の把握j

 25日に愛知県の定光寺で開かれた東海地区の中高生選手権に弟子田島利佳らとオープンで走らせてもらいました。落合氏が招いていたフォワード社の代理店ニッカボッカの方からフィンランドのフォワード社の記録装置をテストする機会に恵まれました。
 この記録装置はGPSと心拍数を記録することができます。オリエンテーリング用地図と一緒に表示すると、どこを走ったかはもちろん、瞬間ごとのスピードや心拍数を表示することもできます。電子パンチの登場により、ラップを記録することは確実にできるようになりましたが、オリエンテーリングのレッグには上り下りやスピードの低下する区間もあります。それを余すところなく記録できるのです。
図はその解析ソフトの画面です。舗装道路とは言え、14km/hのスピードが出ているのには自分でもびっくり。逆に路面の悪いくだりでは、7−8km/hのスピードしか出ていません。どんなところに自分のオリエンテーリングの改善点があるかが分かるこの測定装置。値段は8万円と高いですが、クラブなどで持って、選手の特徴解析に有力な武器となりそうです。実際フィンランドでは、トップエリートのヤニ・ラッカネンが使っているそうです。

▲測定装置(左肩の上のオレンジ色)をもってはしる筆者。普通は腕につけるらしい。この日は即興で方につけてみた。装着方法にはまだ改善の余地がある。


▲解析画面。右は高度のプロフィール。左が地図。この上にルートと現在地が示され、早回しによる移動の軌跡を瞬間ごとの情報(スピードやHR等)を表示することができる。

伊豆アドベーチャーレース講習会でナヴィゲーション講習

 二日間の日程で行われたKocci主催の今回のトレーニングキャンプのうち、初日は僕がメイン講師をつとめてナヴィゲーション講習をおこなった。9月開催のレース参加を前提にしているだけあって、参加者のレベルは高く、実践的な内容である。午前中は地図読みとナヴィゲーション技術についての簡単なまとめをおこなった後、実際に移動するルートに沿ったルートプランを約45分かけておこなった。
 この欄でも何度も紹介しているように、事前に地図から必要な情報をピックアップし、それを上級者と確認する作業はナヴィゲーションの地図読みを鍛える最善の方法だ。
 図のような尾根下りルートが与えられたとき、あなたならどうやってルートを維持するだろうか。たとえばA点を具体的に例にとるとどうだろう?


▼A点詳細図


 まず第一に、そこでの危険を読み取ることだ。尾根線に沿って降りればよいと、ぱっと見た感じでは思われるが、よく見ると尾根線は東の小さな尾根に続いているようにも見える。つまり「尾根を下る」というだけでは、この枝尾根に入ってしまう「危険性」があるわけだ。今回の参加者は、それに気づくくらいのレベルには達していた。問題はその後だ。ではどうしたらいいのだろう?
 「注意する。」もちろんそれはそうなのだが、それでは不十分だ。「何を、どう注意するのか。あるいはその危険を回避するためにどんなアクションをとるのか?ナヴィゲーションのプランとは、その具体的なとるべきアクションに他ならない。
 「西側の沢に注目する。」これは参加者の一人の解答である。確かに西の沢はこの枝尾根の分岐以前から進行方向右手に見える。この沢が常に隣に見えているようなら、正しい尾根に乗っていると考えることができる。この方法を拡張すると、最初のうち進路をやや西にとり、早めにこの沢を見てからその沢に沿った尾根沿いに下るという手もある。理想的なルートとはいえないが、特徴を捉えがたいという現実を直視すれば、その程度のロス(といってもほんの30秒ほどだろう)は許容範囲だ。理想を放棄することで、高い確実性が得られるのだ。
 「尾根の方向が違う。」これも適切なアクションといえるだろう。分岐の部分では方向がおかしいことが分からなくても、分岐からやや下れば、明らかに尾根の方向は違ってくる。若干のロスはしてしまうが、ルートを外れることを前提にすれば、地図読みの幅が広がり、逆にそのロスを最小限に抑えることができる。
 基本的に尾根下りの練習は、「地形が曖昧になった部分で、いかにルートを維持するか。」そのための考え方とアクションを習得することに尽きる。
 プランができるようになったら、次のステップは、そのプランを生かした「割り切った」行動をとることだ。実際に下る時の所要時間はトップが約90分に対して遅い人で3時間強。核心部での地図読みの要点については、室内講習でたっぷり情報交換していたので、差はないと考えられる。プランには差がなくても、それに基づき「割り切って」ナヴィゲーションするという点で、スキルの差があったためと思われる。途中、参加者の行動を見てみたが、地形が曖昧になると、とたんに躊躇が多くなりスピードが落ちる光景がしばしば見られた。プランニングの時考えた頼るべき情報を忘れてしまっているのか、それともそれに頼りきれないのか。不安という感情をプランという理性で抑える努力が必要だ。
 夜の講習では林道終点から沢を詰め、ピークに登った後、枝尾根の多い尾根を下ってくるというナヴィゲーション課題を実施した。下の図がその課題だ。尾根が曖昧に広がり、どれがたどるべき尾根筋か分からなくなる箇所が少なくない。課題はやはりそこでどうルートを維持するかだ。基本はもちろん同じだが、視覚情報が限られた夜間という状況を考慮する必要がある。ナイトナヴィゲーションのポイントは、それが何かを知り、活用することである。
▼ナイトナヴィゲーション・ルート


 たとえばB点をクリアするために、どんな情報が利用可能だろうか?この点は尾根がほぼ北方向から北西に方向を変える点である。問題は北方向にも尾根が延びているという点だ。その中でどうしたらB点を捉えることができるだろうか?

▼BC点詳細図

 昼間ならあらかじめ遠くを見ることで、北西方向に尾根が分岐していくのが見えるだろう。だが、夜間ではそれは無理だ。ピンポイントでこの点を発見できなければならない。傾斜の変換に着目するというのは、適切な解答となるだろう。この地点から先は同じ北向きの尾根でも、傾斜が急になる。つまり尾根を北向きに進むと、この点で、急に傾斜が急になる。地図をよくみると、この点では一瞬北向きの斜面が現れることも分かる。斜面の方向に着目するというのもよいだろう。暗いなかでも自分がいる斜面が基本的にどちらの方向に向いているのかは、わかりやすい。斜面の向きに着目することで、大きなロスを防ぐことができるのだ。
 機器に頼るなら、高度計は有力な情報である。高度は気圧の変化から間接的に測定しているので、誤差はつきものだが、短い時間で補正を完全にしてから出発すれば、10m以下の誤差でただしく表示される。これはGPSよりも誤差が小さい。270mというこの点の標高を得たら、そこで尾根の方向変化を確かめるのだ。
 C点は、このルート上、もっとも難度が高い場所である。ここにはどんな危険性があり、またそれはどうしたら防げるだろう。

 最大のポイントは、ここでは尾根線が非常に曖昧であり、しかも、この点周辺で尾根が3つの方向に分かれていく点である。西に延びる尾根は方向ではっきり区別が付くだろうが、北に延びる尾根は識別が難しいかもしれない。この部分をクリアするには、高度計を除けば、斜面の方向を読む、尾根線が曖昧な部分ではコンパスで確実に進路を維持するなど、複数のナヴィゲーション技術の組み合わせが必要になる。
 
 全般として、レース参加を前提としていたので、参加者の技術レベルは概して高く、地図読みの基本はほぼできている。しかし、地図情報をレースに生かすため、どこに着目するか、さらにそれを実際の移動中100%使いこなすという点では、多くの参加者にまだまだスキル向上の可能性があった。

これまでの内容(技術的に価値のあるものに限定)
4月13日 NHK「試してガッテン」で地図読み指南
2月28日 黒坂ミクロルートチョイストレーニング

2004年
12月30日 プランニングのサブ・スキル −ジュニア・オリエンテーリング合宿
11月26日 さらに安曇野の反省
11月23日 「遊び心」がもたらすもの −安曇野アドベンチャーレース出場記
11月3日:うまくなるだけじゃもったいない
10月31日:地図についての考察 −地図調査をしながら考えたこと
10月17日:村越一門トレーニング:目から鱗の・・・
2004年西日本大会(スコラ高原)M21E 3位(99分:優勝:紺野俊介97分)


4月24日 作手でWOCに向けてトレーニングするトロイと

 オーストラリアのエリート、トロイ・デ・ハースが21日から24日まで、作手で単身トレーニングをしていた。固定コースもない中での一人でのトレーニングだから、もちろん技術的にも身体的にも質の高いトレーニングはできない。だが、そのデメリットがむしろメリットに転換することがある。96年秋、翌年の世界選手権に向けて僕はノルウェーに2回でかけた。1回は8月のチームでのトレーニングキャンプ、そしてもう一度は9月。ユーロ・ミーティングに出たあと、たった一人でキャンプ場のコテージにとまり、時にはスイスチームのトレーニングに混ぜてもらい、時には彼らの第三チームの3走としてリレーに参加したりした。練習にだけ専念していればいいチームのトレーニングキャンプとは違い、一人でのトレーニングは、生活面から移動まで何から何まで自分でやらなければならない。その分精神的にタフになったことも事実だ。たった一人でレンタカーもなく、路線バスでテレインに移動しているうちに、「ここは自分の領分だ」、そんなふうに思えてきたこともあった。
  トロイは言った。「僕はもう日本で10回はロングを走っているよ。」彼は、日本でのレースは「とってもフェアだ」と言う。スウェーデンのテレインなら、北欧の選手は1000日以上は走っているだろう。だが、この日本ならそんな差はない。自分は彼らよりこの国のテレインに慣れている。そう思うアドバンテージを得ることができる。「オリエンテーリングを続けるには、多くのものを投資しなければならない。だから、この世界選手権を節目と位置づけている。メダルを狙っている。」
 彼が孤独なトレーニングキャンプの中で僕らとの食事を楽しんだように、僕らも彼との食事を楽しんだ。凍えるような冬の地図調査は既に終わった。長い間の準備も最終段階に入っている。このエリアでトレーニングをするエリートたち共有する時間は、僕らに長く時につらかった準備への意味を実感させてくれた。

▲トロイ・デ・ハース(かじか苑前にて)

4月17日 野外活動センターでのオリエンテーリング指導

 枚方市の野外活動センターで、ペイド・ボランティアの学生カウンセラー対象に、オリエンテーリングの講習。同施設では、かつては市内40校以上の小学校全てが利用していたのが、今では2/3に減り、しかもオリエンテーリングを実施する学校はかつてはほぼ全てが、今ではたった2校だとか。定番とされてきたオリエンテーリングも、私たちが適当なプログラムを、社会に対して発信しないうちに、その定番の地位を追われつつある。
 この日は、5-10分程度で回れるミニ・オリエンテーリングと、地図よみのとれーにんぐのための、「お手紙オリエンテーリング」を実施。「これなら面白いわ」と、いうコメントが印象的。いかに経験者たちが「面白くない」オリエンテーリングを、これまで体験させられてきたかの裏返しのコメントである。
 お手紙オリエンテーリングは、初心者である彼らにはやや難しかったようだが、そこは普段からアウトドアに親しんでいるキャンプカウンセラーばかり。迷っても、文字を使ってコントロールを探すという、「宝の隠し場所」を探す気分を楽しんだようだ。お手紙オリエンテーリングは、地図から適切な情報を読み取る(あるいは、その難しさを実感する)かっこうのトレーニング法だ。

▲施設内でのオリエンテーリングのフラッグ設置を手伝ってくれるカウンセラーのモスラ。

4月13日 NHK「試してガッテン」で地図読み指南

 方向オンチ番組は3年に1度くらいの波がある。2002−3年くらいに立て続けにいくつかの番組出演したが、今回は試してガッテンからの依頼(その間にも別の番組からの打診が・・・)。今回の試してガッテンがユニークだったのは、「方向オンチの克服」のための地図読みに時間が割かれたことだ。
 方向オンチの人に地図読みのポイントを教え、迷わず目的地まで到達できるように、という試みだ。もちろん、所詮TV番組だから割り引いて考えなければならないし、野山と街中でのナヴィゲーションは違うけれど、地図読みという意味ではこれまでの番組にはない独特の仕上がりになっている。そのポイントは、アウトドアナヴィゲーションでも、十分役に立つはず。
  一般の人にはちょっとマニアックすぎるかなという整置の時の意識の持ち方も、TV写りがいいということで取り入れることになった。整置はよく「地図を回してみる」と形容されるが、「地図を回すことは地図を回さないこと!」というポイントはオリエンテーリングや精密なアウトドアナヴィゲーションにこそ役立つ意識だ。
 上の説明だけではかなり分かりにくいだろう。是非番組をごらんあれ。4月27日8時から8時43分まで。上記の話は比較的後半。多分8時20分以降だろう。

▲収録風景。モニターで見ているTVの世界に突然自分が入り込んでいくのが不思議な感覚。


▲とちってしょんぼりの小野アナウンサーと。間に写っているのが、立川しの輔師匠。

2月28日 黒坂ミクロルートチョイストレーニング

微妙なルートの違いが思ったいじょうのタイム差を生む。それが作手村黒坂テレインの面白さでもあり、怖さでもある。たった100mくらいのミクロなルートチョイスでもあっという間に15秒も差が出てしまうこともある。そんなルートチョイスも4回も間違えていたら、もう1分の差。世界トップレベルの戦いでは余りにも大きな差になってしまう。
 ルートチョイスといえば、地図上で確実にわかるマクロなルートチョイスが真っ先に思い浮かべられるが、黒坂では、地図からだけではわからない(目で見て判断すべき)ミクロなルートチョイスもテレイン攻略の鍵となる。2月28日に田島利佳とともに確認した結果を掲載する。なお村越は田島のスピードになるべく近づけて走ったつもり。

▲>1
 どうみてもパープルのaが早い。ところが実際には道を回るbの方が圧倒的に早い。多分20秒以上の差がついている。黒坂では、白で表現してあっても、笹薮でありその中に倒木がある場所が少なくない。ここもそんな場所だ。特に下りともなると、転倒への恐怖もあってスピードが極端に低下する。登りではそれほどさがつかないのかもしれないが、この程度膨らんでいても、まだ道の方が早いという、かんり衝撃的な結果であった。
1>2
 尾根に出るところまでは同一で、そこから直進(青のa)とコンタリング(中央パープル破線)を比較した。実際には破線部分はコンタリング容易でなく、尾根に近い部分を走らざるを得なかった。タイムはほぼ同一。コンタリングに固執していたら、明らかに直進のaの方が早かった。
2>3
 尾根沿いに進むa(パープル)とコンタリング(b:青)。距離的にはaが近そうだが、尾根上がやや藪がかかっていることは地図でも見てとれる。また尾根上では方向維持に気を使い、ややスピードが落ちてしまう。そのため、abほぼ互角。結論としては沢線が見えるまでいっきにきて、そのまま沢を詰めるようにアプローチするbの方が安全な分いいのではないかというのが結論
3>4
 これは1>2の結論を一般化すると直進がはやそうだが、実際にはやや関係が歪んでおり、3が地図より南に位置していること、直進方向が倒木で汚いので、目でみて走りやすいラインを選ぶとbとなる。タイム差は30秒ではきかなかった。bのルートは最初からいわば対案として選んだものだったが、aをとりながらも、沢の全貌を見渡せたときに変更することも可能だ。進行方向を広く遠く見ることで、よりよいルートが選べる好例である。
4>5
 これは選手のスキルと交互作用のある好例である。はじめ田島が直進(b:パープル)を選び、村越がコンタリング(a:青)を選んだ。1>2から予測されるように、ほぼ同タイムであった。では、と役w交代し、村越が直進、田島がコンタリングでやってみた。今度は直進村越が約10秒ほど勝ち。
 コンタリングのスキル(というよりは、沢のどこの下りると距離と登りのバランスを最適化するかの判断スキル)がないと、直進のほうがかなり有利だといえる。
左上のレッグ(南西から東北のコントロールへ)
 これは、パープルを田島、青を村越が走って、ほぼ互角。単純化されたレッグでの田島のスピードが印象的。検証はしていないが、これは役を変えたら、多分aが早かっただろう。林の中を走るスキルが低いランナーの場合、できるだけルートを単純化して走ることが重要だと思われる。

 何度もでかけられる地の利とは、こういうミクロなルートチョイスのチェックを徹底的に行うようなことを言うのだろう。ぜひ日本チームには、徹底的にミクロなルートチョイスの検討をして、地の利を生かしてほしいものだ。

1月10日 トレイルランニング本の写真撮影

 岩波書店より発行予定のトレイル・ランニングの本の写真撮影を同本の共同執筆者の鏑木さん、菅原さんとともに奥武蔵の日和田山付近で行ってきた。
 鏑木さんは、ご存知の方も多いが富士登山競争の2003,4年のチャンピオン。昨年10月には世界のトップトレイルランナーが集まるキナバル国際クライマソンにも出場。また国体山岳競技でも優勝するなど、名実ともに日本のトレイルランニングのトップレーサーだ。菅原さんは、東京を中心にトレイルランニングのクリニックを開催するなど普及活動に務めている。
 今回は、主として鏑木さんの担当する章の技術的な写真の撮影だったが、場所の選択、カメラのフレームワークなど、第一人者ならではの細かい視点を反映しながら撮影は行われた。
 原稿もほぼ仕上がり、この本は4月に発行される予定。初心者に必要な用具の選択やトレイルでの留意点、ロードレースよりも楽しいトレイルのレースへの誘い、推奨コースなど、これ一冊でトレイルランの全てが分かる。とりわけレースへの誘いの章はよくできている。「レースに出てみたい!」そう思うこと請け合いである。


カメラマンと細かくアングルを打ち合わせる鏑木さん


のぼりのフォールの解説写真の撮影風景


時にはこんな場所を登るトレイルランニングの幅広さを示すカットの撮影

12月30日 プランニングのサブ・スキル −ジュニア・オリエンテーリング合宿

 20年以上も前に、「若い選手を育てなければ・・・」。そう考えて開始したジュニアを対象とした合宿を、ここ数年再開した(もっともその間もスコードやトータスが断続的に行っていたのだが)。ここ4年で、ナヴィゲーションに関する考えは格段に進化したが、ここでは敢えて、クラシカルなアプローチをしてみた。技術的な構造がいかにうまく分析できても、結局オリエンテーリングの時何をするか、そのときどんなことに注意すべきか、それが重要だし、多分ジュニアにはそういうアプローチのほうがとっつきやすいだろうという判断もあっての上だ。
 なかでもプランニングOとその反省のセッションはうまくいった。20年前のジュニア合宿で発明された、「事前に必要最小限の情報を読み取って『プランニンマップ』を作っておき、それでオリエンテーリングをする(地図なしで)というメニューだ。誰でも簡単に実施でき、しかも楽しく時間をつぶせて、一定の気づきが得られることから、ポピュラーなトレーニング法になっているが、正しい方法や実践へつなげるという明確な意識を持って行っている人・集団はどれくらいることだろう。
 このトレーニングをしながら、気づいたことを参加者の前でまとめたのが、下の写真だ。

一番上に書いてあるのは、初級者や意識の低いリーダーが行っている場合の実施法だ。僕は見つけるたびに注意しているが、最初は時間をかけて地図を見ることは仕方ないが、そのときにも、地図とプランニングマップを描く紙を隣に並べて「見ながら描」いてはいけないということだ。この練習の眼目は、地図情報を一度頭の中に入れる。そして頭の中に入っている情報と風景を対応させることで、現在地を判断したり、ルートを維持したりすることなのだ。こうすることで、「写している」時には得られない、重要な特徴についての意識が高まるはずだ。
 頭に入れてから描けるようになっても、まだ必要最小限なものが描けているとは限らない。その選択にどのくらい時間がかかるだろうか。多分大学レベルでも1,2年ならレッグにもよるが1分以上は平気でかかるだろう。それが5秒とか10秒でできるようになって、初めて競技的なオリエンテーリングでの実践的なスキルとなる。これが最も進んだレベルとして、一番下に書いてある。だから、頭に入れてから描けるようになったら、次に目指すべきなのは、地図読みに時間的制約を設けて、短い時間で読み取れるようにトレーニングすることだ。
 自分がどのレベルにいるかに気づくことで、スキルを磨くために何をすべきかもみえてくるだろう。
 プランニングマップづくりという簡単そうに見える練習にも、さまざまな技術的要素が含まれているのだ。うまくなるセンスとは、そういうことに気づける能力のことを指すのかもしれない。
 「さまざまなテレインによって違うプランニング上の留意点をどうやってつかめるようになれるのか?」という参加者の質問についてのディスカッションも面白かった。その瞬間、エリート・コーチからは苦笑いがもれた。「まあ経験だよな」というのがその笑いの背後にはある。だが、コーチらからの意見を聞いてみると、類似のテレインに出かけ経験をつむという積極的な方法から、過去の地図を見る、人に聞くといった二次資料に頼る方法、序盤まではゆっくりいくという消極的だが現実的な方法まで、さまざまなレベルでの解決法が「発見」された。多様な解決方法が見つかったという以上に、ディスカッションによる発見の面白さを、ジュニアたちも感じてもらえちゃだろうか

11月26日 さらに安曇野の反省

 真剣に取り組んだレースというものは、いつまでたっても次から次へと反省点が出てくるものだ。用具への甘さという点ではもうひとつ、反省点とともに、いわば目からうろこだったのが、プレートコンパスの効用である。オリエンテーリングの精緻なナヴィゲーションでも、僕らオリエンティアはプレートコンパスなんか使わない。だから、精度的な要求のもっと少ないアドベンチャーレースならサムコンパスで十分と思っていた。おまけに1:25000に磁北線すら引いていない。これだって、通常の参考なら、だいたい6度くらい補えば十分だ。
 しかし、実際にナイトであいまいな尾根を下って気づいたことは、周囲からの情報量の少ない状況では、正確な方向維持が頼りであり、そのためには磁北線がないことによる目分量の判断も、プレートを使わないことによる針路の不確かさもナヴィゲーションに致命的なダメージを与えるという点だ。トップチームのナヴィゲーターの高梨さんは、「ここではプレートを使いました」と言う。また磁北線を描いた地図を落として、磁北線なしの地図に乗り換えたとたんに、方向維持が難しくなったと語っていた。
 そんな、ナヴィゲーションに対する新たな視点が開けただけでも参加したかいのあるレースだった。

11月23日 「遊び心」がもたらすもの −安曇野アドベンチャーレース出場記

「遊び心を試す」。安曇野のアドベンチャーレースにはそんな主催者のメッセージがつけられていたと記憶している。「レースに遊び心?」このメッセージは、レース前に今ひとつピンとこなかった。レース中も、無限のように思える沢の遡行や笹薮尾根の下降に正直うんざりしていた。しかし、すべての行程を終え、自分のナヴィゲーションを振り返ってみると・・・。
 トレッキング中盤の沢歩きは、水量こそ多くないものの、随所に障害があり、沢底をいくか、高まくかというルートファインディングを暗闇の中で要求される。またトレッキング核心部の笹薮の下りでは、笹薮という視界も利かず特徴物もほとんどなく、さらに足場の悪い状況の中で正しい尾根を選択して下降するというナヴィゲーション課題が用意されている。ルートの特徴は、目的地にすばやく到達するという意味では余計なもののように思えた。
 それはある意味、主催者の言う「遊び」であろう。その遊びがあるが故に、ルートファインディングと方向維持・現在地把握という広い意味でのナヴィゲーションの本質的な課題が、このトレッキングには満載されていた。それが、ルートをチャレンジングなものにしていた。
 ナヴィゲーションのエキスパートを自称する私だが、今回のレースは反省することの多いレースだった。
 まず装備に対する甘さがあった。それは不慣れなナイトナヴィゲーションに対する認識不足に由来するものであった。チームメイトの田中さん(通称動物さん)が用意した高度計やハンドライトがなかったら、限られた情報の中での正確なナヴィゲーションは困難であっただろう。
 もうひとつは、装備の使い方に対する甘さである。前半の枝沢の遡行中、かなり正確に沢の分岐がつかめていた私は、動物さんがコールする高度計の標高を漠然と聞き流していた。そこには20mほどのずれがあったが、「ああ、ずれてるな」くらいにしか意識していなかった。このずれは、沢から林道に乗り換えるときのミスで決定的にわかっていたはずだったが、そのことをその後のナヴィゲーションになんとなくしか生かすことができなかった。高度計の数値は気圧が変化しない条件下ではかなり正確なことがわかっていたはずなのだから、ずれを正確に把握すれば、10m以下の誤差で自分の高度がわかったはずである。これは後述するように、下降時の現在地把握ミスにもつながってしまった。
 いずれも反省点ではあるが、同時に自分に対して新たなナヴィゲーションの挑戦課題が突きつけられたともいえる。オリエンテーリングは、スピードを競うが故に情報量が限られる。一方ナイトトレッキングでは、暗闇や笹薮という障害物があるが故に情報量が限られる。そういう状況に対して、自分にはまだまだ磨くべき余地があるのだ。

【参考】笹薮の中での下降
 このルートのポイントは、東に延びるいくつかの尾根に落ち込まず、最初北西そして後半では北北西から北に方向を帰る尾根に正しく乗ることである。その意味ではシンプルなナヴィゲーション課題だが、時に背丈を越える笹薮の暗闇の中で、視界が限られる条件下では、なかなか思い通りには進めない。この条件下では、下るべき尾根は地図で見るほどはっきりしないことがほとんどなのだ。
 特に下り始めでは尾根がはっきりしないので、頼りになるのは方向のみ。しかもなぜか、尾根を選んで進んでいるつもりなのに、東側の斜面に落ちてしまうことが多く、何度も、滑りやすい笹薮のトラバスを余儀なくされた。ここでは、自分の左手にある斜面を常に意識して、左側の斜面が北向き斜面になることを意識しつつルートを維持するようにした。
 実際1510mのピーク手前の鞍部地点に下るまで、正しい方向の尾根にいることはほぼ確信は持てていたが、その尾根のどこにいるかという点になると、ここだとかなり確信を持てていても、実際には手前にいたというケースがほとんどであった。
 後で考えても、自分たちの行動がはっきりわかったのはa−dの区間である。aの細長く平たい尾根に出たとき、高度計の数値が1580m程度であったこともあり、そこにあった小さいピークをbの部分の細長い尾根上に、地図にないピークがあるのだと判断して通過した。このとき正面の谷越しには大きな尾根が見えた。今思えばそれはeなのだが、そのときはbにあるはずのピークが少し大きく見えるのだろうと解釈して進んだ。


 当然その後の進路は北北西にとった(aにいるなら、斜面に下ってから進路をより北に向けなければならない)。そのため、本来の尾根から右に派生する枝尾根を降り続けてしまった。しばらく下って、田中さんが左手に自分たちより高い尾根があることに気づく。地図を見れば、正しい尾根にいる限り自分たちより高い尾根があることはありえない。そこでトラバースしてbに戻った。そしてしばらく下ると、小さな鞍部があったので、ここをdと判断した。dの後のピークは1510のピークである。このピークの後は尾根を北向きにたどらなければならない。北東向きの尾根に降りたら失敗である。そこで北の方をみるが、当然場所が違うので、尾根が見えない。少し下って様子を見た点がC。田中さんはその斜面があまりに急なので、1510の後の斜面にいるとは思えなかったようだが、いずれにしても二人とも現在地の確信がもてなかったので、もっとも尾根らしく方向もそれほど違わない方向にしばらく尾根をたどってみるという意思決定しかできなかった。その結果、鞍部dに出て、そこでこれまで見てきたすべてのなぞが氷解した。

11月3日:うまくなるだけじゃもったいない

 11月に行われる安曇野のアドベンチャーレースに備えて、チームメイトの田中さん(通称動物さん)と田島利佳とマウンテンバイクの練習を飯能でした。既に何度かマウンテンバイクでトレイルを走った経験はあり、一通りの乗りこなしはできるつもりだったが、田中さんは次から次へといろいろな課題を見つけ出しては与えてくれた。いくつ目かの課題で、彼は「乗ったままジャンプできる?」という。自分では飛び上がっているつもりでも、あがっているのは前輪ばかり・・・。しばらく試行錯誤している時、彼は「前輪はほうっておいてもあがるでしょ。後輪をあげるつもりでやるんですよ」と、ヒントを与えてくれた。
 どうしたら後輪が上がるんだろう?このヒントによって、試行錯誤の幅は狭まった。後輪をあげようとして、マウンテンバイク上でジャンプする瞬間に、馬がひづめを蹴り上げるように足を蹴り上げてみた。すると、あら不思議。バイクはいとも簡単に前後輪ともに持ち上がる。
 自転車をこぐときには、ペダルには普通下方向にしか力を加えない。だから蹴り上げるような力の入れ方は、これまでの自分の自転車乗りの中には全くなかった感覚で、すごく新鮮だし、もし、彼のヒントがなかったら、そんな力の入れ方を発見することはできなかったと思う。
 新しい技には、それまでの自分のレパートリーにはなかった動きや感覚が必要になることが往々にしてある。またそれに気づくことで、難しいと思っていたことが、けっこう簡単にできることがある。身に付けた技自体もMTBを乗りこなす上では重要かもしれないが、それ以上に、その技を支えている新しい感覚や動作を発見したことが、うれしい一日だった。
 あ、この「目から鱗・・・」を読んだ宮内が、それが国体でクライミングを久しぶりにするヒントになったというのも、うれしかったな。

10月31日:地図についての考察 −地図調査をしながら考えたこと

 来年の世界オリエンテーリング選手権に向けて、地図調査をするようになって、すでい4年が経過している。この間調査した日数は100日近い(はずだ)。ディファレンシアルGPSが導入され、数十センチ精度の基準点がどんな茫漠とした斜面にも得られるようになって以来、調査にとって最大の課題は精度ではなくなった。今でも、森の中で多くの時間を費やすのが、正確かつ一貫した解釈によって地表面を記号化する作業だ。
 たとえば、斜面で岩石地を見つけたとしよう。岩石が小さければそれは多分れき地の記号で表されるべきだろうし、岩石が大きく通行の妨げになるなら、それは岩石地の記号で表されるべきだろう。しかし、地表面の状態は連続的なものだから、必ずどちらに分類すべきか迷う状態が存在する。たとえば1mという明確な基準を取ることはできる。しかし、ある場所では藪や斜面の状態から1mでもそれほど目立たないが、ある場所では非常に目立つということがありえる。トップスピードで走りながら瞬間的に判断するランナーからみれば、その岩が目立つならたとえ97cmの高さでも岩として表示してある方がはるかに実感に近いはずだ。
 あるいは斜面にせり出している岩は岩崖として表記するべきだろうか、それとも岩として表記するべきだろうか。これも悩ましい問題だ。斜面の上方から見て岩が見えれば、たいていそれは岩と表記されるが、これも限りなく微妙な状態がありえる。
 これらが単体である場合は、それでも大きな問題は生じない。何かが記されていれば、選手は、あ、この「黒い塊」がこの岩(あるいは岩石地を意味しているのだろう)と解釈してくれるだろう。しかし、大きさと分布の違う岩石が周囲一体にあったらどうなるだろう。選手と競技者の解釈が異なれば、謝った解釈によって、別の場所にいるという判断がなされてしまう危険性もある。直接面識のない選手たちと同一の判断を確保する手段、それが国際地図規定であり、またそこには明示されていないが、慣習的にコントローラやトップマッパ-によって共有されている解釈なのだ。
 特に悩ましいのが、炭焼き釜跡である。作手の森の中には無数の炭焼き釜がある。その多くは今ではただの凹地と化している。しかし、なかには釜口に石積みがあり、煙突さえある、明らかに炭焼き釜と分るものもある。ただの凹地にしか見えないものは穴記号に、斜面である程度大きければ等高線で小さな沢として、あるいは小さければ無視し、また釜口が残っていれば炭焼き釜跡として表記する。
 どんなに測量技術が進歩しても、地図記号への解釈だけは人間に残される作業だ。炭焼き釜の跡に立ち、これらが現役で使われていたであろう昭和30年代とその後の山里の暮らしの変化に思いを馳せつつ、僕は今日も山の中で悩み続ける。僕がその結果適切に地表面を解釈すれば、その分ランナーたちがレース中混乱することはなくなる。もちろん、ランナーたちが、記号によって表現された地図の背後には世界共通の基準とともに、そういう調査者の悩みがあることを知ることも、地図をよりよく使う上で重要なことなのだ。

10月17日:村越一門トレーニング:目から鱗の・・・

 勢子辻で、直弟子田島利佳、孫弟子皆川美紀子とトレーニング。僕は、田島と4kmほどコンターマップ(等高線のみの地図)で彼女のトレーニングにつきあった。
 最初の2コントロールは、プランを言わせて、普通にオリエンテーリング。これはさすがにエリート選手だけあって無難にこなす。だが、なんとなく緩慢な動きが気になる。普通にオリエンテーリングをしても、問題点が明確にならない。そこで、次のように指示を出した。「まずルートを決めて、そのルート上で一番最初に確実に見えるものを探す。それがどんなふうに見えるかをイメージしたら、そこまで一切地図を見ずに、そのイメージとおりだ!と思ったところまで来たら止まって」。一種のメモリートレーニングのようだが、主眼はそうではなくて、イメージを作ること、作ったイメージを風景と対応させること。この二つは地図読みの基本だ。地図を見ながらだと、なんとなく分かって、できたつもりになってしまうこの作業を意識化しようというトレーニングだ。
 このトレーニングをして、発見はいくつもあった。第一の発見は、イメージという言葉が人によって随分違うことだ。指導者、インストラクターは、「地図からちゃんとイメージを作って」という言葉をしばしば口にし、また指導を受ける側もその言葉を何度も言われただろう。だが、僕が意図したイメージという言葉は、彼女には僕が意図したようには受け取られていなかった。その結果どうなったか?彼女は、僕の言ったとおりにオリエンテーリングをしようとしながらも、自分で思ったとおり(そうしろと言われたと思ったとおりの)イメージができないと、それでイメージを作ることをきちんとやらずにすませていたのだ。
 「そうじゃない。立体だろうが、平面的だろうが、言語のままだろうが、その記号が実際の風景と対応して、『これだ』と思えることが重要なのだ。それができるなら精緻で正確なイメージだろうが、立体模型のようなものだろうが、「鞍部」という言葉だろうが、全くOKなのだ。地図記号がそうであるように、言語という記号も曖昧さを果てしなく含んだ記号体系なのだ。
 第2の発見は、20年選手の彼女にして、等高線の定量的情報が使えていなかったことだ。もちろん、尾根、沢、鞍部、そういう定性的な情報は十分に利用できる。ところが、ふと見上げたかなり高い(僕なら即座に「等高線2本!」と思う)ピークをみて、コンター1本(しかも補助コンター)のピークと勘違いしたことだ。
 その他にもいろいろな発見はあった。もちろん、日本を代表する選手の1人である彼女。通常の条件なら、なんとなくそれらの危機を回避してしまっただろう。だが、そのなんとなくできていたのがくせ者だったのではないか?地図を限られた時間だけ見る、地図の見方を強制される。そんな制約の中で、そのなんとなくが破綻し、彼女のオリエンテーリングの本質的な部分が現れてきたのは、僕にとっても彼女にとっても新鮮な体験であった。
 室伏がアテネ五輪に向けてフォームを見直して、新しい体験をしたと言っていたが、その体験をなぞった気分だった。

2004年西日本大会(スコラ高原)M21E 3位(99分:優勝:紺野俊介97分)

1:
スタートからやぶをつっきり、向こう側の沢に入ったところにある凹地と読んで、スタートフラッグを通過。やぶのあるピークが思ったより緩やかなのにあれっと思うが、とにかくその向こうの沢に入ればいいのだと考え、やぶを少し右気味につっきる。正面にはっきりした沢を期待したが、そうはみえず、なんとなくへこんでいる程度だったが、やぶをつっきったので、ここを、北東に下るしかないと考え、低い部分を少し下ると、凹地にフラッグ。やや近いと思ってパンチするが、その後番号をチェックすると31。これは違う!地図をみて、それが少し植えにある凹地と分かり、その沢を下る。ロスは2,3秒。

ピークに昇らずにすむ方法がないかを考えながらコントロールを出るが、どうやらそれはなさそう。仕方なく尾根に昇り、そのまま尾根をたどるルートとする。コントロールの右となりの尾根に落ちないようにと意識。
 尾根に昇ることにしたので、斜面・沢はややラフに通過。正面の高い部分を目指して進む。倒木はあるが、比較的軽快に進める。手前の尾根分岐はなんとなく分かったので、そのあとピークがあると地図から読み取り、それを確認。その後尾根分岐まで思ったより長かったので、右尾根に間違えておちていないかどうかについて特に右の谷を見ながら進んだので、ペースダウン。さらに分岐も100%確信がなかった。分からなかったら、まっすぐ進んで沢に落ち、白いところが見えたら左の尾根が見えるはずだから、そちらに移動してもいいとプランで危機管理したことを思い出し、やや谷に下る。左の尾根が地図で見るよりも北方向に延べていたので、白い尾根の張り出しを目で探しながら、等高線1本くらい下って、その張り出しとフラッグがみえて、そちらへ。
5:
 尾根にあがって、やぶをチェックしつつ、一番奥に左に張り出した尾根だったので、ナヴィゲーション的には問題ない。できるだけスムースに動くことを心がけ、4を後にする。左のやぶが切れたあたりから、尾根に向けてまっすぐ斜面を切ってタイムをかせぐようにする。斜面を斜めに少しくだったところで、平らになっているので、地図で確認。確かに地図ではそこに傾斜変換が描かれていたので、その線にそっていけばいいと、方向維持する。
7:
 ここは、時間をかけても慎重にやるべきレッグと考えるが、やることは丁寧な直進しかない。沢から台地上の尾根にあがると、意外ときれいなので、調子にのってきれいなほうに移動していったので、方向がそれたらしい(実際には地図も少し歪んでいる)。40歩近く歩測した段階でも尾根の張り出しが感じられなくて、その先も白くなっているので、さあどうすると、ちょっとスピードダウン。
 正しい方向に進んでいれば、北側(左)に急斜面が見えるはず。それが見えない限り右にいるのだと判断し、右に。感覚的には30m以上いってもまだ斜面が見えず、岩がちになる。地図との対応がとれず、一瞬途方に暮れるが、「とにかく北の斜面が見えるまで北に進める」と考え北にいくと、ようやく斜面が見えたのでそこをまくようにおりて、下方に白い尾根を探すと、なんとなく見えて、そちらへ。
9:
 別に難しくないので、無駄のない最短ルートとアタックミスを100%防ぐような地図読みを心がける。最初は回ろうと思っていたが、当然直進に近いルートが速いので藪を着ることになる。やぶを切った位置を確実に同定し、尾根に最短で入るように、と考える。
 やぶはかなり適当に切ったので、出たところでの位置確認のため、左右を見て、図の位置で森に出たと判断。尾根ははっきり見える。しかも穴がある傾斜変換の位置が風景の中ではっきり見てとれなかったので、少しペースダウンしながら様子をうかがいつつ尾根の法に少し下ると、左手にフラッグ。

10:
 ここももっとも無駄のないルートを心がける。後で考えると誤読なのだが、等高線は一本昇らなければと思い。ついている踏み跡を途中で少し上に外れ、ほぼ5mほど高いと判断できる位置を、南の尾根との高さ関係を気にしながら維持する。やぶに表記された部分をそのまま直進すると、正面遠くにフラッグがみえ、ニンマリ。

21:
 地図交換後のロングレッグで、ルートは即断。沢を登り詰めてからの地形は十分につかめていなかったが。尾根にあがると、沢を越えた向こうに細いCやぶがみえたので、その北側を直進と目視し、そこに向けて進む。藪を回ったところで、ピークを目で探し、そちらを見ると、ほどなくフラッグが見える。
22:
 斜面を斜めに下り、突き出た白の先端を目指すように走り、道に出たら、そのまま斜めに尾根に直進とプラン。
 斜面は思ったより下り、しかも、左右の緑はなかなか見えてこなかったが、とにかく藪か道のいずれかが見えるはずと考え進む。谷に下ったところの地形も少しおかしいが、これも同様に進む。段の上の道にで、とい面の斜面に直進。思ったより平らでややめんくらう。
23:
 ほぼ直進。尾根上でCとBの境が分かるかやや疑問に思い、その部分でわざわざ右を見てbやぶの終わりからの距離を目測。少し下ると白が開け出す。左の緑はよくわからないが、右のやぶの隣の尾根というのを意識することで、思ったより広い白領域での方向維持。尾根を下ればそのままフラッグが見えるはずと地図を見ていたが、実際には見えず。そこで地図を見て、炭焼きが少し右に描かれているのを見て、そちら側の斜面に少し移動するとフラッグみえた。

27:
尾根にあがって、左手に沢が見えたところからコンタリングするかどうするかは、現地で判断することにする。遠くから全く白なのがわかったので、そのままコンタリング。27は結構高い位置だと読めたので、あまり降りすぎないように注意し、また昇る必要もないことに注意しながらコンタリングし、尾根を回って少しいったところで、やや下り前方にフラッグが見えたので、目視で進む。