
堺屋太一
SF作家であり優れた科学解説者でもあったA.アジモフによれば、良質なSFとは単に光線銃や宇宙船のような未来的小道具で主人公が活劇を行うだけではなく、その背景を描かねばならないという。アジモフの例示によれば、自動車が近未来の乗り物であった20世紀初頭において単に馬の代用品として自動車を登場させても物語は作れるが自動車を登場させるのであれば当時には予想困難であったであろう駐車場問題をあわせて描くことが必要であるというものである。
堺屋太一である。官僚出身で経済評論家に転進し、経済企画庁長官も務めた。小説も著している。『峠の群像』のような時代小説もある一方で『平成三十年』という経済シミュレーション小説もある。アジモフ流の良質なSFの定義に当てはめれば、堺屋太一もSF小説家である。尤も、SFと冠されれば子供の読み物と思われてしまって堺屋太一というブランドから連想される読者層は大人だからそんなものは読まないので版元はそのような宣伝はしないものだが。否そもそも版元は堺屋小説がSFの定義に当てはまってしまうことに気づいているかどうか怪しい。
普通のSFは光線銃と宇宙船で未来社会を描くのだが、堺屋太一はそのような「子供っぽい」小道具の代わりに経済学を用いてSFを書いているのだ。周囲も、自分でも気づいていない珍しいSF作家である。
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Written by やまぐちまさ和
Last update at 2004