《甘い運命》





「『最後の一つは応龍が叶える。最後の望みを、神子』」

…私の、願いは――――。






心地よい気に身体を包まれて、私は地上に降りていく。
吹き抜ける風が、戻るべきところ―――神泉苑へと私を運んでくれる。
スカートのなかが見えやしないかと少しひやひやしながら、それでも迎えてくれるひとたちのいるところにふわりと落ちかけ―――。
…って、みんな?


あの…、なにもそんなに勢い込んでこっちへこなくても…(汗)



神泉苑にいたほぼ全員が猛ダッシュをかけている姿が、空からの遠目にもはっきりと見える。
“各馬、一斉にスタートしました”
冷静なアナウンスの声が、不謹慎にも頭のなかで木霊した。



………もしかしてみんなには、私が龍神様からポイっと投げ捨てられたように見えたとか?
無理もないけど。でも、相手はなんてったって京の守護神様。そこはちゃんと抜かりなくフォローしてくれてるんだけどな…。
だけどここからそんなこと呼びかけても、多分みんなには聞こえないよね。…心配させて、悪いことしちゃったなあ。特に八葉のみんなったら、なんかやたら焦ってるみたいだし…。

バーゲン会場さながらに殺気立つ、そのまっただなかにふわりと落ちる。

ごった返すなかを縫うように、真っ先に走り寄ってきたのは紫姫。慌てて迎え入れようとした腕のなかに、頼りないほど小さな身体がぽすりと収まる。
普段の大人びた様子をかなぐり捨てたように泣きじゃくる背中がすこしでも落ち着くまで、手のひらを何度も往復させた。

…そんなに泣かないで、紫姫。大丈夫だよ、私はちゃんとここにいるから。…ね?

宥めるように話しかければ、つぶらな瞳からはますます涙が溢れ出してきて。雫をはらえばはらうほど、嗚咽はひどくなるばかり。
あああもう、ほんっと可愛い…! 私、今すっごく深苑くんの気持ちが分かる気がするなあ。こんなに可愛い妹がいたら、私だって絶対猫かわいがりしちゃうよ〜。
そんなことを思いながら抱きしめて、紫姫のさらさらとした髪に頬擦りする。すると、一足遅れて駆けつけてきた深苑くんにいきなり叱りとばされた。

………再会したばっかりで、なにもそんなに怒らなくても。怒りたくて怒ってるんじゃない?
だけど私があんまり無作法にすぎるから? …そっか、ごめんね。
それにしても…こんなふうに深苑くんに怒られること自体、なんだかすごーく久しぶりだねえ♪
…反省の色がない? そおお? そんなつもりは全然ないんだけどな。

でも、深苑くんが相変わらずなのがとっても嬉しくて、つい顔がにやけちゃうんだよね。
―――なーんて言うと、もっともっと怒られちゃいそうだからやめておくけど。

それでも、聡い深苑くんは空気をしっかり読み取ってしまったようで。久々のお小言はまだまだ続きそうな気配だ。
むぅ…どっちにしろ怒られるんなら、いっそ逆襲もかねて、あれやっちゃおっかな…?





―――あとあとになって、よく考えてみると。
このときの私は、少し変だった。
“神様”と呼ばれる存在と言葉を交わしたせいか、まるで深い眠りから目覚めたばかりのように頭はぼうっとしていて。
もう会えないかもしれないと思っていたみんなに再会できた嬉しさ。…それから、最後までけして相容れることのなかったひとに感じた切なさ、そして、それを押し込めようとする気持ち。
全てがあいまって、私はひどくはしゃいでいたように思う。
…あんなことをしでかしてしまったのは、きっとそのせい。そうに決まってる…!!






だしぬけに腕を伸ばして、双子たちをぎゅうっと抱き寄せた。
予想通り、深苑くんははしたないと怒って暴れ、一方の紫姫は目を大きくまばたかせる。
………くすくす。同じ顔をしてるのにこのふたりってば、ほんとにどこまでも対照的だなあ。
私はそのまま二人の耳元に、私はそっと唇を寄せ。

…ただいまv
囁きながら、頬にキスを落とした。

とたん、深苑くんは雷にでも打たれたように、その場で完全に凝固してしまったけれど。
紫姫は真っ赤になりながら、それでもこぼれるような笑顔を見せてくれた。
お帰りなさいませ、と応える鈴を転がすような声に胸がほんわりと温かくなり、とても優しい気持ちになれて。



………だから、気付かなかったのだ。
龍神様の神気によって浄化されたはずの神泉苑の大気に、いつの間にか凄まじい怒りが満ちていることに。いくつもの鋭い視線が刺すように私へ注がれていることに。…そして、その全ての源がじりじりと包囲網を狭めていることにさえ。

―――影に囲まれ、視界そのものが暗くなるそのときまでは。




…気がつけば、八人分の笑顔が周りを取り巻いていた。
縋るように双子たちを引き寄せたまま、おそるおそるその場に立ち上がる。
な、なんで? みんな穏やかに笑ってるのに、どうしてそれとは正反対の殺気というか威圧感が背後にそこはかとなく漂ってるの? …き、気のせいよ…ね…?
笑い返そうとして、失敗した口元がみるみる引きつっていくのが自分でも分かる。

あ…あの…ごめんなさい、みんな。いろいろ心配かけちゃって。でも私、もう大丈夫ですから。
え…? いきなりどうしたんですか? や、やだな。身体のほうは何ともないです。ピンピンしてますよ。確かに今は神力を使い切っちゃいましたけど、怨霊も瘴気も浄化されてますし。休まなくても全然平気ですってば。
私なんかより、千歳のほうが―――。
…!! いけない、私ったら! 千歳…、千歳は!?

消え入りそうなほど小さな声が、鼓膜を打つ。
ようやく、といった様子で側近くまできていた千歳の姿を目に捉えて。私は慌てて包囲網を破り、彼女の側へと駆け寄った。
まだ上手く力の入らないらしい腕を私の背に回した千歳が、やっと安心したように微笑む。
青白い顔色に、それでも浮かぶ屈託ない笑みは、悲しみばかりが漂っていた彼女からは初めて見るもの。
見とれて思わず動きを止めていると、千歳は精根尽き果てたようにふらりと私の肩にもたれかけてきて―――。

…!?

驚きに思わず身を引きかける私を、か細い手が素早く抑える。私は千歳にそっと身を寄せると、その背を撫でつつ問いかけた。

…ものすごい邪気につけ狙われてるから、今すぐもとの世界に戻りなさいって…どういうことなの、千歳? もし百鬼夜行のことを言ってるなら、それは龍神様が綺麗さっぱり―――。
それのことじゃ…ない? だって、ほかに居るのは八葉のみんなと紫姫たちだけだよ?
そんなに警戒するようなことなんて何も…。
…説明はあとでする? 時空を隔てちゃうのにそんなことどうやって―――って、それよりも!
こんな状態の千歳を放っておいて帰るなんて、できっこないじゃない…!
だって…そんな邪気に私が狙われてるなら、私と同じ力を分け合ってる千歳だって危ないってことでしょ? …少し休めば神力はすぐにも戻る…? ………本当に? でも私、心配で…。
うん、それは…。確かに、千歳が嘘をついたことなんてこれまでだって一度もなかったけど。
…そうだよね。ごめん、変なこと言って。
だけど、神力さえ戻ったらすぐあとを追いかけるからって…それってどういう―――。

腕のなかの千歳がはっとしたように身を硬くする。
千歳? どうしたの、後ろになにか…?

振り返ろうとする私を押しとどめ、逃げなさい、と珊瑚の唇が呟く。
真意を確かめる間もなく、聞きなれた鈴の音が頭のなかで鳴り出した。時を同じくして、柔らかな光が花びらのように舞い降りてくる。
…こんな時期に蛍…? …ううん、違う。これは、この光は―――。
晴れ渡る空に坐す神様の姿を振り仰ぐ。
―――呼んでる。…もう、行かなきゃいけないんだ。
私は空をじっと仰いだまま、背後に向かって呼びかけた。


…深苑くん。最後にひとつだけいいかな? あのね…、千歳を早く深苑くんたちの館で休ませてあげてくれる? 今のところ容態は落ち着いてるみたいだけど…。まだちょっと心配だから。
それに、館なら結界があるし。何か起きても安心でしょう?
紫姫、一緒に千歳を守ってあげてね? …お願いね。

空を舞っていた光が、ひとつひとつ灯るように身体に降りてくる。

みんなと会えるのは…これが最後。だからちゃんとお別れの挨拶をしなきゃいけない。
それなのに、溢れるものを堪えようと、笑おうとすればするほど視界がどんどん滲んでいって。結局、振り返ることさえできなくて。

―――さよなら。

言うことができたのは、たったそれだけ。ますます大きくなっていく鈴の音にじっと耐えるように、私は目を閉じる。

次に目を開けたとき、きっと私はあの見慣れた並木道に立っているのだろう。ここにいる誰もがいない場所へ、もと来た時のように―――ひとりで。

…や、やだ、私ったら。もといた世界へ帰るのに、暗くなっちゃうなんて変なの。
光の中に埋もれながら、ふるりと頭を振るわせる。
そう…、戻ったら何をしよう? 友だちがいるはずの、いつものお店に寄ってみようか。それとも、懐かしいあのひとに会いに行こうか。…ううん、やっぱり…真っ直ぐお家に帰ることにしよ―――

!? きゃあぁぁ!

突然、強い風が―――激しい気の奔流が私に向かって吹きつけてくる。
なに? …なんなの!?
見開いた視界に映るのは、身体からことごとく吹き飛ばされていく燐光。再び蛍のようにふわふわと宙に浮いていく光を、私は呆然と見やる。
その矢先。


ぐわし。

いきなり複数の手が、掴みかかってきた。


………。
あのー。頼忠さん、勝真さん、イサトくん、彰紋くん、幸鷹さん、翡翠さん、泉水さん、泰継さん? …ひとつ、お聞きしたいんですけど。
どうして今私は、手だの腕だの、場合によっては腰までも、しっかと抱えられてしまっているのでしょう?(滝汗)
でもってその…、今の状態は私の心臓に非常によろしくない状況ですので、各自お手をお離し願えないでしょうか?

どこまでも答えはなく。ただ返されるのは、沈黙と穏やかな微笑だけ。
加えられる力が心なしか強くなっていくことに気付き、私の背を冷たい汗が流れ落ちていく。

も…、もしもし? 私の話、聞いてらっしゃいますか?
ええっと…。じゃあせめて、先ほど私に起きた謎の現象についてお答えいただきたいんですが。みんなの気合一閃と同時に、光が吹き飛ばされたように思えたんですけど。あれは一体なんなんですか?
……………ふぅ、またしてもお答えなしですか。
私が知らずに何かみんなを怒らせるようなことをしてしまったのなら謝ります。けど…。
だからって、こんなふうに徹頭徹尾無視するっていうのは、いくらなんでもあんまりな仕打ちじゃないかと―――…そんなこと私に言われたくない?
どうしてそういうお答えだけすぐさま返ってくるんですか。しかも、異口同音に。

焦れて不満げにする私に、ようやく話の口火が切られる。

………はあ、なるほど。先代さんの書付に『八葉全員が力をあわせることによって、淀んだ瘴気を無事祓うことができた』とあったので、このときあることを予想して密かに用意していたと。
なんだか戦隊ものでよく出てくる秘密兵器というか、必殺技みたいですね…。
何だそれはって…あー…話せば長いことながら…。………いえ、別にわざわざ説明するほどのことでもないんですよ。本当に凄い、という意味にでもとっていただければ。
…む。なにもそこで吹き出すことないじゃないですか、幸鷹さん。第一、凄い力だなって思ったのは本当のことだもん。
え…? やだ、な、何言って…そんな、龍神様を召喚できたのは私だけの力なんかじゃないですよ! みんながいて、力をくれたからできたことで…。私ひとりだけだったら、とても…
―――はっっ!
ご、ごまかさないでください! さっきから話が逸れっぱなしじゃありませんか!!
私がお聞きしているのはですね、なんでこんなことをしたんですか、ということで。
だ〜か〜ら〜! 泰継さん、私は方法を詳しく知りたいわけじゃなく! 理由をお聞きしたいと言ってるんです!
それに、みんなが祓ったって仰ってるのは瘴気なんかじゃなく、応龍様の放った、れっきとした神気なんですけど?
…動転のあまり、つい祓いを実行してしまいましたって…。
―――そんなことあるわけないでしょ!
どうしていつもの真顔のまま、そんな信憑性のない嘘つくんですか、頼忠さん!
あっ…! ごめんなさい、ごめんなさい。い、言い過ぎました。…信じます、信じますから!
だからあの…そんなふうに落ち込んだりなんかしないでくださいってば!

いい加減収拾がつかなくなってきたところに、落ち着いた声で仲裁が入った。

ありがとう、彰紋くん。…あの…ね、ついでと言っては何なんだけど…。いつまでもこんな妙な状態でいるっていうのもなんだし…。できれば…その…。
こ、交換条件? …お別れの挨拶をちゃんとするって約束すれば手を離すって…。
なんでまたそんなことを??
うん…まあ…確かに、さっきのご挨拶ではちょっと失礼だったかも………分かった。そうだね、やっぱり言うべきことはきちんと言わないと。

承諾と同時に身体が解放されて。
私はすぐさま姿勢を正し、
…短い間でしたけれど、今まで本当にお世話になりました。
ぺこりと、四十五度のお辞儀をする。

えーと…。それじゃ、これでほんとに失礼して帰らせていただきま―――…っ!?
踵を返しかけたところで、またしても腕をつかまれ引き止められた。

な、何? …どうかしたの、イサトくん? …ねえっ、どうしちゃったのほんとに?
私を掴んでいる手の持ち主を、訳も分からず見上げてみたけれど。
当の本人は不吉なまでに爽やかな笑顔を見せながら、首を振ってみせるばかり。

ち…違うだろ、って……そう言われましても、何がどう違うのか私にはさっぱり…。まさかここで、三つ指ついて挨拶しろってわけじゃないでしょ? あははは……は。

じりじりとあとずさりながら、さりげなく手を振り解こうとすれば。すかさず空いているほうの手にも、優しげな手がそっと指を絡めてくる。

!? も、泉水さんまでどうしたんですか? …さっきの私の挨拶、そんなに変でした?
………別に、おかしくはない? じゃあ一体どうして…―――え?
ご挨拶ならば、深苑くんや紫姫にしたのと同じものを是非に…って?


告げられた言葉を頭が理解するまで、たっぷり数十秒。
それから、ふたりが何を言わんとしているのかをようやく察して。全身から、一気に血の気がひいていく。

な…何のことでしょう? 私、そう言われるほど特別なことをした覚えは何も…―――きゃあっ!

いきなり間に割り込んできたのは、腰に響く美声の持ち主。

ひひひ翡翠さん? と、とぼけるだなんてそんな、人聞きの悪い。だって私、本当に何も…。
? それならそれで構わないというのは、一体どういう―――え゛。
実…演してさしあげ…る?
―――なんですと!? 実演!!??

慌てて腕を力の限りつっぱってみたけれど。整ったお顔はあっという間に間近に迫ってくる。

ちょ…、ちょっと待ってぇ! これは違う! 絶対違いますよ! 龍神様にかけて誓いますけど、私こんなことだけは絶対に してないですって!
…だってこれ、どう見てもマウス・トゥ・マウスの体勢じゃないですかあ!!

自白と同時に、私は複数の手によって力強い腕のなかから引っ張り出され、よろよろと膝をつく。
そのまま、翡翠さん中心のすったもんだが起きているのを耳にしながら、自分のなかで何かがぶっつりと焼き切れる音を私は聞いた。




―――もうっ!! いい加減にしてください!みんなしてさっきから一体何なんですか!
深苑くんたちにしたことを自分たちにもしろ、なんて気軽に仰ってますけど!
あれは私の生まれ育ったところでもごく親しい間柄のひととしかしないし、それだってめったにしないものなの! たいていは小さなお子さん限定です!

なんだか視界の端で深苑くんが激怒しているようだけど、今はそんなことにかまってなんかいられない。

いい年をしてそんなこと言って、恥ずかしくないんですか!? …私をからかって遊ぶのも大概に―――は? からかってるつもりは………ない?
本気で…言って………るうぅぅう!?
なっ…! ななな、何ばかなこと言ってるんです! そんなこっ恥ずかしいことができるわけないじゃないですか!
だいたいその手のおねだりというものは、普通、恋人とかそういう関係にある方にでもお願いすべきことで―――!!
………。
あの…? どうしてみなさん、そこで一斉に“我が意を得たり”とばかりにっこりされるんですか? まさか…、まさか…!

頭を大きく殴られたように、くらくらと目の前が暗くなって。そのまま膝から腰から力が抜け、その場にぺたりと座り込む。
彼岸に遊ぶ私の魂をふと現実へと引き戻したのは、元気づけるようにぽんと肩を叩く手。
驚いて振り仰いだその先には、勝真さんが陽に透けてしまいそうなほど爽やかな笑みを浮かべて立っていた。
そんな顔しなくても大丈夫だ、悪いようにはしないからと告げる声の温かさに、一瞬ホッとしかけたそのとき。

…きゃあっ!?

いきなり、私は抱えあげられた。

ちょっ…、何なんですかこの状況! 助けてくれるんじゃなかったんですか!? …しかもなんで、四条のお屋敷のほうに向かってるのお!
状況はちゃんと理解できただろうって…!
ええ…、ええ!! もちろんしましたとも! 私が今、四面楚歌らしいってことだけはね!
とにかく、下ろしてくださいってば! 私は、もとの世界に帰るんですから! さっきからずっーと、そう言ってるでしょ!?
…は?
お別れの挨拶をちゃんとすると約束した以上、それがすむまでは絶対に帰さない…?
―――そんな理不尽な!!
いやあぁぁ! こんな一方的な話がありなのぉ!?

諦めきれずじたばたともがく私の耳に、勝真さんが宣告する。


ひとつ教えておいてやるって…、今度は一体何なんですか!?
今のままじゃ、何度時空を越えようとしても無駄? …な、なんで? どうしてですか?
………はぁ!?
さっきみんなが私から応龍様の神気を祓ったのは………わざとぉ!?
どうしても帰りたければ、八葉全員が協力できないようにするしかないって…それって…それって、もしかして…、誰かひとりを選ばなければ、帰れないってことじゃ………ない、ですよ…ね? ね!?
…察しがいいな?………ってことは! みなさん本気で!?





や――っ! 助けて、おか―――さ―――ん!!

照れるとかなんとか、すでにそういう次元の問題じゃないでしょうが! うわぁぁん!
私の意思とか、選択の余地とか、そういう人権的事項が全く残されてな―――い!!





…龍神様…! 龍神様ぁぁ! まだ遅くないなら、これが最後の願いごとです…!







―――お願いだから、この状況を何とかしてぇぇえっ!!






ドップラー効果つきで叫び続ける私に対し、心なしか疲れたように神々しいお声が降ってくる。




「『保留』」

………いやあぁぁぁああぁぁ!!




当面はあきらめて、要求を受け入れろと言わんばかりの最後通告。
あまりと言えばあまりな神のお答えに滂沱している間にも、目の前の神泉苑はみるみる遠ざかってゆく。





―――かくして。
強制連行から始まりを告げた私の京での生活は、強制連行によって新たなる幕を開けたのだった…。



To be, or not to be. That is a question. (選択すべきか否か、それが問題だ。)←誤訳
壱萬打のとき皆様に押し付けさせて頂いた「終わりよければ?」の別バージョン、星の兄妹EDの拙宅版を想定してみました。…結果はご覧のとおり、さらなる受難の結末に。あー…、私の話ってこんなパターンばっかしですねぇ。まがりなりにも一周年に献上するお品がこれっていうのはどうなんでしょう…なんというか…ホントすみません。
ちなみに神子ちゃんは気付いていないようですが(というか書ききれなかったんですが(汗))、八葉の協力技を排して神子ちゃんが帰還する方法には、彼らのひとりを選んでその輪を崩すほかにもちゃんとありまして。

花梨ちゃんに同行する気満々の千歳ちゃんと協力しあうという方法が残されています。つまり事実上は八択ではなく九択になるわけです(←殴)

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