映像実験室
一脚ステディカム
 
  「ステディカム」をご存じだろうか。一時期はハリウッド映画でしかその映像を見る事は出来なかったが、現在では民放のテレビドラマや情報番組などでもその映像を見ることが出来る。
  ハリウッドの撮影スタッフが日本のそば屋の「おかもち」をヒントに製作したとも言われている、特殊撮影用機材だ。
  例えばある女性が殺人犯に追いかけられるシーン。カメラマンが殺人犯と同じように逃げる女性を追いかけて撮影すれば、殺人犯の見た目の映像が撮れると思う。しかし実際はブレブレで、逃げる途中で階段を登ったりしたら、もう何が映っているのか分からず、それは見た目どころの騒ぎではない(それが味だ、という人もいるがね)。そこで「おかもち」のあの安定性のあるショックアブソーバーのギミックをカメラに取り付け、カメラマンの手ぶれを最小限に押さえ、スムーズな動きを再現したのが「ステディカム」である。
写真 ステディカム
写真 ステディカム
  そのステディカムの動きをお手軽に再現出来ないものか、と僕は考えた。ステディカムやおかもちの様なスプリングを個人レベルで作成するのは技術的にも無理だった。そこで思いついたのが「やじろべえ」である。 
図 一脚ステディカム
図 一脚ステディカム
  「やじろべえ」は必ず垂直に立つ。足が1本しかないのに直立出来るのは、そう、「重り」のおかげだ。カメラを支える点を1点にし、下に重りを付ければ安定するのではないか。その仮説のもとに製作されたのが「1脚ステディカム」だ。
  (左図)のように一脚の下にカメラより少し重い重りを付けた。支点は重さの中心より少し上の部分を片手で握る。初動の瞬間にカメラが傾いたり被写体を外したりしたが、それはコツを掴んで簡単にフォローすることが出来た。当然ノーファインダー(ファインダーを覗けないので画角を確認出来ない)になるのだが、針金でフレームを作り、あとは勘でフォロー出来た。僕は足はそんなに速くないが、全力疾走に近いスピードで走りながら撮影しても、それなりのスムーズな動きを撮影出来た。
  
  そうして、僕はハリウッド映画にしかなかったスムーズな手持ちカメラ移動を手に入れた。 
  
  * ちなみに、右の写真の機材はグライドカムと言って、原理は一脚ステディカムと同じ。最近ではこのような特殊機材がアマチュア向けにも発売されている。下部に付けるウェイトの数を調節することによって、たいがいの民生機カメラに対応可能。グリップの部分にはスプリングではなくベアリングをかますことで手振れを抑えているようだ。プロの現場でも、コスト削減の為に民生機のデジカムが頻繁に使われるようになり、必然的に特殊機材も安価になってきたのだろう。
グライドカム
写真 グライドカム
<使用作品> ○「君は天使だ!ゆかりちゃん」1991年 8m/m(未完)
 
サンプルムービー
「君は天使だ!ゆかりちゃん」より
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