30/06/2002
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14/06/2002
大韓の民意 2試合 仁川 晴れ 決戦の日である。連れが帰国したFさんと午後1時半に待ち合わせ。街へ出て、スンドゥブを食べる。かなり辛いが出汁がよく効いていてなかなかおいしい。30年の歴史がある店だそうで、少々値段も高い。品のいいアジュンマが何人か働いている。 そのまま僕が泊まっている宿の隣にあるホフ(ビール居酒屋)へ行き、15時半からの日本戦を観戦。 日本 2-0 チュニジア。最初アイスティーを頼んだが韓国独特のアイス***は甘いということを忘れていた。甘ったるくてなかなか飲めない。僕たちのすぐ横では韓国代表の赤いTシャツにジャケットという出で立ちの欧州人らしいオヤジがビールを飲んでいる。試合の方は日本が支配してはいたが決定機はなかなか訪れない。じっと画面を見ているうちに前半が終わり、やはり緊張して喉が渇くのかあんなに甘ったるくて飲めそうもなかったアイスティーもなくなってしまった。とりあえず、前半を見る限り、1位か2位か分からないがグループリーグは抜けられそうな感はした。
後半がはじまる。市川そして、森島が出た。「森島は長居だから活躍しそうだ」などと思いはじめる間もなく後半開始早々ファーストタッチで点を決める。これで決まりだろう。チュニジアが日本から3点とるとは考えられない。安堵する僕たち。カスビールのあいかわらず薄い味も、はっきりとわかってきた。日本はますます良い。森島が再び頭でゴールを脅かすがポストに嫌われる。これなら欧州のファンも納得する試合なのではないだろうか。「ここまで来たんだなあ」と感慨にふけっていると市川からいいタイミングでクロスが。そこに中田が飛び込みヘッドで2点目。決まった。となりの親父も拍手をしてくれて、いつのまにかいた韓国人のオヤジもサインを送ってくる。 試合終了。ついにグループリーグを抜けた。次の相手は宮城でトルコ。これは、なかなか良い試合になりそうだ。その日、僕は大田に行くつもりだから、つまり今日ポルトガルが1位抜けしてイタリアとの試合を見に行くつもりだから、その試合は高速バスターミナルで見ることにしよう、と思う。 店を出て鐘閣駅から1号線で仁川行の電車に乗る。そろそろ通勤帰りの人々が乗っているということもあるだろうけれど、なにより今日は韓国戦。レプリカや赤いRedsTシャツを着たファンが多い。試合開始3時間前でこの混雑というのは試合を見る人もだが、どう考えても、仁川のスタジアムそばで盛り上がろうという人も多いのではないだろうか。僕としてはポルトガルと韓国が抜ければ丸く収まるわけで、とりあえずそういった順位争いを加味したフットボールを見られれば。と、考えながら、プピョン(富平)駅まで混雑する車内のつり革につかまっていた。 プピョン駅に着き仁川市営地下鉄に乗るために地下のホームへ降りていくとそこはたいへんなことになっていた。大韓精神がいかんなく発揮された無秩序の中の秩序。目前のことに集中する若者を中心とした韓国人であふれている。誘導やら入場規制はない。とにかく誰でもそこまで行って来たら乗る。それだけだ。こちらも遠慮していては乗れなくなってしまう。とにかく来た電車に乗り込む。東京の通勤電車の混雑よりひどいと連れがいう。この時間でこれだけの人がいるということは、やはりどう考えても試合を見に来た人だけではない。スタジアム周辺で行われるパブリックビューイング目当ての客だ。とんでもないことになってしまった。
ポルトガル 0-1 韓国。今日もドイス・ボランチのポルトガルだが韓国の大声援の超アウェイの中、なかなか形を作れずに韓国に押し込まれる展開。フィーゴもぴったりとマークされてなかなか前で仕事をさせてもらえない。そんな中、ジョアン・ピントがレッドカードで退場。やはりあの韓国の応援に圧倒されたのか。結局、前半は0対0。とにかく勝たねばならないポルトガル。10人なったが、なんとか得点を、と思う。もちろん韓国にも抜けてもらいたいのはやまやまなのだが…。気になったのが全州ではポルトガルの応援をしてフィーゴ、フィーゴと叫んでいた日本人の何人かの若者が今日は大声をあげて「て〜はみんぐっ」と叫んでいたことか。どっちでもいいのだろうか?。考えてみれば、僕も両チームが抜けることを願ってはいるのだが。 と、そんなハーフタイム、あたりでアメリカが0対2で負けているという報が入る。このまま0対0でいけば、韓国が1位、ポルトガルが2位。韓国からすれば1位抜けした場合イタリアとの対戦となるのだから、ここはポルトガルに負け2位となりR16でメヒコとの対戦を選ぶということも出来る。なんとも、非常に贅沢な状況になってきている。そのうえ、国をあげてあれだけ敵愾心を燃やしていた憎んでも憎みきれないアメリカを蹴落とすチャンスだ。さらに世界中に少なくはないであろうポルトガルの試合を決勝トーナメントで見たいと願う人々の望みもかなえられる。 負けることを良しとしないのはどの国でも同じだが、この場合は違う。ポルトガルに負けたところでフットボールファンは韓国が弱いなどとは云わわけがない。逆にフットボールを分かっているチームとして尊敬の念を持つだろう。負けて得を取るということもある。これぞフットボールなのだ。 後半、ポルトガルに二人目の退場者が出る。これで9人になってしまった。だが、点は取れなくてもなんとか守り切れるのではないだろうか。そう、どこにでも携帯電話もテレビもあるこの時代。情報は行き渡っており、今何をすべきかは両チームとも、分かっているはず。必要な結果は、もちろん引き分けである。そして韓国も贔屓する僕としては、ここは負けろ、と願っていた。もちろんR16を考えてだ。
韓国の得点からしばらくしてFさんから電話が入り、すでにスタジアムを出て、待ち合わせ場所にいるという。彼は信じられないモノを見てしまったと呆れて出てしまったようだ。僕ももうそろそろ出ようかと思っていたので好都合だ。そそくさとスタジアムを後にして、地下鉄に乗りプピョンへ。すでに仁川周辺にいた韓国のファンが途中の駅で乗ってきて車内はかなりの混雑になっている。プピョンの駅もすでにたいへんな人だかりだ。僕たちは一駅仁川方面へ戻って座って帰ることにした。 車内では放心状態で口数も少なかった僕たちは、約45分後チョンノサムガ(鐘路三街)の駅に到着。あたりは、覚悟はしていたが案の定、お祭り騒ぎ。「てー・はん・みん・ぐ」の大合唱があちこちで起こり、鐘路は車道を走り回る若者たちをバスと車が掻き分けて進んでいくといった按配。運転手は怒っているのではなく、クラクションで「てー・はん・みん・ぐ」である。花火があちこちで打ち上がる。ここぞとばかり、爆発する人々がそこにいる。
試合を冷静に振り返ってみれば、さすがにレッドカード2枚で9人なってしまっては試合になるわけがない。それよりなにより初戦の対戦相手のアメリカを舐めていたということもポルトガルの失敗だったといえる。これは正当な結果なのかもしれない。強いものが勝つという正論からすれば。 だけれど、それでも、だ。この結果は不幸としかいいようがない。喜んだのは韓国人だけ。ポルトガル人と今のポルトガルの試合をひとつでも見たいと願う人は悲嘆に暮れ、アメリカ人のほとんどは「So what?」でしかない。そしてR16の試合のひとつはゴールドカップの決勝戦だ。いや考えてみれば、韓国にとってもR16の相手がイタリアというのはどうなのだろうか。わからない。しかし、すごいことになってしまった。 そんなことを考えてはみたものの、とにかく、お腹がすいたので、アグチム(アンコウの唐辛子炒め)を食べる。辛いがおいしい。食べならがら話していたのだけれど、もしかしたら日本が勝たずに引き分けで抜けていたら韓国は勝たなかったのではないか、と。これはありえる。大韓精神が日本より下になることを許すわけがない。日本が勝ったなら勝利しかない。日本より下になることは断じて許されない。総得点では負けるがそんなことは関係ないのだ。
旅館への道すがら、まだ花火が飛び交い、「て〜はんみんぐ」の声は朝が来るまでソウルの街にこだましていた。 |