30/06/2002
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28/06/2002
親切応援検証 0試合 東京 雨 韓国と日本の観客席での大きな違いのひとつに僕が命名した「親切応援」が存在しているか否かという点がある。ここで論を展開する前に、まずこの“親切応援”を定義しておきたい。 これは韓国の各会場のカテゴリー3の席を中心に韓国人の大集団が試合を行っている韓国以外の他国チームを応援するというものだ。少なくとも100人。多ければ1000人近くに達する。日本でも各国のキャンプ地の自治体が自主的に応援を行ったということだけれど、この“親切応援”にはまったくそういったところがないように思う。 この“親切応援”は選手や応援のためにやってきたそれぞれの母国のファンがどう考えるかという側面がひとつあるが、僕は選手でもなく、韓国ラウンドで見ている限り母国ではないわけなので、この視点で語ることはできない。よって僕が取りうる立場はひいきする国のファンとしてまたスクエアな立場で現場で観戦しているフットボールファンの視点しかない。ここでは、この視点から“大韓民国における親切応援”について見ていきたい。 ◆親切応援との出会い◆ 僕が親切応援を意識したのは全州でのエスパーニャ対パラグアイ戦だった。 実はこの試合の前、水原でアメリカ対ポルトガルを見ていた時は「やけにポルトガルの応援をしている韓国人団体が多いな。あ、アメリカ側にもいるな」という感想しかなかった。親切応援団の位置が遠かったということが大きな理由であると、今考えると思う。 しかし全州の試合ではエスパーニャ側の親切応援のすぐ横のブロック席だったため彼らの一挙一動をつぶさに、かつ否応なしに観察させられることになってしまったのだ。彼ら、エスパーニャの親切応援団はエスパーニャとはほぼ縁がない「黄緑」色のTシャツに身を包み全州のゴール裏2階席バックスタンドよりのブロックを占拠していた。試合前に彼らはまず横断幕を張ろうとする。それは僕がいるブロックにまで広がる長いもので、僕の席からは見えているゴールラインが見えなくなる手摺りの上部にくくりつけようとしていたのだ。これを見た瞬間「日本にもこんなのがいるけれど、韓国も同じようなものだな」と苦笑いした僕だった。さすがにこれには2階席の前の方に座っているイングランドのユニフォームを着ている外国人たちが文句を言い係りのボランティアが止めさせることとなった。 試合前には別の驚きもあった。なんと親切応援団はあの僕が大嫌いな韓国国家代表応援でおなじみのバンガーズをあたりに配り始めたのである。僕は正直ショックを受けていた。「ワールドカップまで来て、あの極めてフットボール的ではない、ゴミのような応援グッズの耳に痛い音を聞かなくてはいけないのか」と。 それなのに、バンガーズである。メガホン応援以上の「バン」「バン」「バン」「バン」と耳に痛い音をずーっと聞き続けなければいけないのだ。苦痛である。おまえらは手がないのか?。僕にはフットボールへの冒涜と映ったが、何も知らない親切応援団は楽しそうだった。僕は耳が痛くなって翌日までたいへんだった。横にいたイングランド人と思しき4人組男性は顔をしかめて耳を抑える始末。イングランドの応援は手拍子が中心なのでなおさらだろう?。 本当に楽しければいいのだろうか?。そう、韓国の親切応援もみんな楽しそうだ。おまけに「母国からの応援が少ないチームを応援してあげるのだ」という自らの優しさにも酔える。いや、おそらく彼らにはそんなナルシズムはなかったかもしれない。純粋に遠いところからやってきたチームを応援しようという気持ちだけだったのかもしれないが。 一方、この日は、相手のパラグアイ側にもやはり親切応援集団がいた。こちらは赤白の縦縞のレプリカに身を包み、試合の前から「ぱらぐあ〜い」と声を出しながらピョンピョン飛び跳ねている。遠めに見るとそれはほとんど女子学生の集団だった。これも不思議な光景であった。 試合がはじまると、エスパーニャもパラグアイも人数は少ないものの本国人の応援集団はいたのだが、彼らの応援はほとんどこの親切応援によってかき消されてしまっていた。エスパーニャの場合はあのバレンシアの名物応援おじさんマノーロが仕切る応援もあったのだが…。もっともマノーロおじさんはその後、親切応援のバンガーズを自らの応援にも取り入れていたという事実もある。 ◆親切応援と接して◆ ここまで“親切応援”と僕の衝撃的出会いから全州の例を見たきたが、こういった“親切応援”はすべての試合で組織化されていた。そこで見られたいくつかの事実や考えられることをまとめておきたい。 まず、この親切応援集団はどこから生まれてきたのだろうか。参加者を観察していると中学生ぐらいから大人までと幅広い年代に渡る。実際に話を聞いていないので、憶測でしかないが、韓国は地域社会の結びつきが非常に強いことから考えて、地縁および学校や職場、また宗教団体などを中心に組織化されたのではないかと思われる。 彼らの特徴はとても「楽しそうである」といったところにもひとつの特徴がある。何人かコールリーダーと思しき人間が前に出ていろいろな応援コールを行う。基本的には国名を連呼するというものだが、興が乗ってくるとなぜか、大韓民国の応援コール、となり「てはみんぐっ」の部分を該当する応援国の名称に変更するというパターンが多かった。あの全員ヘッドパッドもここぞとばかり楽しそうに行っている。 応援グッズについては、先のバンガーズ以外にも、当該応援国の国旗、そろいのTシャツやレプリカ、マフラー、バンダナなどなど応援グッズには事欠かず、横断幕も用意してくるという念のいれようである。昨日、今日の計画ではない。周到に用意され、それなりの資金を元手に行われている応援であるという点が大きなポイントなのだ。 また注意したいのは彼らの位置である。カテゴリー3のそれぞれのTSTを買った人たちとは離れたブロックに彼らは集中していた。その位置あたりが、KOWOC発売分なのだろう。ワタシが全州で彼らのそばになったのは、エスパーニャ対パラグアイという後でバラで購入したチケットだったからだ。実際僕が購入したポルトガルTSTのチケットでの席には旗などは置いてあったが、この“親切応援”は離れた位置にいたという事実がある。 はたして、こういった親切応援は必要だったのだろうか?。先のエスパーニャのマノーロおじさんのように当該国からやってきた人間が取り込んでしまうという積極的な行動に入ることも可能だが、基本的には応援してくれる韓国人がいるという風に映るということは選手にとっては悪くはないかもしれない。が、あまりにフットボール的ではない応援パターンは、他の観客からすれば迷惑といっても良い代物ではあった。そして、一番の問題点はこの“親切応援”のブロックから、韓国では頻繁だったウェーブが起こっていること。つまらない試合、大味な試合でウェーブが起こるのはしょうがないとは思うが、非常に重要な真剣勝負をしているピッチを尻目にウェーブが起こるとしらけることこの上ない。フットボール的緊張感にあふれていたアイルランド対エスパーニャ戦のウェーブ、ウルグアイが必死に追いつこうとしたセネガル戦などでのウェーブには怒りさえ覚えた。 韓国でのワールドカップでは、配られた無料券で入場してきた高校生、中学生の“開いてるところに勝手に座る”という韓国式の行動が試合中に行われ観戦の邪魔になったりもした。この無料券も問題になっていたが、とにかく“親切応援”には、いまだ謎の部分が多い。彼らの心情は?、動機は?。とにかく「彼らだけはとても楽しそうだった」ということだけは事実なのだが。 |