山崎摩耶氏の講演

堂垂
それでは、本日の講演会を始めたいと思います。本日は土曜で、しかも桜満開ということで、皆さん公私共々お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
地域ネット松戸は、松戸市内の専門職で、松戸市の医療・保健・福祉の連携を目指すということで、昨年の6月に立ち上げた会です。第一回が森のホールで、「介護保険施行2か月を振り返る」ということで開催しました。昨年の11月には、「介護保険その後、現場からの報告と提言」ということで、実際に介護保険をどう良くして行くか、運用・活用していくかということで、厚生省の方にも来ていただいて討議いたしました。
本日は、日本看護協会常任理事の山崎摩耶氏をお招きして講演会を開催いたします。演題は、「介護保険下での訪問看護・在宅ケアの現状と課題」ということで、現場で活動されている方々にとっては、非常に興味をそそるお話だと思います。
山崎摩耶さんのご略歴を紹介させていただきます。1968年に北海道大学の看護学校を卒業されて、その後保健婦の資格を取られ、以後20年余にわたり、現場で訪問看護・在宅ケアに従事されてこられました。
90年に帝京平成短期大学の助教授になられ、95年の6月から社団法人日本看護協会の常任理事をされております。
介護・福祉・医療の分野において非常に有名な方です。私個人はプライマリ・ケア学会で先生のお話をお伺いしておりますが、非常に元気の出るお話で感銘した覚えがあります。
著作も大変多い方で、『優しい長距離ランナーたち』、『これからの訪問看護ステーション』、『在宅ケアの知恵袋』、それから『訪問看護ハンドブック』、これらは現場で持たれている方もたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
また、著作活動の傍ら、厚生省の医療保険福祉審議会の委員、及び高齢者介護自立支援システム研究会委員等歴任されております。多岐にわたって活躍されていて、しかも看護協会の常任理事ということで、本当に私たち現場で活動している人間にとっては、心強い話が聞けるのではないかと期待しております。
本日は1時間余り先生にご講演いただきまして、そのあと30分ほど質疑の時間をとります。
皆さんから、こんなところで苦労している、とか、厚生労働省にこういう点を改善するように進言して欲しいとか、そういうことも含めて、活発なご意見を伺うことを期待しております。それでは、山崎摩耶さんよろしくお願いいたします。

山崎
ご紹介いただきました山崎でございます。
介護保険がスタートして、ちょうど1年がたちました。後ほど皆さんからも松戸の現状のお話を伺えるかな、と思っておりますが、各新聞社でもそれぞれ独自に調査をしていますし、各関係団体も介護保険1年の総括、実態調査をしております。
各紙の最近の見出しを見ますと「介護サービス利用伸びず」という論調が目に付きます。介護保険1年での自治体の調査等を見ましても、家族で看るという方が、まだ根強いようです。
もう一つの論調は、在宅のサービスの利用が低調である、ということです。
利用者が施設に流れているのですが、施設の数が足りているのかというとそうでもないようです。在宅より施設のサービスは利用料の割安な感があることと、施設に入る安心感を反映していると思います。後ほどお話が出るかもしれませんが、在宅ケアというのは、安心感と割安感、このあたりが一つのキーワードになろうかと思います。
それから、三つ目の論調として、やはりケアマネージャーに関することでして、「ケアマネ激務、施設も不足」「ケアマネージャー待遇に不満5割」「件数多いが報酬は安い」と、いろいろ出てまいります。
四点目は自治体についての論調です。「試行錯誤の自治体」。これは外国の研究者の方と話をしますと、「日本はすごいね!」という話になるのですが、3,200の区市町村が一斉にスタートをしました。こういうことは、ほかの国では考えられないそうです。
一斉にスタートを切りましたので、3,200の区市町村それぞれにトップ集団にいるところとそうでないところ、これはばらついているのが当然ですが、各自治体も試行錯誤の状態にあるようです。中には、たしか千葉県下だったと思いますが、家族手当なるものをやろうという"おさぼり"自治体も出てきているようです。また、"終の棲家"の選択は福祉で、というふうに、しっかり整備しようという自治体も中にはあるようです。
その意味では自治体ではサービスの努力不足というようなこともありますし、保険者の側からしますと、認定の見直しもして欲しいというのが6割に至っているようです。
国の制度への要望という点では、これは皆さんも同じご意見ではと思いますが、大まかに二点に集約されております。"低所得者対策"と"痴呆の対策"といったことが、やはり上位に挙げられています。
結論を申しますと、介護保険がスタートして1年では、まだまだ私たち国民の意識はそう簡単には変わっていない、といことではないかと思います。
片方で家族の負担が重いといいながら、家族自身がなかなか外部サービスを使うところまではいっていない。結果的に、介護は嫁といったようなことを周囲が当然視する。こういう地域もまだまだあるのだなと思います。ですから、見込みほど利用が進んでいないという市町村が40%もありますし、身内意識というのもまだまだあるようです。先ほど触れさせていただいた家族への現金給付は、なんと67%の市町村で実施をしているそうで。
ですから、1年ではまだまだ意識改革は進んでいないのだな、という感じがいたします。
それにしても、非常に革命的な制度が動き出しているのだ、と私は思っております。
厚生労働省からは都合のいい数字しか出てきていないようにも見えますが、それも一面ではやはり正しい数字なのだろうと思います。
利用者の方々の満足度は高い、という点や、今までサービスをあまりお使いにならなかった方たちにとっては、サービスが利用しやすくなった、という点。これらは真実だろう思っております。いずれにせよこの新しい制度が、賛否両論といいますか、まだまだ努力目標を持ちながら、高く評価される側面がある一方で、まだまだ見直し改善が必要な面もある、というのが1年経った今日の現実でしょうか。

これはもう既にご承知の数字ですが、昨年6月の段階で279万人が認定を受けたということです。また2回目の更新も始まっております。在宅と施設の比率を見ますと、在宅サービスは進んでないということですが、6割が在宅でケアを受け、4割の方が施設で、という数字になっております。

次に要介護度の分布についてです。これはご自分の現場と比較をしていただきたいと思います。279万人の認定結果ですが、皆さんはこの数字をどんなふうにお受け止めになるでしょうか。"要支援"が12.6%でした。"要介護1"が23.9%、"2"が17%、"3"が13.6%、"4"が14.6%、"要介護5"が13.1%という分布です。
私の感覚で言いますと、これは後ほど数字が出てまいりますが、今までの寝たきりとか要介護のお年寄りというのは、介護分類でいくと3、4、5ぐらいに集約していたのではないかという実感があります。
が、意外なことに、要支援、要介護1合わせますと、これで3分の1を超えているという数になります。これがおそらく、世界で先陣を切ったドイツとの大きな違いでしょう。ドイツは日本流に言いますと、要介護3、4、5の部分しかカバーしておりませんので、わが国の介護保険はドイツと比べかなり軽い方々までサービスを提供していると思われます。279万人で非該当というのは5%に過ぎなかったという数字です。
サービスの利用量については、平均しますと支給限度額に対して43.2%の使われ方です。これを要介護度別で見ますと、要支援の方で支給限度額に対し54%ぐらいサービスを使っています。要介護5ですと44.6%ぐらいしか使われていません。このことの要因にはいくつかあるでしょう。世の中で一番多く言われているのは、利用料負担についてだと思いますが、果たしてそれだけであろうか、ということも考えられます。
一方サービス事業者の登録状況については、ご当地松戸ではいかがでしょうか。昨年の今ごろと現在では、介護保険のサービス事業者の件数、特に在宅サービスの件数は伸びていますか?あとでお話を伺わせてください。
昨年の4月30日と今年の1月を見ますと、昨年の4月30日では、19万6,221箇所というのが社会福祉医療事業団の"ワムネット"に登録をされたサービス事業者の数です。施設も含んでおります。この1月の数字を見ると、約32万箇所となります。
たとえばアメリカで、メディケアで施設もカバーするようになったら、ナーシングホームが雨後の筍のようにできたとか、ドイツの介護保険でも、介護保険がスタートしたら、それまで8,000箇所ぐらいだった"ゾチアルスタチオン"といわれている在宅ケア事業所が倍ぐらいになった、と聞いています。わが国でも今はもう32万を超えるぐらいの事業者が手を挙げております。とりわけこの1年を見ておりますと、某コムスンさんとか、株が上がった、下がった、事業拡張したの撤退したのと、マスコミを賑わしましたが、大手のものからNPOまで大変幅広く、サービス事業者の伸びというのはやはり著しいと思います。

今日も来ていらっしゃると思いますが、この居宅介護支援事業者、ケアマネージメント機関はだいたい2万2,000箇所ぐらいというのが、現時点での数字だというふうに認識をしております。
今日、私が主に話題にいたします訪問看護というのは、去年の4月の段階で約3万箇所が登録されておりました。
今年の1月で見ますと、5万9,000箇所です。現時点での訪問看護ステーションの開設は5,100箇所をちょっと超えたぐらいです。5,000箇所というのが新ゴールドプランの目標値でしたので、ちょうど12年度で、厚労省の目標値に達したことになります。そうすると今年1月の5万9,000箇所、という数字のそのほかの箇所は、どこが訪問看護をしているのかと言いますと、これは病院、診療所の訪問看護がここに登録をされているということです。
介護保険スタート時点の厚生省のデータですが、平成11年の4月と12年の4月の1年間を見ても、平均するとスタート時点でも既に1.6倍ぐらいにサービスが増えていました。中でもやはり訪問介護が2.3倍ぐらいだったことと、福祉用具のレンタルが同様に2.3倍ぐらいでした。
ですが、訪問介護も例の三つのタイプの報酬が、蓋を開けてみると使われ方も様々だったようで、いろいろ課題があると思います。
一方急増しました福祉用具レンタルについて、これもつい先般業界の方とお話をしたところ、「一番困っているのは私たちではないだろうか」とおっしゃっていました。収入が激減だそうです。何よりもネックになっているのは、ケアマネージャーさんが福祉用具とか住宅改修のことをよくご存知ないので、ほとんど使ってもらえていない点だそうです。
もう一つは給付管理がうまくいってないので、「働いた分だけ収入になってない」という話で、「業界全体で億の単位で損失が出ている、厚生省を訴えたい気分です。」と業界の会長さんがおっしゃっていました。
介護保険がスタートするまでは、ご存知のように福祉用具のレンタルというのは市町村がやっていました。
それこそ事業者にとってみると、行政が相手でしたから、即お仕事、という具合になっていたわけですが、今はそうではなくなってきているということです。ある方は、福祉用具のレンタルや販売が急増するのではないかと思い、ベッドをたくさんストックしたそうです。ですがそれが全然掃けてないというようなことをお話なさっていました。
ですから、事業者数、サービスの量は増えていますが、それをどのように運用してくのかというあたりでは、単に利用料の問題だけではないいろんな課題がありそうに思います。
介護保険がスタートして半年後ぐらいの2000年11月に能率協会が行いました、事業者の方々がどんなことでお困りかという調査では、約半数の事業者が利益が出ない、と答えておりました。それから事務作業が多すぎて他の業務に支障をきたしている、ともあります。訪問看護ステーションなども、これにあてはまるのかなと思いますが、40数%の事業者がこう回答しています。
それから介護報酬の請求に非常に手間がかかっている、との回答。請求どおりに報酬が入らないこともあったようです。
それから新規の顧客を獲得出来ない、とか、利用者から逆に必要以上のサービスを要求される、などの回答もあります。
庭の草むしりの問題などいろいろ言われましたが、サービス提供者側だけではなく、利用者側もどういうサービスをどこまでしてくれるのかということがよくわからず、いろんなご要望がおありだったようです。
それから、人材のところでは、ケアマネージャーが不足しているとか、優秀な人材が確保出来ない、ヘルパーの質が向上出来ない、教育がうまくいってないとか、効率よいヘルパーの派遣方法がわからないといった、お仕事の基本の悩みもあったようです。
また、利用者とのトラブルとか、ほかの事業所にいるケアマネージャーとの連携がうまくいかない、こういう内容も出てきていました。また片方では事業所の立場から見ると今後の国の方針が見えないとか、新規に事業を立ち上げたいがどの程度需要があるのか見込めない、といった先行きの不透明感、こんなことも調査では出ていたようです。
少し金目のお話で居宅関係の介護給付費の支出についてお話します。国保中央会が発表したものですが、たとえば昨年7月のもので見ますと、訪問介護というのは1か月で200億円ぐらいずつは給付されております。
それから、訪問看護は81億円でした。ケアマネージャーに支払われたお金は93億円、ということです。
先ほど、1年たってやはり在宅のサービス利用がそう伸びてないね、というお話をしましたが、徐々にではありますけれども、在宅サービスも使われ始めてはいるようです。
次に施設サービスの給付費と在宅に支払われたお金ですが、当初の5月と7月の比を見ますと、施設対在宅ではやや在宅のほうが伸びてきて、2対1ぐらいになっているということです。
これを国の予算ベースで見てみますと、2000年度、平成12年度はだいたい1か月でこのぐらい使われるだろうと国が予算化していた数字があります。施設サービスは2,182億円、一方在宅は1,273億円ぐらいだろう、と1か月平均で予算を立てておりました。
この予算を100%としますと、確かにスタート当初の4月で見ますと、1か月予算対比、在宅は47%ぐらいしか使われておりませんでした。
ですが、8月で見ますと、予算対比で80%ぐらいまで在宅は伸びてきています。
一方施設は4月時点で既に71%利用されています。ですからこれは既存の施設がそのままスライドしてきているのだろうと思われます。介護療養型だけは若干別ですが、老健、特養はそうなのだろうと思います。
8月の利用で予算対比93%ぐらいですから、施設は順当に、予算ベースでもそれなりに使われてきて、やはり施設が満タンになってきているのだな、ということです。
施設と在宅双方で関連してまいりますショートステイについては、これはこちらの松戸市でも、いろんな事情がご報告されているだろうと思いますが、施設の側から見るとショートステイのベッドは空いている、ですが、利用者から見るといつも一杯で使えない、というミスマッチがあるような感じがしております。
あとはデイケア、デイサービスなども使われているところとそうでないところがあるようです。それからデイケア、デイサービスでの新たなシチュエーションとして、第二号被保険者の利用があります。ご存知のように今までデイケア、デイサービスの利用者というのは圧倒的に高齢者でしたので、今日は施設の方もお見えかもしれませんが、プログラムそのものがほとんど高齢者、痴呆対応だと思います。デイですからベッドはいらなかったわけですが、第二号被保険者の、たとえばお若い難病の方などがデイケアに行きますと、従来のプログラムでは対応困難な、医療依存度の高い方もいらっしゃるはずです。
確かに移送サービスに耐えられる身体レベルの方なのですが、ちょっと疲れて休みたいと思っても、デイのところにはベッドはないし、プログラムも現状のままででいいのでしょうか。私がお話伺った方では、1回行ってみたけれど、あれは僕にはフィットしませんでした、という40代の方がいらっしゃいましたが、そういう新たな状況というのもいろいろ出てきていると思います。
給付費レベルで見るとこういう推移で、結果的には先ほども言いましたように利用率で43%です。
この数字を見て一番胸を撫で下ろしているのは厚生省の方でしょうと思います。12年度の予算はそのままいきましたね、ということでございます。

次にご紹介するのはサービスの種類別の苦情でございます。
直近のものでは国保中央会が全国レベルで、どういったところの苦情が多かったかという事業者別の数字を出しております。サービスの量からいうと当然という気はしますが、やはり国保中央会がこの前発表したものでは訪問介護に関する苦情が一番多くありました。
スライドは東京都の国保連合会のデータです。
一つはサービスの質に対する苦情。二つ目は従事者の態度。三つ目に管理者の対応。四つ目に情報、説明不足。その次が具体的な被害・損害。利用者負担。契約手続き関係、その他、というふうに苦情の内容を分類してあります。
はじめに居宅介護支援、ケアマネージャーの関係です。東京都の国保連合会に寄せられた苦情では、居宅、ケアマネージャー関係では539件ありました。
一番多かったのは、従事者の態度というので30%でした。二番目がサービスの質についてです。ケアプランの関係だとか、そんなことが言われているのでしょうか。三位が情報、説明不足でした。
以上がケアマネージャーへの苦情の順位です。
訪問介護への苦情は771件で、やはり東京都の調査でも一番多く寄せられた苦情でした。
第一位に挙がりましたのがサービスの質でした。やはり利用者も大したものですね。もうはっきりとご意見をおっしゃるようになってきた。大変いいことだと私は思っています。
第二位が従事者の態度で20%。そして第三位が管理者の対応で、これが11.9%です。第四位はほぼ同数の11.3%ですが、利用者負担に関することでした。
三番目に訪問看護に対する苦情ですが、幸いなことに69件しか寄せられておりませんので、私はほっと胸を撫で下ろしております。しかし訪問看護で言いますと、69件中の36.2%も占めた第一位は、サービスの質に関する苦情でした。
脇を締めてまいりましょうね、とこれを見てから私はあちこちで申しております。
訪問看護については、8年の歴史がありますので、例の250円ステーションの制度が出来て、利用料を頂戴することになったときから、利用者はいろんなことをおっしゃっています。
そういった中で第一位にサービスの質ということで苦情が寄せられております。第二位が13%と下がりますが、従事者の態度について。第三位が管理者の対応という苦情でございました。
通所介護に対する苦情は165件でしたが、第一位はサービスの質で38%です。それから、利用者負担に関するものが15.8%で第二位です。訪問看護と通所介護は金額的にお高いサービスになっていましたから、そのことが出てきました。
それから、情報説明の不足というのが、通所介護では第三位に挙がってきています。
そして四番目に従事者の態度ということでございました。
ショートステイに対する苦情は127件寄せられましたが、ショートについてはちょっと特徴的で、平均的に苦情が寄せられております。サービスの質に関するものが第一位ですが、19.7%です。それから第二位は説明情報の不足、次に管理者の対応。そして利用者負担、契約関係、その他と続きます。
介護保険の施設介護に関する苦情では、これは三つの施設をくくってあるようですが、342件寄せられております。
これについては在宅サービスと全く異なった苦情が寄せられているようです。
一番多かった31%を占めましたのは、利用者負担に関する苦情でした。それから二番目は管理者の対応と情報説明不足で、そして次にサービスの質に関する苦情、というふうに寄せられています。
私の友人は、ある県の苦情処理委員会のメンバーなのですが、看護職が苦情処理委員会のメンバーに座るなどということはかつてなかったことです。苦情処理委員会そのものが新しい仕組みですが、そういったところで仕事をすると大変おもしろいことがわかってきた、と言っていました。
苦情処理委員会では、苦情が持ち込まれたものを施設に調査に行き、そこで現場でのやりとりをして、ご指導申し上げているのだそうです。「何がおもしろいことなの」と聞きましたら、施設の場合、利用者ご本人が苦情を言ってくることは少ないのだそうです。施設に要介護のお年寄りをお預けしている家族から苦情が出てくる。
この前も1件、これは新聞ダネにもなりましたが、救急車で病院に運ぶのが遅れて、亡くなられたケースがありました。
ご家族が損害賠償責任を申し立てていらっしゃるようです。
私の友人が調査のためなどで施設に入りますと、家族の方が「特養というところは看護婦さんが24時間いないとこなのですね。介護保険になって初めて知りました」とおっしゃるそうです。
「そうなんですよ」と言いましたら、「やっぱり看護婦さんを増やしてもらわないと、安心して預けられないわ、うちのおばあちゃん」と家族がおっしゃるそうです。
そういったことも、今まで市民の方はわかってらっしゃらなかったわけです。
特に施設関係は、身体拘束禁止規定というのが出来ました。
余談になりますが、あの手引きご覧になりましたか?なかなか綺麗なパンフレットにまとめてくださいましたので、施設関係の方には厚生労働省からもう既に送られていると思いますが。まだの方はどうぞ、厚生省に請求をしてご覧いただきたいと思います。
その手引きにも身体拘束ゼロ、などということが規定に盛り込まれました。そのうち利用者の方ご家族から、お宅の施設では縛っているのか、などということが苦情に持ち込まれるのではないかなという気もします。
東京都は既に施設の監査に入っておりますが、そこで身体拘束の状態がどうなっているか、1項目ちゃんとチェックを始めているそうです。
在宅でもそのうちにそういった課題も出てくるのかなと思いますが。
利用者満足度をどう高めるかというのは、われわれサービス提供者の側から見ると非常に重要なアウトカムです。
介護保険がスタートして、サービスを提供していて、利用者から、ご家族から苦情を1回も言われたことがないという方は会場にいらっしゃいますか?きっと素晴らしいサービスを提供してらっしゃるのでしょうね。それとも無関心なのかもしれませんよ。
私はいろいろ言われたほうがいいと思っています。市民の皆様の前でお話をするときには、いろいろ言ってくださいとお願い申し上げています。「市民の皆さんが言ってくださらないと、医療従事者って鈍感だからサービスはよくならないわよ」と言ってお尻を叩いていますが、われわれも脇を締めていきたいと思います。
質の評価も第三者評価、自己評価それぞれスタートしていますが、やはり利用者満足度を定期的にアンケートしてみる、このぐらいは、なさったほうがいいのではないかな、と思っております。

余談が長くなっておりますが、ケアマネージャーの3回目の試験が終了しましたが、50万人が受験をしたそうです。
合格者は20万人。そのうち、手前味噌で恐縮ですが、保健婦・助産婦・看護婦の看護職は9万5,000人誕生しておりまして、20万人の全体から見ますと、46.7%です。ドクターは1万3,274人も合格してらっしゃいます。
先日ある医療法人で100ベッドの病院をお持ちの院長先生からこんなお話を聞きました。
婦長さんがスタッフに「あなた来年はちゃんとケアマネ試験受けなさいよ」と、3人ばかり目つけて受験させようとしたら、「婦長さん、嫌ですよ。そんなケアマネージャーみたいな忙しい仕事は」とみんなに断られたそうです。
「しようがなくて院長の僕がケアプランをつくって、徹夜しています」とおっしゃっていました。
厚生省では約5万人が実務に就いているのではないか、という数字を出しているところです。
大変口早でございましたが、介護保険の現状について少しお話してまいりました。

今日は主に訪問看護のお話をしたいと思っております。あちこちでお話をしておりますのは、訪問看護、または訪問看護ステーションの役割でございます。介護保険と医療保険の双方の担い手であるわけですが、介護保険が始まって1年たち、今更ながらに、私たち訪問看護婦が地域で医療保険、つまり在宅医療の利用者をどのくらいしっかりサポート出来るだろうか、ということが非常に大きな課題だと今まで以上に見えてまいりました。
その意味では、全国を見るとどのステーションも、利用者の8割は介護保険の利用者なのですが、この医療保険、在宅医療の担い手としての訪問看護の領域が成熟してくことが、非常に望まれているのではないかと感じます。
それからもう一つは、ケアマネージメント機関としての位置付けも非常に重要になってきています。
やはり医療ニーズを十分把握し切れないケアマネージャーの立てたケアプランにおいては、訪問看護が十分使われていないようだ、という話は全国で伺います。
私は看護の人間ですので、だから看護職のケアマネージャー、頑張りましょうね、と、一人でも多くケアマネージメントの実務に就きましょうと言っているわけです。しかしあまりそう言うのは美しくありませんので、職種を超えて、ケアマネージャーであればその専門性を高めていく自助努力はしていただかなくてはいけないのでは、というふうに申し上げております。
ですが、介護保険スタートの前を見ましても、訪問看護婦たちがやっていた業務は、考えてみると、3分の1はやはりケアマネージメント業務でした。ですので、介護保険がスタートして、ある意味でケアマネージメントに火がついたわけですから、今まで以上に地域のケアマネージメント機関として仕事してくことが重要ではないかと思います。
それからもう一点重要なことは、訪問看護ステーションが看護・介護が連携協働する場になっていくということです。
個人的な経験を述べさせていただきますと、訪問看護ステーションの制度をつくる前段階で厚生省と議論をしておりましたときに、私は口すっぱく「在宅ケア事業所にしてくださいね」と申し上げました。これについては、当時は本当に、ヘルパーは福祉のお金、訪問看護は医療のお金で縦割りでしたので、実りませんでした。
当時から厚生省の方は、ヘルパーステーションと訪問看護ステーション、2枚看板を下げればいいじゃないかという言い方をしております。それは介護保険でも実らなかったわけですが、基本的に看護・介護が別々にお仕事をしているのは、残念ながらわが国だけです。やはり訪問看護・訪問介護が一緒に仕事をする仕組み、出来れば同じ屋根の下でということがますます急がれるかなという感じがしております。
それからもう一つ、非常に重要なことですが、在宅医療、在宅経営の担い手という立場から見ますと、介護保険だ医療保険だという区分け、仕切りだけではありませんで、やはり全年齢層の方のプライマリ・ケアからターミナルケアまでしっかり担う、そういう存在としていかに成長していくか、受け皿としていかに大きく成熟していくか、このことが本当に大事だなと思っております。
今日はドクターもたくさんお見えのようでございますから、あえて申し上げておきますが、小児科のドクターがもしいらっしゃいましたら、外来でちょっと、「ん?」と思う患者さんがいましたら、訪問看護ステーションに指示書をください。 
それから、もし産科のドクターが今日お見えでしたら、妊婦さん産婦さん、これはちょっと看護婦が行ったほうが安心するのじゃないか、という患者さんがいらっしゃったら、どうぞ訪問看護ステーションに指示書をください。
妊婦さんから、もう本当に産まれる前から、実は訪問看護ステーションは、先生方の指示書があれば訪問看護に行ける制度なのです。私どももあまりそのことをPRしてきませんでしたので、訪問看護ステーションというと、イコール寝たきり老人ケアと思っている方が多いのですが、実はそういう位置付けがありますので、ここはしっかり、わが国でも成長させていきたいなと私は思っています。
特に昨今の、子育てのいろんな問題、児童の虐待の問題とかドメスティック・バイオレンスの問題だとか、家族のいろんな問題など考えますと、月に1回や2回保健婦が見回りをするよりは、頻回に行ける訪問看護婦が行って差し上げたほうが、問題の発見と早期の対応が出来るのじゃないだろうかと、こんな感じもしております。
そんな話を厚労省の方としましたら、13年度に予算をつけようか、という話になっています。今日の段階でまだ予算が通っておりませんのですが、子育て支援の児童家庭局で、訪問看護ステーションに予算をつけていただけそうなところです。介護保険・医療保険の外の、いろんな行政の施策の中で訪問看護ステーションにお金をつけていく、そんなことも今後大事ではないだろうかと思います。
プライマリ・ケアといいますと、これは医師の領域だというふうにおっしゃる先生方多いかもしれませんが、そうではなくいろんな職種がかかわるプライマリーケアというふうにお受け止めいただきたいと思います。
それから、21世紀は高齢者の世紀ですので、高齢社会の最大の課題はターミナルケアだろうと私は思っております。
最後の最後病院にお入りになって亡くなったとしても、残された時間を1日でも長く在宅で暮らせるか、そういったホスピスホームケア的なターミナルケアというのも、まだまだわが国では未成熟です。この担い手としてどんなふうにシステムをつくっていくのか、このことも非常に重要だと思っております。
今日は福祉関係の方もお見えですか?別に福祉関係の方に苦言を呈するつもりはないのですが、私は医療看護の介入しないターミナルケアというのはありえないと思っております。昨今は「福祉のターミナルケア」とかという論文をお書きの方もいまして、「おいおいおい、ちょっと待ってよ」と言いたい感じがあります。
特養も全国調査をいろいろ見ますと、半数が自分のところでターミナルを看取れます、と答えていますが、半数が最後は病院に運ぶと答えています。
先ほど申しましたように、特養のナースの配置数が非常に少ないのではないでしょうか。そうすると特養で、24時間看護婦がいないところで、どうやって誰がターミナルケアを看るのでしょうか。福祉だけでターミナルケアが出来るのでしょうか。
ですから、特養に訪問看護婦が24時間ターミナルケアに外から看護を提供しに行く、という仕組みどうですか?私は真面目に考えておりまして、これは施設間で相対契約をすればいい話ですし、介護保険下では特定施設ですから、有料老人ホーム、ケア付き住宅、ケアハウス等はそういう仕組みが既に出来ております。
それから、これも施設間の相対契約ですが、グループホームに看護ステーションから健康管理に定期的に行ってあげる、これも可能です。ですので、訪問看護ステーションとかドクターの往診は対地域の単価だけではなく、地域の中のいわゆるハウジングというふうにとらえますと、地域の中にある多様な施設にも、もしかしたら手を差し伸べることが出来るのではないかと思います。そんな意味でプライマリーからターミナルまでということを再構築しなければいけないかなというふうに考えております。

介護保険が始まりまして、在宅の医療・看護・介護が変化してきたような気がしますがいかがでしょうか。
ケアマネージャーが給付管理だけに追われているということもありますが、ケアマネージメントということでの連携も少しずつ進んできているだろうと思います。
私は、ちょっとでも芽が出たら、一歩進んでよかったねと評価したいポジティブな人間ですので、ケアマネージャーはケアマネージャーとしての課題がありますが、今までケアマネージャー、ケアマネージメントということが全くなかったときに比べますと、チームケアはやっぱり変化してきていると評価しています。
担当者会議も開かれてない地域が多いですが、開かれている地域では「看護婦さんてこういう仕事をする人だったのですか」と初めてヘルパーさんに言われたとも聞きました。こういうの意外ですよね。
われわれ医療従事者、医師や看護婦というのは、世の中の人はみんなわれわれのやるお仕事をわかってくれていると思って仕事をしているのですが、そうじゃなかったのね、ということがチームケアの変化かなと思います。
「あっ、そうだったの!」ということになりまして、結構うまくやっているところが出てきているようです。
それから、もう一つ大きな変化は、先ほど苦情のところでもご覧にいれましたが、サービスの利用者と家族の変化、これは大きいのではないかなという感じがします。
三つ目は、残念ながら、というふうに申し上げておきますが、サービスの急増と質がパラレルではないということです。
特にこれは訪問介護においては、3級ヘルパーの1、2、3級は研修の方ですよね。介護福祉士は曲がりなりにも国家ライセンスですね。ですので、非常に急増したヘルパーさん、その他のサービスと、質の問題というのは浮上してきている。 
この辺りは急がれる課題ではないだろうかという感じがいたします。

少し訪問看護ステーションの実態を見ていきたいと思います。全国訪問看護事業協会が調べました、約全国771箇所のステーションの昨年11月段階での数字をご紹介します。
医療法人立の訪問看護ステーションというのが全体の55.3%でした。訪問看護ステーションで併設している事業所があると答えたのが、約9割87.8%です。ただこれは、訪問看護ステーションが他の事業所を併設しているというよりは、ご覧にいれたように医療法人立というような、法人につくられている訪問看護ステーションが多かったものですから、その法人がお持ちの併設事業というふうに見たほうがよろしいかもしれません。
それでも大方のステーションでやはり居宅介護支援事業を併設しているようです。中には通所リハ、ショートステイ、居宅療養管理指導、訪問介護、訪問リハなどを、その法人が併設をして持っているという、複合型とよく言われておりますが、そういうサービス提供が出てきているようです。

ステーションの利用者を見ますと、介護保険の利用者というのが8割でございました。介護保険と医療保険の併用というのがわずか1%ぐらいで、訪問看護は医療で、ほかは介護保険のサービスを受けております、というのも5.2%ぐらいですから、やっぱり医療保険の利用は少ないですね。一挙に利用者が介護保険の方にいってしまったというのがステーションの現状のようです。

先ほどお話したのは全国の要介護認定の分類でしたが、以下は訪問看護ステーションの利用者の要介護度の分布です。
一番パーセンテージが多かったのが要介護度5で28%、要介護度4が20%、要介護度3が15%ですから、3、4、5合わせますと、これで6割をしめます。
やはりステーションはかなり重症度の高い利用者を担っているようです。全事業者のデータで見ると、要支援、要介護1ぐらいが多いのですが、ステーションは3、4、5が多かったと、こういうことです。
利用者一人当たりの訪問回数については、全体で見ますと、ひと月に5.5回。これは平成11年度の厚生省の訪問看護ステーションの統計調査と比較しましてもほぼ変わってはおりません。
時間別に月間の訪問回数を見てみますと、30分以上1時間未満、平均すると1時間という訪問看護が7割でした。
初めて報酬設定をしました30分未満が14.5%。それから90分くらい滞在する比較的長時間のものが16%でした。
これも実は、介護報酬の議論を審議会でしましたときに厚生省が出してきたデータでは、その前年度の、先ほど申しました10年11年の統計調査の結果ですが、全国の訪問看護ステーションの平均滞在時間というのは64分という数字です。
それを目安に8,300円という報酬をつけましたので、平均的な使われ方をしているのかなという感じもします。

実は今日は一つお願いがあるのですが、新しく30分程度の巡回型というコンセプトでつくった部分について、利用料がお高いわよなどと言われて、本当は1時間なのに30分でやってよ、と値切られているという話をあちこちで聞きます。 
これはそういう目的でつくった枠組ではないのよ、と私は否定をしておりますので、皆さんも否定をしてください。
30分というのは訪問看護・訪問介護両方にありますが、これは巡回型というコンセプトです。ですので、1日3回朝・昼・晩30分ずつ欧米並みに行く、という話ですとか、日から土まで1週間毎日、30分でもとにかく行って訪問看護婦が看る、というふうに、短時間でも毎日行く、または1日に何回も行く、ターミナルの方だったら1日何回行ってもいい、ということです。訪問介護は30分ずつ24時間まで積み上げることが出来ます。
これもよく議論をしたわけですが、利用者が望めば、35万8,300円という支給限度額めいっぱい、全部訪問看護を使うことだって可能なわけです。もちろんケアプランとして妥当性があればということですが。
別に5.5回ということは、平均すると週に1回ぐらいしか訪問介護入ってない、そういうことではない。
特にこの30分未満というのを、もっと利用者にとって利便性のいいような使い方をしていただきたいなというふうに思います。看護職の皆さんに私がお願いしていますのは、「おはよう点眼おやすみ座薬」です。5分でも10分でもちゃんと看護婦が走って行きますよ、こういうシチュエーションを地域でつくりませんと、ヘルパーに医療処置をという話になってくると思います。
諸外国どこを見てもヘルパーに医療処置を、などと議論している国はありません。その代わり訪問看護自身が、「おはよう点眼おやすみ座薬」で本当に飛んでいける仕組みをつくってきております。
こういう議論をしますと、仲間内でも、5分10分30分なんて訪問看護、質が低いのでは、という意見も出ますが、そういう議論は今はしないでくださいと私は言っています。
某大阪の医療法人の訪問看護ステーションが、1日10件も一人の訪問看護婦が訪問して、レセプトが月に1,000件も出ています。それこそ、「こんにちは投薬」と薬袋をぶら下げて行きましたよ、というのですが、患者さんが本当に寝たきりかと思ったら、葡萄畑で元気にお仕事していたとか、そういうことになるとちょっと困りますよね。
看護ニーズを埋めるというところでは、やはり使い勝手のいい巡回型の訪問看護、欧米並みの、本当にいつでも呼べば答える、25分で行く訪問看護婦と私は言っています。ピザが30分なら訪問看護25分で行きたいわよね、という話です。
電話が来たら、そば屋の出前みたいに「今出ました!」、とか言うかもしれませんが、やはり新しい利用者のご依頼があって、1週間も放っておくようではどうでしょうか、と思います。
とりあえず、その日のうちに飛んで行く、必要があればその日のうちにケアマネージャーに連絡をする。
要するに今の訪問看護は使い勝手が悪いわけです。回数単位でなく1日単位というふうに診療報酬が決まりましたので、本当に使い勝手が悪かったのだと思います。
裏話をしますと、実はこの前の診療報酬の改定がちょうど介護保険のスタートと同じ時期でしたので、介護保険が30分作ったんだから、医療保険も30分作ってよ、という議論をしたのです。ですが、診療報酬の中で30分単位というのは非常に難しくて、私が30分単位の訪問看護を積み上げて、頭打ちをしてもいいから、そういう医療もやって欲しい、と言ったら、そんなことやったら縛り利かなくなって、どんどん診療報酬請求される、などと言われました。「何よ医療者性悪説なのね、あなたたちは」と言ってけんかをしたのですが、前回は実りませんでした。
が、そろそろ診療報酬の改定でございますし、この夏からはまた給付費部会という介護報酬の部会がまた再開されます。介護報酬における医療ニーズをどう埋めるかというところ、医療保険と介護保険のどっちでみるのかという議論もありますが、議論を再開しなきゃいけないところに来ております。
余談でございますが、30分未満もそういう使い方をしていただきたいなというふうに思います。

この30分未満の使われ方というのを地域別に見てみます。ご存知のように介護報酬は地域単価がついておりますが、東京都内特別区などでは、16.5%と、やはり都心部で使われ方がある、ということです。
ちょっと悩ましいのは離島・山間・僻地その他の特別地域の数字です。ここは25%もこの30分未満が使われています。
この特別地域というのは例の15%増しになっている地域なんです。ですから、利用料の関係があるのかなという感じがしております。山間・僻地に1時間かけて行って30分の訪問看護じゃしようがないわねという、話でございまして、若干地域的な差も出てきております。
都心部でしたら、今申し上げた巡回型というのは、アクセスの面からいうと、そう無理なことではないのではないのかなという感じがします。もう一つは介護保険になったときに、訪問看護ステーションはサテライトの要件を緩和しています。それまでサテライトというのは、親ステーションと同じだけの設備、スペースを持たなければ県が認可しませんでしたが、介護保険では要件緩和をしています。
親ステーションの管理者が管理出来る範囲ならどこでもOK、というふうになりましたので、親ステーション1箇所があればサテライトということで埋めていくと、こういう巡回型も出来るのかなと感じております。

それからもう一つ、24時間の体制整備のためにつけました、緊急時訪問看護加算というのがあります。1,370円ご利用料お払いいだければ、いつでもご相談に応じます、飛んでいきますよという、緊急時の加算です。
ですが、利用者について加算があり、というのは58%に過ぎませんでした。4割のステーションは加算を取っていないということです。経営的な視点から言いますと、緊急時訪問看護加算というのはほとんどボーナスみたいなものですから、100人利用者がいればほとんど90人付けていますよ、ということであれば、ずいぶん潤うのですが、これはいかがなものしょうか。後ほどお話伺いたいと思います。

介護保険がスタートして、ステーションの経営というのはどのように変わったのかということですが、11年の6月と12年6月の比較があります。12年の介護保険スタートして2か月目の6月では、全国の平均の数字で、非常に少ない数字になっておりますが、ひと月260万ぐらい収入があって、230万ぐらい支出だよというようなステーションが平均的だったようです。
前年度は収入が262万ぐらいで支出も226万ぐらいでしたから、月に35万ぐらい利益があったのが、介護保険始まって5万円ぐらい落ちましたね、ということのようです。
1回当たりの平均単価についてですが、訪問看護に1回行くと約9,583円ぐらいになっていて、これは私の手元にある数字では、介護保険が始まる前は9,600円ぐらいから9,700円ぐらいのところに平均的な水準がありましたから、やはり1回訪問単価でも落ちている感じです。
収支率100%以上の訪問看護事業所というのは64.7%ですので、3箇所に1箇所は経営が厳しいということで、3箇所に2箇所はなんとか介護保険下でも潤っている、ということです。
訪問介護の事業者が、先ほど5割が赤字というふうに答えていたことから見ますと、訪問看護ステーションはそこそこ経営努力が出来ているのかな、と思います。
ただ気になるのは、常勤者の平均給与でございました。31万6,000円という数字が出ております。ご自分の手取りと合わせてみてください。

以上が訪問看護ステーションの実態ですが、そろそろ結論に入りたいと思います。
ステーションに関して言いますと、やはりもう一度、経営環境の機会分析を改めてしなければいけません。
地域医療、在宅医療という視点から見ますと、介護保険が今トピックスではありますが、それだけではないでしょう。
今まで皆様方がこのネットワークでも議論なさったでしょう、いわゆる在宅医療とか在宅ケア全体をながめ回す、そんな視点が大事になってくると思います。
もう一つはマンパワーの確保という問題がやはり出てまいります。
そのためには、もう一度業務を見直して、特にケアマネージメント機関、居宅介護支援事業所を併設している事業所では、ケアマネージャーはやっぱり1名ぐらい専任にしたほうがいいのかどうか。そして訪問看護、または訪問介護などといった事業そのものの収入を減らさない仕組みをどうつくるか。それから給付請求事務関連のソフトの使いこなし方ですとか、事務作業の簡素化ですとか、アウトソーシングですとか、または事務員をどのように使いこなしていくかと、様々な問題が、改めて1年たって出て来ているのかと思います。

それからもう一つは、介護保険1年を振り返って、やはり冒頭に新聞の見出しでお示ししましたように、市民の人々はまだまだ施設ケアに安心感を持っているという点です。
これは病院入院も全く同じで、24時間専門職がきちんとケアをするところへの信頼感、安心感が強いようです。
昨今は医療事故等で信頼も揺らいでいる、などと言われますが、基本的には専門職が24時間ケアをすることへの安心感というのは大きいようです。それを見ますと、在宅においても、どんなふうに24時間のケアシステムを地域全体として構築してくのかという課題があると思います。
これは若干数字が古いのですが、平成8年度ぐらいに私どもで、全部の訪問看護ステーションが24時間対応をしたほうがいいのかどうか、そういう調査研究をしたことがございます。
そうしますと、これも平成8年当時と今とでは、大きく在宅の状況は変わってきておりますので、もう少し違ってくるかなとも思いますが、たとえば人口5万人以下のところでは、ステーションがいくつかあったとしても、全部のステーションが24時間オンコールにするだけの必要性はたぶんないだろう、という結果でした。
ですので、ここで地域の連携という問題がやっぱり出てくるでしょう。ドクターサイドは病診連携とか病病連携とかいろいろおやりですが、ステーションも含めた、いわゆる病診、訪問看護ステーション、その他の機能を持っている事業所との連携で、どんなふうに地域単位で24時間のシステムをつくっていくかということが課題となります。
一事業所が非常に小さい事業所ですので、そこで24時間のシステムをつくるということになると、職員へ負担は非常に高くなってきます。中にはせっかく三交替が嫌で在宅にきたのに、訪問看護ステーションも夜勤があるのですかと言う若いナースもいるとかいないとか、よく聞きますが。
それで強いことを言えない所長さんは、「もう私一人が携帯電話毎日持ってるんです、家に持って帰って。うちのスタッフ誰も持ってくれないんです。」と言うステーションの所長もあれば、この前のお正月の休暇には、「お正月休暇は所長さん携帯持たなくていいから、私たち3人で持ちます」と言って、若いスタッフがみんなで持ってくれたのよ、と、うれし涙で語ってくれた所長もいたりと様々ですね。
一事業所で持つのか、やっぱり地域連携で24時間の仕組みつくるのか、こういうことは今日のようなネットワークの会でご議論いただくと、松戸独自のいいものが出来るかなと思います。

それからもう一つは、看護サイドは今まで継続看護ということをよく言ってきたのですが、介護保険がスタートしますと、病院の患者さんの入退院、入口・出口で介護保険が大きく関係をしてきています。
先駆的な取り組みをしているある医療機関を拝見しますと、既に「地域連携室」をお持ちになって、「入院から始まる退院計画」を合い言葉に、入院のときに既にケアマネージャーの名刺を持って入ってくる患者もいるそうです。
そうすると、ドクターは入院計画書を出して、それで点数を取って、退院に向けていくわけですが、入院から始まる退院計画ということで、この人は地域に帰るときに継続が必要ですよ、という時には、入院の段階からアレンジをする。
それから退院の前に介護認定申請をして、暫定ケアプランをつくって退院をさせる。その入口・出口をしっかりおやりになっている医療機関というのが増えてまいりました。
ある意味で、私たちが20年言ってきた継続看護にお金がついたのだと思います。ですから、病院の中にもケアマネージャーを置いてください、というように病院の看護部長さんに時々お話をするんですが、そういった継続看護が一つと、それから先ほどお示ししたように訪問看護では医療保険の利用者をどんなふうに増やしていくか、これが一つ大事なことかなという感じがします。

それから、質の保証と評価ということと、情報をいかに公開するかということ。PRも含めて、こんなふうに事業者が多様化してまいりますと、お互いの専門職が何をやっているかよくわかってもらっていなかったように思います。
ですから、私たちは何をやるんですよ、こんなサービスがうちから提供できますよ、こんなときにはすぐ呼べば応えますよ、といったことのPRは非常に重要です。
今厚労省でいくつかの委員会が走っておりますが、その一つが"通所評価"ということの委員会があるんですが、ここで今、利用者が事業者を選ぶためのチェックリスト作りをしております。
一番ニーズが高いだろうと言われて、今までもその自己評価、第三者評価のツールを持っている訪問看護と訪問介護について、そろそろ出来上がると思います。
利用者が事業所に電話して、あんたんとこの事業所こんなことしてくれますか?というふうに、これに則って質問してみてくださいという、20項目くらいのチェックリストです。
すごいですよね。なかなか厚労省もいいことをやりますね。
ですので、やっぱりこちらかもPRをする。そうすると利用者が、「あなたのところは24時間やっていますか」とか「訪問看護で何をしていただけますか」とかね、「主治医との連携、お宅はどういうふうにしてくれるところでしょうか」とか聞かれて、所長さんおたおたしちゃいけませんよ、ということです。
どんどん利用者も賢くなっていきますから、情報の公開というのは大事なことかなという感じがいたします。

最大の課題は事業所経営の基盤ということと、やっぱり報酬体系の見直しが必要かという点でしょう。
介護保険全体の今後の課題ということでは、やはりなんと言っても、第一に挙げておきたいのは、ケアマネージメント、ケアプランといったケアマネージャー業務の本格化だろうというふうに思います。
ケアプラン事例集をつくるということだとか、30都道府県ぐらいにケアマネージャーの連絡協議会が出来ておりますし、地域ごとに見ますと、かなり横の繋がりが出来てきております。
これも早晩厚生省が全国の連絡協議会みたいなものもつくりますでしょうし、学会もつくりたいという話も実はあります。ですので、やはり問題はケアプランだということですので、そういった業務をどのように本格化していくか。
これには二つの側面があるでしょう。一つはケアマネージャー自身がもう少し自己学習をしていかなくてはいけないですし、もう一つは、システム、特に給付管理関係をもう一回考え直すことも必要だろうと思います。
また介護報酬の問題が二番目に挙げられるでしょうか。
新聞が盛んに書いておりますのは、介護報酬ではグループホーム、ケアマネージャーということが出てきておりますし、もう一つは利用料問題ですね。
今日は数字を持って来ていませんが、東京都内を見ましても、全部の在宅サービスを3%に利用料軽減措置を13年度から行う区も出てきておりますし、各県のいろんな市町村でも、利用料の軽減策が13年度予算に組んであるというところもあります。介護報酬の問題はやはり出てくるでしょう。ケアマネージャーの介護報酬がどうあったらいいかというのは、大変議論のいる話ですね。
ケアマネージャーの介護報酬のモデルになりましたのは、在宅介護支援センターの委託の金額でした。
介護度別に3つにくくってありますね。それもいろいろ議論がありました。介護度が軽いからケアプランに費やされる時間が短いわけではない、というようなことも議論しましたし、私たちも、私も含めて何人かの審議会の委員はケアマネージャーの報酬は一本でいいのじゃないだろうかという意見を持っておりました。
ケアプラン1枚について報酬をするのが、今は1か月単位になっていますよね。月の最後に引っかからなかったケアマネージャーさんは無報酬ですよとか、いろいろ仕組み上の問題があったりします。
それからやはり、ケアプランの質というものを検証していかなくてはいけません。
学識経験者の中には、スーパーケアマネとそうじゃないビギナーケアマネとで、ケアマネージャーの能力で報酬を変えたらどうかという議論も出てきております。これは今の段階ではたぶん難しいだろうという感じがしますが、議論はしなくてはいけないと思います。

それから財源問題というところでは、4兆3千億というファンドから始まって、この財源を増やすという話になると、公費を増やすのか、保険料増やすのかという話になります。
それとやはり、利用料の問題。もう一つの利用料問題ということで申し上げると、施設の利用料負担と在宅の利用者の利用料負担の格差というものもやはりあるのではないでしょうか。
これはデータが必要になろうかと思いますが、一例として、老健施設は利用料負担が軽減されましたよね。
おむつ代その他、お取りになった老健が多かったので、今は平均すると老健は5万円ぐらいですよね。ですから、介護保険の前と介護保険比べますと、利用料は軽くなっているんですね。おむつは施設がもつことになっている。
比べてやはり、高額介護費という上限設定もありますが、在宅に関しては高額介護費が該当する人はいませんでしょう。
それでやはり、在宅の利用料は施設に比べていると負担感が重いのではないだろうかというふうに私も思います。
それから医療機関も結構さぼってきていますよね。在宅医療でチューブ類ですとか、衛生材料だとか、管理料でマルメで、実は医療機関が出していただかなくちゃいけないものを、「あなたはもう介護保険の利用者だから」ということで、医療機関が一切出さないケースもあります。
それを自費でお買いになっている介護保険の利用者の患者さんも出てきていると聞きます。
このへんは少しデータを集めてみなければいけませんが、施設VS在宅という利用料問題もあろうかという感じがいたします。在宅重視と言うのであれば、やっぱり在宅にもっとインセンティブをつけてもらわないと、家族は施設にお預けになるでしょう。
それは家族支援の施策をどのぐらい増やせるのだろうか、これにかかっているかなという感じがいたします。

介護と医療の協働というところでは、介護保険の利用者もそのうち重症化してきたり、ターミナルケアということが延長線上にありますから、程度の差はあれ、医療と全く離れて介護だけでいい、という利用者は非常に少ないのではないでしょうか。このへんの連携がまだまだうまくいってないのかな、という問題もあります。
最後の問題は、何と言ってもサービスの標準化についてです。特に訪問介護の領域はサービスが標準化されないままにお値段がついてきました。これはマニュアル等できちんと重要事項を説明をして契約せよ、ということになっておりますが、質を保証していくためには、まずサービスそのものを標準化していかなくてはいけないのではないだろうかと考えております。

ちょうど頂戴した時間でございますので、このへんでお話を終わりたいと思います。
手元に持ってまいりました、これは東京新聞の「声」の欄の記事なんですが、3月31日の土曜日にこういう記事が載っておりました。ご当地松戸の無職田中さん66歳という方の投書でございます。
「介護保険1年、制度定着望む」という声ですが、松戸にご在住の田中さんが、こういうことを書いております。
「介護保険制度がスタートして1年、わが家でも右半身麻痺で車椅子生活の義母が、デイサービスやショートステイの世話になり、大助かりだった。スムーズにサービスが受けられたのは、よいケアマネージャーに巡り会えたからだと感謝をしている。施行前ふと立ち寄った支援センターで紹介された女性のケアマネージャー。認定業務から始まり、ケアプランの作成、そして実施のための調整など、親身になって処理してくれた。話に聞くと、こんなによいことづくめではなかった介護保険元年。認定の問題では痴呆に考慮が必要だし、サービス面でも自治体によってばらつきがあるようだ。高齢社会が進む21世紀、避けて通れないのが介護の問題である。国民が助け合い、互いに役立つ介護保険として定着させたい」と、大変よいケアマネージャーに巡り会った田中さんが、こういう声を東京新聞にお出しになっております。
この声を最後に、私のお話を終らせていただきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。