分析で読む「特捜」


●ハジキを使わない刑事?
 おやっさんといえば、拳銃を発砲するシーンがほとんどないことはよく知られている。拳銃を手にするシーンならば、初期を中心によく見られた。実際に発砲したシーンもあったが、車のライトを割るために撃っただけである。
 また、おやっさんはあまり車を運転しない。神代に運転させることもざらだった。
 510・511話「退職刑事船村」では、とある事件にからみおやっさんは拳銃を持たされるが(退職後なのでもちろん違法)、最後まで発砲はしなかった。またバイクを運転するシーンは出てくるが、車にバイクごと乗っかり、おやっさんが運転している「かのように」見せる演出を施している。これらはおやっさんこと大滝秀治が運転免許を持っていなかったための苦肉の策だったわけなのだ。
立山様より指摘があって一部訂正いたしました


●警部補最前線
 初期にはおやっさん一人だった「警部補」も、中期〜後期には特命課の半分、4人もいた。船村(後期は時田)、桜井、紅林、叶の4人だ。いずれも理由があって警部補という地位を与えられており、偶然にも警部補だらけの特命課を作り出してしまったわけだ。
 とはいえ、エリート集団であるべき特命課。警部補だらけになってもおかしくはなさそうだ。
 なお警視正は神代ただ一人。警部は桜井(3年目以降警部補に降格)、橘。
 警部補は船村、桜井、紅林、叶、時田。
 巡査部長は高杉、吉野、犬養。
 巡査長は津上のみ。巡査は滝、杉となっている。
 なお、中期のセミレギュラー蒲生は「窓際警視」。
 在籍中昇進した刑事はおらず(吉野は殉職後昇進)、若くして出世した神代をのぞいても、エリート軍団にしてはずいぶん出世の遅い課である、ともいえる。


●私だけの十字架
 F・チリアーノの歌う「私だけの十字架」は、番組の第1回から約10年後の最終回(518話)まで、全話のエンディングにおいて使用された。フラメンコ調のテレビバージョンと、レコードバージョンの2バージョンがあり、初期〜中期においてはテレビバージョンとレコードバージョンが同じくらい使われたが、後期はほとんどテレビバージョンのみが使われていた。
 ギターを「ジャララーン」とかきならすテレビバージョンが使われる回が多かったが、回によっては、「ポロン、ポロロロン」というおとなしめのアレンジのレコードバージョンが流れることもあった。レコードバージョンの場合は2、3番が使われたが、たまに1〜3番がフルサイズ演奏されることもあった。
 テレビバージョンは2番のみが歌われた。意外だが、初期には「ジャララーン」のテレビバージョンで1〜3番を流したこともあった。
 中期以降、レコードバージョンのイントロにテレビバージョンの歌い出しをむりやりつなげて流したことも。


●スポンサー
 目立ったのは日産自動車。劇中に登場する車はほとんど日産車だったし、犯人が使うなどの目的で登場するレンタカーショップも「日産レンタカー」だった。日産といえば「西部警察」という気もするが、実は特捜も日産派だった。ほかにはライオン、日本石油(現・ENEOS)などもスポンサーだったようだ。


●オープニング
 大別して3つある。まず、放送開始した'77年から1年間使われたもの。タイトルロゴは手書きの文字で、荒れた味わいがあった。ナレーターは森山周一郎(森山は悪役としても2回ほど出演している)。テーマ曲は、「私だけの十字架」のアレンジヴァージョンだった。

矢印オープニング  2代目は'78年4月から1年間使われたもの。曲は最終回まで使われたテーマ曲(ジャカジャカジャン!)に変更された。いきなり画面が青くなり、矢印が何本も走りまくるオープニングシークエンスは、明らかにTBS「Gメン'75」を意識したものとはいえ、衝撃的だった。刑事たちの紹介も、画面を2分割するなど、当時としてはかなり画期的なものであったと思う。タイトルロゴはゴシック体(写研のYSEGではないかと思われる)に変わり、矢印は「特捜」のシンボルともなった。中央から7本の矢印が外側に向かって円をなしているシンボルマークも印象深い。アイキャッチもそのときに変えられ、こちらは放送終了まで続いた。

夕暮れオープニング  3代目は'79年から'87年の最終回までのもの。度重なる細かな変更が加えられながら使われてきたが、冒頭真っ赤な夕陽が映り、画面中央から「特捜最前線」のロゴがせり出してくるという部分だけは、8年の間用いられた(海外ロケなどの回では別な映像になったこともあったが)。車やヘリコプターの映像を挟みながら刑事たちが一人一人登場するというパターンも同じではあったが、映像は何度か変更されている。
 このパターンは、刑事たちの加除修正が容易だったという事があげられよう。しかし最後期のパターンではつめこみきれず、杉刑事と江崎婦警が一緒に登場していた。


●脚本家
 このドラマの脚本家と言えば、長坂秀佳であろう。シリーズ前期、1/3の作品は彼の手によるものだった。シリーズ後期においても、主に大がかりな作品(ロケ・アクション・キャスティングなどが豪華なもの)を手がけていた。ほかには、時代劇で知られる人情派・塙五郎、監督もこなした藤井邦夫、大河ドラマの脚本でおなじみ竹山洋、2時間ドラマの石松愛弘などそうそうたるメンバーがそろっていた。


●東京総合ビル
 警視庁特命課(実際は存在しない部署)は、警視庁の中ではなく、新宿の東京総合ビルという建物の中にあった。それは、特殊命令の遂行という役割がら、警視庁とは離れた所に置く必要があったのだろうが、実際にはただ単に映像としてのおもしろさを狙ったものであろう。なお、モデル(と言うか、ロケ地)になっているのは、東邦生命ビルである(その後東邦生命の破綻により、渋谷クロスタワーと改名)。

●「!」
 509回のうち、サブタイトルの約9割には「!」が用いられているのも「特捜」の特徴であった。初期には使われなかった。


●伝説の警視・蒲生警視
 長門裕之(おもに中期、特別出演)が演じた蒲生警視は番組中期の重要セミレギュラーであった。
 神代の同期で、若い頃は神代と並んで称されたが、今では「窓際警視」と揶揄されている。ベテランで後輩思いだが、普段はそのやる気を見せないために遺失物係に回されて厄介者扱いされている。しかしひとたび事件に関わると熱血漢に変身。特命課に出向していた時期もあった。


●どんな序列?
 神代―船村―橘―桜井―時田―紅林―高杉―吉野―津上―叶―滝―犬養―杉
*神代より船村の方が年齢は上だったが、上司と言うことで船村は敬語を使っていた。一度退職した後、神代に「あんた」という2人称代名詞を使っていたのが印象深い。また、神代が不在で、橘が課長を代行していたときには、船村は橘に対して敬語を使っていた(もちろん橘も敬語を使っていた)。
 叶が入る前に津上は死亡しているので分かりにくいが、叶は津上のことを「津上さん」と呼んでいたので、おそらく年上であろう。また、滝と犬養に関してはもしかしたらさかさまかも知れない。


●特別に出演した回

'84年2月351回「津上刑事の遺言」
 津上刑事をはじめ、高杉刑事、滝刑事も登場、それまでに出演していた刑事が勢揃いする。津上刑事が存命の頃関わった交通事故を、コンピュータを駆使して解明していく。その段階で、高杉や滝も協力。死んだはずの津上が皆の前に現れる幻想的なシーンもある異色の作品。


●キャラクター

 特捜の刑事たちはすべてキャラづけをされていたが、なじんでくるにしたがってそのキャラづけは物語にとって邪魔になり、無視されてしまった。たとえば津上や叶のエリート意識、時田の昼行灯など、それらは「和」を大事にする捜査上、かえって支障をきたす。脚本家たちはみずから刑事につけたキャラクターをみずからはぎ取って物語を構成しなくてはならなかったのである。




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