特捜の歴史

※VAPのサントラCD(「音が紡ぐ特捜の世界」を参照)などを参考にしました。先輩特捜サイトのウケウリにならないようにしたつもりですが一部そうなった部分もあります。



●生い立ち−稀有なるドラマ!
 テレビ朝日系ドラマ「特捜最前線」は、『日本教育テレビ(NET)』時代の人気番組、「特別機動捜査隊」の後を受けて、1977年に始まった。おりしもNETがテレビ朝日(正式名:全国朝日放送)に改称したばかりで、その証拠に第1回のエンディングでは「テレビ朝日」のロゴも決まっておらず、明朝体で書かれていた。
 「警視庁特命捜査課」という、実際には存在しない部署(しかも建物も警視庁本署とは別)を作り上げた上で、リアリティあふれ、ときにけれん味たっぷりの筋書きすら繰り広げられる、世界観の広いドラマが出来上がっていったことは、今から見ても称賛すべきことであろう。
 当時は「太陽にほえろ!」「Gメン'75」などが番組表をにぎわせた「刑事ドラマ華の時代」で、数々のプロダクションがその出来映えを競っていた。特に東宝/日本テレビの「太陽にほえろ!」の人気は絶大で、石原裕次郎を筆頭とした若さあふれるキャストがアクションを繰り広げるエキサイティングな内容は視聴者をとりこにした。

 我らが「特捜」は東映が制作しており、二谷英明や本郷功次郎といった往年の人気映画スターや、大滝秀治のような実力派をそろえた充実のキャスティングで勝負を挑んだ。
 確かに、キャスティングやアクションなどの華やかさは「太陽」に譲る面もあるものの、「人間ドラマあふれる刑事ドラマ」という称号は、「特捜」にこそ与えられるべきではないか。
 結局「ニュースステーション」(1985〜)に押し出された形でひっそりと幕を閉じた「特捜」であるが、その名は未だに轟いている。


●「特捜」とはどんなドラマか
 1977年10月、「特捜最前線」は水曜10時の枠で開始された。10時といえば当時は子供はすでに寝静まった時間であり、ドラッグや性行為なども劇中に織り込まれ、「大人の刑事ドラマ」が繰り広げられた。第1〜13回にわたってサブタイトルには「愛」の字が、第14〜25回には(一部をのぞき)「女」の字が入っていた。「女」は最終回にいたるまでタイトルに多用されている。一見男っぽい「特捜」が、実際には「男と女の機微」を描く、繊細な人間ドラマを得意としていたことがわかる。
 タイトルにおなじみの「!」がつくのは「密告・コーヒージャック!」から。

 番組開始当初、特命課のセットは近未来的な内装で、神代の後ろにはレーダーらしき装置もあった。が、あまりにもリアリティに欠けるからか、開始10回目で、神代の後ろに都内の大きな地図が広がっているセットに変わっている。このセットは最終回まで10年間近く使用された。

 事実上のメインライター、長坂秀佳のデビューは第7回「愛の刑事魂」。長坂は最終回までに100本以上(総作品数の1/5)を書いている。前期における作品の多さは特筆すべきだし、後期は3〜4本を続けて書き「長坂シリーズ」などと銘打って放送している。長坂は「快傑ズバット」など子供向けアクションなどもこなした。作家としても知られる。
 長坂に次いで多くの作品を残したのは塙五郎。館野彰名義で書いた第13回「愛・弾丸・哀」が特捜デビュー作(注:ここは先輩サイトのウケウリです)。津上の独りよがりの正義感が、特命課の混乱ばかりか津上の妹の誘拐まで引き起こす、重々しい作品。ちなみに第359・360回で「哀・弾丸・愛」としてリメイク。

 初期の最高傑作とも言えるのが、神代の娘夏子が銃殺される「凶弾」「凶弾II」(長坂秀佳作)。娘を殺した犯人を追い詰める神代の、狂気と執念を見事に描いた、珠玉の作品だ。

 刑事役を演じた俳優たちの中には、犯人役などでゲスト出演している人も多い。夏夕介、横光克彦、三ツ木清隆がそうだ。誠直也は吉野殉職後に、吉野似のチンピラ役で出演している。

 わき役、犯人役で目立ったのは、相馬剛三、石山律雄、戸浦六宏、小坂一也、横森久、大谷朗、西田健ら。

 1年目のオープニングでナレーションを務めた森山周一郎は、わき役として2回出演している。2年目以降9年間にわたってナレーションを務めた中江真司も最終回に神代の上司役で出演した。
 オープニングナレーションのパターンは4種類に大別される。1年目の森山バージョン(「大空駆ける男がいた…」)、2年目の中江Aバージョン(「天に地に絶えることなき犯罪に…」))、3年目〜9年目の中江Bバージョン(「愛と死と憎悪がうずまく…」)、9年目〜10年目の中江Cバージョン(「愛を殺し、夢を葬り…」)。
 オープニングは4種類に分けられる。1年目は刑事たちの活躍する映像をメインにしていた。2年目は画面を2分割した、矢印のアニメーションが印象的なオープニング。3年目以降は冒頭に夕暮れを映し、ヘリコプターやパトカーの映像と、刑事たちをそれぞれイメージした映像を折り混ぜて構成。10年目はイメージ映像のみで構成した。(詳しくは「特捜最前線というドラマ」参照)


●歴史をふりかえる

 今度は、「特捜」の歴史を時間を追って見ていこう。

 「特捜最前線」の長い歴史の中で、第1回か最終回どちらにも出ていないレギュラー刑事は、滝ただ一人である。それ以外の12人は、第1回か最終回には出ている。メンバーの出入りは放送9年間にそれほど頻繁ではなく、特に番組の中盤5年間はメンバーが変動しなかった、安定期であった。

 開始当初のメンバーは、神代警視正(二谷英明)、津上巡査長(荒木しげる)、吉野巡査部長(誠直也)、高杉巡査部長(西田敏行)、船村警部補(大滝秀治)、櫻井警部(藤岡弘)。この中で最終回までメンバーにいたのは神代と櫻井だけである(実際には櫻井は1年間、キャストから離れているし、神代も、オープニングシークエンスには残ったものの、数ヶ月間休んだことがある)。

 この6人は後期しか知らないファンには意外なキャスティングともいえる。橘も紅林もこの時はいない。また西田の存在は異色とも言えるが、当時は独特のなまりととぼけたキャラクターで、抜群の存在感を持っていた。
 この時期は、中期以降みられない、課内の緊張感と、それを打ち破る高杉の東北なまりが印象的である。初期だけに、キャラクターづけも明確であった(津上のエリート意識など)。吉野のタートルネックに革のジャケットという若々しいスタイルも、のちには見られなくなるものである。
 初期は特命課いきつけのバーや酒場(神代・船村が通っていた)があり、打ち上げなど頻繁に行っていたが、2年目以降は登場しなくなった。
 番組初期の大きな出来事といえば、神代の娘、夏子が銃殺される事件だ(先述「凶弾」)。神代は気が触れたかのように復讐に燃えた。

 2年目、伝説の「矢印オープニング」とともにメンバー一新。桜井はアメリカに旅立ち、新たに紅林警部補(横光克彦)、橘警部(本郷功次郎)が加入する。紅林は桜井の後輩という設定。橘は当初、長崎からやってきたボンクラ刑事という強烈なキャラクターだったが、参入10回ほどで神代に次ぐシャープなイメージを定着させ、「特命ナンバー2」の橘が完成する。
 このころ、野際陽子をゲストに迎えた秀作「挑戦」シリーズが'78年8月から3回に渡って放送された(3部作は、末期まで作られることはなかった)。
 2年目以降は、「西遊記」などで多忙を極めた高杉こと西田敏行は、オープニングに名を連ねるものの、番組からはほとんど姿を消し、結局2年目の終わりに高杉は栄転、西田はキャストから去った。

 番組3年目、最終回まで続いた「夕暮れオープニング」が登場。アメリカから桜井が帰ってくる。トラブルを起こし帰国するという、初期における桜井のエリートイメージを覆す設定が施された(同時に、警部補に格下げされる)。当時は橘との激しい軋轢もあった。
 その後、滝巡査(桜木健一)が特命課入りし、直前に入った高杉婦警(関谷ますみ)(先に辞めた高杉の姪)とともに、番組に新風を巻き込む。刑事は8人に増え、いよいよ充実期を迎える。

 しかし、番組に重厚さを与えていた船村刑事が、妻の療養のために依願退職。さらに、番組前期の重要メンバー、津上刑事がまさかの殉職。東京一円の人間を死なせることができるほど大量のサルモネラ菌が入った風船を爆破するため、自ら運転する車を廃墟に突っ込ませ自爆死(長坂秀佳お得意の大げさな設定が光る!)。

 次に入ってきたのが、「エリート暴れん坊」叶警部補(夏夕介)。当初は例に漏れず、問題児扱いだったが改心し、最後まで番組を彩った。その後滝刑事がラーメン屋になるため退職すると、ビーフシチュー屋となっていた船村刑事が復職。その時、妻はこの世にいなかった。
 以降、5年にわたり神代、船村、橘、紅林、叶、吉野、桜井、さらに高杉婦警と、メンバーが固定したままの「黄金期」が続く。
 ローマ(81)、ハワイ(82)、ベネルクス(85)などの海外ロケや、プロットコンテスト(参加者の中には内館牧子の名も)、夏季恒例の怪奇もの、二谷英明監督作品、犯人あてクイズ、そして忘れちゃならない窓際警視こと蒲生警視(長門裕之)シリーズなど様々な作品が作られた。

 初期はことあるごとにヘリコプターが登場していたが、中期以降はヘリコプターの出番が減った。それだけ「地に足がついた」、大掛かりではないテーマが多くなっていたからだ。

 84年には津上刑事をテーマにした作品が、これまでのレギュラーが勢揃いし作られた。最後には、死んだはずの津上を追いかけるこれまでのレギュラー陣の映像で締めくくられている。

 この黄金期に終止符が打たれたのは85年8月。船村刑事がついに退職したのだ。一度は延長された定年を間近に控えながら、娘の説得により、体力の限界を理由に2度目の辞表を提出した。
 さらに同年10月には、吉野刑事が、傷だらけになりながらも立てこもり犯を説得していた矢先、バーテンダーが犯人に向けて撃った銃弾にあたり、殉職。この回が、「水曜日の特捜」最後の日でもあった。

 「ニュースステーション」に10時枠を明け渡したため、次の週から木曜9時に放映時間が移った。「特捜最前線」唯一の2時間スペシャル(放映回数にはカウントされていない)から時田警部補(渡辺篤史)と犬養巡査部長(三ツ木清隆)が所轄から特命課に配属となった。仕事の虫のかたまりだった特命課には似合わぬ二人。お調子者だが熱血派の犬養はいいとしても、家庭を大切にする時田は、家庭を顧みなかった神代とは大きな差を持つタイプの刑事であった(また、神代ら猛烈世代の終焉を示してもいたように思う)。まあこの設定もすぐに忘れ去られたが。
 11月には、長く勤め上げた高杉婦警が結婚退職。杉巡査(阿部祐二)、江崎婦警(愛田夏希)が相次いで参入。6年半ぶりに課員が8人となった。

 メンバー入れ替えは時間帯変更にともなうテコ入れ対策と考えられるが、番組のパワーがダウンしたのも事実。ネタ切れのためか地味なストーリーが多くなり、時田・犬養はおやっさんと吉野の穴を埋めきれず、杉にいたっては青臭い演技でかえって番組のクオリティを下げていたように思える。

 このあたりからサブタイトルが文章化している。2時間ドラマの影響か、ラテ欄対策の客引きか。美学は感じないが、「はぐれ刑事純情派」等に受け継がれている傾向である。

 蒲生警視が死去し、事件に絡んで西岡刑事(蟹江敬三)が登場。最終回まで西岡はミステリアスな動きを見せる。また、最終回を目前にし、87年1月に、退職した船村刑事が活躍するシリーズが登場。

 最終回を含め最後の3回は、事件と事件が深く絡み合う中で、神代、橘、桜井の3人の人生模様が交錯するシリーズが、長坂秀佳の手によって作られた。
 最終回では、神代が決死の覚悟で車に追突され転落。命が絶たれたかと思いきや、特命課の必死の救出で神代は助け出された。特命課は特命部に格上げ。神代は部長となり、橘、桜井がそれぞれ1課、2課課長となり番組は終了した。番組最後の挨拶はもはや伝説である。



特捜最前線 オープニング、レギュラーの関係
★第1期('77.4〜)
神代 津上 吉野 高杉 桜井 船村 児玉
玉井
★第2期('78.4〜)
神代 津上 吉野 高杉 紅林 船村 玉井
★第3期('79.4〜)
神代 津上 吉野 桜井 紅林 船村 玉井
高杉
神代 津上 吉野 桜井 紅林 船村 高杉
神代 津上 吉野 桜井 紅林 高杉
★黄金期・第4期('80年7月〜)
神代 吉野 桜井 紅林 船村 高杉
★第5期('85.10〜)
神代 犬養 桜井 紅林 時田 高杉
神代 犬養 桜井 紅林 時田 江崎

 第○期は、主にオープニング形式で分けている。
 6人でスタートした第1期。開始早々婦警が入れ替わった。
 桜井が特命課を去った第2期(矢印オープニング)で、紅林、橘が加入。
 高杉が去ったあとの第3期(夕暮れオープニング)では桜井が復帰。高杉の姪、幹子がこの後6年間在籍する。さらにおまわりさんデカ、滝が加入し番組に新風を吹き込む。
 しかし船村が退職し、津上が殉職。かわりに叶が加入するが、滝が地味に退職する。
 混迷の時期(?)を経過し、船村が復職。以降5年間メンバー変更がなく、ここから第4期。「黄金期」と言えよう。
 5年弱を経て、船村が再び退職。さらに吉野が特命2人目の殉職を遂げ、一気に第5期へとなだれこむ。まず犬養、時田が一気に加入し、その後杉が加入するが、長きにわたり特命を彩った高杉が結婚退職。江崎が入り、このメンバーで最終回を迎える。

●まとめ

第1期('77年4月〜'78年3月)
 放送期間の長かった前番組のイメージを払拭すべく、近代的なセットも作られ気負いも十分。メンバーはそれほど仲が良くなく、冷たい印象を受ける。居酒屋やスナックで課員が集合する、のちには見られないシーンもときおり見受けられる。

第2〜3期('78年3月〜'80年7月)
 桜井の渡米を端緒とし、ここからは刑事の入れ替えがたびたび起こる。メンバーは個性を薄め、次第に課内の「和」が作られるように。緊張感は薄れたが、長寿番組となる下地は作られた。ヘリコプターが毎回のように活躍。長坂秀佳が過激な脚本で本領を発揮。

第4期('80年7月〜'85年9月)
 叶が参入。ここからは超安定政権へ。これまでの大がかりな事件中心から、捜査困難な地味な事件へと徐々に方針転換。飽きられたためか、ヘリコプターの出番は減る。セミレギュラー・蒲生警視もたびたび出演。

第5期('85年10月〜'87年3月)
 時間帯変更を余儀なくされる。メンバーを入れ替えてはみたが凡庸さは否めず…おやっさんの脱退は大きかった。脚本もネタ枯れ気味になり、劇画的脚本が減少、地味なストーリーが多かった。ラテ欄対策か、サブタイトルが冗長ぎみに。




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