特捜最前線というドラマ


●特捜の魅力―それは「陰」

 20年以上前のドラマが、今も宝石のごとく輝き続け、全国各地で再放送が繰り返され、インターネット上にファンサイトがあまたある理由は、一言では言い尽くせまい。

 日本では「太陽にほえろ!」が刑事ドラマのスタンダードとされている。これを誰も否定はできまい。派手なアクション、入っては去っていく人気スターたちの競演、アーバンなBGM―。
 「特捜」は、「太陽にほえろ!」と同時期に放映され、常に比較されてきた。そして事実、「太陽」には人気も放映期間も及ばない。
 しかし「太陽」がその字のごとく「陽」ならば、特捜は「陰」であり、「陰」ならではの魅力があるのだ。

 10年間もの長きにわたり放映され続けた「特捜」。その間に、常に変化をとげてきた。近代化・通俗化していくあまり、末期は「美学」を失ってしまった感はあるが、それもまた、時代の求める姿であった。「特捜」は時代に常に敏感なドラマだったのだ。

 当時最先端でも、時が経てば古くなる。にもかかわらず平成の世においても、古くさいはずの「特捜」がなぜこんなに支持を得ているのか。それは、「特捜」が完成された「陰なる世界」を持っていたからだと思っている。



●「ケレン味」と「市井の人」

 長坂秀佳に代表される、ケレン味たっぷりのエピソードはガンアクションと同じくらい爽快だったし、塙五郎に代表される、市井の男と女の愛憎を描くエピソードは爽快でなくても、胸を打つからすばらしい。

 長坂脚本の場合、設定が大げさだ。爆弾だの疑獄だの、まさに「特命捜査課」ならではの事件が次々と登場する。余計なつじつま合わせはない。嘘臭い、漫画じみた描写が次々と登場する。しかしだからこそ、刑事という生身の人間が事件に体当たりする姿が輝いて見えるのだと思う。

 そして逆に、塙五郎らのような、どこにでもある事件を扱った脚本もまた、「特捜」の柱であった。
 こういった脚本の場合、淡々と話が進む事の方が多かった。そう、その「淡々と」がよかったのだ。路地裏の事件は派手に捜査するものじゃない。

 「ケレン味のある話」と「市井の人を描く話」。両極端のエピソードが入れ替わり立ち替わり視聴者に呈示されることで、両方が際だつバランスの妙。これも「特捜」の魅力であった。



●刑事たちの設定

 刑事ものだから、刑事には設定が要る。特命課の刑事たちは、事件にまきこまれるだけの刑事ではない。常に背中に何かを背負い込んでいた。

 課長の神代からすでにおもしろい。「これでもか」という存在感が希薄なのだ。にもかかわらず、そこにいないとしまらない。「特捜」の持つ「隠」の世界を体現する、神代という刑事。そしてそれを演じる二谷英明という俳優が持つ、クールさ。彼をキャスティングしたスタッフには敬意を表したい。

 初期の「特捜」では強烈なキャラクターがぶつかりあった。津上はスノッブなヤング、船村は老練なベテラン、吉野は不器用な熱血漢、お調子者の高杉などなど―。
 中期はシャープな男たちが勢揃いした。神代よりも冷徹な橘、どこかに闇を背負い込んだ叶。
 末期は、刑事らしさからは少し離れた位置に陣取っていた時田や、刑事としては不器用な杉がいた。

 そしてシリーズ中、常に重厚さをみなぎらせていた桜井の存在も見逃せない。太い眉毛に屈強な体つきは存在感抜群だった。

 紅林はキャラらしいキャラのない、影の薄い刑事だったが、だからこそ何色にも染まるキャラでもあった。冷たさを持たないがゆえにどこか支えてあげたくなる、愛すべき存在なのだ。

 一度だけではそのキャラクターを体感することはできないが、2度3度見ていくごとに、愛情すら覚えたくなる刑事たちが「特捜」にはたくさんいたように思う。



●伝説のオープニングを読む

 2年目、メインテーマが変更され、『矢印オープニング』が登場。最も様式美に満ちた「カッコイイ」オープニングであった。ファンの間でも最も評価の高いオープニングである。(このホームページも矢印オープニングを基調としてデザインしている)
 『私だけの十字架』のアレンジ曲だった初代テーマ曲とは異なり、ストリングス・ピアノ・エレクトリックギターを巧みに用いたロック風の2代目テーマ曲は、初代を聴きなれた視聴者にとっては衝撃的であった。
 一方映像のほうは、「Gメン'75」を意識したかのような、アニメーションが特徴的。青い画面に7本の白い矢印が走るさまは、特命課のシャープでダークなイメージを鮮烈にアッピールする。放射線状の矢印マークが画面下に転がってくるさまはいかにも「Gメン」のよう(コマ数が粗いため転がっているように見えないのが残念)。
 そして画面は、山道を疾走する覆面パトカーとヘリコプターに。画面を2分割し、白い矢印と文字が画面を走りぬけ、刑事を紹介していく手法は斬新かつ爽快。テーマ曲ともあいまって、快活さと重厚さが視聴者に伝わる。刑事たちの映像も、各メンバーのイメージに合っている。
 後半では、階段を駆け下りる刑事たちの映像と、テーマ曲の盛り上がりが合わさり、気分の高揚は最高潮に達する。そこに入る中江真司のナレーション。「やられた」という感じ。
 このバージョンは1年間だけ用いられた。これ以降のバージョンは、最終回までメインテーマ曲だけは変わらず映像だけが変更されていったが、このオープニングを超える作品はなかったと思う。
 ちなみに「青い画面に白い矢印」はCM前のアイキャッチにも使用され、番組終了まで使用されることになる。




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