○ 妻の苦労 「トップページ」へ戻る。 「介護の実践」へ戻る。
二日、夕に病院に行く。娘が来ていた。今日の妻の調子は良い。心電図のコードがなくなったことだけでもすっきりしたようだ。声も数日前より大きくなっているし、症状も好転している。
しかし、楽観は禁物だ。歯ブラシで口を洗ってやる。昨日よりうがいが幾分上手になっている。
何時頃から食事が出来ることになるのやら。
私もこのところ、いろいろと過去のことを思い出すことが多くなった。
ここ十数年、特に企画部にいた頃は女房には本当に苦労のかけどうしであった。
出勤前の朝の会話が始まる。
「今日は帰りは早いのですか。」「わからない。」と判で押したように答える。
「いいですよ、母子家庭ですからね。」皮肉っぽく言い返す。
帰りは午前さま。折角寝ている妻を起こすはめになる。
「今度から遅くなるときは鍵を持っていってください、…私は寝ていますから。」それ以来常に鍵を持つようにしている。
例によって遅くなったので、多分寝ているだろうと思って鍵を開けていると、いきなりドアが開いた。丁度、錠前にかがんでいたものだから、取っ手で鼻先を容赦なく叩かれた。
私はあまりの痛さに、鼻を押さえて飛び跳ねていると、妻がにゅうっと首を出し、人の顔をじろりと見て、「夜中に、近所迷惑ですから、うるさくしないで下さい。今まで寝ないで待っていたのですから。」と言う。
「馬鹿野郎、おかちめんこ、お前が寝ていると言うから、鍵を開けていたのに勝手な事をするな。」
「鼻つらが真っ赤に膨れあがったではないか」と怒鳴りたかった。ついつい、隣近所に気兼ねして何も言えない。
こんな身勝手な女房ではあるが、随分苦労をかけた。
それに報いるためにも、ここで、私の生き方を変えていく。妻を第一にした生活設計にしていくことしかない。
今の体力を維持していけるのは、ここ十年ぐらい。その間だけでも、十分とはいえないが介護を行っていきたい。
それには節制を心がけていかなければ。
午後に、妻の妹と娘さんが見舞いに来たことを聞く。これもじかに聞き出した訳ではない。盛り花が置いてあるので誰か見舞いに来たのと尋ねて判った。
「花が、奇麗だね」「うん」「今日、誰か見舞いに来たの」「あのー、あのー、」と繰り返す。「だれだれさんが来たの」「だれだれさんが来たの」妹の名前を順次尋ねる、やっと「うん」の返事があって見舞者が判る。意思の疎通には時間がかかる。「トップページ」へ戻る。 「介護の実践」へ戻る。