自然がくれた落し物
 野生の生き物の中には、なかなか私達のそばで姿を見せてくれないものがいます。人になれていないのであたり前なのですが、もっと野生の生き物の事を知ることができないのでしょうか。

 みなさんは、道ばたで生き物の思わぬ落し物に出会ったことがありませんか。それはその生き物の事を知る大事な手がかりになることもあります。たとえば、羽根や足あとがそうです。ちょっときたないと感じるかもしれませんがウンチだってそうです。どんなものをえさにしているかが、はっきりと分かるでしょ。どんな小さなのものでも、その生き物を知る大事な手がかりになるのです。
 また、鳥の羽根のように普段はさわらせてもらえないけど、じっくりと羽根を手にすることで、あらためてその美しさに気づかされます。さらに、その羽根がだれの落し物なのかが分かれば、きっとその鳥のことが、大好きになることでしょう。
 これからは、足元にも気をつけながら歩いてみませんか。
 鳥の羽根
主な羽の名前

初列風切羽しょれつかぜきりばね
ほとんどの小鳥は9枚ある
次列風切羽じれつかぜきりばね
通常6枚
三列風切羽さんれつかぜきりばね
通常3枚か4枚
風切羽はばたいて空を飛ぶ働きをする
小翼羽しょうよくばね
通常3枚 
滑空する時に安定させる働きがあるらしい
雨覆(羽)あまおおい
風切羽を守り、体温を保つ働きをする
尾羽おばね
通常12枚、種によっては14枚
方向を変えたり、ブレーキをかけたり、バランスをとったりする
写真はジョウビタキのオス

マガモ・次列風切羽(じれつかぜきりばね)

カルガモの羽と似ていますが、先端の白い部分が特ちょうだそうです。渡り鳥なので、軽くてもなかなか丈夫(じょうぶ)にできています。
8月、海岸でひろいました。川が近くにあるので、そこから流れてきたのでしょう。


キジ
・初列風切羽(しょれつかぜきりばね)

マガモの羽と同じ海岸でひろいました。川の上流でキジの姿を見るので、そこからやってきたのでしょう。色を見てはじめはトビだと思ってしまいました。でも、自分で想像してみることも大事です。

アオバト・雨覆羽(あまおおいばね)

これも海岸での落し物。
アオバトのねぐらは山の方にありますが、海水を飲むためにわざわざ海までやってくるのです。波にさらわれることなく、上手に飲むんですよ。緑色をしたきれいなハトです。

アオバト・次列風切羽

日本平動物園にて。
たまたまケージの横に落ちていたものをひろってきました。
アオバトのとなりにはチョウゲンボウもいます。ここの動物園はいろいろな鳥の卵も展示されていて面白かったですよ。

シジュウカラ・尾羽

雑木林に多い鳥ですが、市街地の庭先でもよく見かけます。この羽も住宅街での落し物。シジュウカラの尾は青っぽいグレーですが、この羽は一番外側の白いラインの部分になります。


キジバト・初列風切羽

庭のメダカを飼っているかめに、毎日水を飲みに来るつがいがいます。
羽の先が茶色いので、まだら模様に見えるのですね。
「デーデー、ポッポッー」と鳴くハトです。


ドバト・体毛

あまりに身近で、見向きもされませんが、一本の羽を見ると、このような金属的なかがやきを見せてくれます。道ばたでひろったら、一瞬(しゅん)「何の羽だっけ」と思ってしまいました。


タマシギ・次列風切羽   Fukusimaさんから頂きました

この羽はメスの羽。タマシギはオスよりもメスの羽のほうがきれいなのです。それに、オスが子育てをするということでも知られていて、ちょっと不思議な鳥です。
このタマシギは他の動物に襲(おそ)われたらしく、羽の一部が欠けてしまっています。

ジョウビタキ・尾羽

「おもな羽根の名前」の写真で使用している個体と同一のものです。
写真では10枚しか羽根が見えませんが、重なっているものをふくめると12枚になります。普段は尾羽は閉じていて、さかんにしっぽを振るような動作を見せてくれます。









ウグイス:メス・左翼
何者かにおそわれたのか、車にひかれたのか、この部分だけが道ばたに落ちていました。
模様のないオリーブ色の羽根の持ち主(写真は少し茶色っぽく写ってしまっている)はウグイス、ヤブサメ、センダイムシクイなどいくつも候補があるため、はっきりと識別(しきべつ)できませんでした。
そこで、神奈川県立生命の星・地球博物館の学芸員さんに見ていただいたところ、翼式を用いた識別の方法を教えていただきました。
翼式を用いた識別法
鳥の翼(つばさ)には初列風切羽・次列風切羽といったように、場所によって名前がつけられています。さらに、それぞれの羽根には順番に番号がつけてあります。
ところで、1枚1枚の羽根の長さは、鳥の種類によって違いがあります。そのことを利用して、一番長い羽根から順番に並べていき、その番号の並びを比べることで、同じ種類かどうかを判定すればよいのです。以下、この羽根について検討されたデータです。
1..初列風切羽=9枚 → スズメ目
2.NW(自然翼長)=54.5o
  →小型の鳥類(ウグイス,ヤブサメ,ムシクイ類,メジロ など),
  体長は14センチ前後と推定
3.翼式:6=7>5>4=8>3>2>1>9(ただしP9は換羽前)
  (初列風切羽根の6番と7番が同じ長さで一番長い。その次に長いのが5番で・・・・)
  →サメビタキ類,ムシクイ類はP8が一番長い
  よって,残るはウグイスかヤブサメです。
  なお,ウグイスはオスとメスはかなり体の大きさが違います。NWからメスだと思われます。
  山階(1941)によると,翼長:♂ 64-71mm (n=9) ♀ 55-59.5mm (n=4) です。

  次に推定の域を出ませんが,翼式を見るとウグイスのメスの可能性のほうが高くなります。
  ヤブサメの翼式は7>8>6>5>4=9>3>2>1,NW=57.5o
  P8がヤブサメのほうが比較的長いようです。
  ただし,ウグイスの羽が一部擦り切れているため確定はできません。
注:ウグイスとヤブサメの翼式は、文献に出ているデータが少ないため、
  博物館に冷凍保存されていた標本を実際に測り、それを使っています。


トラツグミ・右翼

日本で見られるツグミの中では最も大きな鳥です。
夜、「ヒィー」と鳴く悲しげな声は、昔から不気味がられ、きらわれてきました。「鵺(ヌエ)の鳴く夜は恐ろしい」という映画のセリフが昔ありましたが、この鳥をさしています。

ムクドリ・尾羽

「キュルキュル」とにぎやかな鳥です。子育ての時期以外は群れを作っていることが多いです。
尾羽の中央にくる羽以外には、先端に白い斑点(はんてん)が入ります。この羽は猫などにおそわれて散らばっていました。

アオジ・右翼

夏は高原や山地で子育てをしている事の方が多いのですが、冬になると市街地でも見られます。
黄色いおなかがよく目立ちます。
これはガラスにぶつかって事故死したもの。

ト ビ・初列風切羽

40cmを越す羽の長さは、非常に大きく驚かされます。外側と内側それぞれに段差があるのが特徴的です。トビの獲物は死肉が主なため、海岸や河川敷でよく見かけます。この羽は三重県の志摩沿岸で見つけたもの。
現在、生ゴミは焼却処分されることがほとんどですが、海岸近くのゴミ埋立地では、トビとカラスとカモメの三つ巴の戦いが繰り広げられていた時代もありました。

スズメ・右翼(上)・初列風切羽(下)

留鳥として日本全国で繁殖しているので(小笠原をのぞく)、私達にとって最も身近な鳥といえるでしょう。むしろ、人里から離れるとスズメを見ることはできません。そばに寄ると逃げてしまうスズメですが、人の生活圏から離れてしまうことないのです。

それは、昔アフリカ大陸に住んでいたスズメの祖先が、人類の移動、そして農耕文化が広がっていくのと同時に分布を広げてきたことと関わりがあるのでしょう。

なお、留鳥といわれるスズメの中にも、長い距離を移動するものもいるようです。標識調査によると、新潟県の福島潟から太平洋側の神奈川県や静岡県まで移動したスズメの幼鳥が見つかっています。

ミズナギドリの仲間・左翼

ミズナギドリの仲間は渡り鳥で、夏は北の方へ移動します。種類にもよりますが、かなりの長距離を移動するため、途中、力尽きてしまうものもいるのです。
ミズナギドリという名前は、波を切り払う(薙ぐ)ように海面すれすれを飛ぶことから来ているようです。

ヒメアマツバメ・初列風切羽

高速で上空を飛びまわるため、羽の形が鎌のようになっています。風切羽のカーブもツバメに比べるときつく感じます。
普段は高い空を飛び回っていますが、気圧が下がってくると虫たちが地上近くに集まるため、アマツバメも低いところへ降りてきます。このことから、「ツバメが低く飛ぶと雨」という言い伝えができたのでしょう。アマツバメは漢字で書くと雨燕となります。

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