虹
ココは、青春学園、児童昇降口前。
突然の雨に立ち往生をしている人影があった。
鬱陶しいほどの雨が降り続く中
その人物は、ただ上を見上げて時折、溜息をつく。
この日の降水確率は70%にもなるというのに、この日に限って傘を忘れてしまったのだった。
「あーぁ、益々降ってきちゃった……やみそうにないなぁ……どうしよう」
朝、天気予報を見ることが出来なかった桜乃はうっかり傘を忘れてしまったらしく
雨で午後練がなかった女テニは早めに帰れるはずだったのだが
ヒドくなるばかりの雨にかれこれ20分ほどそこにいたのだ。
「もっとヒドくなる前に帰ろう!」
やみそうにない雨にずっと戸惑っていた桜乃だったが、とうとう意を決してどしゃ降りの雨の中に足を踏み出そうとした。
__ が、その時「……あんた何してるの?」との不意の声。
それに桜乃は飛び上がるほど驚く。
後ろを向いてみれば、そこにいるのは
「! リョ……リョーマ君!」
「傘、無いの?」
「うん……うっかり忘れちゃって」
「フーン。今日って降水確率70%だったよね、どうして忘れられンの?」
「うぅぅ……」
なまじ自分でも思っていたことなだけに何も言い返せない。いや、たとえそうでなくとも
桜乃はリョーマに対して言い返せるような人物ではないのだが。
「朝、直ぐにでも降り出しそうな天気だったよね」
「あ、朝は、そのっ急いでて」
「ま。別にどーでも良いけどね」
次々と浴びせられるリョーマの言葉にどんどん沈んでいく桜乃。
呆れられちゃったのかな……?
と心配になっていると、唐突に雨空の下で爽快な音が響いた。
バサッ!
音に反応して顔を上げると、ソコには綺麗な深い青色をした傘。
その傘の中にこちらを見ているリョーマがいる。
「……ほら」
リョーマはそう云うと少し傘を上げ、人一人くらい入るのではないかという隙間をあける。
しかし未だに状況を理解できていない桜乃はただ呆然とするのみで……
リョーマはそんな桜乃の様子に理解していないことに気付くと溜息をついた。
そしてまだ気がつかない目の前の少女に面倒臭げに声を掛ける。
「……ねぇ、入んないの? 濡れて帰りたいんならソレでも良いけどね」
その言葉を聞き、やっと理解した桜乃の表情が緋で染まっていった。
「え!? あ」
「え? ……え?」と混乱していた桜乃だが
少しずつ混乱が溶けてくると、未だにソコで待っていてくれているリョーマに向かい
「……っと……ありがとう」
と言い、これ以上待たしてはいけない!と入っていった
「別に」
ぶっきらぼうにそう言うと、一つの傘の下、
二人で歩き出した
ちらっと未だ顔の赤みの引かない桜乃の顔を見るリョーマ
(はぁ、コイツ鈍すぎ……あの状態で気付かないってスッゴイ激鈍 でも、ま、)
「……そんな所も可愛いんだけどね」
ぼそっと呟いた言葉、
幸か不幸か、桜乃には良く聞き取れなかったらしい
「……え?」
「なんでもない」
ラシくないことを言ってしまった自分を恥じ
誤魔化すかのように
視界を上へ広げると、先ほどまであれほど振っていた雨も今では霧雨程度だった
つられて上を見た桜乃の顔が見る見る感嘆の表情に変わっていく
「……わぁ〜! 綺麗……」
未だ少し霧雨の混じる空に盛大にそびえるソレは
雨が光りを乱反射し、光り輝いているようだった
「綺麗だね、リョーマ君!」
そう言いながら満面の笑みをリョーマへ向ける
一枚の絵にでもなりそうなその景色と愛らしい笑顔に一瞬目を奪われた
「……ん」
そう答えると、傘を畳む
そして空を仰いだ
美しき虹が薄れ消えるまで
二人はただ、眺めていた、
消えゆく虹を、つかの間の風景を
自分の中に刻みつけるように
あとがき
とりあえず、強化月間企画
第一作目でした!
次回を待て!
あ、うそですごめんなさい。
御粗末さまでした……。