悪口も程々に?



キーンコーンカーンコーン……

授業が全て終わり、部活の時間
いつもならば直ぐに用意をして行くのだが、只今、桜乃が居るのは

保健室

朝から調子の悪かった桜乃は6限目の体育でついに倒れてしまったのだ
軽い風邪、と言うところで
気分が良くなれば戻って良いとの事だった。

桜乃は「いい生徒」の部類に入るため、急な用事が入ってしまったという先生は
桜乃に気分が良くなったら部活に出て良いわよと残し、行ってしまった

まぁ、別に軽い風邪なだけだから良いのだが。

「部活、いかなくっちゃ」

いそいそとベッドから下りてラケットを取りに教室へと向かう
その時に通りかかった部活連絡用の黒板に何となく目を向けると

「……? あ」

黒板には白いチョークで
「顧問の先生が出張中のため、部活はナシ」
と女の子特有の丸さを含んだ文字で書いてあった

(良かった、見て置いて)

部活が無いならば、とそのまま教室へと向かう桜乃。
そしてついた教室で鞄の中に教科書を入れていると、ふと思う。

「あれ? 何か忘れているような……」

そう、何か忘れている気がしてならない。

なんだったかなとしまいながら考えていると、机の奥の方に何かが入っていた、
その物が何冊かの本だと解ったとたん、忘れていた事を思い出す。

「あ! この本今日中に返さなきゃ」

朝は覚えていた事、色々と不都合が重なって昼休みも返しにいけず
体育の時には倒れてしまってすっかり忘れていた事に気付く

「あーあ、まだ係りの人いるかなぁ? ……今日の当番の人だれだっけ?」

返したら直ぐ帰れるように鞄を片手に教室を出た

テクテクと廊下を歩き、辿りついた図書室。

もうすでに開いているドアから中へ入ろうとすると、
中から聞こえた声に足が止まる。

「だよ……ねぇ……あれ! 竜崎桜乃!」

え……? 私??
驚いて耳を澄ませば、話しているのは同じ学年の子達のようだった

「最近さ、あいつ何かうざくない?」

「だよね! アイツなんかさぁ、ただ「おばあちゃん」で繋がってるだけじゃん?」

「そうそう、スミレ先生が男テニの顧問だからって近づきすぎだよね」

「リョーマ君にだってそうだよ! 近づきすぎ! まじウザイ」

「……でもさ、ここで話してて良いの? 今日女テニ休みっしょ? 
竜崎って結構ここ出入りしてるみたいだし、来るんじゃない?」

「そんなん気にしてどうすんの〜!? 大丈夫大丈夫! アイツ体育の時間に倒れたらしいしさ
どうせ今だって保健室だよ」

「え? 倒れたの? 何で?」

「そんな事知らないよ、でも良いじゃん別にアイツの事なんてさ」

「そうだよねぇ、ま、いい気味ってことでさ」

……

それからもやむ気配のない影口の数々。
あの、近づく事すら躊躇してしまうような輝きを持っているレギュラー陣、特にリョーマには
近づきたくても近づけない女子は莫大にいる。
そんな中で、レギュラー陣からも良く知られている桜乃の立場や自然と好かれている桜乃自信の人柄は
多くの女子から妬みや嫉妬、羨みをもたれているのだ。

実際、そんな風に思われている事に気付いていなかった桜乃には、その言葉の数々が異様に突き刺さってくる

(気付かなかった……私そんな風に見られてたんだ)

ショックと言うよりも今までそんな周りの娘達の気持ちを考えられなかった自分自身が居たたまれなかった
一つ一つの言葉が胸の奥に突き刺さる
エスカレートしていく悪口は、いつしかその矛先を変えていた。


「そうだよねぇ〜あ! 竜崎と言ったらさぁ、小坂田! あの二人何かヒッツキすぎ」

え!? 朋ちゃん?

「あぁ、小坂田もさ何かデバッてるよねぇ」

「「リョーマ様ぁ〜〜」とかいってさ」

「そうだね〜、何か聞いてるとムカついてくる。あたしあーいう子って嫌い」

そう。火がついた悪口は、桜乃つながりで朋香にまで及んでいた。
もともと人の良い桜乃は、自分にならまだしも目の前で繰り広げられる親友への悪口の矢を目の当たりにして
居ても立ってもいられなくなる。

ドサドサッッ

気がついたら、手に持っていた数冊の本が重力に従って落ちていた

「や、やめて下さい!! わ、私はともかく……朋ちゃんはそんな子じゃないです!!」

突然聞こえた本の落ちる音と思いもしなかった声に悪口に花を咲かせていた女子達が驚いて振り向く
その視線の先には怒りか緊張か、もしくはその両方で肩を小刻みに震わせる桜乃の姿があった。

「は? 何? あんた」

「私たちは本当の事を話してたダケじゃん」

「そーそー。って言うか何でココにいんの? 倒れたんじゃなかったの〜? 非弱な桜乃チャン? 
仲の良いお友達は今お留守〜??」

開き直ったも良いところ、多勢に無勢とばかりに一気にまくしたてる。

「わ、私の事はなんて言われても良いです。でも朋ちゃんの悪口までは言わないで下さい!」

内心ドキドキのまま言い切った桜乃

「! 何だよ! 偽善者ぶっちゃって! ふざけんなよ!」

その珍しく押しの強い態度に逆なでされたように相手の子が大きく腕を振りかぶる

(……!!)

ギュッと目をつぶり腕でかばい、あと少しで襲って来るであろう刺激を予想していると

「ねぇ、ココ図書室。五月蝿いんだけど」

聞こえてきた覚えのある声に瞑っていた瞳をそっと開く

「り、リョーマ君!?」

桜乃に背中を向け、拳を上げたまま硬直している女子の手首あたりを軽く制している、リョーマの姿があった

「えっ? 越……前君、何で??」

「今日の当番俺なんだよね。気付かなかったの?」

サァっと女の子の顔から血の気が引いていく

「!? じゃぁ今までの全部聞いて」

「あんたらさ頭悪すぎ、他人のコト言う前に自分のその性格、何とかしたら?」

はっきりと言い切ったリョーマ。

「用がないなら早く出てってくんない? さっきから五月蝿くて邪魔なんだよね」

そのリョーマの気迫に押されている女子は先ほどとは一変

「ちょ、ちょっとヤバいよ。」

「ね、早く行こ」

と、一言二言かわし

自分の教室へと足早に去っていった。
その中の一人の今にも泣きそうな表情をかいま見た桜乃は
(あぁ、あの子リョーマ君の事、好き、なんだろうな)
と心の中で改めてリョーマの人気ぶりを目の当たりにした気分だった。

「……で、竜崎は?」

突然話しかけられ、飛び上がるほど吃驚した桜乃だが直ぐに戻り

「え?」

と、曖昧な答えをかえす

「なんか用事があって来たんでしょ? ま、どうせ返却か何かだろうけどね」

「あ!? 本!」

やっと思い出して急いで落とした場所まで行き、手早く拾い集めた

「えっと……お願いします」

「ん」

その本を持っていき慣れた手つきですませるリョーマ、慌ててカウンターの所まで行くと

「え、とリョーマ君。」

戸惑いながらも話しかけてみる

「……何?」

「あの、ありがとう」

「別に」

丁度窓から差し込んできた夕日の光が二人とその周りを緋で染める。
それだけの所為ではなくリョーマの顔が赤く見えたのは気のせいなのだろうか。

作業を終え、数冊の本を本棚に戻すと桜乃とすれ違いざまにその頭にポンッと軽く手をのせて

「ま、あんたにしては……結構頑張ったんじゃない?」

と呟くように言った

「え、あ。へ?」

夕日にプラスされて更に赤くなった桜乃のその反応を面白がりつつ一人すたすたとドアの所まで行くと

「ね、もう鍵閉めるから出てくれる? 置いてってもいいんだけど」

と桜乃をせかした

「あ、ごめんなさい」

すると、幾分ましになった顔で急いで図書室から出る

「リョーマ君はコレから部活?」

「まぁね」

「そっか、頑張ってね」

そんな会話をしているうちに、階段まで来た二人

「俺、ジャージ教室だから」

「そっか……じゃ、さよならリョーマ君。ありがとう」

挨拶もそこそこに、正反対に歩き出した二人。

しかし、二人の胸には共通の何かが芽生えたことに、本人達は薄々気付いていた

いつかそれが、確かな確信へと変わる時まで

時の流れにまかされる

着実に近づいている恋の予感。想いの通じるその日まで



<END>







あとがき

いや〜完成しましたよ!1ヶ月とちょっとかかりました

桜乃ちゃんの悪口は自分で書いててやンなりましたよ

ごめんねぇ、桜乃ちゃん

まぁ、今回は特に甘すぎず苦すぎず(?)

ある意味中途半端におわりましたね、

次回はもっと甘いの目指して!!ファイト!私