地域で生きる障害者のためのIT支援事業
 
事 業 実 績 報 告 書
事業名 地域で生きる障害者のためのIT支援事業






@IT支援ボランティア養成講習
「A:利用相談・就労支援講習」
開催日:7月31日、8月22日、10月10日、12月12日、1月9日、2月5日(合計6回)
開催場所:西多賀社会訓練センター(所費対象)
参加人数:延べ人数44名
講師:内川陽三氏(エピーク前取締役・障害当事者の就労経験者)(謝金・旅費対象)
「B:入力補助装置・パソコンボランティア養成講習」
開催日:6月27日、7月4日、10月17日、11月7日、11月14日、2月19日(合計6回)
開催場所:西多賀社会訓練センター(所費対象)
参加人数:延べ人数38名
講師:柴田邦臣氏(大妻女子大学社会情報学部専任講師)(謝金・旅費対象)
AIT支援ボランティアの派遣
@A・Bの実習として、日筋協が依頼を受けた家庭へ、実際にボランティアとして訪問し、支援を行った。A受講者はスキル習得できた障害当事者を、リフト車を利用して派遣した。B受講者は全員が手分けし、実習機材を持参して継続的な訪問支援を行った。
派遣活動期間:6月〜3月(別紙「IT支援パソボラ派遣訪問記録」参照)
B派遣のための継続的なシステム形成
実習派遣の段階では、ケースごとに「回す人」を置きチームを組み、MLやLANでデータを共有してマネージメントするモデルを作り運用した。また、情報提供するWebも作成した。URL(http://www.nishitaga.net/sapopeji/)
CIT支援ボラ派遣マネジメント用機材の購入
マネジメント用機材としてパソコン組立部品及び入力補助装置を購入した。
DIT講習会の教材作成文具等の購入
IT講習会教材として無線LANポイント他を購入した。
事業の
成 果
以上の事業実施を受けて、以下の成果を具体的に得ることができた。
1)人材育成と具体的な派遣の成果
A・B両講習を実践的に行った結果、IT支援の依頼に対応できるボランティアを10名養成することができた。そのうちの7名は数多くの実習をこなしており、さらにそのうちの4名は障害当事者である。以上の派遣の結果、16件の支援依頼に応え、10ヶ月にわたって100回以上の継続的で綿密な訪問支援を実現した。
2)派遣活動継続のための土台形成
人材育成だけではなく、ケースデータのマネージメント機材、体験用の入出力補助装置など、今後も地域の障害者のニーズに応えて継続的に派遣するための土台を準備することができた。
3)行政・福祉関連・NPOとの連携
本事業を契機に区や他NPO等との連携が深まり、新年度から新しいIT支援事業を協働して実施することになった。
団体名 社団法人日本筋ジストロフィー協会 宮城県支部
助成金
精算額
1,090千円
 
〔独立行政法人福祉医療機構(高齢者・障害者福祉基金)事業〕(平成16年度地方分)
事業名 地域で生きる障害者のためのIT支援事業
 
事 業 総 括 会 議 議 事 録
1.開催日時 平成17年3月24日(木)13時〜16時
2.開催場所 西多賀社会訓練センター
3.出席者 「A」講習講師 内川陽三先生・「B」講習講師 柴田邦臣先生
受講生支援派遣ボラ 平田千秋・島途正子・薮恵子・坂本浩士・西村浩一
事務局 武内幸次郎
4.議題  
  1 事業のIT支援ボランティア養成講習について
  「A:利用相談・就労支援講習」について
  各種の部品によるパソコンの組み立てを見て、コンピュータが単なる商品ではなく、いろいろ組み合わせ可能であるという、ハード面の特徴をある程度理解することが出来た。
  こういった多様な組み合わせができることが、各人の身体能力に合わせて条件を設定できる、パソコンの可能性につながりうることがわかった。ぜひ今後生かしたい。
  Web作成について、完全にマスターすることが出来なかったが、先生の助言を受けながらなら何とか出来る段階だ。
「B:入力補助装置・パソコンボランティア養成講習」
  4種類の最新の入力装置はとても参考になった。写真で見るだけではなく、実物をもちいてその使い方を覚えることができた。
  パソコンを使用する人の障害の症状がどうかを見極めることが大事であることを教わった。
  PPSスイッチやトラックボールは高度な技術が無くても、基本さえしっかり学んでおけば応用できることがわかり、支援の仕方が広がることがわかった。クチマウスは両手が不自由でも口を使ってマウスポインタを利用できるが、クリックの問題はクチマウスの機能に頼らず各種を組み合わせればよいことがわかった。TRACK-IRは頭の動きだけで操作可能だが、キーボード入力の工夫が必要なことがわかり、その工夫を学ぶことができた。
  2 IT支援ボランティアの派遣について
  障害を持つ在宅者の中には、パソコン教室に通いある程度操作が出来る様になっても、インターネットの操作が出来ずにいた。訪問支援し大変喜ばれた。(筋ジストロフィーの方)
  新入力装置を持ち込み、操作方法から指導した。今度は何時来てくれるのか、出来れば毎日来て貰いたいと喜ばれた。(ALSの方)
  当初この入力装置をどの様に装着させ操作させるのか、戸惑ったが先生に同行指導して頂き助かった。
  機材を持参した訪問をおこなうことで、その人にとってどのような補助装置を選ぶことが良いのか、利用する本人が選ぶことができるのがよかった。
  3 継続的な派遣システムづくりについて
  計画の派遣日に体調を崩し、変わって頂き申し訳なく思っています。継続的に家庭を訪問することが、いかに難しいのか良くわかりました。
  訪問する中で『派遣システム』を洗練させていくことができたのがよかった。特に、パソボラマネージャが全体の情報共有を促しつつ、家庭ごとのリーダーが訪問先で調整する方法は、とても訪問派遣に合致できていると思う。
  MLやLANでデータを共有し運用することができた。
  パソコンボランティアの具体的な内容を情報提供するWebを作成することができたのはよかった。
  特に入力機材を紹介するWebが運営できてからは、それに関する問い合わせも増えたし、訪問先でもWebの写真をもちいて説明できたので、とてもよかったと思う。『西多賀カレンダー』については、利用者にも興味の沸く情報を載せることで、それを閲覧しようという具体的な動機をもってインターネットをできるようになるのがよかった。『バーチャル・憩の家』は、訪問先の利用者が自宅からインターネットをとおして交流できるように、掲示板の数を増やし、見やすくできるようリニューアルされたのはよかったが、まだまだ見にくいし、未完成だと思う。運営は良いので今後の改良が必要。
  4 事業の全般について
  福祉医療機構からの助成金を頂き、今回この事業を行うことが出来ありがたく思っている。
  訪問した先々で感謝され、継続して欲しいとの要望も受けた。
  この事業を契機に区や他のNPOとの連携も深まった。次年度からIT支援を共同で実施することになった。
  今後、連携するプログラムの形はできているものの、具体的にどのように参画し、それを実施するかが検討課題になっている。訪問先の家庭からは、継続する場合の具体的な内容を求められている。さらに幅広く支援でいるような体制を、早急に整えたい。
    以 上──
 
〔独立行政法人福祉医療機構(高齢者・障害者福祉基金)事業〕(平成16年度地方分)
事業名 地域で生きる障害者のためのIT支援事業
 
本事業により形成された、派遣のための継続的なシステム
 
本事業の特色は、単なるIT講習ではなく、IT支援を求めている障害当事者に対して、実習も兼ねてその自宅や家庭を訪問して支援ボランティアをおこなう点にあった。各講習の基礎が終わった段階から、受講生や講師による訪問派遣がおこなわれたが、実際に定期的に、ニーズにできるだけ答えることができるように支援しようとすると、その過程で以下のような課題が存在することがわかってきた。
 
(1)派遣側の課題
支援依頼の情報を収集、整理し、当事者の情報、家庭の情報、求められているニーズを全体的に把握する必要性
その情報を受けて、ボランティアの中でできるだけ的確な人を選び出し、そのボランティアに情報を伝える必要性
ボランティアが訪問した内容を持ち帰って来てもらい、その問題点などをチェックする必要性
そういった情報を他のボランティアとも共有し、今後の支援に生かしてもらったり、緊急時にボランティアを変わってもらえるようにする必要性
   
(2)家庭側の課題
第三者であるボランティアがスムーズに家庭に入っていくことができるようにする必要性
家庭側の細かな事情や、急な日程・内容の変更にその場で迅速に対応する必要性
その障害当事者のケアプランや医療処置などと連携したIT支援を目指す必要性
その家庭に入っている他の福祉サービスとの連携をとる必要性
   
(3)機材、資源面での課題
どの入力装置がその人に適合しているのか、意思伝達装置助成や私費などで準備する前に、本人も納得の上できちんと決定する必要性
ボランティアでインターネットを教えても、その後インターネットで見るサイト、得たい情報がなければ、インターネットを使い続けることなく支援が無駄に終わってしまう。そのための受け皿になるような、身近な福祉向きの情報やコミュニケーションのきっかけとなるものの必要性。
ボランティアが定期的に訪問できるための交通費
   
以上の課題をクリアするため、本事業では試行錯誤を繰り返し、最終的に以下のような派遣システムを考案、実施した。その成果は「事業総括会議」でも議論され、評価された。
   
(1)派遣元の統合的システム
区役所、福祉事業所、各家庭から寄せられる支援依頼の情報の窓口となる、パソボラマネージャを選任する。マネージャは訪問派遣前に、保健師やケアマネとミーティングを持ち、障害の程度や家庭状況、本人のニーズについて事前情報を集める。
ボランティアのスキル、移動手段、訪問できる曜日時間帯を整理したデータベースを作成しておき、マネージャはそれを元にもっとも的確なボランティアを選任する。
実際に訪問支援をしたあと、ボランティアが支援内容、そのときの様子を報告できるメーリングリスト(ML)を作成しておく。そのML上での報告に対して、マネージャや講習会講師が適時アドバイスをおこなう。
そのMLは、他のボランティアにも受信し共有できるように設定しておく。それにより直接支援していないボランティアも内容がわかり、勉強なるとともに、訪問している人ができなくなった場合の代わりとして、スムーズに入っていけるようになる。共有のため、氏名以外の個人情報などにできるだけ配慮した報告とする。
   
(2)支援先家庭での臨機応変な対応システム
ボランティアは都合がつく限り2名でチームを作って行く。一人で単独に行くのではなく、できるだけ2名で行って話しやすい、質問しやすい空間をつくりだす。複数で行くと事故やトラブルも避けることができる。
2名のうち1名は、入れ替えずできる限り毎回参加する。その人は、その支援ケースにおけるチームリーダ=「ケースを回す人」という役回りにする。リーダーが家庭との窓口になって日程や求められている支援内容を決定する。特に日程に関しては、事務局やマネージャが統一的に決定するよりも、リーダーが現場で決めたほうがスムーズに決まる。
リーダーは家庭のニーズを把握し、MLを通じて、マネージャに細かく報告する。リーダの判断で講師の指導も適時受ける。
リーダーは各自、そのケースのケアマネージャやソーシャルワーカーにも連絡を取り、時にはケース会議やメディカル・カンファレンスにも参加する。それによってホームヘルパーや在宅介護ボランティアなど、他の支援者との連携を図ることができる。
   
(3)障害当事者にとって本当に役立つための機材、資源の準備枠組み
試用できる入力補助装置を1セットずつ準備し、訪問の際に持ち込んで利用者に体験してもらえるようにする。それによって、意思伝達装置助成や私費で購入する前に、利用者にとって最適な装置を、支援者だけではなく実際に利用する障害当事者の方が納得して、選択することができる。
支援の結果、インターネットを使えるようになった人も、自分の見たい情報を見ることができず、使わなくなってしまった例もあった。そのため、本事業でインターネットを覚えた障害当事者が、今後もインターネットを便利に使い続けるWebサイトが必要となったため、日本筋ジストロフィー協会がこれまで小規模にもっていたWebサイトを大幅にリニューアルし、そういった受け皿になりうるようにした。まず、所有している入力装置や、パソボラの実態を理解してもらえるようなサイト「サポペジ」を作成した。
在宅で暮らしている障害者・患者がもっとも欲しがっている情報のひとつは、どこで何をやっているかという、自分の地域の福祉イベント情報であった。そこでそういった情報を集め、「西多賀福祉カレンダー」を作成した。こういった絶え間なく日常的に必要な、皆さんが見てきたWebサイトの作成、変更、管理更新は大変なので、運営している業者に、情報収集と定期的な更新(最低2週間ごと)もお願いした。また、日本筋ジス協会のレンタル掲示板をリニューアルし、訪問先の人が、ゲーム感覚で部屋を選び、ネットを利用して会話できるようなきっかけとなる「バーチャル憩の家」も作成し、管理者の24時間体制の管理を依頼している。
経済的に恵まれていない家庭にとっては、ボランティアの交通費が負担となって、パソボラ支援をあきらめる人が意外と多い。これは訪問支援ならではの問題となっていた。経済的に恵まれていない家庭にとって、交通費がはじめてのバリアであったということもある。貴助成のおかげで、ボランティアの交通費については全額補助を出すことができた。これにより、経済的につらい方でも、ボランティアの交通費が問題となってIT講習に二の足を踏んでいた人にも、ボランティアを派遣することができた。貴助成終了後に別の助成を検討しているが、せめて交通費だけは補助できる枠組みがあるといいと思われた。