信州の美術館

2) 長野県信濃美術館 東山魁夷館

 この美術館を鑑賞する目的で訪れたのは、今回が3回目だったと思う。東山魁夷画伯が、ゆかりの深い信州に多数の作品を寄贈して、自身の指名で谷口吉生氏が設計を担当し完成させたのが平成元年の暮頃だと記憶している。この敷地には、隣接して日建設計の林昌二氏が若い頃に担当したという県立美術館と、近くに善光寺本堂などの個性を放つ造形物があり、この建物はそれらに、まるで埋もれるかのように存在していた。

 外観と同様、内部空間も一切の装飾を排し、無駄な線を消し去り淡白なデザインである。けれども、プランニング、空間の切り取り方、面や空間のプロポーションは洗練されて、妥協することがない。

 

私は、始めて訪れたとき、白銀に輝く外壁と中庭の水面との対比だけしか印象に残らなかった。二度目に訪れたときには、個人的には、数寄屋や擬洋風などの造り込まれた建築に関心をもっていた時期でもあり、正直な話、物足りなく思った。そして今回改めて訪れて、そのレベルの高さに気づき感動することができた。

 派手な装飾もこれ見よがしの演出もしていないが、美術作品を鑑賞して館内を散策していると、まるで、野山の自然の中を歩いているような心地よさにつつまれてくる。技術的には、開口部や建具あるいは床・壁・天井の納まりの無駄な線を消し去り、外部空間や内部空間同士を効果的に演出するように平面・断面計画と開口の開け方が意図してされているということなのだが、よほど、そうした設計作法に通じていなければ出来ない技であろう。

 建築に素材感や量感を持たせず、存在感ですら消し去った独特の手法は、展示芸術を引き立てる装置としての建築である美術館にこそふさわしい。作者の意図の一端を見た気がした。

訪れるたびに印象の変わる、味わい深い建物といってよいだろう。


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