信州の住宅シリーズ

 第1回 旧横田家住宅(松代藩武家屋敷)

 工業化や外壁乾式工法の普及などから、国籍不明と呼ばれるような家々が多くなった日本の住宅だが、よく観

察すると 1)欧米の影響を受けた外観の家 2)日本伝統工法をイメージした和風の家 3)モダニズムの影響をう

けたフラットルーフ(平屋根)の家 に大別されることに気づかれるだろう。

 それぞれの詳しい解説は別の機会に譲るとして、このコーナーでは、信州ではまだまだみかけることのでき

る、民家や町家造りの家あるいは武家屋敷などを題材にして、2)の和風の家について考えてゆくことにしたい。

 

 今日、近代和風と呼ばれる今日の形式が確立したのは、堀口捨巳、吉田五十八の近代数寄屋の手法によるも

ので、昭和時代に入ってからのことであるが、これらには、主に桃山時代以降の数寄屋(茶室)建築、江戸時代後

期の町家(商家)建築、寺社などの書院造り、武家屋敷あるいは民家などの影響がみられると私は考えている。

このうち、海野宿・奈良井宿など信州には現在も使われている町家が点在する。また、禅寺など古刹などを訪れる

たびに、りっぱな書院造りに出会うことが多い。萱葺きや藁葺きの屋根の形を残した農家(民家)や本棟造り民家、

あるいは今回訪ねる「旧横田家」のような武家屋敷も現存・保存され、公開されている。

 古きを訪ねて新しきを知るというが、生活様式・工法・建材は大きく変化しても、日本人の奥底を流れる好みや

趣向のようなものには変わらないものがあるように思える。これから、これらの先人の残した家々を訪ね、

その知恵や作法を学びとり、現代との違いを考えつつ、これからの家造りを考えてみたいと考える。

 

 第1回に訪ねたのは、松代城下町の中級藩士の旧宅で重要文化財として公開保存されている「旧横田家住宅」

150石の禄を幕末まで受けていたというから、さしずめ現代ならば、課長級の地方公務員が郊外分譲地に建てた

戸建住宅といったところだろう。建物の造りは比較的質素で、式台のある広い玄関がある以外は、野地裏表しの

茶の間や萱葺き屋根などはほとんど民家と変わらず、二階に夫婦部屋・隣接した隠居所のある延べ床70坪弱の

三世代住宅の平面構成で、当時の武士階級の平均的な屋敷といってよいだろう。

 そうはいってもさすがに優雅なもので、庭園とつづきの菜園があり、泉水という池・水路が屋敷地をめぐり、夏の

昼下がりにも心地よい風が家のなかに吹いてくるような佇まいと空間の演出がされていて、その心地良さは、言葉

ではなかなか伝えにくいほどである。

 住宅シリーズの初回にこの建物を選んだのは、こうした空間が、私たち日本人にとって住宅のひとつの原点と考

えるからなのだが、内部空間と外部空間と中間領域との織り成す「空間のハーモニー」を、興味のある方は是

非、体験してみてほしい。  場所は、松代市民会館から徒歩2分、西側である。

 
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