第八回 丹羽経済塾の報告
七月二十五日(木) 定刻より二十分遅れで第八回丹羽経済塾が開催された。最初に丹羽塾長の古くからの友人で千葉大学法経学部の岩田昌征教授の紹介と教授自身からの自己紹介からスタートした。教授はバルカン半島情勢の専門家でユーゴスラビアの混迷を現地に赴き実地に検証した方で有名である。それに伴い久しぶりに参加された関西の財界人加藤四郎氏より挨拶があった。
引き続き、丹羽塾長よりジャパンポスト八月1日号の原稿「中国の経済的追い上げの脅威に対処する大道」を基に勉強会が開始された。「中国の脅威」が巷間叫ばれない日は無いと言ってよいくらいであるが、その脅威は経済・産業の面に限定されている。本来ならば、急速な中国の軍備拡張による軍事的な脅威こそ強調されてしかるべきであろうという観点から塾長の講義は始まった。
「追い抜かれたわが国の産業空洞化やむなし」というシニカルな意見は、為替レートのはたす本来的な機能についての無理解から発する間違った思い込みであるとの指摘があった。為替レートというものは、ゴルフにおけるハンディキャップによく似たシステムであり、初心者と熟練者が同等に勝負できる機能を持っている。つまり、後進の発展途上国や衰退した老熟国が進歩・興隆している先進工業国が対等に戦えるという機能を持つという説明があった。ちなみに東西ドイツの例を引き、西ドイツより絶対的に生産性の劣っていた旧東ドイツでは単一通貨となった途端に産業が悲劇的に壊滅してしまった実例をあげて、恐らく、単一通貨による単一市場圏を実際に形成してしまった西ヨーロッパでは、今後、悲惨な事態の頻発は避けられないのではないかという見通しを示された。
とするならば為替レートという「ハンディキャップ」が機能しているかぎり、韓国や中国の沿海地方がいかに経済進歩して日本を凌駕したとしても、この機能がわが国内における総需要の完全雇用・完全操業への十分な接近に照応したレートに決まってさえいればなんら産業空洞化問題について心配する必要はない。よって、政府の貨幣発行特権を活用した大々的なケインズ的内需拡大政策を断行すべしとの再確認を全員でした。そして、「反ケインズ主義」のマインド・コントロールの呪縛下では総需要拡大政策はきわめて不十分であり、「ハンディキャップ」機能が大幅に失われている現状はまことに憂慮すべき事態であり、「反ケインズ主義」からの迷夢から脱することこそ急務であるとの結論で塾長の講演は終了した。
続いて質疑応答をした後、藤本幹事長より「丹羽経済政策実施の準備案」として日本経済の目標を掲げて、実際政策実施時におけるシナリオづくりを当塾としてすべきではないかとの提案がなされた。用意されたレ〆は時間的余裕もなく作られた為その不備を塾長から指摘されたので、次回までに手直しして塾として掲げるに値するものを作ろうとの合意に達した。
次に「経済コラム」主催の幹事荒井彰氏より「セイニアリッジ政策の準備」と題して発表があった。1、資金の使途 2、政策を危惧する声への対処 3、政策の実行と運営主体 4、政策の支持者の獲得 という4点の見地から説明があった。
9時前に所用の為、塾長が中座された後、自由討議となり、加藤氏より日本で報道されない中国の「水」についての報告がなされた。今、中国においては「生活用水」の不足から毎日タンカーでカナダのロッキー山脈から「水」を輸入せねば農村地域から都市部に流入する人口増に対応できない事態に陥っているそうである。果たしてオリンピックは無事に開かれるだろうかという危惧が加藤氏からなされた。折りしも、ダム反対という風潮となっているが、戦略的にも日本も「水」というものを考え直す必要あり、決して対岸の火ではないとの発言がなされた。
九時半ごろ、散会となった後、下の喫茶店で有志のみで引き続き会合を行った。千葉大の岩田教授も参加され活発な意見を交わされたようだが、筆者とは位置的に離れていたので残念ながら会話の内容は不明である。次回の日程を確認しながら10半ごろ散会した。 以上
報告記述 渡辺 誠