資本注入して銀行を国有化するという竹中大臣の強行策について

丹羽経済塾副塾長 小野盛司


 民間でできるものは民間に任せると言っていた小泉・竹中両氏だが、なんと銀行をすべて国有化したい意向のようだ。国がどうしても金融の業務をやりたいなら、国民金融公庫でよいのだが、国民金融公庫は廃止し、銀行を国有化するという支離滅裂な政策を考えている。一部のマスコミ(御用新聞、御用テレビ)やアメリカ政府は支持し始めた。アメリカ資本にとっては、投げ売りされる日本の資産を買い占める歴史的なチャンスが訪れたと感じているのだろう。アメリカの国債を日本政府が大量に持っていると言うことは、アメリカが日本の資産を買うために日本政府がカネを貸して日本企業の買収を支援してやっているようなものだ。これではまるで売国奴ではないか。

誰もが知っているように、銀行は民間に任せたほうが、国がやるよりはるかに効率的だ。国有化された銀行は、いままでより遥かに非効率な企業として生まれ変わる。このことはソ連など共産圏の企業の実体を知る人なら容易に理解できるはずだ。
不良債権処理が進まないから銀行を国有化するのだそうだが、2001年4月小泉内閣が発足して以来、不良債権処理を最重点課題として取り組んできた小泉内閣だが、経済政策の失敗のため、不良債権は減るどころか増える一方である。不良債権処理のやり方を知らない人達に、何度やらせても失敗を繰り返すばかりである。不良債権処理に成功した例を見習うとよい。

 昭和恐慌の際の不良債権処理と比較しよう。通貨増発による総需要増大政策により昭和恐慌からV字回復を成功させた高橋是清は不良債権処理に成功している。1931年の昭和恐慌時に、時の蔵相・高橋是清を悩ませた不良債権は当時のGDPの2・5%に過ぎなかった。一方現在の不良債権は金融機関の自己査定で八十二兆円となっているが、民主党の要請で金融庁がまとめた問題債権の総額は百五十兆円である。これは日本のGDP(国内総生産)の約30%にのぼる。現在不良債権が増えすぎたから高橋是清の政策は比較にならないという論理は成り立たない。政府の選択肢は次の2つである。

@巨額の税金を銀行に投入し、銀行を国有化し、不良債権処理を強行する。
A政府貨幣発行により、総需要拡大政策をとる。

 結果は明らかだ。@の場合、多くの企業が倒産し、デフレが進行し、所得が減少し、不良債権は増え続け同時に国の借金も増加する。もちろんゼロ金利は続き金融機関は赤字経営が続き税金投入がマンネリ化する。26号で述べたように、消費と所得に関係は極めて比例関係に近い。所得が伸びない限り消費は伸びない。所得が減り続ける限りどこまでも景気は回復するどころかデフレが進行し続けることは間違いない。

 Aの場合は所得が増加し、消費は確実に伸びる。需要がでてくれば、資金需要も出てくるし、金利も上がってきて金融機関も利ざやが稼げ、経営が黒字化する。資産デフレが止まり、下がっていた不動産・株が値を戻し、不良債権が次々と優良債権への変わっていく。銀行が充分な利益が確保できるなら、不良債権処理など簡単だ。

消費者金融の場合、不良債権が発生する確率は通常の銀行より高く4%程度と言われている。しかし、彼らが取る利息ははるかに高いく利ざやが稼げるし、銀行に対する金融庁の規制やBIS規制等が無いから利益が大きい。だから不良債権が高率で発生しても余裕で処理されている。消費者金融が儲かるのは、すべての経営者が優秀というより、そういう経済環境を政府が作りだしたからだし、どの銀行も不採算企業となったのは、すべての銀行の経営者が同時に経営の失敗をしたというのでなく、やはり政府がそのように銀行を追い込んだからである。自己資本比率が表向きはともかく、事実上の8%割れを起こしているのは、政府の経済政策の失敗から株価が暴落したことと、ゼロ金利ですべての銀行を不採算企業に追い込んだのが主な原因で、真の責任者は政府であり、交替すべきは首相と経済財政の担当大臣だ。