小泉内閣も財政規律を守っているわけではない
丹羽経済塾 副塾長 小野盛司
小泉内閣では発足当初は新規国債発行30兆円枠を公約に掲げたが、もちろんこれで財政規律を守れるわけではない。歳入が46兆円のとき、新規国債発行だけで30兆円、それに隠れ借金が加わる。借換債などを含めた国債発行総額は134兆円弱にもなる。一般会計のプライマリーバランスも2兆円余り悪化し13兆3000億円の赤字。国と地方を合わせた長期債務は693兆円にまで増えた。どこから見ても、財政規律を守った形跡は全く見られない。しかも『経済財政の中期展望』では、10年後には借金は現在の1.4倍以上になると言っている。皆さんはこの展望の中に書かれている背筋が寒くなる数字をご覧になっただろうか。
試算によると新規発行債は、
14年度で33.3兆円、
15年度で35.4兆円、
16年度で38兆円
という伸びが必要とされている。借換え債は、さらに深刻で
14年度70兆円、
15年度76兆円、
16年度83兆円、
17年度99兆円、
18年度107兆円、
19年度117兆円、
20年度133兆円
もの巨額の借換が必要となる。このような雪だるま式の借金を放置し、問題を先送りしていけば、日本経済は確実に衰退を続けるのである。お先真っ暗の政策で何十年もの間、痛みをがまんし続けるよりは、思い切った通貨制度の大改革を断行し、経済を正常化し機能不全に陥った日銀が再び金融政策を行えるようにし、財政赤字も一気に解消したほうがよい。
そもそも財政規律を守るということは何を意味するのだろうか。新規国債発行や隠れ借金、その他の借り入れをゼロにすることだろう。平成14年度の予算でもっと詳しく説明してみよう。
税収が46兆円に対し国債発行額だけで30兆円である。財務省発表の歳出決算と税収との差で計算した赤字幅は37兆円となる(更に悪いことに平成15年度では新規国債発行額は更に何兆円か増えると言われている)。一般歳出は47兆円なのだから、赤字分だけ歳出削減するとすると、一般歳出は僅か10兆円にまでに削減することとなり、実に79%もの削減となる。つまり歳出が5分の1になってしまう(来年度は一般歳出を更に3兆円程度多く削減しなければならなくなる)のである。警官、消防士、国会議員、自衛隊員等の国家公務員を5分の1に削減し、その他の教育・医療・福祉・防衛等すべての予算も5分の1になる。これらの予算で職を得ていた数百万人の人が一挙に職を失う。これはすさまじいデフレ政策であり、誰もそのような政策を支持していないのは明らかである。つまり、実際は財政規律を守ることを支持している人は誰もいない。現在の日本で財政規律を守るということは悲惨な結果を招くことは明らかなのである。別の言葉で言えば財政規律を守らなくてもよいと誰もが認めているからこそ現在の経済政策が行われているのである。
それでは財政規律はどの程度まで破ってよいものだろうか。小泉氏も30兆円までなら許されるがそれ以上は駄目だと考えているわけではない。その証拠に隠れ借金という逃げ道を考えたり、次年度からは30兆円枠を守らないなど言ったりしているからである。彼が長年政権を担当するとすれば(そうでないことを期待するが)、『経済財政の中期展望』にあるように国債発行枠は次々と拡大していくだろう。このように雪だるま式に増加する国・地方の借金を放置することが、最悪の結果を招くことは誰の目にも明らかなはずである。
橋本・小渕・森・小泉等歴代の内閣の経済政策はことごとく失敗に終わっている。国・地方の借金を増やしただけで、さっぱり景気は回復しない。もはや現在のシステムに固執する限り、誰がやっても結果は同じなのである。ゼロ金利の継続と国債の増発で、日本の金融が機能不全に陥っている。構造改革とやらが進めばあたかもすべてが解決されると小泉氏は言い、多くの人がそれを盲信してしまっているが、実際はすべてが悪い方向に進んでいるし、それは次のことに注目すれば誰でも理解できる。
@国・地方の借金は増大を続けている。
Aプライマリーバランスも赤字幅を拡大している。
B失業者は増えている。
C株価は下がっている。
D不良債権は増えている。
Eデフレから脱却できていない。
F経済に悪影響を与えるゼロ金利から脱却できていない。
経済指標を悪化させるような政策は直ちに止めさせなければならない。治療後、病気の深刻さを示す検査結果がどんどん悪化しているときは、その治療法が間違えていたのだからすぐ止めさせなければならないのと同じだ。痛みを覚悟せよと言っていたら取り返しのつかないことになる。本当は通貨制度の構造改革が必要な時に、全く関係ない所で「改革」を行い自己満足しているだけだ。
結論はただ一つである。日本経済を救うのは政府の通貨発行特権を行使することしかない