欧州雑感美術編〜一枚の絵から ポール・デルヴォー (Paul Delvaux) 1897〜1994 
「夜の汽車」
 1957 カンヴァスに油彩
ブリュッセル王立美術館

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デルヴォー〜夜の汽車

 ベルギーを鉄道で旅をして色々な街を訪ねる。普通、鉄道の駅から旧市街までは、しばらく歩くことが多い。中世の家並みを残す旧市街に対して、鉄道駅やその周辺の新市街は、主に19世紀以降の街並みだ。ベルギーの街のどこにでもあるこんな街並みは、最初は、お目当ての旧市街にたどり着くまでの退屈な道にように感じていたが、何度もベルギーを訪ねるたびに、こんな煤けた街並みも、また、ベルギーらしさの一つだな、と思えるようになった。よく見るとところどころにアールヌーヴォーっぽい建物や装飾があったりして、意外と楽しい。

 ベルギーの街の旧市街が初期フランドル絵画を彷彿とさせるように、ちょっと煤けて薄汚れた18〜19世紀の建物が並ぶ人気のない新市街の街並みは、デルヴォーの絵そものもだ。

 デルヴォーほどベルギーを感じさせる画家もいない。時間が止まったような不思議な静けさは、ファン・エイクの世界を継承している。そして街並みは、19世紀から今につながるベルギーの光景だ。デルヴォーの絵画に共通するモチーフが、白い裸婦群と静まり返った街並み、そして鉄道だ。この絵は、鉄道をテーマとした代表格の絵だが、ベギン会を思わせるような白塗りレンガの建物など、今のベルギーの空気感が蘇ってくるようだ。

 ちなみに、ベルギーの街は、どこでも時間が止まったような静けさを感じることが、しばしばある。美術史家の幸福輝氏が「ベルギーの街どこでも寂寥感がある。」と書いていたが、同感だ。ファン・エイクからデルヴォーに至るまで一貫して感じるベルギー絵画の静謐さこそ、ベルギー特有の風土なのかも知れない。


 ブリュッセルの王立美術館は、古典美術館と近代美術館の二つの建物があり、それぞれ地下通路でつながっている。古典美術館で初期フランドル絵画を堪能した後、そのまま近代美術館で、デルヴォーやマグリットなどのベルギー近現代絵画を楽しむことができる。古典美術館が、クラシックな建物であるのに対し、近代美術館は、地下深く展示フロアが続き、建物の構造自体が一つのオブジェのようで面白い。(建物の外見は平凡だが…)

 デルヴォーとマグリットは、ともに20世紀のベルギーを代表する画家で、マグリットも悪くはないが、特に人物のモチーフを使った作品などは、正直言って「ちょっと趣味に合わない…」と感じることもある。個人的に好きなのはやはりデルヴォーの方だ。


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