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『青葉! 起き!』 『んだんだ』 カザヒとミナツチが、眠る青葉の周りを飛び回る。 「…何や、カザヒさんミナツチさん」 目を開いて、大欠伸する。 『桜、綺麗に咲いとるらしいぞ』 『んだあ』 ミナツチが、満足そうに胸を張る。 木々を感ずるのは、大地を司るミナツチの役割だ。 「ほうな。良かったなあ。で、今何時?」 『六時じゃ』 「ほうな。せやったら、もうちょっと寝よか」 さり気なく言ったが、双つ神がぐっと青葉に顔を近付けた。 「な、何や」 『こまっちゃん誘って、花見して来』 『んだあ。ろまんちっくやぞ』 「こんな朝っぱらから?」 渋る青葉に、二人は益々顔を近付ける。 『まだ誰も起きてない時間に行くのが、ええんや』 『んだ』 『さ、こまっちゃん起こして来る!』 止める間もなく、カザヒは部屋から出て行ってしまった。 残された青葉はようやく起き上がり、がっくり頭を垂れる。 「ほんま、お節介や…」 『んだ〜?』 ミナツチはにこにこ笑って、首を傾げた。 着替えて下に降りると、カザヒがにやにや笑って迎えた。 『こまっちゃん、起きたぞ』 「…もう。ゆっくり寝かしたろ、と思わんのな?」 『こまっちゃん、喜んどったもーん』 反省する様子のないカザヒ。 呆れて、青葉は反論もせずに顔を洗いに行った。 顔を洗った後、空腹に気付く。 「起きたら腹減った。何か、あるかな」 台所に行くと冷やしきゅうりが置いてあったので、それをそのままかじった。 まだ、完全に目が覚めていないのでぼんやりしつつ食べ続けていると、後ろから声が掛かった。 「青葉、用意出来たわよ」 振り向くと、小町が立っていた。 「おう。行くでか」 「ええ。でも、青葉も風流ね」 「へ?」 「朝一番の桜見せたいって、カザヒさんに言ったんでしょう?」 青葉はしばし、固まった。 明らかに言っていない。 『そうじゃ。な、ミナツチ』 『んだ』 双つ神がしたり顔で頷き合ったので修正することも出来ず、青葉は曖昧に微笑んでみせた。 早朝の光に、桜の花が浮かび上がる。 「綺麗――…」 小町は、ほうっと息をついた。 「今年も、綺麗に咲いたなあ」 青葉は満足そうに頷く。 ここは、家の近くにある桜並木。毎年、綺麗な桜を咲かせる。 『もっと、ろまんちっくなこと言わんかい』 カザヒが、ぼそっと青葉の耳に囁く。 「…無茶言うなや」 『和歌を詠むとかやなあ』 「俺は平安貴族やあらへん」 青葉とカザヒがひそひそ言い合っていると、小町が不思議そうな顔をして振り向いた。 「どうしたのかしら?」 『んだあ?』 聞かれたミナツチは、とぼけてみせた。 「ま、いっか。本当に綺麗な桜ね」 小町は気にしないことにして、また桜に見惚れた。 「そういや小町、桜好きなんやっけ」 「嫌いな人、そう居ないでしょう?」 「そうやなくて。昔、小学校で"好きな花について発表"ってあったやろ」 青葉の説明で閃いたらしく、小町は手を打った。 「ああ、あれね! そうそう、それで私"桜"って書いたんだっけ。そうね、そういえば私は昔から桜が好きだったわ。名字が"佐倉"で、読みが一緒だから嬉しかったのよね」 「なるほどな」 『でも、その内こまっちゃん名字変わるんじゃけどな。もちろん変わる名字は、双神…むがが!』 青葉がカザヒの口を塞ぐ。 『んだあ。しかし、こまっちゃんは桜が似合うのう』 ミナツチの言葉に、小町は頬を染めた。 「本当? ありがとう」 そんな二人を見て、カザヒが思い切り暴れて青葉の手から逃れた。 『こら青葉! ミナツチの方が、気の利いた台詞言っとるやないかい! しっかりし!』 「そんなん言われてもなあ」 『言い訳は許さんぞ!』 言い争い始めた二人を、また小町が不思議そうに振り返ったのだった。 青葉と小町はしばらくして、家に帰った。 すると、食卓に穂波が突っ伏していた。 「穂波、起きたんな」 「おーう」 眠いらしい。 『あはは〜おはようございま〜す』 横で、すりーぷがふよふよ浮いている。 「おはよ。穂波、起きたならしゃんとし」 青葉は呆れつつ、正座して座った。 「おはよう、穂波さんすりーぷさん」 小町は以前穂波には敬語を使っていたが、本人に使わないようにと念を押されたので敬語を止めたのだった。 「んー」 穂波は顔を上げ、並んで座る青葉と小町を見た。 「…もしや、二人でどっか行っとったんか?」 「何でわかるの?」 首を傾げた小町の肩を、穂波が指差す。 そこに、一つ桜の花びらが落ちていた。 「なるほどね。そう、二人と神さまで花見してたの」 小町の発言に、穂波の目がきらりと光る。 「カザヒさんミナツチさん、ナイス!」 双つ神に親指を立ててみせると、二人は偉そうにふんぞり返った。 「何で、神さんが言ったってわかるんな?」 「お前がそんな、気利くわけないし」 青葉の問いに、声を立てて笑う穂波。 そこで、小町が眉をひそめた。 「私、神さまから青葉が行こうって言ったって聞いたんだけど?」 そこで、慌てる一同。 『そ、そうじゃ。青葉の手柄じゃ! んな、ミナツチ』 『んだんだ』 「あ、そうやったーん。俺、勘違いしてもうて」 必死に取り繕おうとする双つ神と穂波。 小町はその様子を見て、苦笑した。 「そういえば穂波、お前いつまでおるんや?」 ふと、青葉が尋ねる。 穂波は一週間ほど前に突然ここに来て、そのままずっと滞在しているのである。 「うーん、大学始まるまで。何せ俺には、隊長としての義務があるからな」 「そんな義務、果たして要らん」 口を尖らせる青葉に、穂波は身を乗り出す。 「何言ってんねん! 俺がせっかく、かわいいかわいいイトコであるお前のために、一肌も二肌も脱いでやろうってのに!」 がしっと青葉の手を握り締め、穂波は訴える。 「青葉と穂波さんって、本当に仲良いのね。ところで、隊長って何?」 小町の問いに、穂波はまたも慌てる。 「あ、"青葉を幸せにする隊"や!」 ある意味、嘘ではない。 「へえ。穂波さんの大学って、いつ始まるんですか?」 「俺のとこ、結構遅いねん。だから、こまっちゃんのキャンパス・ライフをちょっと見届けてから…。あ、入学式も父兄として潜入しよかな」 穂波は一人で、悦に入っていた。 「じゃあ、穂波さんは私のお兄さん? やった! 私、格好良いお兄さん欲しかったの」 などと言われ、照れる穂波。 アホらし、と青葉は冷たく呟いた。 「じゃあ青葉、お前は俺の義理の弟ってことで出席しろ!」 「え、それやと夫ってことにならん?」 「ええやないか!」 自棄なのか、この頃穂波は強引である。 その時、台所から祥子の声がした。 「みんな、揃っとん? 朝ごはん出来たけん、運んでや」 はーい、と皆は素直に返事して立ち上がった。 床の間にて、青葉は筆をさらさらと滑らせていた。 横から小町が、覗き込む。 「青葉、筆使うの上手いのね。そういえば、書道やってたんだっけ。何書いてるの?」 「ん、記録みたいなもん。こうやって神さんのこととか定期的に書き留めて、次代の巫女や当主が過去のこと読めるようにするん」 「へえ…。じゃあ、青葉も昔の記録を読んだりするの?」 「せやな」 青葉が頷くと、小町は目をぱちくりさせた。 「でも、昔の残ってるの?」 「残っとるよ。神さんの力で守られてるけん、めちゃくちゃ昔のやつも読めらい」 「へえ!」 そこで、小町は首を傾げた。 「そんな昔のものだったら、もう古文でしょ? 読めるの?」 「うん。ばあちゃんや親父に、昔教わったけん」 「凄いのねえ」 小町は本気で感心したようだった。 『だけん青葉は、国語だけは出来るんじゃ』 『んだんだ』 カザヒとミナツチが、うんうん頷き合う。 「"だけ"ってとこ強調せんでええやろ」 青葉は口を尖らせてみせた。 小町は苦笑した後、立ち上がった。 「ちょっと散歩、行って来るわ。頑張ってね」 「ん」 「じゃあ」 小町は手を振り、出て行った。 微かな風が、桜の花を揺らす。 青空を背に咲き誇る花が綺麗で、小町はため息をついた。 どうしてだろう。東京で見た桜より、綺麗な気がする。神さまたちと青葉が、この土地を守っているからなのかしら。 朝来た場所と同じところだが、朝の桜とはまた違った良さがあるように感じる。 見上げ、歩く小町。 「お嬢さん」 声を掛けられ振り向くと、小柄な老人が立っていた。 「花見、ですかな?」 「あ、はい。おじいさんもですか?」 「そうです」 にこにこ笑う老人は、こちらに近寄って来た。 「ここの桜もよろしいが、この先行ったところにもっと良い桜を見られる場所がありますぞ」 「そうなんですか?」 「私は今から、そこに行くところでな。一緒にいかがですか?」 「是非!」 小町は躊躇うことなく、頷いた。 では、と先導する老人に、小町はわくわくしながら付いて行く。 「そんなに、見事な桜なんですか?」 「いかにも。一度見たら、忘れられんよ」 「そうなんですか」 小町と老人は談笑しながら、歩を進めた。 どのくらい歩いたのだろうか。 小町は、足に疲労を感じた。 「すみません…一体、どこなんですか?」 「もうちょっとじゃ。何じゃ、最近の若者はいかんのう」 すっかり打ち解けて敬語を失くした老人は、にやにや笑った。 負けず嫌いの小町はむっとして、顔を上げた。 「まだ大丈夫です!」 「ほうほう。強がらんでもええぞ。あそこじゃけん」 老人の指差した先には、大きな日本家屋が立っていた。 「民家…?」 「もう、誰も住んどらん」 老人は躊躇うことなく、家の中に入って行ってしまった。 小町は戸惑いつつ、表札を目に留めた。表札には掠れた字で、『神桜』と在った。 何て読むんだろう…かんざくら? 「おうい、嬢ちゃん。早く来んか」 呼ばれ、小町も門をくぐった。声のした方へ、と庭を抜けて行く。 すると、艶やかな桜が目に入って来た。 小町は思わず、息を呑む。 美しすぎる。美しすぎて、動けない。 「嬢ちゃん、どうや? ここの桜は、とびっきりやろ」 縁側に腰掛け、老人はのんびりと桜を眺めていた。 「は、はい」 ようやく、声を絞り出せた。 小町は呆けたように、老人の隣に座る。 「こんな桜見たの、初めてです」 「せやろ。この桜と比べたら、他のはもう見れんぞ」 「本当ですね」 いつまででも、見惚れていたい。どうして、こんなに艶めかしい桜がこの世に咲いているのだろうか。 その時、強い風が吹いた。桜の花びらが舞い、小町は思わず目を押さえた。 『――ほう、ようやく来たか』 目を開くと、目の前に青年が立っていた。 艶やかな長い黒髪。切れ長の瞳。着物に身を包んだその青年は、あの桜を背にしても見劣りしないくらい美しかった。 「だ、誰…?」 『ご挨拶だな。私は桜の神』 血に濡れたような紅い唇を吊り上げ、彼は笑う。 『私に、嫁ぎに来たのだろう?』 「は?」 『そうではないのか?』 青年の唇から、鋭い牙が覗く。 「ぎゃあああっ!」 その光景を見て、老人は叫びながら逃げ出した。 逃げ出した老人を追う気配さえ見せず、青年はただ小町を見つめる。 その視線が耐え難くなって、小町も逃げ出そうとした。 腕を、あっさりと掴まれる。 「放して! 私は、ここに桜を見に来ただけ! 失礼をしたなら、謝りますから!」 怖かった。目の前の青年が、ひたすらに怖かった。 『非礼を言葉だけで償おうとするなぞ、虫の良い話だな』 青年は小町の顎を、指で持ち上げた。 「青葉! カザヒさん、ミナツチさん!」 思わず、頼れる者達の名を呼んだ。 何の効果もないのに、と思った瞬間に小町の体から光が放たれた。 青年は目を抑え、手を放す。 その間に、小町は身を翻して逃げ出した。 『待て!』 もうすぐ門から出る、というところで青年は何かを小町に向かって投げた。 それが首に刺さり、小町はふらつく。何とか門の外に出た後、小町はどさりと倒れた。 どのくらい時が経ったのだろうか。しばらくして、小町は起き上がる。 空を見上げると、もう日が暮れようとしていた。 「…家…帰らなきゃ…」 立ち上がり、小町はふらふらと帰路に着いた。 歩いていると、前から青葉が走って来た。 「小町、どこ行っとったん! 捜しとってんよ!」 「青葉…」 小町はぼんやりした目で、青葉を見た。 「どうかしたん?」 青葉はかがんで、小町と目線を合わせる。 「眠い…」 傾いだ小町の体を、青葉は慌てて支える。 『どうかしたんかのう?』 『のう?』 カザヒとミナツチは、顔を見合わせた。 「小町、こんなところで寝たらいかんよ」 「うーん」 小町は本当に眠そうだった。 「しゃあないなあ…。おぶったるけん、乗り」 青葉が背を向けて腰を落とすと、小町は倒れるように青葉の背に乗った。 青葉はゆっくり立ち上がり、ため息をつく。 「もう、熟睡しとるやないか」 小町は気持ち良さそうに、寝息を立てていた。 『役得じゃな、青葉』 にやにや笑うカザヒを睨み付け、青葉は歩き出す。 「でも、おかしいな。何でこないに、眠そうなんやろ」 『さあのう。そもそも、どこ行っとったんじゃろ』 『んだあ』 三人はそれぞれ、首をひねった。 『それにしても、夜桜も風流じゃのう』 『んだ』 カザヒとミナツチは桜を見上げ、満足そうに呟いた。 そういえば… と、青葉は己が背で眠る小町をちらりと見る。 小町から、桜の香りがする…。 家の前に着いたところで、小町はようやく目覚めた。 「ここ…どこ…?」 「起きたん?」 「あれ、青葉。何で私、あなたに背負われてるの?」 小町の質問に、青葉は目を丸くする。 「覚えてないん?」 「ええ…。何が起こったの?」 「それは、こっちが聞きたいんやけどなあ」 とりあえず、青葉は小町を背から下ろした。 地面に降り立った小町は、小首を傾げる。 「どこに行っとったん?」 「えっと、散歩してて…おじいさんに会って…」 小町は途中で言葉を切り、考え込んだ。 どうしても、そこからが思い出せない。 「小町が散歩行ってから、随分時間経っとったんよ。遠い所、行っとったん?」 「ごめんなさい、本当に思い出せないの」 青葉が更に聞くも、小町は首を振った。 『おかしなことも、あるもんじゃのう』 『んだ』 カザヒとミナツチは揃って、不思議そうな表情をしてみせた。 「まあ、ちょっとしたら思い出せるかもしれんけん、とりあえず家入り」 「ええ」 青葉に促され、小町は家の戸を開けた。 戸の音を聞き付けたのか、穂波が顔を出した。 「あ、こまっちゃんや。どこ行っとったんや? 俺ら、めっちゃ捜しとったのに」 『本当〜』 穂波の後ろから、すりーぷがひょっこり現れる。 「ごめんなさい。どこに行ったか、は覚えてないの」 小町は謝りながら、玄関に上がる。 穂波とすりーぷはぽかんとして、顔を見合わせた。 「覚えてないって」 『覚えてないって〜』 「はいはい。詳しい話は後ってことにして、とりあえず夕ご飯食べよ」 青葉の提案に皆が反対するはずもなく、一同食卓のある部屋に向かったのだった。 夕食の最中も、小町は眠そうに船を漕いでいた。 「何やら小町ちゃん、眠そうやな」 総一郎は心配しつつ、箸を動かす。 「はい…すみませ…」 小町は我慢し切れなくなったように箸を落とし、隣の穂波にもたれかかった。 「あれれ、こまっちゃん。大丈夫かいな」 穂波が揺さぶるも、小町はすやすや眠っている。 「あかんわ。こら、寝かせた方が良さそうやで。青葉、運んだり」 「わかった」 穂波の言葉に頷き、青葉は箸を置いて立ち上がった。 「どうしたんやろねえ」 祥子は眉をひそめ、呟く。 「んじゃ、寝かして来るけん」 青葉は小町を抱き上げ、小町の部屋に向かおうとした。 「しかし穂波。小町ちゃんと隣やったんやけん、お前が運んだっても良かったんちゃうん? 何でわざわざ、青葉に頼んだんな」 「あー、鈍いなおっちゃん。さては青葉が鈍いんは、遺伝やな」 「何の話や」 総一郎と穂波の会話を背後に聞き、青葉はため息をついたのだった。 『しっかし、妙じゃのう』 『んだ』 カザヒとミナツチが、廊下を歩く青葉の後ろを付いて行きながら唸る。 『何かあったことは、間違いなさそうやな』 『んだなあ』 「そういえば、小町から桜の匂いがするんや。何か関係あるやろか」 『桜、なあ』 カザヒは上を向き、しばし考え込んだ。 小町の部屋の襖を開けたところで、穂波がやって来た。 「手伝いに来たで。布団敷きは任し!」 「ありがとさん。威張ってる間あったら、早く布団敷いてくれるえ」 「何や、感謝の足らん奴やな」 ぶつぶつ言いながら、穂波は布団を敷き始めた。 「で? こまっちゃんがどこに行ったか覚えてないって、どういうことや?」 穂波はやっと聞けるのが嬉しいのか、勢い込んで尋ねた。 「何でかはわからんのやけど、文字通り小町は今日どこに行ったか覚えてないらしい」 「それ、ほんまかいな?」 「そう、言うとった。俺は途中で帰って来る小町見付けたんやけど、その時もすごい眠そうやってな。会った途端に眠ってもたけん、家まで俺が運んだんや」 「せやったんか」 布団を敷き終わった穂波は、しきりに感心していた。 青葉が小町を布団に横たえてやった時、また桜の香りが香った。 「穂波、桜の匂いせんか?」 「はあ? 確かにええ匂いはするけど…花の匂いの違いなんてわからんわ」 「俺も確かやないんやけど、桜のような気がするんや」 「ふうん」 穂波は肩をすくめた。 その時、青葉ははっとした。 「"守り"が、取れとる」 「"守り"?」 「ちょっと前、小町にカザヒさんとミナツチさんの"守り"を施したん。小町も神さんや霊が見えるようになったけん、何か危険あると大変や思て」 青葉は早口で、穂波に説明した。 「その"守り"が取れとる。多分、使ったんやな。小町が危険から逃げたいって強く思ったら、発動する仕掛けになっとったけん」 「つまり、こまっちゃんは危険に遭ったってことかいな」 穂波は深刻な面持ちで、寝息を立てる小町を見下ろす。 『そうじゃと思うけど…何でわしら、気付かんかったんじゃろな。わしらの守護範囲内で守りが発動されたら、すぐわしら気付くはずなんじゃけど』 『んだ。おかしい』 カザヒとミナツチは納得行かない様子だった。 「せやったら、守護範囲内から出てもたんちゃうかな。そんな遠くまで、何しに行っとったんやろか…」 青葉は額に手を当て、息を吐いた。 『まあまあ、どこに行ったかをこまっちゃんが一眠りしたら思い出すかもしれんけん、しばらくそっとしとこか』 『賛成だあ』 双つ神の意見に、青葉と穂波も首を縦に振った。 「せやったら、おやすみ。小町」 青葉は小町に布団を掛け、囁いた。 |