木の家−13 夫妻の為の2つの趣味のコーナーを持つ家




ご主人の定年後の生活をも見据えてのご夫妻と、京都での大学生活を終え社会に巣立とうとする息子さん、3人の住まいです。
インターネットで当工房の「木の家」への取り組みに興味を持たれ、湯河原の「木の家9」の見学会に参加していただいた上での設計依頼でした。

畑とこの家の食卓を見事に関係づける
初めてこの敷地を見せていただいた時、車の後部荷台に、なんと「ミニ耕耘機」がその他の畑道具と一緒に積まれていたのには驚かされました。近くにかなり広い畑があり、主に休日を利用して畑作業を楽しまれているとのこと、その畑も早速見せていただきました。
畑とこの住まいを建築的に関係づけたいという思いが私の頭をよぎりました。
そんな訳で、畑、車での移動、駐車、収穫物の荷降ろし、シンクでの泥落としと水洗い、その仮置き、そして厨房で料理され食卓を飾る一連の流れが見事に一本の線で結ばれる、そんなプランが実現することになりました。
夫妻の為の2つの趣味のコーナー!
通勤時間を利用しての読書でたまった本の為の本棚を備え、ゆったり読書を楽しめるご主人の書斎、厨房に続く位置に時間を見つけてはバッグ作りに精を出せる奥さまの部屋。
ご夫妻のそんな要望に応える為に、南側の厨房西に並列に奥さまの作業室、北側階段吹抜に開かれた書斎コーナーが計画されました。互いに独立しながら行き来も簡単に出来、「おーい」と声を掛け合える絶妙の位置関係です。
畑の収穫を料理する厨房、奥さまの趣味の作業室、大きな開口付の踊り場を持つ階段ホール、そしてこれに開かれたご主人の書斎、ゆっくり汗を流す浴室や洗面など、この建物西側の1、2階2間幅のゾーンには楽しさが一杯詰め込まれています。
更には2階廊下突き当たりの冷蔵庫付ミニキッチン、これに続くルーフバルコニーと、通常脇役的存在のスペース達が見事に主人公に変身し、この家の大きな魅力になっています。
ご主人から感想をいただきました!
「早朝に書斎でコーヒーを飲みながら本を読む、至福の時を楽しんでいます。
また、外から帰ってきたときの木の香りは、何とも言えず心安らぐものがあります。

この住まいのデータ
家族:夫妻、子            建設地:相模原市
敷地面積:197.4u           延床面積:117.59u
構造:木造2階建           竣工年:2007年
設計監理/野口泰司・大野有也
造園設計/野口史枝(SOYぷらん所属)
施工/株式会社堀井工務店
参照:設計のプロセスを追う
参照:現場から

南側外観。


左側駐車スペースに近くの畑から帰った車がバックで駐車する。
畑の収穫物は正面バルコニー下に用意された白い流しで洗われ、
濡れ縁延長上に並べられる。
濡れ縁開口の背後には厨房・食堂が続く。
時には収穫物は庭でのバーベキューの食材として楽しさを盛り上げる。
ルーフバルコニーでは夜空を見ながらのビールも楽しめる。

南側に伸びる軒の出1.35m、大きな片流れ屋根が特徴的な東側外観。
この軒の深さが、夏期2階の背の高い開口からの陽光を遮蔽する。
左:アカシデ(3.5m株立ち)
生垣:ヒュウガミズキ(0.5m)
右和室前:アオハダ(2.5m株立ち)
3年位経つとヒュウガミスキも育って、生垣らしくなります。

居間・食堂方向を階段ホールより見る。
中央白く塗装された筒状ファン付下りダクトにより、冬期、
階段・吹抜を経由して2階に上昇する暖気を降ろし、
家具巾木からゆるやかに噴出す。
暖気が1、2階を大きく循環する。
36センチほど床の高い和室より、居間・食堂・庭方向を見る。
和室の床下は、普段あまり使わないものの収納スペースとなっている。
1階和室。
しっくい塗りの壁、和紙貼りの戸襖、和紙張り障子、全て白一色とし、
居間・食堂の空間に連続し、一体化させている。
左側は仏壇置き場、その下部は風抜用地窓。
   階段ホールから厨房方向を見る。
下側、厨房流し台カウンター端の腰壁の白い引戸は、
冬期これを閉めて、
階段から降りてくるコールドドラフトから厨房を守る。

正面大きな白い家具の右裏に奥さまの趣味のコーナーが続く。
  

奥さまのバッグ作りの作業室。
1.5間(2m73p)巾、奥行60pの作業机の端に、
居間と同様の白い暖気循環ダクトが見える。

筒状ファンは吊戸棚内に隠されている。
机の下には型紙収納用の巾1mの引き出しが、作りつけられた。
厨房に続くこの部屋も白1色の空間。

製作過程の布、皮革が引き立つに違いない。
階段。
踊り場より上は、け込み板なしとし、正面開口からの
光を1階階段ホールへ送ると同時に、南北を抜ける通風経路としている。

階段左上2階に御主人の書斎が続く。

階段を上がって、階段ホール、廊下越し正面に、
陽光に浮かび上がるミニキッチン方向を見る。
ミニキッチン左にルーフバルコニーが続く。
廊下上部白い引戸向こうは子供室のロフト、
その右に見える風抜け用欄間から、子供室上部の天井がのぞく。

左奥にはしっくい塗りの和室、手前右側にはご主人の書斎が続く。
  

和室から階段越しに、御主人の書斎を見る。
1階の厨房、奥さまの作業室にも声の届く位置である。
北側からの外光に浮かび上がる階段ホールに開放され、
開口の外に植栽されたヤマボウシの梢が目を楽しませる。

写真:冨田 治
  ※野口泰司