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サンタがいつもそばにいる2
・・・・・これは別の世界の,そして,ちょっと未来のお話です。・・・・・
2.1
岡野誠治さんは,あるシステム企業で,技術営業の職に就いています。
技術営業というのは,商品について技術的な知識を持って商品を売り込む職業です。
さらに岡野さんたちは,システム(ネットワークなど)の簡単な保守も行います。
今日の仕事は保守ではありません。
現在は,オンラインでほとんどの対応が出来ます。
ですが,物理的な問題などには直接出向く必要があります。
今回,最初は簡単な修理(部品交換)だったはずでした。
ところが,部下の不手際でシステムダウンの一歩手前までいってしまったのです。
幸い,お客様の業務に支障が出るような最悪の事態は避けることが出来ました。
今日は,改めてお客様に謝りにいくところです。
こういうことは,メールで済ますわけには行きません。
いつの時代も,人の誠意は直接会ってこそ伝わるものなのです。
「ふぅ」
仕事とはいえ,謝りに行くのは気が重いもの。
ため息の一つも出るってもんです。
「岡野さん,お待たせしました。」
不手際を犯した部下の竹下真吾くんが,トイレから戻ってきました。
部下の前では,さっきのようなため息は出せません。
いつもは笑顔で迎えるところですが,今日は毅然とした態度で迎えます。
そんな上司に,竹下くんは緊張感とともに頼もしさを感じます。
彼はあらためて気持ちを引き締め,上司とともに駅の改札へ歩き出します。
2.2
日が落ちる頃,岡野さんの外回りの仕事が終了です。
竹下君からは,もう一つ訪問先が残っているとメールが入っていました。
岡野さんは,携帯端末の位置情報サービスで,竹下君が移動中であることを確認。
携帯電話で,今日は会社に戻らず,直帰していいことを伝えました。
午前中の訪問先では,不手際のお許しをいただきました。
こちらのミスで生じたことですが,非常事態に対する,迅速な対応が好印象を持たれたようです。
自社の技術陣に対する,信頼感がまた高まりました。
竹下君も,ミスに気づいたとき,即座に会社へ連絡,その後の復旧作業の手際も,まぁまぁでした。
まだうっかりミスがありますが,いい方向に育ってくれています。
二人は,午後からは別行動でした。
彼らの仕事は,保守以外に新規顧客の開拓もあります。
これも最後は,直接の対話が決め手となります。
彼らには,在宅勤務は無理なようですね。
2.3
岡野さんは,会社に帰ってデスクワークを始めました。
会社では,家と会社で仕事のデータを共有することを禁止していません。
自社システムのテストもできるからです。
でも岡野さんは,家では仕事がはかどらない性格です。
家にいるときは,家族と過ごす時間と決めて,仕事を持ち帰らないようにしています。
ただ,最近は仕事が重なり,帰りが遅くなる日が増えてきていました。
妻の妙子はともかく,息子の正彦とはなかなか話す時間がとれません。
岡野さんは,会社のパソコンの前に座ります。
移動中に入力した携帯端末のデータは送信済みです。
街中に張り巡らされている通信回線を通じて,ウェブ閲覧はもちろん,携帯端末とパソコンでデータの共有もできます。
データの整理を始める前に,メールのチェックです。
仕事関係で重要度が高いメール以外は,携帯端末には転送しないように設定しています。
その中に,息子からのメールが入っていました。
どうやら,友達とけんかしてしまったようです。
先週の誕生日にプレゼントした携帯端末がどうとか書かれていますが,原因はよく分かりません。
メールの方は,友達の方が悪くて,自分は悪くないんだ,と締め括っています。
岡野さんは,苦笑いです。
妻からもメールが来ていました。
学校の先生からのメールの,転送メールです。
けんかの原因は,息子の携帯端末を,友達が勝手に触ったことのようです。
実は,学校には,いくつかカメラが取り付けられています。
先生が,保存されていた映像から,けんかの原因を確認してくれていました。
ちなみに,このカメラの映像は,インターネットを通じて,生徒の保護者も見ることが出来ます。
岡野さんは,息子にメールを書きます。
友達は,新しい携帯端末に興味があっただけで,壊そうとかいう気はなかったと思うこと。
お父さんからのプレゼントを大事にしてくれるのはうれしいことだけど,それが原因でけんかになるのは悲しいこと。
自分も,けんかするつもりはなかったはずだということ。
今度友達と会ったときは,勝手に触ったことを許して,一緒に遊ぶこと。
などを書いて,返信しました。
そして,差出人は「サンタクロース」にしておきます。
2.4
朝,たっくんは学校への道を走っていきます。
いつもまーくんと待ち合わせしている場所が近づいてきました。
まーくんが待っているのが見えます。
たっくんはちょっと立ち止まって,ゆっくりと歩いていきます。
走ってつかれたのとは別のどきどきが大きくなってきます。
まーくんがたっくんの姿に気づきました。
「おはよう」
たっくんは,言おうと思っていた言葉を先に言われて,びっくりです。
どうしよう,どうしよう!!
「きのうは,ごめんね。」
次の言葉も言われてしまいました。
たっくんもあわてて頭を下げながら言います。
「ごめんなさい」
たっくんはゆっくりと頭を上げます。
二人は顔を見合わせて,どちらからともなく笑顔になりました。
今日の空には,雲一つありません。
みんなで元気よく遊ぶのに,いい天気でした。
2001/03/23
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