総領事館不法侵入事件報道への疑問
今月8日、中国の瀋陽(旧名・奉天)総領事館に逃げ込んだ北朝鮮人を中国武装警官が、日本側の許可を得ずに連行した事件のことはすでに周知であると思う。だが、この事件に関する報道にはどうも腑に落ちない所がある。
まず、領事館と大使館の混同である。事件を伝えるニュース番組(例えば10日・ニュースJAPAN(フジテレビ)など)ではキャスターが「大使館へ」「大使館に」と連呼していた。が、外交の基本として総領事と大使は全く別物であり、当然領事館と大使館は全く違う建物であることは常識である。公館不可侵を保証されている条約も違う。大使館の不可侵は「外交関係に関するウィーン条約」第22条に規定されており、いっぽう領事館の不可侵は「領事関係に関するウィーン条約」第31条に規定されている。これらを混同することは、逆に相手(中国側)から反論されるときにつけ込まれる恐れがある。また誤った報道でもある。厳に注意して貰いたいものである。
しかし、この件の報道に関しては、もっと重要な問題がある。
この事件で第一義に責められるべきなのは、中国武装警察官2名の、法を逸脱した横暴である。
が、マスコミは早くも領事館・外務省批判に切り替え、中国側の責任を隠そうとしているのだ。
中国側に不備があったことは明かである。中国側の弁明が「不審者が公館に危害を加える恐れがあったので許可は不要」「領事館職員が中国語で感謝した」「領事が携帯電話で上司の許可を得ていた」と二転三転していること、かつて在日本中国大使館に日本の警察官が入り不審中国人を連行した件をもって「今回と同様」(実際にはまったく違うケースであることは言うまでもない)と日本側を責めて自分たちの件をごまかそうとしたこと、そしてなによりこのニュースをいっさい国内で報道許可していないことである。言論・報道の自由のない中国に於いては、政府が完全なる報道管制を敷くことが可能である。もし、本当に中国当局の主張通り、中国側に非がないのであれば、報道管制を敷いて事件を隠す必要など無い。逆に中国側に後ろ暗いことがあることの証左である。
この、中国側の責任も明確にしないまま、領事館員および外務省の対応に日をならす報道とはいかがなものであろうか。確かに、武装警官の行動を放置ないし傍観し、有効な対抗手段を執り得なかった領事館員に「主権」意識・「国益」意識が希薄だったのは分かる。批判の対象となっても仕方はない。
しかし、なぜ彼らの主権意識・国益意識が希薄であったのかか。教育とマスコミのせいではないのか。
国旗・国家を教育の場で義務づけることに最後まで抵抗し(法制化後の現在に至っても何かと理由をつけて国旗国歌を除外している教育現場まである)、「主権とはなにか」「国益とがなにか」を教えることを許さず、国家・国土・国民を愛することを教えてこなかった日教組の教育と、それを最大限擁護し持続させようとしてきた朝日新聞はじめとする反日マスコミ。これらの影響を受けた戦後世代が主権意識を希薄にさせたのである。主権・国益意識を希薄にさせた張本人であるマスコミに外務省批判をする資格など全くない。「主権」意識のないものが「主権」の希薄な者を責めるなど、盗人猛々しいにも程がある。
また、今回の件では、人道的・人権的な配慮と称して「難民がかわいそう」「あの女の子はどうなるのか?」といった情緒的な報道も目立つ。が、人道的配慮は確かに必要ではあるが、今回の事件を外交上で見た場合、あくまで中国側の条約違反であり、それを覆い隠そうとする中国に対して、法的ならびに政治的に追求すべき問題である。情緒で問題を混乱させるようなことは避けねばならない。
領事館事件の報道において、中国側の責任を十分追及せず、外務省批判に結びつけようとするのは安易かつ卑劣な行為である。戦後、長い間世論をミスリードしてきたマスコミこそ、まず「主権とはなにか」「国益とはなにか」を十分に自覚する必要がある。(02/05/13)
(5/14加筆)いくつかの新聞・TVニュース番組では、とうとう「難民受け入れ体制が全くできていない」と、外務省だけではなく政府批判にまで転じてきた。もはや何をかいわんやである。難民対策は全く別問題である。安易に難民を受け入れるのは、偽善的ヒューマニズムではあっても、日本の社会体制全体への影響は計り知れない。何度も強調するが、今回の件を決して人道的側面で断ずることは許されない。あくまで法的・政治的に中国側の誤謬を正していくことが大事である。
いっぽう、読売新聞は14日付解説面で、今回の問題について、「事なかれ主義」が日本人全体のものであり、外務省や総領事館員の個々の対応のまずさに矮小化すべきでないとの意見を載せた。また、民主党の鳩山代表が講演で「中国側の説明の方が正しいようにさえ思わざるを得ない」と発言したことについても、「政府批判も結構だが、政局伽藍身の言動によって、中国に足元を見られている。ここは『オールジャパン』で問題に当たるべきではないか」と有益な提言もしている。まともなマスコミも少数ながら存在する。ただし、その読売ですら、いわゆる「メディア規制法案」には盲目的な偏向報道を繰り返しているのは残念だ。