住基ネットをめぐる歪んだ報道
本日、8月5日より、住民基本台帳ネットワークシステム(略して住基ネット)が本格稼働する。地方自治体の住民に関する業務が大幅に効率化され、利用者である市民にとっても大きなメリットとなる改善であり、電子政府の実現を目指す第一歩となる改革である。高く評価されて良いだろう。
しかし、ここ数ヶ月来、マスコミはこの住基ネットを国民のプライバシーを侵害する天下の悪法であるかのように報じ、反対派の左翼市民グループの意見を一方的に参考にしながら反対運動(偏向報道)を繰り広げてきた。公正中立の立場を保つべき報道機関による、このような偏った報道態勢は当然許されるべきではない。
「牛は10桁、人間は11桁」などという感情論で国民背番号制を批判することには何の意味もない。既に5年前から稼働している基礎年金番号システムは、住基ネットと全く同様のシステムを用い、大きな成功を収めていることを無視しているからだ。まして、氏名・年齢・住所・性別の基本4情報しか予定されていない住基ネットと較べ、収入や勤務先・配偶者・扶養家族・銀行口座まで含まれている基礎年金情報の方がよほどプライバシーに関わる項目が多い。それにもかかわらず、大規模な個人情報漏洩事件など起きていないし、年金業務の効率化に役立っている。こういった状況をまるで無視して、住基ネットのみを取り上げるという時点で「反対のための反対」であることが明白である。むしろ、今回の偏向報道によって、過度に目立ってしまった住基ネットがより情報漏洩の危機にさらされてしまう悪影響も考えれば、マスコミこそが住基ネットにとって最大のガンであることは間違いない。
そもそも情報の漏洩を完全に防ぐことなどできないし、一方で4情報しかない住基ネットが漏洩してもそれほど問題にはならない。より大規模な個人情報漏洩が民間DM業者などで日常的に起きているのである。にもかかわらず、それを無視するかのように「官」に関わる漏洩にだけ異常にこだわり、行政に対する不信感を増幅させている報道姿勢は大問題である。
反対論の中には前国会で不成立に追い込まれた「個人情報保護法」が成立しない限り、住基ネットによってプライバシーが侵害されるから、同法が成立するまで稼働は延期すべきだという意見もある。が、これは詭弁である。第一に、個人情報保護法案と住基ネットシステムはセットではない。同法は民間の個人情報の扱いを規制するものであって、住基ネットで公的機関が扱う情報とは本質的に関係はない。元々住基ネット法では住基ネットで扱う情報の民間での使用が禁止されているのだ。このような反対意見を主張する者は、まず間違いなく法案を読んでいない連中である。第二に、その個人情報保護法案を廃止に追い込んだのは、まさにマスコミ自身である。国家機関でもなく国民の支持も受けていない民間営利企業団であるマスコミが国権の最高機関で審議されている法案をつぶしたのである。ゆゆしき事態であるが、自ら法案を不成立に追い込んでおきながら、「個人情報保護法案が成立していない以上、住基ネットは稼働させるべきでない」とはどこまで面の皮が厚いのか。呆れて言葉もない。
そしてマスコミは、この住基ネットシステムへの反対・疑問を表した自治体、離脱を宣言した自治体を褒め称え、英雄であるかのように報道する。だが、住基ネットへの不参加は違法である。違法自治体を賞賛するなど、犯罪者を英雄視するのと何ら変わりはない。そもそも住基ネットは最近になって急に決まったことではない。すでに相当な周知期間・準備期間を経て、何年もの間念入りに用意されてきたシステムである。多くの善良な自治体は8月5日のスタートに向けて地道な努力を続けてきた。それを今になって一部の自治体が「現行のシステムでは住民のプライバシーを守る自信がないので住基ネットへの参加を反対する」などとはどの面下げて言えたものか。行政の責任をまるで放棄した自治体のわがままでしかない。そんな無責任な首長のわがままで住民をまるごと違法行為に巻き込もうというのである。非常識きわまりない首長であり、むしろそんな人間はすぐさまリコールすべき対象と言えよう。
さらに言えば、今回住基ネットからの離脱を表明したわがままな自治体は5つ(非強制の横浜市を含めても6つ)。反対・疑問を呈した自治体の数ですらたった70である。全国の自治体数が3200以上であることを考えれば反対論などごくわずかでしかないのだ。まじめに努力し、稼働に準備してきた多数の優良自治体を無視するものである。いかにも多数派が反対しているかのように世論を誘導し、歪んだ報道を垂れ流すマスコミこそ、日本にとって、国民の利便を無視し反対のための反対で改革を遅らせる最大の抵抗勢力であることは言うまでもない。(02/08/05)
※朝日新聞・毎日新聞・各テレビ局がヒステリックに反対運動(偏向報道)を続ける中で、産経新聞(7/24)と読売新聞(7/27、8/5)の2紙のみは、感情的な反対論を諫める社説を発表している。
(8月6日追記)
稼働から一夜明け、相変わらずマスコミは反対運動一辺倒である。各種世論調査を引っ張り出して、あたかも住基ネット反対派が大勢であるかのような印象操作も行われている(もちろん小欄で再三指摘している通り、この種の世論調査は何の参考にもならぬマスコミの作為である)。
また、まるで正常な運営ができていないかのように「トラブル相次ぐ」「不安な船出」と報ずる姿勢も問題だ。毎日新聞などは些細なトラブルを(住民からの苦情すらないのに)針小棒大に報じており、テレビ各局もあたかも全国的に接続トラブルが起きたかのように報じているが、冷静に件数を見れば分かるように、ほんのごく一部でのトラブルで、しかもすぐに解決可能な問題であり、全体としては何の不具合も無いと言ってよい。しかもこれらはマスコミが不安感を過剰に煽った「漏洩」の事件ではなく、純粋に単なる接続上のトラブルである。マスコミは反対のためなら、どんな些細な瑕疵でも相手の弱みをついて反論する団体である。