森降ろし政局の虚妄


平成13年4月26日、自由民主党の新たな総裁となった小泉純一郎さんが内閣総理大臣に指名された。今回の総裁選挙も、やはりマスコミは大騒ぎだった。いかにマスコミが「政局」好きかが良くわかったと思う。マスコミ(新聞・テレビ)は、日本の政治をよくしようというつもりは1%もない。彼らは政治があれることでおもしろいニュースを流せればそれが商売になるから、望んでいるだけである。

私のような政界ウォッチャーにとっては、今回の総裁選挙は全く不愉快以外の何者でもなかった。
いや、なにも新総裁に決まった小泉氏に不満があるわけではない。決まり方が不自然だからだ。
まずなによりも、森首相をおろさなければならない理由がなにもない。支持率はマスコミによって無理矢理下げられたものである。そもそも新聞社やテレビ局が発表する内閣支持率などというものは、全く信用にならないどころか、あんなものを信用する者は大馬鹿である。新聞の表記事などは支持率の数字しか載せない。しかし、後の方のページには、その数字を出すためにどのようなアンケートを採ったのかがひっそりと隠すように書いてある。「このまま森総理でいくと、日本経済が危機的状況になるといわれています。また、自民党内部でも森首相では選挙に勝てないと言った情勢から首相交代論も出始めています。あなたは森首相・森内閣を支持しますか?」〜〜〜ばかばかしい。こんな質問されれば、普通の人は誘導尋問に引っかかって「支持しない」と答えてしまうのは当然である。こうして一度下げられた支持率は、「低支持率」「支持されていない総理」のイメージの元、ますます下がる傾向となっていくのである…

そもそも、森首相に失政など何一つない。失言もこれと言ってない。マスコミが鬼の首を取ったように揚げ足取りした失言の数々は、すべて森首相以外が発言したら問題にならなかったものばかりである。支持率低下のきっかけとなった「神の国」発言にしてからが、元官僚(官僚は政治家の答弁に穴がないかどうかチェックする最も重要な役である)で評論家の岡崎久彦氏によれば「どこにも文句を付けようがない模範的演説という。要するに、森首相が悪かったから辞めたのではない。森首相を辞めさせるためにマスコミが悪口を言ったのである。森首相の政策は、有事法制への取り組みを見ても、教育改革を見ても、また李登輝(前台湾総統)来日ビザ問題に関しても、かつての歴代首相が成し遂げることができなかった諸政策に関して大胆な実効策を採り、非常に見所のあるものであった。少なくとも「人気」以外の面で森首相が辞める理由は見あたらない。

今回の総裁選は疲れは見え始めたが、まだ失点はしていないピッチャーに、無理矢理リリーフを告げたようなものである。しかもそのリリーフ宣告を告げたのは正統な指揮者である監督(=国民の支持を受けた自民党議員)ではなく、観客(=マスコミ)がスタジアムに乱入して監督を脅迫し、リリーフを出させたものだ。まともな野球ファンならこんな事をされて愉快に思うはずがない。

小泉純一郎新首相は、驚異の支持率をもって迎えられた。上記の通り、支持率など何の当てにもならない数字だから気にすることはなにもない。とはいえ、早くもマスコミでは反・小泉キャンペーンが始まろうとしていた。小泉氏当選の翌日からテレビの報道番組や下世話なワイドショー番組では早速小泉氏の悪口を言い合う様が見られて非常に滑稽であった。当然である。驚異の支持率を得た小泉内閣は、来るべき参議院選挙でも勝利が予想され、そうなればマスコミが商売っ気で期待している政治ドラマが起こらないからである。マスコミとしては、参院選前に少しでも支持率を下げて連立与党を敗北に追い込み、政界再編を起こしたいのである。だが、視聴者=国民は、このような詐欺くさい手に引っかかってはいけない。マスコミが政界再編を起こす権利は日本国憲法でも放送法でも認められていないからだ。毎日垂れ流される雑多な情報に惑わされず、自己の信念と将来の日本の国益を考えて投票行動に望むことが、今有権者に真に求められている資質である。

思えば、森喜朗議員は、非常に不運な首相であった。森首相の師匠・福田赳夫元首相のさらにまた師匠である岸信介元首相もまた、やらなければならぬ日米安保改訂を国民の猛反発を受けつつ断行し、退陣した…それとよく似ている。
今後は、少し休んで、台湾にでも外遊されたらどうだろうか。諸処の反対を押し切って李前総統のビザ発給に踏み切った首相として、台湾では暖かく迎えられるだろう。かの地で陳水扁総統や李登輝前総統と会談でもすれば、存在はまだまだアピールできると思う。とにかくお疲れさまでした。


(01.05.04)