武部農林大臣問責決議案報道によって隠されたもの


 去る5日、参院本会議において、野党から武部勤農林水産大臣の失政に対する問責決議案が提出され、与党の反対によって否決された。冷静に見て、武部農相があくまで辞任せず責任を持って事後の収拾に当たるという態度はもっともであり、小泉首相の「武部農相が辞任する必要はない」という主張も妥当である。騒ぐは野党とマスコミばかりなり……
 野党とマスコミ(とりわけテレビ)が「失政」と断ずる武部農林大臣の言動は、(褒められたものではないにしろ)少なくとも田中真紀子元外相のそれと較べて、比較にならぬほど軽微なものである。ことに「失言」などは、むしろ武部憎しのマスコミ感情の中で醸成された一人歩き報道であり、森前首相に対するバッシングと同様である。

 問責決議案とはいったいなんであるか。この無意味な決議案は、あくまで野党側の「与党への追求」のアピール以上の意味を全く持っていない。問責決議案がたとい成立したところで、法的拘束力は全くないからである。さらにいえば、すでに衆院で否決された農相不信任案に続く第二弾として使われているに過ぎない。国会には「一事不再理の原則」があり、不信任案という同じ議題を二度審議はできないし、参議院には不信任案を審議する資格がない。よって、もう一度武部農相の失政を追求するアピールをしておこうと参院で「問責決議案」なる奇妙なものを持ち出したに過ぎない。むしろこのような下らぬ野党の意地を過剰な報道であたかも重要な問題のように伝えるマスコミこそ、野党との癒着・与党へのバッシング以外の何物でもない。

 そもそもBSE(いわゆる狂牛病)問題に対する最大の責任者は本当に武部農相なのか? 武部氏自身の発言にもあるが、生産者(畜産農家)にまったく責任はなかったのか? 流通業者はどうか? 消費者にもまったく責任はなかったのか? いや、それよりむしろ、この問題の最大の責任者はテレビメディアを中心としたマスコミであることは間違いない。発生当初から過剰な報道で生産者・消費者に不安をあおり立て、必要以上に牛肉に対する不安を国民に植え付け、さらにはまじめな社員も多く働く雪印食品を解散にまで追い込んだ。これはまさに報道被害という名の人権侵害以外の何物でもない。だが、マスコミは常にこの言葉でこれら批判をかわす。曰く「報道の自由と国民の知る権利を尊重したまで」と。

 マスコミこそ現代における最大の権力者である。が、マスコミ自身はそれを絶対に認めない。むしろ権力への監視者・国民への伝達者を装い、いたずらに政局と国民生活を混乱させる。実際畜産農家にしても、本当に被害を与えられたのは風評被害の方である。無見識・無責任な報道で「国産牛が危ない」というイメージを課題に報道されたためである。だが、彼らのマスコミに対する非難は決してマスコミで取り上げられることはない。握りつぶすことが可能だからである。マスコミの手法のもっともオーソドックスなものである意図的サンプリング。都合の良い意見だけをピックアップし、都合の悪い意見は存在すら抹殺する。これを最大の権力者と言わずしてなんであろう。BSE問題にしてももっとも責任を取るべきは各テレビ局の社長であろう。

 奇しくもマスコミが最大の擁護で持ち上げる田中真紀子元外務大臣の夫君・直記議員が中心となって「青少年有害社会環境対策基本法案」の提出を計画している。それと同時に「人権擁護法案」「個人情報保護法案」なども計画されている。だが、マスコミ各社はこれら三法案を「メディア規制法案」と名付け、一方的な報道を流し続けている。これらは目に余るマスコミの報道被害にたいして国民の人権を守り、過剰な報道に対しては権力側からの制限を加えるものである。マスコミは「世界に例のない悪法」と吹聴するが、ウソである。世界的に見て日本のマスコミほど野放しにされているメディアはない。法案は至極妥当なものであり、マスコミは特殊なケースを例に挙げ「国民の知る権利を侵害」「報道・言論の自由が侵される」と主張する。しかし、それは恣意的解釈であり、法案はそこまで厳しい制限を加えようとするものでない。「世界的に見て」常識的な法律であると言える。が、マスコミは新聞からテレビに至るまで横一線になって、この法案に強硬に反対し、「報道の自由・国民の知る権利を侵害するもの」「権力側からの暴力」とアンチキャンペーンをはり、読者・視聴者にたいし「悪法」のイメージを刷り込むことに必死になっている。マスコミ自体が批判する癒着・横並び・不透明性は、あくまで他社を批判するための便法であり、彼ら自身が行うのは問題ないという手前勝手な理屈である。医療改革・郵政改革・特殊法人改革であれほど「抵抗勢力」を批判するマスコミこそが、実は最大の「抵抗勢力」であることは間違いない。

 我々国民は、このようなマスコミの暴走・迷走に対し、冷静な目をもって、政治を眺めなければならない。問責決議案の提出と、過剰な報道によって誰が得をするのか、考えてみるべきであろう。(02/04/08)(04/24若干加筆)