読売新聞提言の呆れた内容
〜いわゆる「メディア規制三法」への反対キャンペーン2〜
横並びの、「いわゆる『メディア規制法案』反対キャンペーン」の狂騒の中で、5月12日付け読売新聞が「個人情報保護法案」「人権擁護法案」の修正試案を提言した。
読売新聞は、他の報道機関と異なり、こういった提言をすることを積極的に行ってきた。平成6年11月3日付けの「読売の憲法改正試案」が最初で、それ以来、年に2,3回、現在までに14本の提言特集と3本の提言連載を掲載し、論議の材料として読者に提供している。こういった姿勢は評価できるといえる。
何度も強調してきたが、報道機関が政治・世論に介入することは許されない。が、読売の提言特集は、事件・事実の報道ではなく、あらかじめ「本社(読売新聞社)からの提言」であると宣言している。他の新聞・テレビのように事実報道の中に自社独自の価値観を混入し、世論を誘導するような手法とは異なる。つまり、自社の立場をごまかすことなく、はっきりと読者の前に呈示する行為であり、名ばかりの「公正中立」を標榜する日本のメディアの中では珍しい存在でもある。
また、「反対!」「反対!」と念仏を唱える如く、何の対案も持たずに反対する野党・報道機関ばかりの中で、自ら対案を提示したのは、議論の手法としては正しい。以上のような理由により、今回の読売新聞の両法案の修正試案提言は、”姿勢としては”かなり評価できる行動といえよう。
ただし、ただしである。
”姿勢としては”とわざわざ強調したのは、評価できるのが、その姿勢だけだからである。肝心の中身(内容)については、はっきり言って話にもならない。これまでのマスコミ側の一方的な主張を文章にしただけである。
読売新聞は、他のマスコミとは違うはっきりした信念を持ち(勿論スポーツ欄の巨人報道はオーナー企業ならではの贔屓目があるのは確かだが)野党にも与せず、安易に世論に媚びることもない報道機関だと期待していたが、今回の提言の内容については「失望」という語のほか、言うべき言葉が見つからない。
読売提言の骨子は次の5つである。(6つあるが、同一内容のものが2つある)
「個人情報保護法案」修正案
1.「透明性の確保」の原則は報道分野への適用を除外する
2.表現の自由に対する配慮義務を明確化する
「人権擁護法案」修正案
1.救済対象は「取材逸脱行為による人権侵害」に限る
2.表現の自由に対する配慮義務を明確化する。
3.不服申立制度を設ける
4.人権委員会は内閣府の内部機関とする
これらがすべて、取材する側=マスコミの権利追求・保護を目的としたものであることは一見して明かであろう。読売新聞は法制自体の整備は急務である、と認めている。が、それは上記の修正骨子を認める限りにおいてである。まことに手前勝手な論理といって差し支えないだろう。
「透明性の確保」の原則は報道分野への適用を除外する………つまり、報道機関は透明性を確保する必要がないという意味である。秘密取材という既得権益を守ろうとするあまり、他者(特に政治家・役所)に対して強硬に主張する「透明性」を自分たちは除外するというのである。どこまで身勝手なのか。
表現の自由に対する配慮義務を明確化する………つまり、これまででもやりたい放題で国民生活を脅かしてきたマスコミの取材に対する特権を法律上でも明記しろという主張である。こんなものが国民の役に立つ訳がない。道路・石油公団廃止・医療費改革・郵政民営化などの小泉改革に対する抵抗勢力=族議員ですらこんな厚顔な要求はしないであろう。まさに他人の粗は見えても、自分の粗は見ないマスコミの典型である。
他の項目も同様である。要するに、マスコミを規制することは許さない、我々の特権は守られるべき(それどころかもっと増強すべき)という、手前勝手な主張に過ぎない。いくら「提言」と銘打っているとはいえ、これらに同情する読者は多くはないだろう。これまで提言してきた憲法改正試案・社会保障制度提言・デフレ阻止提案など、国民本位のものではないからである。こんな生臭い権益要求をしたのでは、せっかくこれまで責任ある言論機関として有意義な「提言」をしてきたこともすべて水の泡と消えてしまう。もう一度言おう、今回の読売新聞の提言内容には一読者として「失望」以外の言葉は見つからない。(02/05/13)
(5/14加筆)その後、読売新聞は、小泉首相・森山法相・竹中経財相らが、政府案の再検討を始めたことを伝え「読売新聞社の提言が政府を動かした」と喜んで報道している。が、小泉内閣は政府案こそベストであるとの方針は変更していない。過剰報道である。
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